電子請求書とは?2023年10月施行インボイス制度やPeppol含めて解説
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2023.8.23 (水)Posted by 北森雅雄
「インボイス制度の施行後、電子請求書の活用は必要?」
「インボイス制度と電子請求書の関係性とは?」
と考えている方も多いのではないでしょうか。
2023年10月に施行されるインボイス制度によって、バックオフィスの業務が煩雑化すると予想されています。したがって、現存の人員で2023年10月以降のインボイス制度対応をしようと考えると必然的にバックオフィス業務の効率化が必要です。
そこで検討されるのが請求書の電子化対応です。
当記事では電子請求書とは何か、インボイス制度の概要、売手/買手における新業務の概要、インボイス制度を効率化するための手段について解説をします。
目次:
1.電子請求書とは何か
電子請求書、電子インボイス、デジタルインボイスと似たような言葉がWeb上にあふれています。しかし、各言葉は微妙にニュアンスが異なるため注意が必要です。各言葉のニュアンスをご紹介します。
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電子請求書とは
電子請求書とは電子的にやり取りをする請求書一般を指します。例えば以下のような請求書が電子請求書です。
- ●メールに請求書を添付して相手方とやり取りする
- ●Webサイト上から請求書をダウンロードする
- ●インターネットFAXを経由して請求書をやり取りする など
以上の例を見てもらうと分かる通り、電子請求書は電子的にやり取りする業務一般の全てに該当しますので、幅広い概念です。
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電子インボイスとは
電子インボイスとはインボイス制度における適格請求書を電子的にやり取りしたものです。
インボイス制度については後述しますが、2023年10月に施行されるインボイス制度によって適格請求書(通称、インボイス)の電子保存が認められます。
※実際には2023年10月以前までも「やむを得ない理由」がある場合には帳簿上に必要事項を記載することで、請求書の電子保存は認められていました。
ただし、適格請求書の電子保存が認められるものの、適格請求書の電子保存を法律的に表現すると電磁的記録とされています。この表現では、経理業務に携わらない一般的な方には伝わりづらいので、電子インボイスという表現が使われ始めました。
実際に国税庁が公表している「適格請求書等保存方式の概要」上では、電子インボイスと表記されています。
したがって、電子インボイスとはデータ化された適格請求書を指すのです。つまり、電子請求書と比較すると限定的な概念といえます。
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デジタルインボイスとは
デジタルインボイスとは、Peppolを活用して共通のルールの元で異なるシステムを利用する企業間でもやり取りが可能になる電子インボイスです。
デジタルインボイスはEIPA(デジタルインボイス推進協議会)がデジタル庁と共に提唱した概念で、「標準化され構造化された電子インボイス」であると公表されています。
つまり、電子インボイスの中でも、請求情報の項目順序や記述方法、データ形式等をルールによって構造化したものがデジタルインボイスです。
デジタルインボイスは電子インボイスと比較して、より限定的な概念ということになります。
ここまでの話をまとめると以下のような関係性になります。
- ●電子請求書 > 電子インボイス >デジタルインボイス
2.2023年10月にインボイス制度が施行される

電子請求書や電子インボイス、デジタルインボイスと2023年10月に施行されるインボイス制度は密接に関連しています。ではどのように関連しているのか順を追って解説します。
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インボイス制度とは
インボイス制度とは、2023年10月以降、買い手側の事業者が国から認められた適格請求書発行事業者から適格請求書を受領しないと、仕入税額控除を受けられない制度です。
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インボイス制度の目的
2023年10月まで施行されている区分記載請求書等保存方式では、一定の条件を満たす事業者は免税事業者として、消費税の納税義務がありません。一方で、免税事業者であっても、売上時に消費税を乗せることが認められていました。
つまり、免税事業者は預かった消費税分だけ利益(益税)があったのです。この部分にメスを入れることを目的としているのがインボイス制度です。
インボイス制度では、適格請求書発行事業者(≒消費税の納税義務のある事業者)にならなければ、仕入税額控除に必要な適格請求書を発行できません。したがって、仕入事業者は適格請求書発行事業者を仕入先として優先的に選択すると考えられています。
つまり、インボイス制度を施行することで免税事業者を適格請求書発行事業者への転換を促し、益税を排除する点にポイントがあります。
3.買手/売手で対応すべき事項がある
インボイス制度が施行されることでバックオフィスの業務が煩雑化すると考えられています。では、なぜ煩雑化するのか売り手側、買い手側の視点から説明します。
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売り手側の対応事項
インボイス制度が施行されると売手側は以下2つに対応する必要があります。
- ●請求書の記載事項変更
- ●適格請求書写しの保存
請求書の記載事項変更
インボイス制度では適格請求書発行事業者は相手方から求められた場合に一定の記載要件を満たした適格請求書の発行が必要です。
逆に言えば、一定の記載要件さえ満たせば、単一の請求書でなくても、複数の請求書によって要件を満たすこともできます。また、同様に自社が発行しなくても、相手方から仕入明細書当形式でやり取りをしても要件を満たすことができるのです。
つまり、相手方との調整次第で適格請求書の発行方式が変わりますので、注意が必要です。
適格請求書写しの保存
インボイス制度施行後では、適格請求書を発行した場合、適格請求書の発行控えの保存が必要です。区分記載請求書等方式では、請求書の控え保存は求められていませんでしたが、控えの保存が必要になります。
適格請求書の控えは国税関係書類に該当しますので、法人税法上で求められる7年以上の保存が必要です。したがって、長期保存ができるように準備をする必要があります。
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買い手側の対応事項
買い手側も売り手側と同様にインボイス制度施行後、いくつか対応事項があります。買い手側の対応事項は以下の通りです。
- ●受領した適格請求書の事業者番号確認
- ●適格請求書の長期保存
受領した適格請求書の事業者番号確認
インボイス制度施行後、買い手側は受領した適格請求書上に記載のある事業者番号が適切なものであるか確認する必要があります。
インボイス制度において仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者により発行された適格請求書の保存が必要です。
したがって、受領した適格請求書が適格請求書発行事業者によって発行されたか物であるかどうか、国税庁が公表する事業者番号との比較検証作業を通じて確認する必要があるでしょう。
また、事業者番号の確認と同時に受領した適格請求書が一定の記載要件を満たしているかも確認が必要です。複数の請求書で要件を満たしている場合もありますので、複数帳票の確認業務が出る場合があります。
つまり、適格請求書の受領側の業務負荷が非常に増えると予想されているのです。
適格請求書の長期保存
適格請求書は国税関係書類に該当しますので、法人税法に基づいて7年以上の長期保存が必要です。また、電子で受領した適格請求書は電子帳簿保存法 電子取引要件に基づいて保存が求められています。
電子帳簿保存法 電子取引要件では大きく①可視性②真実性の要件を満たした保存を求めていますので、法要件を満たした保存ができるようにシステムを準備が必要です。
もし受領した電子請求書を電子帳簿保存法 電子取引要件に基づいて保存をしていなかった場合、青色申告の承認取り消しのリスクがありますので注意ください。
4.インボイス制度施行後、電子請求書活用などバックオフィスの効率化が必要
買い手側、売り手側のどちらから見たとしても、インボイス制度が施行後、バックオフィスの業務負荷は増えます。したがって、バックオフィスの人員を増やさない場合、業務効率を向上させる必要があるのです。
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インボイス制度が施行されるとバックオフィスの業務負荷は高まる
インボイス制度施行後、特に業務負荷が増えるのが買い手側の業務です。買い手側は取引先ごとに異なる、単数、複数の適格請求書に対して、一定の記載要件を満たしているか、適格請求書発行事業者によって発行されているかを確認していく必要があります。
もし、要件を満たしていない適格請求書を保存してしまえば、仕入税額控除が受けられませんので確実な対応が必要です。したがって、工数を割いて対応をする必要があり、業務負荷が上がると考えられています。
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効率化手段の一つとして電子請求書の活用がある
インボイス制度によるバックオフィスの業務負荷向上に対して、業務効率化を期待されているのが電子請求書の活用です。紙の適格請求書を電子でやり取りするだけでも、受領した請求書の開封、チェック、返送の手間を大きく効率化できます。
電子請求書であれば、OCRによる請求情報のデータ化や請求情報の会計システムへの自動連係など、業務効率向上を期待できるため、まずは電子請求書の活用がおすすめです。
また、デジタルインボイス(Peppol)を活用すると、目検でのチェック作業が大きく効率化される見込みですので、将来的に活用を検討してみてはいかがでしょうか。
5.まとめ
2023年10月にインボイス制度が施行されることでバックオフィス業務の負荷が増えます。
この負荷を懸念して、「今の仕事のやり方では経理業務が回らなくなるので、請求書などをやりとりするための共通の仕組みを作るべきだ」との考えで検討が始まっているのがPeppolです。
とはいえ、最初からPeppolの活用をするには敷居が高いと感じる企業様も多いようです。その場合にはまずバックオフィスの業務効率化ということで、電子請求書の活用、請求書のWeb配信などを検討してみるのはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。