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  • 2023.4.17 (月)
    Posted by 北森 雅雄

電子契約が利用できない契約とは?2022/5宅建業法改正を含め解説!

「電子契約化ができない契約書とは?」
「2022/5の宅建業法改正を踏まえて、結果何が電子契約化できないの?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

2022/5に宅建業法が改正され、電子契約化が可能な契約書が非常に増えました。しかし、一部の契約書では未だに書面契約が義務付けられていることから、「結局、どの契約書を電子契約化してよいのか」
と不安に思われる企業が多いようです。

そこで当記事では、電子契約を利用できない契約書、電子契約化できない理由、電子契約化する際の法的な注意点までご紹介します。

電子契約化する際の法的なポイントを理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
※本記事は執筆時点での内容になります。

また、電子契約の基本を知りたい方は、こちらの記事を読む前に以下の記事もあわせてごらんください。

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電子契約とは? メリット・デメリットや法的有効性をわかりやすく解説!

河野 冬樹

この記事の監修者:法律事務所アルシエン 河野冬樹(弁護士)

監修日:2022年12月27日
弁護士として、主にクリエイターの方をメイン顧客とし、著作権、フリーランス法務、エンターテイメント法務などを取り扱っております。

法律事務所アルシエン

1.すべての契約書を電子契約化できるわけではない

書面契約を電子契約化することで、例えば以下のようなメリットを受けられます。コストパフォーマンスが高いため、各企業で書面契約の電子契約化の検討が進んでいるようです。

  • ●印紙税の削減、書面契約の作成・郵送・管理コスト削減のようなコストメリット
  • ●契約のリードタイムの短縮 など

ただし、電子契約の活用が進む一方で、電子化ができない契約が一部ありますので、注意が必要です。法的に電子契約化ができない契約書を電子化し、原本である書面契約も破棄してしまった場合、原本を紛失したことになりますので、国税調査時に問題になります。

したがって、自社内の契約書の電子契約化を検討する際には、電子契約化できない契約書の確認は必ず必要になるのです。

2.電子契約は書面契約と同様に法的に有効

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基本的に電子契約は電子署名を付与すれば真正性を確保できますので、書面契約と同様に利用ができます。では、なぜ電子契約化できない契約が一部存在するのか順を追って解説します。

1
そもそも契約はいかなる形式でも成立する

民法522条2項の契約方式の自由にあるように、契約はいかなる形式でも成立します。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
出典:民法522条2項

つまり、口頭などの目に見えない形式であっても、契約は問題なく成立するのです。したがって、電子契約ももちろん法的に有効に成立しています。

しかし、ここで契約が成立することと、契約を係争時の証拠として利用できることは別問題である点に注意が必要です。民事訴訟法228条1項にあるように、係争時に証拠として利用するためには真正性を満たす必要があります。

1 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
出典:民事訴訟法228条1項

2
電子契約では真正性を確保するために電子署名の付与が必要

書面契約では真正性を満たすために記名押印を実施していました。では、電子契約ではどのように真正性をみたすのかというと、電子署名を付与することで真正性を確保します。

電子署名法3条にあるように電子署名が付与された電子文書は真正性を確保できるのです。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

出典:電子署名法3条

以上から、書面契約を電子契約化したとしても、電子署名を付与すれば、真正性を確保できます。したがって、基本的には、書面契約は電子契約化が可能なのです。

3
電子署名が付与してあれば立会人型の電子契約サービスを利用しても法的に有効

世界No1シェアの電子契約サービスDocuSign、日本No1シェアのクラウドサインが共に立会人型電子契約サービスであることから、多くの企業では立会人型電子契約サービスを利用することになると予想されます。

しかし、ここで「立会人型電子契約サービスを利用して電子契約を作成しても法的に問題ないのか?」と疑問に思われる担当者が多くいます。

なぜなら、立会人型電子契約サービスでは利用者に代わりサービス事業者が電子署名を付与する形式を取るからです。これは電子署名法3条に記載される「本人による電子署名」に反するとも考えられます。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:電子署名法3条

この当然の疑問に対して、2020/7に総務省・法務省・経済産業省の連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」が公表され回答を示しています。

結論、立会人型電子契約サービスを利用したとしても、法的に問題なく電子契約を作成できるのです。つまり、一般的に広く利用される立会人型電子契約サービスを利用したとしても、基本的に書面契約を電子契約化することは問題ないといえます。

3.一部の契約書では法的に書面契約を義務付けている

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電子契約に電子署名を付与すれば、基本的に書面契約を電子契約化することは問題ありません。ただし、一部の契約書は民法や民事訴訟法以外の個別の法律で書面契約を義務付けている場合があるため、電子化ができない契約が存在するのです。

1
2021/9にデジタル改革関連法が施行され電子契約化できる契約書が増えた

2021/9にデジタル改革が施行され、その中の取り組みの1つである「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」で「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」が実施されました。

この整備法による改正規定の内、公布から1年以内に施行することが公表されていた宅建業法などの施行が2022/5に実施されています。これにより、一部の契約書を除く大多数の契約書の電子契約化が可能になったのです。

実際に2022/5/18の改正法施行日には、クラウドサインを利用して宅地建物の売買・交換・賃借契約の電子契約を利用した取引第1号が生まれていると公表されています。

2
一部の契約書では引き続き書面契約での締結を求めている

大部分の契約書の電子契約化が可能になったとはいえ、一部の契約書では引き続き書面契約が法的に求められていますので注意が必要です。

現状(2022/9時点)で書面契約が法的に求められる契約は以下の通りです。

文書名 根拠法令 改正法施行予定
事業用定期借地契約

借地借家法23条

企業担保権の設定又は変更を目的とする契約

企業担保法3条

任意後見契約書

任意後見契約に関する法律3条

特定商取引(訪問販売等)の契約等書面

特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条

2023年6月

逆に言えば、電子契約化ができない契約を把握さえしておけば、それ以外は電子契約化が可能ですので、安心して電子契約サービスを活用できます。

4.電子契約化ができない理由

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現状、電子契約が利用できない契約が存在する理由は以下の2つです。

  • 理由①:公正証書化する必要があるため
  • 理由②:消費者保護のため

1
理由①:公正証書化する必要があるため

以下の契約は公正証書(書面)による契約締結が法的に義務付けられているため、電子化ができない契約です。

  • ●事業用定期借地契約
  • ●企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
  • ●任意後見契約書

公正証書とは、裁判官や検察官などを長年努めた選ばれた法律の専門家(公証人)が作成する公文書です。公正証書は原則的に書面での作成が求められています。

2
理由②:消費者保護のため

以下の契約は消費者保護の観点から書面交付をする必要があるため、電子化ができない契約です。

  • ●特定商取引(訪問販売等)の契約等書面

特定商取引とは具体的に以下の取引を指します。

  • ●訪問販売電話勧誘販売
  • ●連鎖販売取引
  • ●特定継続的役務提供
  • ●業務提供誘引販売取引
  • ●訪問購入

ただし、上記の特定商取引の電磁交付を認める法律は可決されており、2023/6より施行予定です。したがって、将来的には電子契約が利用可能になります。

5.一部の契約書は電子契約化可能であるが、事前承諾などの制約がある

以下の一部の契約書は電子契約化が可能ではありますが、事前承諾など制約があります。
電子契約化する際には事前対応が求められます。

文書名

根拠法令

必要な手続き

建設工事の請負契約書

建設業法19条3項、施行規則13条の2

承諾

設計受託契約・工事監理受託契約の重要事項説明書

建築士法24条の7第3項

承諾

設計受託契約・工事監理受託契約成立後の契約等書面

建築士法24条の8第2項

承諾

下請事業者に対して交付する「給付の内容」等記載書面

下請法3条2項

承諾

定期建物賃貸借契約の際の説明書面

借地借家法38条3項、同4項

承諾

宅地建物の売買・交換の媒介契約書

宅建業法34条2第11項、同12項

承諾

宅地建物の売買・交換の代理契約書

宅建業法34条3

承諾

宅地建物の売買・交換・賃借の際の重要事項説明書

宅建業法35条8項、同9項

承諾

宅地建物取引業者の交付書面

宅建業法37条4項、同5項

承諾

不動産特定共同事業契約書面

不動産特定共同事業法24条3項、25条3項

承諾

投資信託契約約款

投資信託及び投資法人に関する法律5条2項

承諾

貸金業法の契約締結前交付書面

貸金業法16条の2第4項

承諾

貸金業法の生命保険契約等に係る同意前の交付書面

貸金業法16条の3第2項

承諾

貸金業法の契約締結時交付書面

貸金業法17条7項

承諾

貸金業法の受取証書

貸金業法18条4項

承諾

割賦販売法の契約等書面

割賦販売法4条の2、割賦販売法35条の3の8・同条の3の9第1項、同3項

承諾

旅行契約の説明書面

旅行業法12条の4、12条の5、施行令1条等

承諾

労働条件通知書面

労働基準法15条1項、施行規則5条4項

希望

派遣労働者への就業条件明示書面

派遣法34条、施行規則26条1項2号

希望

金銭支払の受取証書

民法486条2項

請求

1
承諾が必要な理由例 - 建設請負工事契約など

相手方の事前承諾が必要な契約書の例として、建設工事請負契約があります。相手方に利用する電子契約の手段、内容などを事前に提示し、承諾を得られれば電子契約の利用ができるのです。

建設工事請負契約などは、契約金額が高額、かつ、契約の締結件数が多いため、電子契約化による印紙税の削減効果は非常に大きいです。事前承諾さえ取れれば、コスト削減効果が期待できますので、積極的に電子契約を利用してください。

2
相手方の希望が必要な理由令-労働条件契約など

相手方の希望が必要な契約書の例として、労働条件契約があります。相手方がFAXまたはメール、電子契約サービス等で契約書の交付を希望すると、電子上での交付が可能になります。

昨今では多くの労働者がスマートフォンやPCを保持していますので、相手方から書面を希望されるケースは少ないと想定されます。したがって、前向きに電子契約の活用を検討するとよいでしょう。

6.電子契約化する場合には法対応が必要

一部の電子化ができない契約を除き、大部分の契約書は電子契約化ができます。ただし、電子契約化する場合には、各種税法に基づいた保存が求められますので、電子化した以降も対応が求められるのです。

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電子契約は各種税法に基づいた保存が求められる

電子契約は電子とはいえ、契約書ですので、税法上の国税関係書類(正確には国税関係書類外の書類)に該当します。したがって、各種税法に基づいた保存が求められるのです。

例えば、以下の税法の要件を満たした保存が求められています。

  • ●電子帳簿保存法
  • ●法人税法

(1)電子帳簿保存法


電子契約は電子上で相手方とデータのやり取りをしますので、電子取引に該当します。したがって、電子帳簿保存法の中でも電子取引要件を満たした保存が必要です。電子取引要件は以下の通りです。

  • ●電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
  • ●見読可能装置の備付け等
  • ●検索機能の確保
  • ●真実性の確保

電子帳簿保存法電子取引要件は2022/1に改正され、電子取引に該当する国税関係書類は必ず電子データとして保存が必要になりました。2021/12以前までのように電子データを印刷して書面での保存が認められなくなったのです。

もし、電子取引要件を満たした形で電子データを保存していない旨が国税調査時に指摘された場合、青色申告の承認取り消しなどリスクがありますので必ず対応をしましょう。

(2)法人税法

電子契約は法人税法上で7年間(繰越欠損金がある場合は10年間)の保存が必要です。電子帳簿保存法電子取引要件を顧みると、サーバー上で電子データの長期保存が求められています。

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各種法律に簡単に対応するには電子契約サービスの活用がおすすめ

電子帳簿保存法や法人税法で求められる要件を自社のファイルサーバー上などで満たすのは理論的には可能です。

ただし、ファイルサーバー上で取引年月日や取引先別にフォルダを分ける、事務処理規定を作成するなどの工数が発生するため、ある程度規模の大きい企業であると、対応が難しいのが現実のようです。

この点、電子契約サービスであれば、システム上で主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)による検索や、タイプスタンプの付与などができるシステムが多数ですので、容易に法対応ができます。

もし、法対応に時間をかけず、かつ、ある程度確実に実施するのであれば、電子契約サービスの活用が効率的といえるでしょう。

7.まとめ 電子契約サービスを導入して契約業務を効率化しよう!

電子契約の活用により、コスト削減やリードタイム短縮などのメリットがあります。ただし、電子化できない契約が一部ありますので注意が必要です。

とはいえ、電子化できない契約は現状数少ないですので、電子化できない契約を把握さえすれば、安心して電子契約を活用できます。

電子化できない契約を把握したうえで、社内の契約業務の電子化、効率化を目指していきましょう。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori

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