• 2023.6.12 (月)
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■全国一斉に 国交省がパトロールを開始

 新たに制定された管理業法が正しく運営されているかを調べるため、国土交通省の各地方整備局が選定した管理業法の登録企業に対し、令和5年1月4日~2月28日に一斉立ち入り検査が行われました。業界では「国交省一斉パトロール」と呼んでいます。

 検査が入った企業が疑わしいとか、入らなかった企業が安心というわけではなく、初年度は、各県数社に立ち入り検査を行い、賃貸住宅管理業法の遵守状況、全般業務の状況や設備、帳簿等の確認を行うことが目的とされました。

 しかし、もちろん立ち入り検査を行うのですから、法令が順守されていない管理会社に対して、検査当日に是正指導と、後日検証のうえ、監督処分が出されると告知されていました。立ち入り検査をされる企業には、令和4年の12月までに「●月●日に行きますよ」と連絡が入り、双方初めての事でもあり、とても緊張したものでした。

■国交省が管理会社を初めて業務停止処分に

 2023年3月には、国交省はこの立ち入り検査から、賃貸住宅管理業法に基づく初の監督処分を発表しました。初年度から処分が発表されるとは驚きのニュースでした。

 処分を受けた企業は、15日間の業務停止と業務改善命令が下されました。管理会社から収益物件オーナーへ重要事項説明書を交付しなかったことと、契約書に記載すべき内容が記載されていなかったことが対象でした。

 実は、昨年末から、別企業の借り上げ賃料未納問題も発生していました。そういう背景もあって、国はしっかりと法令順守についてパトロール調査を行ったというわけです。 管理業法・サブリース新法を取り巻く社会からの目は厳しくなっていることがよくわかります。 

■指示処分以上で国土交通省のネガティブサイトに掲載

 処分が下されると、国交省では今後も、行政処分履歴を公開するとしています。もし処分が下されると、●年にこういう法令違反があり、業務停止などの処分を受けたと公開されるため、著しく会社の信用を棄損するリスクが発生します。

 そう、今や、国も社会も、賃貸物件や管理会社に対して、厳しくその「質」を問う時代になっているのです。

 営利優先で、入居者を守れない会社は当然淘汰が進みますし、安心安全ではない物件も存在できない時代になっていくのです。社会的信用やコンプライアンスが重要となり、賃貸業界全体の健全性が問われる時代に、流れは大きく変わっているのです。

■環境省からリサイクル法の指摘

 これに先立ち、2022年9月には、家具家電付き物件の電化製品のリサイクルについて、家電リサイクル券の発行や指定業者への回収などを行っていないとして、レオパレス21への立ち入り検査が環境省により行われました。国交省ではなく、なんと環境省です。

これまでは、「賃貸物件だから安い家電をつけるのは当然」という風潮があったのではないでしょうか。儲かればよいのではなく、例えば、設置した家電も、リサイクルが義務付けられる。家電量販店ではないのに、管理会社が処罰の対象となるという事は、「知らなかった」のが、収益物件オーナーの正直な気持ちでしょう。

 環境省はこのほかにも、アスベスト調査の義務化を推進し、23年10月からは有資格者の調査が義務付けられています。つまり収益物件オーナーは、国交省だけを注視していてもいけないという状況なのです。

■あまりに遅いネットは入居者には受け入れられない時代

 例えば、人気の設備ランキング一位である「ネット無料」はどうでしょう。「ネット無料」だけど、「遅くて使い物にならない」という場合について、公取協では「それはおとり広告に該当する」という見解を示したことがあります。ただ、このときは「では上り速度はいくつ、下り速度はいくつだと公取規約違反」とまでは言いませんでした。

 とはいえ、「オンライン授業だから」「テレワークをするから」と言って、その部屋を選んだにもかかわらず、その目的が果たせない、ということになると、宅建業法の善管注意義務違反にあたるのは間違いないでしょう。

「一番遅くて安いものでいいんだよ」という営利主義では、社会の中で認められない時代なのです。

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■10年先、今のネットスピードで耐えられるのか

 また、賃貸経営は「先の長い入居」を前提としている事も重要です。入居時には使えていたはずのネットが、毎年のように動画や大容量のやり取りが進むと、「10年先には使い物にならない」ということもありえます。コロナ禍でオンラインの生活に慣れた入居者は今後もネットを活用した住まいに慣れていきます。

 住まいで仕事、住まいで勉強という時代。これまで以上に通信利用量が増加することは確実ですから、長く入居者の生活の質を維持していくためにも、出来る限り高速、かつ安定したものを選ぶ必要があるのです。

■相次ぐ凶悪事件で 防犯カメラによる住民を守る物件へ

 分譲マンションに比べると、賃貸物件はまだまだ防犯カメラの設置率は高くありません。しかし、ルフィを名乗る強盗団が押し入るといった凶悪犯罪は、発生し続けており、その逮捕や検挙に役立っているのは間違いなく、防犯カメラです。

 この防犯カメラも昔のものは、レコーダーへの記録容量が少なかったり、SDカードが抜き取られてしまったり、あるいはまったく録画されないダミーカメラだったりと、品質には大きな差があります。昨今の技術革新では、「安くて高画質で夜でも記録がクラウドに残る」といったネットワークカメラも登場しています。

■信頼できる管理会社選び、信頼できるIT企業選び

 下表のように、お部屋探しをする人の半数が仲介会社の、1/3が管理会社の口コミ情報を見ているという時代になりました。多少グレーゾーンであっても「利益優先で乗り切れば儲かる」という時代は終わり、ひとたび、評判を落とせば仲介会社も管理会社も入居者から選ばれなくなる時代となりました。

21C.住環境研究会(2020年度賃貸契約者にみる部屋探しの実態調査)※(株)リクルート調査

 逆に言えば、収益物件オーナーも、単純に管理料の高い低いだけで管理会社を選ぶ時代は終わり、その管理の質を選ぶ時代になりました。また、物件にいれる設備も、単純に「賃貸だから出来るだけ安いもの」という時代ではなく、「その品質も入居者に評価される時代」となったのです。

 安心できるブランドや地域密着での実績など重視して、パートナーとなる管理会社やIT企業を厳選して、良質な賃貸経営をしていきましょう。

  • 執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

    【プロフィール】
    プリンシプル住まい総研 所長

    1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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