不動産売買契約はいつから電子契約化できる?宅建業法改正を含めて解説!
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2023.4.17 (月)Posted by 北森 雅雄
不動産業界にお勤めの方は、不動産の売買契約はいつから電子契約化できるについて、興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そもそも、既に電子契約を利用しても良いかどうか、気になってる方もいることでしょう。
2022/5施行の改正宅建業法により、大多数の契約書の電子契約化が可能になりました。これにより不動産業界におけるDX推進が加速すると想定されます。したがって、業務効率化の側面から競合に出遅れないためにも、早期の電子契約対応が求められるでしょう。
そこで当記事では、不動産に関連する契約書の電子契約可否、法改正のチェックポイントまで解説します。
不動産業界にいるのであれば電子契約活用を推進すべき理由がわかる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
また、電子契約の基本を知りたい方は、こちらの記事を読む前に以下の記事もあわせてごらんください。
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目次:
1.導入が進む電子契約の利用企業は全体の69.7%
2022/5施行の改正宅建業法により、不動産業界における契約業務の効率化が推進される見込みです。契約業務の効率化をしなければ、業務効率の観点から競合に水を空けられることになりますので、早期に契約業務DXが必要になります。
以下では不動産業界における契約業務DXが求められる理由を解説します。
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書面契約の電子契約化を希望する借主・貸主が多く存在した
宅建業法の改正以前まで、以下のような契約書の電子契約化ができないために、対面での契約締結が必要でした。
- ●媒介契約書
- ●重要事項説明書
- ●賃貸借契約書
- ●売買契約書
- ●定期借地権設定契約書
- ●定期建物賃貸借契約書 など
しかし、2020年前半から流行している新型コロナウイルスによる外出自粛の流れもあり、電子契約による契約締結を求める声も少なからず存在したのです。
不動産DXを推進するイタンジ株式会社による「賃貸借契約における電子契約の利用意向」についてのアンケート結果によれば、賃貸入居の契約時に「電子契約を選択したい」と回答したユーザーが73%程度存在したことがわかっています。
このアンケート結果から読み取れるように、電子契約による契約締結が世間的に望まれていたのです。
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デジタル改革関連法に宅建業法改正が盛り込まれた
上述のような電子契約に対する要望を踏まえて、2021/9にデジタル改革関連法の中で「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」が盛り込まれました。この「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」の中で宅建業法の改正が盛り込まれたわけです。
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改正宅建業法により大多数の契約書の電子契約化が可能になった
改正法により、大多数の契約書が不動産業界で電子契約化が可能になっています。特に不動産取引においてかかせない以下の書類の電子契約化が認められたことで、不動産取引の円滑化が見込まれているのです。
- ●重要事項説明書(通称、35条書面)
- ●宅地建物の売買・交換・賃貸借契約等締結後の交付書面(通称、37条書面)
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2022/5には不動産売買取引を電子契約で実施した事例が誕生している
実際に、改正宅建業法が施行された2022/5/18の0時0分には、電子契約を利用した不動産取引の一号事例が誕生しています。
弁護士ドットコム社が提供するクラウドサインを利用して、区分所有マンションの個人取引において、不動産売買契約書、および、37条書面の電子契約締結が実施されているのです。
この事例からも分かる通り、これまで対面対応が多く、取引のリードタイムの長さや工数負荷の高さが課題であった不動産取引が大きく効率化されていくことが予想されます。
すでにタマホーム株式会社や伊藤忠リート・マネジメント株式会社など名だたる企業が電子契約の導入を完了しています。
したがって、多数の企業が不動産業における契約業務DXに着手し始めていることから、電子契約の導入に着手するのであれば、まさに今という状況です。
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一部の契約書は引き続き書面契約が必要であるので注意が必要
多くの書面契約が電子化可能になったとはいえ、一部の契約では書面契約での締結を引き続き要求しているため、注意が必要です。書面契約での契約締結を求めている契約は以下の通りです。
文書名
根拠法令
改正法施行予定
事業用定期借地契約
借地借家法23条
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企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
企業担保法3条
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任意後見契約書
任意後見契約に関する法律3条
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特定商取引(訪問販売等)の契約等書面
特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条
2023年6月
書面契約による契約締結が求められている契約の一部は不動産業でも扱う可能性のある契約書ですので、確認しておきましょう。
逆に言ってしまえば、上記以外の契約書の電子契約化は認められている状況ですので、一部の契約書以外は積極的に電子契化していくことをおすすめします。
2.改正宅建業法のチェックポイント
今回改正された宅建業法のチェックポイントは大きく以下の2点です。
- ●押印義務廃止
- ●書面の電子契約化が可能
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押印義務廃止
改正前までは宅地建物取引士により以下の書類に対する記名・押印が必要でした。
- 1.重要事項説明書
- 2.宅地・建物の売買、交換、賃貸契約締結時に交付する書面
改正後、上記書面に対して押印の義務が廃止されています。それぞれの書類について詳細に見ていきましょう。
重要事項説明書への押印義務廃止
宅建業者は物件の売買、交換、賃貸契約が完了するまでの間に、宅地建物取引士から書面交付をして取引上の重要事項を説明する義務があります。
重要事項とは、取引物件に関する都市施設の整備状況、権利関係、取引条件など、相手方に最低限説明しなければならない事項が法律上に規定されているものです。
この重要事項について記載した書面を重要事項説明書と呼んでいます。宅建業法の改正前までは、重要事項説明書上に記名押印が必要でしたが、改正以降は押印が不要になりました。
宅地・建物の売買、交換、賃貸契約締結時に交付する書面への押印義務廃止
宅建業者は売買などの契約がなされた場合、代金または賃借の額や支払方法などを契約書上に記載して書面で交付する義務があります。
この書面が通称37条書面と呼ばれるものです。宅地建物取引士が契約当事者に契約書を交付する形式で実施されます。改正以前は37条書面へ記名押印が必要でしたが、一方で、改正後は押印が不要になりました。
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書面の電子契約化が可能
改正前まで、以下の書面交付が義務付けられていました。
- ●指定流通機構(レインズ)に登録時の交付書面
- ●重要事項説明書
- ●37条書面
- ●媒介契約・代理契約時の交付書面
改正後は電磁的方法による交付が認められています。上記のいずれの書面においても、電磁的方法による交付をする場合は相手方から承諾を得る必要がありますので、留意ください。
媒介契約・代理契約時に電磁交付ができるようになった
媒介・代理契約を締結した場合、契約の相手方に対して希望する取引金額、報酬などを契約書上に記載し、記名押印した媒介・代理契約書面を交付する必要がありました。
宅建業法の改正以前は、媒介・代理契約書は書面による交付のみ認められていましたが、改正以降は電磁的方法による交付も認められることになっています。
レインズ登録時に電磁交付ができるようになった
宅地・建物の売買・交換に対して専任媒介契約を締結した宅建業者は、国土交通省が定める期間内に、物件の所在地、規模、形質、価額などを指定流通機構(レインズ)に登録した後、相手方に登録証明書を書面で交付する義務があります。
このレインズに登録したことを証明する書面についても、2022/5以降は電磁的方法による交付も認められることになっています。
重要事項説明書の電磁交付ができるようになった
上述した通り、宅建業者は売買、交換、賃借契約等の相手方に対して契約が成立する以前に重要事項説明書を書面で交付する必要があります。
この書面交付について、改正後は重要事項説明書についても電磁的な方法により交付が可能になっています。
37条書面の電磁交付ができるようになった
上述した通り、宅建業者は売買、交換、賃借契約が締結された場合、相手方に37条書面を書面で交付する義務があります。
この書面交付について、改正後は37条書面についても電磁的な方法により交付が可能になっています。
3.不動産に関連する契約書を電子契約化するメリット
宅建業法改正により書面契約を電子契約化できるようになったことで、実務上に大きなメリットがあります。電子契約サービスを利用して電子契約を作成した場合、特に大きなメリットは以下の2点です。
- ●契約業務の85%程度のコストを削減できる場合がある
- ●契約締結までのリードタイムを最短で1日に短縮できる
1契約業務の85%程度のコストを削減できる場合がある
不動産業の実務で電子契約サービスを利用することで以下のコスト削減効果があります。
- ●高額な印紙税の削減
- ●37条書面など書面契約の作成・郵送・管理コストの削減 など
国内No1シェアのクラウドサインによれば、電子契約サービスを導入することで契約業務上における発生コストの85%を削減できるそうです。このデータからもわかるとおり、電子契約サービス導入によるコスト削減効果は非常に大きいと言えるでしょう。
2契約締結までのリードタイムを最短で1日に短縮できる
2021/3にIT重説が解禁されたことに加え、2021/5の宅建業法改正により重要事項説明や37条書面などが電子契約化可能になったため、不動産取引のほぼすべての作業をシステム上で完結できるようになりました。
また、立会人型の電子契約サービスを利用すれば、契約締結用URLが記載されたメールを相手方に送付するのみで、契約締結が完了できますので、早ければ1日以内に契約業務を完結できる点が大きなメリットです。
4.不動産に関連する契約書を電子契約化するデメリット
不動産売買契約を電子契約化することで、コスト削減やリードタイムの短縮を見込めます。しかし、一部導入によるリスクやデメリットがありますので、注意が必要です。
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電子帳簿保存法対応が必要
電子契約を利用する場合、電子帳簿保存法電子取引要件を満たした保存をする必要があります。
書面契約であれば、法人税法上で求められる7年間保存すればよかった
書面契約であれば、法人税法上で保存が求められる7年間の保存(繰越欠損金がある場合は10年)をすれば、問題ありませんでした。一方で、電子契約の場合は7年間の保存に加えて、電子帳簿保存法の要件を満たした保存をせねばならない点がデメリットです。
電子帳簿保存法の要件を満たして保存しないとペナルティが課される場合もある
電子帳簿保存法とは電子的に帳簿や書類を保存してもよいと認めた法律です。この電子帳簿保存法が2022/1に改正されています。この改正により、電子契約を含む、電子取引に該当するデータは必ずデータとして、要件を満たした状態での保存が義務化されました。
もし、電子契約に対して要件を満たしたデータとして保存していない旨が国税庁から指摘された場合、青色申告の承認取り消しなどリスクがありますので必ず対応が必要です。
最も容易に、かつ、ある程度確実に電子帳簿保存法対応をする方法は、電子契約サービスを利用する方法です。電子契約サービスであれば、各種法律へ対応するための機能を搭載している場合が多いので、システム選定の際に確認をおすすめします。
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なりすましや電子署名の有効期限切れリスクに対応が必要
不動産売買契約を電子契約化し、電子署名を付与したからといって、必ずしも真正性を満たせるわけではない点に注意が必要です。電子契約を利用する場合、潜在的に以下のリスクがあるため、リスク対応を検討する必要があります。
- ●なりすましのリスク
- ●電子署名の有効期限切れのリスク
なりすましのリスク
多くの企業が利用している立会人型の電子契約サービスの場合、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付します。この時、送付先のメールアドレスが乗っ取られた際、契約締結権限のない第三者が電子署名をしてしまうリスクがあります。
このリスクがなりすましのリスクです。なりすましにより、電子署名が付与された場合、契約者本人による電子署名ではありませんので、真正性が証明できなくなります。
このなりすましのリスクに対応するためには、二要素認証機能などを利用するとよいです。システム選定の際にはなりすましリスクへの対応可否が1つのシステム選定基準となるでしょう。
電子署名の有効期限切れのリスク
電子契約は電子署名が付与されることで、本人性と非改ざん性を証明できます。しかし、昨今の技術革新は早いので、電子署名の技術が破られ、知らぬ間に改ざんされてしまう可能性があります。このリスクがアルゴリズムの危殆化リスクです。
この危殆化のリスクに対応すべく、電子署名法施行規則第6条4項では電子署名(正確には電子証明書)に5年間の有効期限を設けています。
四 電子証明書の有効期間は、五年を超えないものであること。
つまり、電子契約に電子署名を付与したとしても5年で有効期限が切れてしまうのです。この有効期限を延長するためには、電子署名に対してタイムスタンプを付与する、長期署名を付与する必要があります。
したがって、電子署名の危殆化リスクに対応するために、電子署名に対して定期的に長期署名をしていく必要があるため注意が必要です。
5.まとめ 電子契約サービスを活用し不動産業務を効率化しよう!
不動産取引をほぼすべて電子上で実施できるようになったため、今後ますます不動産業における契約業務DXが進むと予想されています。
2021/7に一般社団法人不動産テック協会がまとめた「不動産業界におけるDX推進状況調査」によれば、不動産事業者のDX推進度合いは2020年比で1.5倍、電子契約導入済みまたは導入意向ありの企業が64%でした。
この数値からも分かる通り、不動産業界における契約業務のDX推進の流れは大きな潮流です。この機会にぜひ自社の契約業務の効率化を推進するとよいでしょう。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。
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