• 2023.3.27 (月)
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■全国一斉に国交省がパトロール開始

2023年1-2月に国交省が全国一斉に、不動産会社を立ち入り検査した

 管理業法が制定され、国交省による「立ち入り検査」も始まりました。この立ち入り検査というのは、なにか悪いことをした不動産会社に国交省が回るという話ではなく、全国各地の不動産会社の中から、大きい会社や影響力の高い会社さんを選んで、令和5年1月4日~2月28日の間に、国土交通省の各地方整備局が検査を行うというものです。

 検査する項目は、賃貸住宅管理業法の遵守状況全般で、「業務の状況や設備、帳簿等の確認」を行いました。法令が順守されていない管理会社に対しては、検査当日にも、是正指導が行われ、後日検証のうえ、場合によっては監督処分が出されることもあります。いよいよ管理の「質」が世の中に問われることになったのです。

■建てた会社が管理していた・・・。 でもその管理は、最適だったのか?

 これまで、オーナーは、「建てた会社の関連会社」か「建てた時に紹介された管理会社」に管理を委託していました。なかには、熱心に不動産会社さんの営業で管理会社を変更するといったオーナーもいるかもしれませんが、多くのオーナーは、「建てた時の管理会社」をずっと信頼して頼ってきたのではないでしょうか。

 しかし、国交省の立ち入り検査が始まるように、実は管理会社によって、行う業務は千差万別でした。「仲介を決めて満室にしてくれるからいい会社」ぐらいの物差しだと、やるべき管理をしっかりしていないという可能性もあったのです。

 むしろ、「よく仲介を決めてくれる会社」ほど、管理業務が手薄で、入居者からのオーダーをないがしろにしていたり、家賃を下げて決めるばかりで入居者の質を下げてしまっていたり、ということがあったかもしれません。

■不動産会社を選ぶ時代。 DXの推進もひとつの指標に

 例えば、オーナーセミナーなどで、「電子申込を開始します」「電子契約をします」「感染対策としてオンライン内見を実施しました」「入居者アプリでクレーム対応に迅速に対応する事にしました」「オーナー様への家賃明細をアプリで送りますので、郵便物から個人情報が洩れる事は無くなります」「重説はIT重説で行いましたので、その時の録画が残っています」などと、先進技術を導入している会社は、それなりの努力をしています。 なにしろ、新しいことをしなくても、業務は回ります。そこをあえて、オーナーや入居者のために、これまでのやり方を変えているのですから、アクティブな会社といえます。

■先進的な会社は、社長が旗を振っています

こうした管理会社の変革は誰がやっているのでしょうか。

例えば、理系出身の若手が、どこかのシステム会社からの提案に乗って導入したのでしょうか。実は、そうではありません。
例えば、電子申込や電子契約を導入すると、働き方がこれまでとがらりと変わります。なにか商品を買えば出来るというわけでもないのです。もちろん、理系出身とか若手といった人は操作や理解が早いでしょう。しかし、電子申込システムの導入により、申込書のデジタルデータを基幹システムに取り込むとなると、今まで紙を見て手で打っていた人は、仕事の仕方が変わります。時には組織や働き方が変わってしまいます。となると人事発令して、携わる人の変更もありえます。

 また、RPA(業務の自動化)を導入すると仕事の仕方も大きく変わります。これまで、事務の人が行っていた入力作業も、夜間に自動的にシステムが行い、翌朝完了するということも可能となります。すると、これまで単純な入力作業をしていた人は、修繕作業など別の仕事をすることもありえます。

つまり、人事だけでなく事業戦略が変わってしまうのです。ここまで行くと、ズバリ社長が決断しないと事が進みません。「若手がやっといて」では「社長、ひとり仕事がなくなりましたがどうしますか」といったことも起こりえるのです。

 多くの不動産会社の社長はそれなりに高齢ですから、システムの変更や、仕組みの変更は正直大変です。しかし、そこに踏み込んだ会社が新しい取り組みにチャレンジしているのです。

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■「デジタルは苦手」という経営者に ネット無料を勧められても

 あるいは、こんなこともあります。最近は空室対策として、ネット無料やネットワークカメラ、あるいは宅配ボックスのような新しい商材が登場しています。しかし、頼みの管理会社の社長さんが「わしはそういうの苦手でね」「インターネットでの会議はやったことがなくて」「防犯カメラがネットにつながるとかよくわからなくてね」「ネット通販でものを買ったことはなくてね」「今でもガラケーの携帯で」では、「なぜ、オーナー側だけそういう設備投資をしなければならないの?」と疑問も出てしまいます。

 先進的な不動産会社の経営者は、しかるに自らオンライン会議をし、店舗に防犯カメラを設置し、宅配で本を買ったりしているのです。「まず使ってみる」を実践している経営者でないと、大切な物件管理を任せるにも躊躇してしまいます。

■うちみたいな会社はまだまだ 「まわりがやってから」・・・ なら、オーナーの管理物件は対策が遅れます

 時々聞くのは「様子見」。オーナーの中にも「みんなが始めたら、自分もやろう」という人はいます。それはそれで安心です。新しい技術ですから、自ら実験台となるのは、オーナーは不安かもしれません。

 しかし、不動産会社が「他もやったらやろう」では、他社に遅れます。どんな小さな会社であっても、最近の潮流である、「ネット無料」「防犯カメラ」「宅配ボックス」あるいは「電子申込」「電子契約」「IT重説」「オンライン内見」「入居者アプリ」「オーナーアプリ」などは、そろそろ「はい。やっていますよ。このような効果がでていますね」と話してほしいものです。

 そうなのです。オーナーは他の人の成功も失敗も知ってから、確実に効能があるならば実施すればよい。しかし、不動産会社はチャレンジして、効能を体感しておいてほしい。やってみて効果がなければオーナーに提案しなければ良いし、やって例えば空室が埋まれば、その事例をオーナーに伝えてほしいのです。

 そう、管理会社は、「他社を見てから」では「いつまでたっても新しい空室提案も出来ない」のです。そんな管理会社に大切な物件を託していると、先進的なオーナーの物件にどんどん差が開いてしまうのです。

■管理会社を選ぶ時代。

 管理業法が制定され、管理の「質」が全国各社一律でないということが明確になりました。そして物価は上昇し、空室は増え、IT化は進んでいます。

 だからこそ「管理会社を選ぶ」時代になりました。しかも「よく決めてくれる」という【仲介力】だけでなく「入居者の満足度が高く、退去が少ない」といった【管理力】も重要になっているのです。 時代の変化が速くなっていますが、その一方で、収益物件のオーナーの年齢も、物件の築年も、任せている管理会社の経営者の年齢も上がっているかもしれません。だからこそ、時代の最先端に老骨鞭打って、率先垂範する経営者を選ぶ時代ともいえるのです。

 ITを駆使しつつ、「既存の社内システムとの連動(情報システム部門の側面)」「組織そのものの配置や構成も変える(人事部門の側面)」「どこに資源集中して、なにで稼ぎ、なにを自動化するか(経営企画室の側面)」を併せ持つのはまさに経営者。しかるに、「理系だから」「若手だから」と、ポンと丸投げせず、自ら頑張る経営者がいる不動産会社に物件を託しましょう。

  • 執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

    【プロフィール】
    プリンシプル住まい総研 所長

    1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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