電子請求書の保存方法とは?電子帳簿保存法やインボイス制度を踏まえて解説
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2023.8.23 (水)Posted by 北森雅雄
「電子請求書の保存方法とは?」
「電子帳簿保存法やインボイス制度に基づいて保存する方法とは?」
と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
2024年1月から電子帳簿保存法では電子請求書の電子保存が義務化されます。電子保存をする際には電子帳簿保存法の要件を満たして保存が必要です。
一方で、2023年10月に施行されるインボイス制度でも一部保存要件がありますので、こちらも併せて要件を確認しておきましょう。
当記事では、受領側、送信側の各観点から電子請求書の保存要件を解説します。電子請求書の保存方法について理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
1.電子請求書は電子帳簿保存法に基づいた保存が必要
メールに電子請求書を添付してやり取りするなど、相手方と電子的にやり取りをした電子請求書は電子帳簿保存法 電子取引要件を満たして保存が必要です。以下では電子請求書が満たすべき法律の概要について解説します。
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電子的に帳簿や書類を保存することを認めた法律
電子帳簿保存法とは読んで字のごとく、電子的に帳簿や書類を保存してもよいと認めた法律です。保存対象となる帳簿や書類に応じて、4つの保存要件があります。
その中で電子請求書は、電子的にやり取りした国税関係書類以外の書類(≒国税関係書類)を保存対象とした電子帳簿保存法 電子取引要件を満たして保存が必要です。
もし、電子帳簿保存法 電子取引要件を満たさずに保存している旨を税務調査時に指摘された場合、青色申告の承認取り消しリスクがありますので注意が必要です。
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2024年1月までに電子保存が必要
電子帳簿保存法は2022年1月に改正され、法律全体で大きく要件緩和が目立ちました。一方で、担保措置とも取れるような要件改正がされています。それが、電子帳簿保存法 電子取引要件における紙保存措置廃止です。
2022年1月以降※、原則的には電子的に授受した国税関係書類以外の書類(国税関係書類)は電子保存が義務化されています。(紙保存措置廃止)
ただし、やむを得ない事情がある場合には電子保存の義務化は2024年1月からでよいと認められています。2024年1月までに遅くても電子請求書の電子保存の用意を行いましょう。
2.受領した電子請求書の保存方法

電子請求書を受領/送信する場合で保存方法が若干異なります。
以下では、電子請求書を受領した場合に気にかけるべき論点をご紹介します。
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電子帳簿保存法 電子取引要件を満たして保存が必要
電子請求書を電子取引した場合、電子帳簿保存法 電子取引要件を満たした状態で保存する必要があります。
電子取引の範囲は広い
そもそも、電子取引とは何かと疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。電子帳簿保存法上の電子取引の定義は以下の通りです。
2-3 法第2条第6号((電子取引の意義))に規定する「電子取引」には、取引情報が電磁的記録の授受によって行われる取引は通信手段を問わずすべて該当するのであるから、例えば、次のような取引も、これに含まれることに留意する。 (1) いわゆるEDI取引 (2) インターネット等による取引 (3) 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。) (4) インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引 |
出所:法第2条((定義))関係
上記の例に挙げられているとおり、メールに添付した電子請求書、Webサイト上からダウンロードした電子請求書など、非常に幅広い定義であることがわかります。
したがって、電子帳簿保存法 電子取引対応をしようと考えると「想定以上に工数がかかる・・」と感じる企業担当者も多いようです。
上記のような電子取引をした電子請求書に対して、電子帳簿保存法 電子取引要件では大きく以下2つの要件を満たして保存する必要があります。
- ●真実性
- ●可視性
要件①:真実性
真実性とは、電子請求書を受領した後に改ざんされていないことを証明する要件です。電子帳簿保存法 電子取引要件では以下選択肢の内、いずれかを選択して対応することが認められています。
- タイムスタンプ付きの文書を受領、または、タイムスタンプの付与
- 訂正削除が考慮されたシステム上での保存、または、訂正削除ができないシステム上での保存
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程の作成、及び、運用
要件②:可視性
可視性とは、特定の電子請求書を整然、明瞭かつ速やかに提示することを求める要件です。
可視性はいくつかの要件で構成されており、その中でも特徴的なのが検索性の要件です。
検索性では税務監査時にダウンロードの求めに応じることができるのであれば、以下主要三項目による検索ができればよいとする要件です。
- ●取引年月日
- ●取引先名
- ●取引金額
ダウンロードの求めに応じることができない場合、上記主要三項目による検索に加えて、以下による検索ができる必要があります。
- ●複数条件検索
- ●範囲検索
ダウンロードした請求書の保存方法には注意が必要
電子帳簿保存法 電子取引要件における真実性を満たすためには3つの選択肢が提供されていますが、以下方法を選択する場合には注意が必要です。
- ●訂正削除が考慮されたシステム上での保存、または、訂正削除ができないシステム上での保存
電子帳簿保存法 電子取引要件では、メールに添付された請求書を一度ダウンロードして他システム上で保存するなど、ダウンロードが過程に含まれる場合には、上記方法による真実性確保を認めていません。
問4当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存し ておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。 【回答】 |
なぜなら、一度ダウンロードされた文書は改ざんの余地があると考えられるからです。実務上でダウンロードされた文書を保存する場合には、他手段による真実性の確保を検討する必要があります。
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インボイス制度施行後は受領した適格請求書は記載要件を満たしているか確認しよう
2023年10月に施行予定のインボイス制度では、仕入税額控除のためには適格請求書発行事業者が発行した適格請求書の受領が必要です。したがって、受領した電子請求書が記載要件を満たしているか確認が必要になります。
一定の記載要件を満たしているか確認する
適格請求書には以下の記載が求められています。受領した電子請求書が記載要件を満たしているか確認してください。
1. 発行者の氏名、または、名称
2. 取引年月日
3. 取引内容
4. 取引金額
5. 受領者の氏名、または、名称
6. 軽減税率の対象品目である旨の表記
7. 税率ごとに区分して合計した対価の額
8. 上記7の適用税率
9. 税率ごとに区分した消費税額等
10. 登録番号
受領した適格請求書上に記載誤りがあっても、受領側での修正は認められていません。したがって、記載事項の漏れや誤りがある場合には発行側に再発行してもらう必要がある点に注意ください。
事業者番号が適切か確認する
免税事業者が益税の権利を保持したまま、適格請求書発行事業者のフリをして適格請求書を発行してくるケースも想定されます。特に初めての取引先や取引実績の少ない相手には注意が必要です。
このようなケースに備えて、適格請求書に記載された事業者番号が国税庁に登録があるか確認する必要があります。国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」(←リンク)にアクセスして事業者番号から検索して確認する必要があるのです。
受領側が事業者番号の偽造を知らずに仕入税額控除を行ったとしても、受領側が事業者番号の確認を怠ったとして、追徴課税を課される可能性が高いですので注意ください。
3.自社発行した電子請求書の保存方法
自社が発行した電子請求書の保存方法について解説します。
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基本的に受領した電子請求書と保存要件は同一
自社が発行した電子請求書を電子取引する場合、電子帳簿保存法 電子取引要件を満たした保存が必要です。基本的に受領した電子請求書と保存要件は変わりません。
ただし、自社が発行した電子請求書の場合、発行システム上で電子帳簿保存法 電子取引要件対応ができる可能性がありますので、確認をおすすめします。
問 40 自社が発行した請求書データの保存について、当該データに記載されている内容が事 後的にわかるものであれば、データベースにおける保存でもよいでしょうか。【回答】 発行した請求書データの内容について変更されるおそれがなく、合理的な方法により編集 された状態で保存されたものであると認められるデータベースであれば問題ありません。 |
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インボイス制度施行後は請求書の控えの保存が必要
インボイス制度の施行後、発行した適格請求書の発行控えが仕入税額控除の要件になりますので注意が必要です。
インボイス制度施行前までは請求書の発行控えについて、保存要件はありませんでした。しかし、インボイス制度施行後は仕入税額控除の要件となり、請求書の発行控えに対して保存義務があるのです。
電子請求書を電子取引でやり取りした場合には、相手方に送付した電子請求書そのものを保存すれば要件を満たすことができます。
4.まとめ 電子帳簿保存法など各法要件を満たして保存しよう
電子取引をした電子請求書の保存は電子帳簿保存法やインボイス制度など法要件に基づいて保存ができるように準備を進めてください。とはいえ、各法要件を満たしたシステムを自社で開発するのには限界があります。
したがって、最も簡単に法要件を満たして保存をする方法は、法対応をしたシステムを利用することです。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。