勤怠管理の意味とは?必要性を法律やガイドラインから解説!
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2024.4.05 (金)Posted by 北森 雅雄
労働基準法や厚生労働省から公表されたガイドライン上で、企業は労働者に対して勤怠管理を求められています。求められた水準で勤怠管理をしていない場合、ペナルティが課される場合もありますので、確実な対応が必要です。
当記事では勤怠管理の必要性、勤怠管理をするうえで求められる記録と対象、意味のある勤怠管理をするための3ステップについて解説をします。
1.勤怠管理の必要性とは?

勤怠管理とは、労働者別に出退勤時刻や有給取得日数などを管理することです。労働基準法や厚生労働省から公表されているガイドライン上で勤怠管理の実施が求められています。
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労働基準法上で勤怠管理を求めている
企業は従業員に対して、労働基準法上の法定労働時間が守られているかなどについて管理する必要があります。
(労働時間) |
もし、労働記録を法律上求められる5年間保存をしていなかったり、故意に労働記録の改ざん・隠蔽をしたことが発覚した場合には、30万円以下の罰則が課されるため確実な対応が必要です。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。 |
出所:労働基準法120条
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働き方改革で管理事項が細かく定められている
2019年4月に働き方改革関連法の改正が実施されました。勤怠管理に関係する法律が改正され、改正内容を遵守した勤怠管理が必要です。
- ●労働基準法36条に基づく労使協定(36協定)の締結
- ●所轄労働基準局監督署長への届け出
36協定には月45時間、年間360時間の上限があります。この上限は特別な事情がない限り、原則的に超えることができません。
特別な事情があり、労使が合意する場合でも、年間720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間以内、月45時間以内の月が年間6か月までである必要があります。
出所:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針
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年次有給取得日数を管理する必要がある
労働基準法上で、企業は雇用から6か月以上、かつ、勤務日の8割以上出勤した従業員に対して年間10日以上の年次休暇を与える必要があります。
2019年4月の働き方改革では、10日以上の年次有給が付与された従業員に対して、年間5日の年次有給取得義務が課されている点に注意が必要です。
もし、この義務が順守されていない旨を指摘された場合、従業員1人あたり30万円以下の罰金がかされますので、厳密な勤怠管理が求められています。
2.勤怠管理で求められる記録とは?

勤怠管理では大きく以下2つの記録が求められています。
- ●記録①:労働時間の管理
- ●記録②:休憩時間・欠勤日数などの管理
記録①
労働時間の管理
そもそも、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」です。厚生労働省が公表しているガイドラインによれば、例えば以下のような時間が労働時間に該当します。
① 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間 |
したがって、ガイドライン上により求められている労働時間管理を参考にすれば、勤怠管理としては以下の時間の管理が必要です。
- ●労働日数
- ●始業・終業時刻
- ●労働時間数
- ●時間外労働時間数
- ●深夜労働時間数
- ●休日労働時間出勤数
- ●有給休暇日数・残業数
記録②
休憩時間・欠勤日数などの管理
休憩時間は労働基準法上で「労働時間が6時間を超える場合には少なくても45分、8時間を超える場合には1時間を労働時間中にあたえること」として定義されています。
(休憩) |
出所:労働基準法34条
したがって、休憩時間の管理も必要です。加えて、実務上は欠勤日数や早退・遅刻の回数や時間数についても把握しておくと、給与計算がしやすくなるでしょう。
原則すべての労働者が勤怠管理の対象
勤怠管理の対象は原則的にすべての労働者です。ただし、一部管理監督者や役員、みなし労働時間制が適用される労働者は適用されません。
一部の方に勤怠管理が労働基準法上は求められていないとはいえ、過剰労働の防止や従業員の健康維持の観点からすれば、すべての労働者に対して勤怠管理をする必要があります。
労働安全衛生法上では、管理監督者、役員、みなし労働時間制が適用される労働者に対しても勤怠管理をする必要があるとされているのです。
勤怠管理はほぼすべての事業場で行う必要性がある
労働基準法の内、労働時間にかかる規定(労働基準法第4章)が適用されるすべての事業場で勤怠管理をする必要があります。一部、農業や水産など、自然・天候によって稼働日が変動するような事業を除いて、従業員を雇用するすべての事業場が対象です。
3.意味のある勤怠管理をするには?

勤怠管理を漠然と行っても、意味のある勤怠管理には必ずしもなりません。ポイントを抑えた勤怠管理が重要です。
意味のある勤怠管理を行うポイントは以下の通りです。
- ●労働時間の適切な記録
- ●給与計算への適時反映
- ●違法状態の検知・対策
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労働時間の適切な記録
2019年4月に働き方改革の一環として労働安全衛生法が改正され、労働時間を「厚生労働省令で定める方法」によって客観的に把握することが、企業に義務付けられました。
この「厚生労働省令で定める方法」とは、以下が定められています。
- ●タイムカードやICカードによる記録
- ●PCなどの使用時間による客観的な記録法
- ●その他の適切な方法
出所:客観的な記録による労働時間の把握が法的義務になりました
また、労働時間を記録する際には多くの場合で従業員に手間がかかる点に注意が必要です。例えば、タイムカードを利用する場合には、タイムレコーダーの列に並ぶなどが該当します。
従業員が手間だと感じると、労働時間の正確な申告を妨げる場合があるため、直行直帰の場合にはスマートフォンから申告可能な勤怠管理システムを導入するなど、対応を検討する必要があるでしょう。
自社の勤務体系や従業員からの反応を鑑みて、実現可能な労働時間の記録をおすすめします。
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給与計算への適時反映
労働時間の適切な管理は給与計算を行ううえで重要です。給与計算への労働時間の反映については、「ノーワーク・ノーペイの原則」を基本にすることを推奨します。
「ノーワーク・ノーペイの原則」とは、会社側に責任のない理由で従業員が労働しなかった場合に、使用者は金銭を支払う義務が生じないという考え方です。
例えば、体調不良や天災などで出社が難しい場合などで適用されます。会社都合による休業や自宅待機などの場合には適用されません。
「ノーワーク・ノーペイの原則」は、労働後でなければ報酬を請求できない旨の記載がある民法624条が根拠です。
(報酬の支払時期) |
出所:民法624条
「ノーワーク・ノーペイの原則」を元に欠勤や遅刻、早退などをした場合には、労働しなかった分を控除することで運用します。このような控除が欠勤控除、遅刻早退控除などです。
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違法状態の検知・対策
2019年4月に施行された働き方改革関連の法改正により、36協定など要件を満たすべき法律が複数あります。違反した場合、企業に少なくないデメリットがありますので、確実な対応が必要です。
勤怠管理業務では、上記のような法律上で定められる事項について、労働時間の記録などを元にして違法状態の検知・対策が求められています。
法律に対して要件を満たしているか確認する他に、記録と実態に乖離がないかについても注意が必要です。例えば、正しい残業時間を報告しにくい職場環境であるため、従業員が正確な労働時間を報告しないなどのケースが該当します。
記録上は問題ないものの、実態としては従業員の健康状態が悪化している場合があるのです。この場合、企業は安全衛生義務を怠ったと責任が問われる可能性があるため、違法状態の検知・探索が重要とされています。
4.まとめ 勤怠管理にはシステムの利用もアリ

労働時間の適切な記録、給与計算への適時反映、違法状態の検知・対策には勤怠管理システムの活用がおすすめです。
タイムレコーダーやICカードなどで勤怠管理をする場合、労働時間の記録の正確さや違法状態の検知が難しいケースが目立ちます。
勤怠管理システム導入をする場合、初期費用がかかるものの、正確かつ効率的な勤怠管理が可能であるのであれば、企業の法順守の観点から費用対効果があるとみなす企業も多いようです。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。