PDFに直接押せる電子印鑑の作り方|無料で作成・押印および編集不可にする方法
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2023.4.04 (火)Posted by 北森 雅雄
「PDFファイルに直接押印できれば便利なのに……」とお悩みの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
PDFファイルをワードやエクセルなどへ変換せずに押印するには、無料ツールであるAdobe Acrobat Readerが便利です。
Adobe Acrobat Readerの操作方法と特徴を把握し使いこなせれば、日々の業務をスムーズに進められるでしょう。
本記事では、Adobe Acrobat Readerでの電子印鑑の編集・作成・押印の方法を丁寧に解説します。
また、書類を編集不可にする方法も併せて紹介しますので、できる限り安全に電子印鑑を押印する方法を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
目次:
1.PDFに押印する電子印鑑をAdobe Acrobat Readerで編集・作成する方法
Adobe Acrobat Readerを用いて電子印鑑を作成するには、次の3通りの方法があります。
- ●スタンプ機能にデフォルトで搭載されている電子印鑑を使用する
- ●カスタムスタンプ機能でオリジナルの電子印鑑を押印する
- ●署名機能で電子印鑑の画像を挿入する
それぞれ手順が異なりますので、以下をご参照ください。
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スタンプ機能にデフォルトで搭載されている電子印鑑を使用する
個人で使う認印または日付印を押すのであれば「スタンプ」機能がおすすめです。デフォルトで搭載されている電子印鑑を使用するとその場ですぐ押印作業が完了しますので、事前準備は必要ありません。
スタンプ機能を使って電子印鑑の編集を行うには、Adobe Acrobat ReaderでPDFのファイルを開いてから以下の手順を踏みましょう。
- 1.画面右上にある「ツール」タブを選択
- 2.「スタンプ」を開く
- 3.メニューに表示された「スタンプ」をクリック
- 4.「電子印鑑」にカーソルを合わせる
- 5.電子印鑑のスタイルを選ぶ
- 6.クリックすると現れるダイアログボックスに印影の情報を入力
印影に表示する名前や会社名などの設定を編集し直すには「スタンプパレット」→いずれか1つの電子印鑑を右クリック→「ユーザー情報を編集」を選択してください。
スタンプ機能は、手軽さとトータルの作業時間の短さが最大の魅力です。電子印鑑の背景透過を行う必要もありません。
ただ、印影の種類はデフォルトのデザインからしか選べず、バリエーションが少ないのがデメリットです。また、スタンプ機能の日付はパソコンの設定が自動的に反映されるため、Adobe上で変更ができない点も理解してから使用しましょう。
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カスタムスタンプ機能でオリジナルの電子印鑑を押印する
Adobe Acrobat Readerの「カスタムスタンプ」機能を利用し、あらかじめ作成しておいた電子印鑑の画像を挿入する形で押印する方法もあります。
カスタムスタンプ機能での印影の押し方は、Adobe Acrobat ReaderでPDFのファイルを開いたあと、次の作業を行ってください。
- 1.「ツール」タブから「スタンプ」を開く
- 2.「カスタムスタンプ」をクリックして「作成」を選択
- 3.「参照」から画像を取り込む
- 4.「分類」と「名前」を設定
作成したカスタムスタンプの名前を変更するには、まず「スタンプパレット」をクリックすると現れる「管理」を選択してください。続いて表示されたダイアログボックスから名前を変えたい電子印鑑を選んで「編集」ボタンをクリックすれば名前と分類の変更を行えます。
デフォルトの電子印鑑を編集する場合と同じく、カスタムスタンプでも印鑑の背景を透過する作業は不要です。
カスタムスタンプ機能で取り込める画像はPDFファイルのみですので、あらかじめ印影画像をPDFに変換しておかなくてはなりません。
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署名機能で電子印鑑の画像を挿入する
Adobe Acrobat Readerの「入力と署名」機能を使用すれば、PDF以外の電子印鑑の画像も電子印鑑として使用可能になります。
PDFファイルをAdobe Acrobat Readerで開いたあとの操作手順は以下のとおりです。
- 1.「ツール」タブから「入力と署名」を選択
- 2.メニューに表示される「自分で署名」をクリック
- 3.「イニシャルを追加」を選ぶ
- 4.「画像」をクリックし、作成済みの電子印鑑を取り込む
「入力と署名」機能で取り込んだ電子印鑑の画像は、Adobe Acrobat Readerの「自分で署名」のリストに保存されます。
ただ、Adobe Acrobat Readerで編集可能なのはサイズ調節と場所の移動だけです。電子印鑑の画像のトリミングは事前に行いましょう。
また、スタンプ機能と異なり、背景透過も自動では行われません。背景が透過された電子印鑑が必要な場合は他のツールを用いて作成し、PNG形式で保存した画像データを取り込んでください。
2.Adobe Acrobat Readerで作成した電子印鑑の押し方

スタンプ機能・カスタムスタンプ機能と「入力と署名機能」は、編集・作成した電子印鑑の押印方法が異なります。
押印時のポイントも併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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スタンプ/カスタムスタンプ機能で編集・作成した電子印鑑の押印方法
スタンプ機能とカスタムスタンプ機能で編集・作成した電子印鑑の押印は、以下の手順で行えます。
- 1.「ツール」タブから「スタンプ」を開く
- 2.「スタンプパレット」をクリック
- 3.プルダウンから電子印鑑の分類を選択する
- 4.押印する電子印鑑を選ぶ
- 5.電子印鑑を押したい箇所にカーソルを合わせてクリックする
押印する電子印鑑の種類は「スタンプを追加」をクリックすると現れるメニューからも選択可能です。
電子印鑑を押印する際、ドラッグして範囲を拡大・縮小することで簡単にサイズ調節ができます。
電子印鑑の向きは、印影画像の上部中央にある点にカーソルを合わせ、出現した回転矢印をドラッグすれば変更可能です。
押印した印影のポップアップノートを開くと押印者の氏名と押印時間が表示され、いつ・誰が押印や印影の移動などをしたかを判別できる仕組みになっています。
メッセージを入力したり承認・キャンセルなどのステータスを追加したりする機能もあるため、申し送り事項がある時に便利です。
なお、スタンプ機能で編集および作成した印影画像データは、パソコンへのダウンロードができません。このため、Adobe Acrobat Readerで開いたPDF以外には押印不可となっています。
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入力と署名機能で作成した電子印鑑の押印方法
入力と署名機能での電子印鑑の押し方は、次の手順で行ってください。
- 1.「ツール」タブから「入力と署名」を開く
- 2.「自分で署名」から作成時に取り込んだ電子印鑑を選択する
- 3.PDF書類の上でクリックする
- 4.右下の角にある丸いマークをドラッグして印影のサイズを調整する
- 5.電子印鑑の位置を押印したい箇所にドラッグ&ドロップして移動させる
入力と署名機能では、作成時に取り込んだ画像がそのまま貼付されます。背景透過を施していない画像を電子印鑑として使用している場合には、書類の文字や図などに被らないよう注意して押印しましょう。
3.Adobe Acrobat Readerの電子印鑑を編集不可にする方法

Adobe Acrobat Readerで押印した電子印鑑を編集できないように設定する方法は、以下の3つです。
- ●スタンプにロックをかける
- ●デジタルIDを取得して電子署名する
- ●PDFファイルにパスワードを設定する
- ●Adobe Signを利用する
Adobe Acrobat Readerの機能を用いて押印した電子印鑑は、誰でも簡単に編集が可能です。改ざんの危険性があるため、電子印鑑の編集を不可にしておくことをおすすめします。
1~3の方法の手順をそれぞれ説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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スタンプにロックをかける
Adobe Acrobat Readerのスタンプ機能を使って押印している印影には、簡易的なロックをかける機能が備わっています。
設定方法は、印影画像を右クリックして「プロパティ」を選択し、出現したダイアログボックスの左下にある「ロック」にチェックを入れて「OK」ボタンを押すだけです。
手順が非常に簡単な半面、デジタル書類送付先で編集機能があるPDFリーダーが使われている場合、ロックを外せてしまうデメリットがあります。
スタンプのロック機能は、あくまで一時的に編集を防ぐ方法でしかないと捉えておきましょう。
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デジタルIDを取得して電子署名する
Adobe Acrobat Readerでは、無料で取得できる「Self-SignデジタルID」を使って電子署名を行うことで書類の改ざん防止が可能です。
IDの取得方法および電子署名を行う手順を説明します。
手順1.Self-SignデジタルIDを取得する
はじめに、Self-SignデジタルIDの取得を行います。
Self-SignデジタルIDを取得する方法は、以下の順番で行ってください。
- 1.Adobe Acrobat ReaderでPDFファイルを開く
- 2.「編集」タブから「環境設定」を選択
- 3.「分類」内の「署名」→「IDと信頼済み証明書」詳細ボタンの順にクリック
- 4.上方に表示された一番左のアイコンをクリックし「デジタルIDの追加」を開く
- 5.「今すぐデジタルIDを新規作成」を選択して「次へ」を押す
- 6.「新しいPKSC*12デジタルIDファイル」にチェックを入れて「次へ」をクリック
- 7.ID情報の入力、デジタルIDの使用方法は「デジタル署名とデータの暗号化」を選択
- 8.パスワードを設定して「完了」をクリック
以上で電子署名を行う準備が整いました。
手順2.電子署名を施す
Self-SignデジタルIDを取得できたら、電子署名が付与できるようになります。
電子署名を施す方法は、以下の手順です。
- 1.Adobe Acrobat ReaderでPDFファイルを開き、電子印鑑を押印する
- 2.「ツール」タブから「証明書」を開く
- 3.証明書のメニューにある「デジタル署名」をクリック
- 4.出現したダイアログボックスで「OK」を押す
- 5.デジタル署名を施す範囲をドラッグして指定する
- 6.続けて現れるダイアログボックスから「デジタルIDを設定」を選択
- 7.作成したSelf-SignデジタルIDにチェックを入れて「続行」を押す
- 8.パスワードを入力して「署名」をクリックする
電子署名を付与したあとは、検証ステータスから書類の編集状況と署名者の情報をチェックできます。
手順3.証明書ファイルを送付する
書類の送付先で検証を行うには、証明書ファイルを送付して相手にインストールしてもらわなくてはなりません。
証明書の作成方法は、まず「編集」タブから環境設定を選択後、分類「署名」→「IDと信頼済み証明書」の詳細ボタンをクリックします。次に作成した電子証明書を選んでから「書き出し」を選択して「データをファイルに保存」を実行すれば完成です。
見積書や契約書などのデジタル書類を相手先に送付する際には、以上の手順で作成した電子証明書を一緒に送付します。
手順4.書類の送付先でPDFファイルの電子署名を検証してもらう
相手先に電子印鑑が押印されたPDFファイルの信頼性を確認してもらうには、以下の手順で検証するよう申し送りを行いましょう。
- 1.証明書ファイルを開いて「連絡先の信頼を設定」を選択する
- 2.「この証明書を信頼済みのルートとして使用」および「証明済み文書」にチェックを入れてから「OK」を押す
この手順を行ってもらうことで、送付先で電子証明書の検証が可能になります。
注意していただきたいのは、Self-SignデジタルIDで発行した証明書はあくまでAdobeが独自で実施している認証方法だという点です。電子証明書は本来、国の指定認証局が発行するもの。Adobeの証明書の法的効力は強いとはいえないことに留意しておきましょう。
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PDFファイルにパスワードを設定する
Adobe Acrobat Readerでは文書を保護する機能が使用できませんが、有料版にアップデートすればセキュリティ設定から文書の保護が簡単に行えるようになります。保護設定が施されたPDFファイルは、開く際にパスワードの入力が必要なため、セキュリティが強化されます。手軽な手順で書類データの保護が完了するため、経費の割り振りが可能な場合は検討してみるのもいいでしょう。
とはいえ、有料版の保護機能を利用したからといってすべての改ざん・悪用リスクを回避できるわけではありません。
専門知識がなくてもPDFのパスワードを解除できる方法が存在しているため、安全性を担保するには厳重なセキュリティ対策を別途に施す必要があります。
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Adobe Signを利用する
Adobeが提供する有料サービスである「Adobe Sign」を利用して電子署名の付与および電子証明書の発行を行う方法もあります。
Adobe Signを利用する手順は、Self-SignデジタルIDで電子証明書を発行する場合とほとんど変わりません。
最大のポイントは、有料のAdobe Signで発行される電子証明書は指定認証局と同様だということ。Adobe Signの電子証明書は、無料版のSelf-SignデジタルIDで発行した証明書よりも、強固な法的効力を発揮するのです。
取引で使用する契約書や請求書などの重要性の高い書類には、こうした法的根拠に基づいて作成された電子証明を利用する必要があるといえます。
4.法的に信頼度の高いPDF書類を作成するなら電子契約サービスの利用がおすすめ

会社・法人などが取り扱う重要性の高い文書への証明や決裁を行う場合は、電子契約サービスの利用がおすすめです。
無料の電子印鑑には法的効力がありません。重要な書類の正当性を証明する手段として用いると改ざんや悪用などのトラブルが生じる可能性が高く、裁判になった際には不利になるでしょう。
有料ツールで電子印鑑の自作や電子署名の付与を行う方法は無料と比べ便利ですが、作業や管理に手間がかかる点がデメリットです。採用した証明方法が本当に安全性の高いものかを検証するのが難しく、保護を突破されてしまう危険性も否めません。
こうした悩みは、電子契約サービスを利用することで解消できます。
電子契約サービスの利用で得られるメリットは次の6点です。
- ●確実に法的根拠に基づく方法で取引や決裁ができる
- ●自ら管理を行う必要がない
- ●業務の効率化が図れる
- ●コストが削減できる
- ●業務内のミスや見落としが減らせる
- ●リモートワークに対応しやすい
電子契約サービスでは、法的根拠に基づく方法で容易に取引や決裁が行えます。
また、ビジネスの一連の流れをデジタル化して紙の書類にかかっていたコストを削減できるうえ、業務に見落としがあった場合の確認がしやすいのも利点です。
さらに、近年増加しているリモートワークとも相性がよく「ハンコ出社」などのムダを減らせるでしょう。
電子契約の利用はコストがかかりますが、それに見合うだけの大きなメリットが得られるのです。
5.まとめ
PDFファイルには、Adobe Acrobat Readerに備わっている「デフォルトのスタンプ」「カスタムスタンプ」「入力と署名」の3つの機能を使用して電子印鑑を直接押印することが可能です。
それぞれ編集・作成方法および押印方法が異なるので、手順を確認したうえで作業を行いましょう。
Adobe Acrobat Readerで作成した電子印鑑・デジタル書類はセキュリティが脆弱であり、誰でも編集ができてしまいます。
編集を不可にする設定を行う4通りの方法があります。しかし、自らの手で編集にロックをかけると、安全性が確実に保障されないものも多いうえ非常に手間がかかります。
このようなデメリットは、電子契約サービスを利用すれば補完が可能です。法的根拠に基づく方法で確実に管理が行えるうえ、ビジネスの様々な手続きをデジタル化することで多くのメリットを得られるでしょう。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。