【2023年更新】電子契約とは? メリット・デメリットや法的有効性をわかりやすく解説!
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2023.4.17 (月)Posted by 北森 雅雄
電子契約について、そもそもどういったものなのか、法的な有効性などを知りたい方は多いと思います。
書面での契約と同じように、電子契約を利用することで法的にも契約行為を行うことが可能です。
単純に契約の方法が変わるだけでなく、電子契約を利用することで、契約業務にかかる稼働削減、収入印紙や郵送費などの費用の削減、契約締結までにかかる時間の即日化が可能などメリットがあります。
一方で、電子帳簿保存法など、税法対応が必要、すべての契約書を電子契約化できないなど、一部導入時に注意点がありますので注意が必要です。
そこで当記事では、電子契約の概要や、電子契約の法的有効性、電子契約を利用するメリット・デメリット、導入時の注意点までを解説します。
電子契約に対する全般的な理解を深められる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
この記事の監修者:法律事務所アルシエン 河野冬樹(弁護士)
監修日:2022年12月27日
弁護士として、主にクリエイターの方をメイン顧客とし、著作権、フリーランス法務、エンターテイメント法務などを取り扱っております。
1.電子契約とは何か
電子契約とは電磁的に締結する契約です。公益社団法人 日本文書マネジメント協会(JIIMA)による電子契約の定義は以下の通りです。
電子的に作成した契約書を、インターネットなどの通信回線を用いて契約の相手方へ開示し、契約内容への合意の意思表示として、契約当事者の電子署名を付与することにより契約の締結を行うもの。
出所:電子契約活用ガイドライン
1
2022年時点で70%程度が電子契約を利用している(2023年更新情報あり)
2020年初頭より流行している新型コロナウイルスを契機に、リモートワークが推進されています。リモートワークを推進するにあたり、契約業務DXが求められた背景があり、電子契約の導入が進んでるのです。
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)による、「 企業IT利活用同行調査」によれば、2022年1月時点で69.7%のユーザーが何かしらの利用方法で電子契約を利用しています。
2020年1月時点で43.3%のユーザが利用していましたので、2022年は2020年比で1.6倍の利用率です。リモートワークが定着化しつつある中で、更に電子契約の利用は進んでいくと想定されています。
※2023年1月時点での、2023年版の「 企業IT利活用同行調査」によると、74%のユーザが何らかの利用方法で電子契約を利用している結果がでています。2022年度とくらべ、徐々に世の中に電子契約が広がってることがわかります。
2
デジタル改革関連法施行によりほぼ全ての契約の電子化が可能 更に電子契約の活用が進む見込み
2021年9月には社会課題を解決するためにデータ活用を促進することを目的とした、デジタル改革関連法が施行されました。この法律の中で、これまで書面契約が義務付けられていた契約の電子契約化が認められたのです。
実際に2022年5月には宅建業法が改正され、これまで書面契約が義務付けられていた重要事項説明書や37条書面の電子契約化が解禁されています。このように電子契約の活用を後押しする法律改正もあり、今後更に電子契約の活用が推進されると見込まれているのです。
2.電子契約は法的に有効なのか
最もよく質問される疑問として、「電子契約は法的に有効であるのか」というものがあります。結論、法的に有効であり、書面契約と同様に利用することができるのです。以下では、法的に有効である理由を解説します。
1
電子契約は法的に有効に成立する
契約自体は民法522条2項の契約方式の自由により、いかなる形式でも成立します。したがって、電子契約は法的に有効に成立しているのです。
しかし、ここで電子契約が法的に成立していることと、万が一、裁判になった場合に電子契約を証拠として利用できることは別問題である点に注意してください。
2
電子契約を係争時の証拠として利用することは可能
電子契約を裁判の際の証拠として利用するためには、民事訴訟法228条1項にあるように真正性を満たす必要があります。
1 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
出所:民事訴訟法228条1項
書面契約の場合、契約書上に記名押印することで、二段の推定が働き、真正性を満たすことが可能です。一方で、電子契約は電子署名を付与することで、電子署名法3条により、真正性を満たします。
したがって、電子署名が付与された電子契約であれば、記名押印された書面契約と同様に真正に成立していると推定され、裁判時の証拠として利用ができるのです。
3
電子署名の付与の仕方により電子契約サービスは2タイプある
電子契約を利用する場合、一般的には電子契約サービスを利用する場合が多いようです。電子契約サービスには以下の2タイプがあります。
- ●当事者型
- ●立会人型
当事者型は利用者自身が電子証明書を発行し、電子署名を付与するタイプの電子契約サービスです。利用者自身が電子署名を付与するため、立会人型と比較して、電子契約の証拠性が高いとも考えられています。
一方で、立会人型は、利用者自身は電子証明書を発行せず、事業者が代理で電子署名を付与するタイプの電子契約サービスです。利用者自身が電子証明書を発行しないため、コストと手間をかけることなく、電子契約の利用が開始できる点にメリットがあります。
国内で高いシェアを誇っているのがクラウドサインや電子印鑑GMOサインなどの立会人型電子契約サービスであることを踏まえると、一般的に利用されやすいのは立会人型電子契約サービスのようです。
自社の要件に適した電子契約サービスのタイプを選択してご利用ください。
1
立会人型電子契約サービスにより電子契約を作成しても法的に問題ない
電子署名の定義は電子署名法2条に以下のように定義があります。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
出所:電子署名法2条
上述のように、電子署名の定義の1つとして、本人性を満たす必要があるのです。一方で、立会人型電子契約サービスは事業者が代理して、電子署名を付与しますので、「本人性の要件を満たしていないため、電子署名の定義から外れるのでは?」と疑問が生じます。
この当然の疑問に対して、2020年7月に総務省・法務省・経済産業省の連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」が公表されています。
上記の公表の中で、立会人型電子契約サービスを利用しても、固有性を満たしているのであれば、問題なく真正性を満たせられると回答されているのです。したがって、電子契約締結の際に、立会人型電子契約サービスを利用しても法的に問題ありません。
3.電子契約サービスを利用する2つのメリット
法的に問題なく利用できる電子契約ですが、電子契約サービスを利用することで、電子契約を利用するメリットを最大化できます。電子契約サービスを利用するメリットは以下の2点です。
- ●契約にかかるコストの75%程度を削減可能
- ●契約締結までのリードタイムを即日まで短縮可能
1
契約にかかるコストの75%程度を削減可能
電子契約サービスを利用することで以下のコスト削減を見込めます。
- ●印紙税が非課税
- ●書面契約書の作成・郵送・管理コストの削減
- ●契約締結後の検索・監査コストの削減 など
印紙税が非課税
そもそも、印紙税は”課税文書”に対して課税されます。
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
出所:印紙税法3条
”課税文書”とは”紙”を指すため、電子契約に対して印紙税は非課税なのです。
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載しこれを当該文書の目的に従って行使することをいう。
出所:印紙税法基本通達44条
印紙税は契約書上の契約金額に応じて、課税金額が決まりますので、不動産売買契約や建設工事請負契約など、契約金額が大きくなりがちな業界・業種の企業ほど電子契約を利用するコストメリットは大きいといえます。
クラウドサインでは75%のコスト削減事例がある
印紙税が非課税なことに加えて、書面契約を電子契約化することで大きなコスト削減を実現可能です。
国内で導入数No1の電子契約サービス クラウドサインが提供するデータによれば、クラウドサインを導入することで、契約業務にかかるコストの75%を削減可能なようです。
このデータからも明らかなように、電子契約サービス導入によるコスト削減効果は大きいといえるでしょう。
2
契約締結までのリードタイムを即日まで短縮可能
書面契約を利用して契約締結する場合、以下のフローを取る場合が多いです。
- 1,自社で契約書を作成・記名押印・封入封緘
- 2,相手方へ郵送
- 3,相手方で内容を確認し、記名押印
- 4,自社へ記名押印済みの契約書を返送
- 5,自社で内容を確認し、内容不備がないか確認。不備がある場合は修正依頼を相手方に実施。
上記のフローを取る場合、2-3週間程度のリードタイムが発生することが多いようです。
一方で、立会人型の電子契約サービスを利用する場合、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付することで、契約締結を完了できますので、リードタイムの短縮化を期待できます。
4.利用時の注意点
導入メリットが大きい電子契約ですが、一部導入時に注意すべき事項があります。
1
電子帳簿保存法など税法対応をする必要がある
電子契約は国税関係書類に該当しますので、各種税法に基づいた保存が必要です。仮に各種税法の要件に基づいた保存をしていない旨を国税調査時などで指摘された場合、青色申告の承認取り消しなどのリスクがありますので、確実な対応が必要です。
電子帳簿保存法対応が必要
電子上で帳票をやり取りする電子契約は”電子取引”に該当します。したがって、電子帳簿保存法の電子取引要件を満たした保存が必要です。電子取引要件では以下を満たした保存が求められます。
- ●電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
- ●見読可能装置の備付け等
- ●検索機能の確保
- ●真実性の確保
電子契約サービスの中には、上記要件を満たすための機能を搭載している場合があります。したがって、システム上で例えば以下の機能を利用できるかを確認するとよいでしょう。
- ●主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)による検索
- ●範囲、複数条件検索
- ●タイムスタンプの付与 など
法人税法対応が必要
電子契約は法人税法上で7年間(繰越欠損金がある場合は10年間)の保存義務があります。電子契約サービスの中には、法人税法に対応した例えば以下機能を搭載している場合がありますので、システム選定の際に確認をしましょう。
- ●システム上での長期保管
- ●長期署名 など
また、電子契約サービスの中には、システム上に保管する文書量に応じて、課金するタイプの料金プランを用意している場合があります。この場合、保存する文書量が増えた場合に想定以上のコスト負担になることがありますので、料金プランも合わせてご確認ください。
2
すべての契約書を電子契約化できない
2021年9月に施行されたデジタル改革関連法により、多くの契約が電子契約化可能になりました。しかし、一部の契約書は引き続き書面による契約締結を求められていますので、注意が必要です。
現状、書面契約による契約締結を求められている契約例は以下の通りです。
文書名 |
根拠法令 |
改正法施行予定 |
事業用定期借地契約 |
借地借家法23条 |
- |
企業担保権の設定又は変更を目的とする契約 |
企業担保法3条 |
- |
任意後見契約書 |
任意後見契約に関する法律3条 |
- |
特定商取引(訪問販売等)の契約等書面 |
特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条 |
2023年6月 |
一部の契約書は未だ電子契約化できないとはいえ、政府では電子契約化検討をすすめています。実際に特定商取引法では、2023年6月に特定商取引の契約書面などの電子契約化を解禁する見込みです。
したがって、将来的にはより電子契約化できる帳票が増える見込みですので、電子契約を利用し始めるとすれば、非常によいタイミングといえるでしょう。
なりすましリスクへの対応が必要
立会人型の電子契約サービスを利用する場合、相手方のメールアドレスに誤りがある、相手方のアカウントが乗っ取られているなどした時に、無関係な第三者によって電子署名されるリスクがあります。このリスクがなりすましリスクです。
第三者が電子署名を付与した場合、契約の成立そのものを疑われかねないので、なりすましリスクへの対応が必要です。最も簡単になりすましリスクを低減する方法として、二要素認証を利用する方法があります。
したがって、電子契約サービス選びの際には、二要素認証が利用できるかも、1つの評価軸となるでしょう。
5.まとめ 電子契約を利用して契約業務を効率化しよう
電子契約を利用することで、コスト削減やリードタイム短縮などのメリットを見込めます。一方で、電子帳簿保存法など対応しなければならない法律などがある点に注意が必要です。
もし、法要件を満たさず電子契約を保存していた場合、ペナルティも想定されますので、確実な対応をしてください。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。
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