電子契約サービス導入の4つのメリットとは?確実に抑えたいリスクも解説!
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2023.4.17 (月)Posted by 北森 雅雄
電子契約サービスについて、導入するメリットやリスクについて、気になっている方も多いのではないでしょうか。
電子契約サービスを導入することで、契約業務にかかるコストの削減や取引のリードタイムを大幅に削減できます。一方で、電子契約化が法的にできない契約書や電子帳簿保存法など対応が求められる各種税法がありますので、導入前に確認が必要です。
そこで当記事では、なぜそもそも電子契約サービスを利用するべきなのか、電子契約サービスを利用するメリット、リスクについて解説します。
電子契約サービスのメリットとリスクの概要を把握できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
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目次:
1.導入が進む電子契約の利用企業は全体の69.7%
日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(ITR)が公表した「企業IT利活用動向調査2022」によると、2022/1段階でアンケート回答者の69.7%が何らかの形式で電子契約を利用しているそうです。
2020/1の調査時には67.2%の企業が電子契約を利用していたことから、電子契約の利用者が着実に増えていることがわかります。まさに電子契約の導入による契約業務DXは世の中の潮流といえるでしょう。
2.電子契約を活用するのであれば電子契約サービスの導入がおすすめ
電子契約を利用する方法は大きく以下2通りがあります。
- ●ExcelやWordなど、既に保持しているツールで電子契約を作成する。
- ●電子契約サービスを利用して電子契約を作成する。
いずれの方法でも電子契約の利用は可能ですが、電子契約のメリットの最大化および法対応の厳格さを求めるのであれば、電子契約サービスの利用がおすすめです。
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電子契約はExcelなどでも作成ができる
電子契約サービスを活用しなくても、既にお持ちのExcelやWordなどのツールを利用すれば電子契約の作成ができます。この場合、電子証明書を準備し、各ツール上の電子署名機能を利用することで電子契約の作成が可能です。
ただし、電子契約は電子とはいえ、契約書であるので、各種税法に基づいた保存が必要である点に注意が必要です。例えば、以下のような電子帳簿保存法 電子取引要件に基づいた保存が求められます。
- ●電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
- ●見読可能装置の備付け等
- ●検索機能の確保
- ●真実性の確保
上述の要件をExcelなどのツールで満たすことは理論上、可能です。しかし、Excelなどで作成した電子契約で上述の要件に対応するのは、ある程度規模の大きい企業ほど、現実的でないと判断しています。
例えば、検索機能の確保をするために、取引先別、取引年月日別にフォルダを整理し、かつ、電子取引に利用したファイルに対してExcelなどを利用してリスト化する業務が求められます。
しかし、取引するファイル数が多ければ工数が非常にかかるため、現実的でないと予想ができるでしょう。
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電子契約のメリット最大化、法対応の容易化を踏まえると電子契約サービスの導入がおすすめ
一方で、電子契約サービスであれば、システム上に各種法対応ができるだけの機能が搭載されている場合が多いです。したがって、電子契約サービスであれば、ある程度確実に、かつ、容易に法対応ができます。
また、電子契約サービス上には契約書のテンプレート登録やワークフローなど、契約業務を効率化する機能が搭載されていますので、電子契約を利用するメリットを最大化できる点もメリットです。
したがって、電子契約を利用するのであれば、電子契約サービスの活用がおすすめと言えるでしょう。
3.電子契約サービスを導入すると4つのメリットがある
電子契約サービスを導入することで、電子契約活用のメリットを最大化できます。電子契約サービス導入による主なメリットは以下の4つです。
- メリット①:契約業務にかかるコストの85%削減することも可能
- メリット②:契約業務を1日で完結することも可能
- メリット③:法対応が容易にできる
- メリット④:外部サービス連携により更に契約業務の効率化できる
メリット①契約業務にかかるコストの85%削減することも可能
電子契約サービスを導入することにより以下のコストを削減できます。
- ●印紙税が非課税
- ●書面契約の作成・郵送・管理コストの削減
- ●検索コストの削減 など
国内No1シェアのクラウドサインが提供するデータによると、電子契約サービス導入により契約業務を効率化することで、契約業務にかかるコストの85%を削減できるそうです。コストの削減ロジックは以下の通りです。
電子契約では印紙税の削減が可能
書面契約では契約文中の契約金額により、印紙税が課税されます。一方で電子契約では印紙税が非課税であるので、印紙税分だけコスト削減が可能です。
では、なぜ電子契約が非課税かというと、電子契約が「課税文書」に該当しないからです。法律的に詳細に解説すると、印紙税法では、そもそも「課税文書」に対して印紙税を課税しています。
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
出所:印紙税法3条
ここで「課税文書」とは具体的に何かというと、「用紙」、つまり、「紙」を示しています。
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
出所:印紙税法44条
したがって、電子契約は紙ではありませんので、課税文書に該当しないため、非課税です。特に不動産売買契約や建設工事請負契約など、契約金額が大きな契約ほど、電子契約化したときの印紙税の非課税効果を受けられるでしょう。
契約業務の効率化により人的コストの削減が可能
書面契約では、契約書の作成、相手方への郵送、返送された書面契約の保存をすべて人が直接契約書を見て実施するため、人的コストがかかります。
一方で、多くの電子契約サービスでは以下の機能が搭載されていますので、契約業務の効率化を期待できます。したがって、電子契約サービスを利用することで人的コストの削減を期待できるのです。
- ●契約書の作成:契約書のテンプレート登録、社内稟議のためのワークフロー機能 など
- ●契約書の送付:一括送信、契約締結用のURL送付機能 など
- ●契約書の保管:書面契約の電子化保存、関連文書保存 など
検索業務の効率化により管理コストの削減が可能
契約書は法人税法上で7年以上の保存が義務付けられていますので、年月とともに文書が溜ります。したがって、数年後には特定の書面契約を探すだけで、思いがけない工数を取られる点が課題です。
この点、多くの電子契約サービスでは電子契約に検索用の属性情報(契約年月日、契約先名、契約金額など)を付与できますので、容易に特定の電子契約を検索できます。
したがって、電子契約サービスを利用することで、契約書の管理コストを削減することが可能になるのです。
メリット②契約業務を1日で完結することも可能
書面契約の場合、契約締結するまでに2~3週間かかる場合も珍しくありません。この点、電子契約サービスを活用することで、最短1日で契約業務を完了することが可能です。
相手方はブラウザ上で署名ボタンを押すだけで対応が可能
立会人型の電子契約サービスを利用する場合、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するのみで、自社は契約書の送付を完了できます。
相手方は受領したメール記載のURLをクリックし、契約書の内容を確認の上、内容に問題がなければ、電子署名ボタンを押すのみで契約締結を完了できます。
多くの立会人型電子契約サービスでは、相手方は電子契約利用時にアカウントの登録が不要であるため、相手方にコストと負担をかけることなく利用できる点もメリットでしょう。
自社内の契約業務を効率化し、リードタイム短縮に貢献可能
また、電子契約サービスの中にはワークフロー機能を搭載しているものがあり、ワークフローを利用することで社内稟議の効率化を図れます。
社内での稟議が遅いばかりに契約締結までのリードタイムが長期化することを避けられる点もメリットです。
メリット③
法対応が容易にできる
電子契約は税法上の国税関係書類に該当しますので、各種税法に基づいた保存が必要です。例えば、以下の税法に対応して保存要件を満たす必要があるでしょう。
電子帳簿保存法に対応可能
電子契約は相手方とデータのやり取りをしますので、電子取引に該当します。したがって、電子帳簿保存法の中でも電子取引要件を満たした保存が必要です。電子取引要件の中でシステムに求められる要件は以下の通りです。
- ●検索機能の確保
- ●真実性の確保
検索機能の確保については、多くの電子契約サービス上で電子契約に属性情報として主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)を付与できますので、対応が可能です。
また、真実性の確保についても、タイムスタンプを付与できる電子契約サービスが一般的ですので、対応できます。
したがって、電子帳簿保存法電子取引要件への対応を簡単に済ませたいのであれば、電子契約サービスの活用がおすすめです。
法人税法に対応可能
国税関係書類である電子契約は法人税法上で7年間(繰越欠損金がある場合は10年間)の保存が必要です。
2022/1に改正された電子帳簿保存法では、電子取引に該当する電子文書はかならず電子上で保存が必要になりました。したがって、電子取引に該当する電子契約を長期保存する際には、システム上に保存する必要があります。
この点、電子契約サービスの中には、長期署名(電子署名+タイムスタンプ)を付与可能なサービスもありますので、法的効力を維持しつつ、長期保存をすることができる点がメリットです。
メリット④外部サービス連携により更に契約業務の効率化ができる
2022/1に施行された改正電子帳簿保存法による紙保存措置の廃止、2023/9施行予定のインボイス制度による請求業務DXの必要性を考えると、業務効率化、法対応の確実化の観点から、電子文書の一元管理が求められます。
この点、電子契約サービスの中にはWebAPI機能を搭載しているサービスも多いため、文書管理ツールやERP、CRMなどとデータ連携することで、電子文書の一元管理を実現可能です。
例えば、以下のようなデータ連携を実現している例があります。
- ●CRMから顧客情報を電子契約サービスに連携し、契約書を自動作成
- ●契約締結後、電子契約サービスから署名済み契約書を文書管理ツールに自動連係
- ●文書管理ツール上に請求書配信システムなど他システムからも電子文書を自動連係
- ●文書管理ツール上で電子文書の一元管理、法対応の確実化を実現
4.導入時に確実に抑えたいリスク・デメリットが3つある
導入メリットの大きい電子契約サービスですが、一部導入時に注意したいリスク・デメリットがあります。注意したいリスクは以下の3つです。
- リスク①:法対応の不備で国税から指摘を受ける
- リスク②:契約締結時になりすまし被害を受ける
- リスク③:電子契約化してはいけない契約書を電子化する
リスク①法対応の不備で国税から指摘を受ける
2022/1に施行された改正電子帳簿保存法では、電子契約を含む電子取引に該当する文書は電子文書として保存することを義務付けています。
2021/12以前は電子取引をした文書であっても、書面に印刷して保存すれば、問題ありませんでしたが、2022/1以降は電子保存が必須になっている点に注意が必要です。
もし、要件を満たして保存をしていない旨が国税調査時にしてきされた場合、青色申告の承認取り消しなどリスクがありますので必ず対応をしましょう。
令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存をもって、当該電磁的記録の保存に代えることはできません。したがって、災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。
なお、2021/12に公表された税制大綱上で宥恕(ゆうじょ)措置が公表されている点に留意してください。この宥恕措置により電子取引要件の紙保存措置廃止は2024/1以降から厳格に適用されることが公表されています。
宥恕措置があるとはいえ、電子取引した文書は原則、電子保存する必要がある点には代わりがありませんので、早期から電子取引要件対応をしておきましょう。
リスク②契約締結時になりすまし被害を受ける
契約締結用のURLが記載されたメールを契約と関係ないアドレスに送付させられる、正しいアドレスに送付しているがアドレスに不正ログインされているなどのケースの場合、なりすまし署名のリスクがあります。
なりすまし署名をされた場合、契約そのものの成立を疑われかねませんので対応が必要です。最も簡単、かつ、効果的に対応する方法は二要素認証機能のある電子契約サービスを利用することです。
政府が立会人型電子契約サービスの固有性(本人性をより厳格に担保する要件)を満たすために、二要素認証を推奨していることからも、電子契約サービス選びをする際には二要素認証機能があるかがポイントになります。
リスク③電子契約化してはいけない契約書を電子化する
2021/9にデジタル改革関連法が施行され、2022/5には現存する大部分の契約書の電子契約化が可能になりました。しかし、一部の契約書では引き続き書面契約を義務付けているため、注意が必要です。
現状、書面契約が義務付けられている契約は以下の通りです。
文書名 |
根拠法令 |
改正法施行予定 |
事業用定期借地契約 |
借地借家法23条 |
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企業担保権の設定又は変更を目的とする契約 |
企業担保法3条 |
- |
任意後見契約書 |
任意後見契約に関する法律3条 |
- |
特定商取引(訪問販売等)の契約等書面 |
特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条 |
2023年6月 |
逆に言えば、上記の電子契約化できない契約を抑えていれば、それ以外の契約書は電子契約化できますので、上記の契約は一読しておくとよいです。
5.まとめ 電子契約サービスを活用して契約業務を効率化しよう!
電子契約サービスを利用することでコストの削減やリードタイムの短縮など、多数のメリットを見込めます。一方で、国税調査時に指摘を受ける、電子契約化してはいけない契約書が存在するなどのリスク・デメリットもありますので、事前に確認が必要です。
基本的にメリットがデメリットを大きく勝りますので、電子契約サービスの導入を前向きに検討して契約業務の効率化を目指しましょう!
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。
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