会計報告は7つのコツで完全攻略!報告書の目的や記載事項も解説
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2023.5.24 (水)Posted by 北森 雅雄
「会計報告の話し方がわからない」「会計報告の資料作成方法が知りたい」と悩まれている方は多いのではないでしょうか。
会計報告の内容は、基本的に会社の現況です。
さらに、報告相手の経営者や関係者が知りたい情報も話すことができれば、ベストな会計報告になるでしょう。
そこで、本記事では会計報告の目的や記載事項と会計報告のコツを紹介します。
会計報告の話し方や資料作成に役立つ内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
目次:
1.会計報告の目的とは?経営者に会社の現況を伝えること
会計を報告する目的は、経営者に会社の現況を伝え、理解してもらうことです。
加えて、会社の将来を決める情報を提供する役割も担っています。
報告の内容は、おもに会社の収支・財産状態・今後の見通しです。
それぞれ詳しく確認しましょう。
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収支を把握する
会社は営利活動を行なっているので、収支を把握することは経営の基本です。
日々の取引では、売上や経費の支払いが繰り返されます。
この売上と経費を合わせて、収支といいます。
収支の把握とは、会社がどれくらい売り上げたか、どれくらい経費を支払っているのかを計算し把握することです。
さらに、売上から経費をひいた残りは利益として計上されます。会社の最大の目的は、この利益を生み続けることです。
利益を生まなければ会社は成長しないため、収支を把握・報告するのは重要な業務といえます。
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財産状態を把握する
財産状態は、会社が安定しているかどうかをはかる指標です。ここを報告することで、会社の経営状況を経営者に伝えることができます。
しかし、財産状態の把握は多角的に行ってください。
たとえば、現預金を豊富に持っている会社でも債務超過におちいっていれば、健全な財政状態とは言えません。
一方で、現預金が少なくても株式や固定資産といった別の資産をたくさん保有する会社は、安全性が高いと判断できる場合があります。
つまり、財政状態を把握するには、一方向から見るのではなく、多角的に見る必要があるのです。
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報告を共有し今後の方針を決める
収支と財産状態を把握できたら、現状を経営者や関係者に報告し、会計情報を共有します。
会計報告は会社の将来を検討する重要な情報なので、その内容を経営者や関係者に有効活用してもらわなければならないからです。
経理の仕事の価値は、会計情報を報告することにあり、会計報告の最大の目的は、経理がまとめた会計情報を経営者や関係者に理解してもらうことにあります。
会計報告は、会社にとって重要であることを意識しておきましょう。
2.会計報告書(決算報告書)のおもな書類
会社の会計報告には、決算報告書が用いられます。
その中でも財務三表とよばれる、次の3つが基本的な書類です。
- ●貸借対照表
- ●損益計算書
- ●キャッシュフロー計算書
それぞれ解説します。
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貸借対照表
貸借対照表とは、決算日時点での会社の財産状態をあらわす書類です。
資産の部、負債の部、純資産の部で構成されており、調達した資金をどのように資産として運用しているかを分析するためのものです。
資産の部にはおもに以下の項目が記載され、調達した資金の運用状況を示します。
- ●現預金
- ●売掛金など債権
- ●商品など棚卸資産
- ●有価証券
- ●固定資産
負債の部にはおもに以下の項目が記載され、資金の調達状況を示します。
また、将来の費用や損失になる可能性のある引当金なども記載する場所です。
- ●買掛金など債務
- ●借入金
- ●社債
純資産の部にはおもに以下の項目が記載されます。
純資産は資産から負債を引いた金額であり、会社が自由に使える資金がどれくらいあるのかを示します。
また、繰越利益剰余金とは会社が生んだ利益の累計額のことです。
- ●資本金
- ●利益剰余金
- ●繰越利益剰余金
- ●自己株式
貸借対照表に記載されている数字は、会社に実在するお金や借金そのものです。いままでの経営成績そのものだと言い換えられます。
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損益計算書
損益計算書とは、事業年度中の収支をまとめた書類です。
次の5つの項目から構成され、会社がどのように儲けたのかといった経営状況の分析に使われます。
- ●売上高ー売上原価=売上総利益
- ●売上総利益ー販売費及び一般管理費=営業利益
- ●営業利益+営業外収益ー営業外費用=経常利益
- ●経常利益+特別利益ー特別損失=税引前当期純利益
- ●税引前当期純利益ー法人税等=当期純利益
このように損益計算書は、本業の売上から仕入原価を引き、経費を引き、さらに営業外の収支を追加して……と、上から順番に計算する仕組みになっています。
中でも重要なチェックポイントは、営業利益が黒字であるかどうかです。
営業利益とは会社の本業で稼いだ利益のことで、赤字であると経営状況が悪い可能性が高いと判断されます。
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キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書とは、お金の流れに着目して会社の経営を分析する書類です。
営業活動、投資活動、財務活動に分類して記載されます。
・営業活動によるキャッシュフロー:会社の本業によって生じたお金の流れをまとめたものです。運転資金とも言い、通常はプラスになりますが、マイナスの場合は経営がうまくいっていないことを表します。
・投資活動によるキャッシュフロー:会社の投資に対する資金の流れをまとめたものです。
プラスの場合は有価証券や固定資産を売却することで資産効率を見直していると判断でき、マイナスの場合は投資に積極的であると分析されます。
・財務活動によるキャッシュフロー:会社の資金調達と返済をまとめたもので、資金調達が多いとプラス、返済が多いとマイナスを示します。
キャッシュフロー計算書は様々な分析に使えるので、積極的に会計報告に活用しましょう。
3.会計を報告する時期
会計報告を行うのは、基本的に決算時です。
期中の会計報告は、経営者や関係者からの要望や、会社の状況に応じて行います。
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決算が確定したとき
どのような会社でも決算が確定したときには、会計報告を行います。
決算とは、事業年度の収支をまとめる作業のことで、1年間の会社の経営成績がわかることから決算時は会計報告をする最適なタイミングとされています。
報告を受ける経営者や関係者は、決算で明確になった会社の収支や財産状態に一番興味をもっているため、必ず報告するようにしましょう。
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月次、半期、四半期などの期中
会計報告は期中でも行われます。
報告のタイミングは、おもに以下のような区切りです。
・月次会計報告・・・1ヶ月間の会計報告です。速報値に近い数字を確認できるので、短期的な経営方針の検討に役立ちます。
・半期会計報告・・・半年ごとの会計報告です。月次よりも広い範囲で経営状態を分析することができます。
・四半期会計報告・・・3ヶ月ごとの会計報告です。金融商品取引法では、上場企業などに四半期報告書の提出を義務づけています。
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決算前の予測値報告が経営者に喜ばれる
決算前に会計報告と合わせて決算の予測値を報告すると、経営者や関係者から喜ばれるでしょう。
決算で利益がでるかどうか、資金に余裕があるかどうかをあらかじめ予測できれば、節税対策や資金調達を検討できるからです。
経理は取引の会計作業だけでなく、会計情報を分析して将来の予測をたてることもできます。
経理の強みを生かして、会社の成長に貢献しましょう。
4.会計を報告するときの7つのコツ
経営者や関係者が会計報告を知りたい理由は、現状の把握とその先の行動を決めるための情報が欲しいからです。
その目的に合った報告ができれば、経理の本当の仕事が達成できたといえます。
会計報告の準備には、会社の過去・現在・未来を分析する幅広い視点を持ちましょう。
以下に会計報告を攻略するためのコツを7つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- ●財務諸表の内容を簡潔にまとめる
- ●期間比較ができる資料を準備する
- ●予算実績を比較できる資料を準備する
- ●【重要】期間や予実の差額原因を分析する
- ●税額を見積もっておく
- ●今後の収支予測や改善案を提案する
- ●経営者の関心ごとに経理視点の情報を付け加える
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ポイント①財務諸表の内容を簡潔にまとめる
会計報告は、おもに財務諸表の内容を報告します。
会計報告の方法として、どの項目が重要であるかを簡潔にまとめて報告すると、経営者も理解しやすくなります。追加で知りたいことがある場合には、質疑応答で解決しましょう。
しかし、財務諸表のすみずみまで細かく報告する必要はないかもしれません。経営者が知りたい情報は、財務諸表の細かい内容ではないかもしれないからです。
そのため経営者のニーズに合わせて、報告を行ってください。
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ポイント②期間比較ができる資料を準備する
期間比較には、様々なバリエーションがあります。
以下に例示する期間について、比較できる資料を準備しましょう。
- ●前期と当期
- ●前月と当月
- ●前期同月と当期同月(例:前期3月と当期3月)
- ●前期同期間と当期同期間(例:前期1月から3月と当期1月から3月)
また、会社の状況や業種によって、さらに分析が必要な場合は、比較対象をカスタマイズすると、より質の高い会計報告になります。
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ポイント③予算実績を比較できる資料を準備する
あらかじめ予算を設定していた場合は、予算どおりに経営ができているのかどうかを確認する必要があります。
予算と実績を比較できる資料を準備しましょう。
また、資金繰りの予測についても、同じように予測と実績を比較できる資料が必要です。
予算や予測は実績と比べることで、初めて意味のある数字になります。時間をかけて計算した予算や予測を、会計報告で有効活用しましょう。
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ポイント④【重要】期間や予実の差額原因を分析する
期間や予実(予算実績)を比較すると、必ず差額が出ます。
この差額の原因を分析することが、会計報告において重要なポイントです。
期間比較や予実の比較をしただけでは分析とはいえず、会計報告の価値を高めることはできません。
たとえば、予算よりも実績が少ない場合、その原因が経営の努力不足なのかアクシデントなのかによって、その先の行動はまったく違うものになります。
会社の現状を正しく把握し改善するには、差額原因の分析は欠かせません。
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ポイント⑤税額を見積もっておく
会計報告時ではまだ税額が確定していませんが、経営者から質問される可能性が高い項目のため、見積もっておくと安心です。
決算が確定すると税金計算をして納付するので、税金分のお金を用意する必要があります。
税額が早めに予測できると、資金繰りを検討しやすくなります。
また、税金の計算方法によっては決算の利益に影響する場合もあるので、税額も考慮した会計報告を意識しましょう。
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ポイント⑥今後の収支予測や改善案を提案する
経理は、積み重ねた会計情報を分析することで、今後の収支予測を作成することができます。
また、期間比較や予実比較の分析から、改善策を立案することが可能です。
資金繰りの予測などお金に関係することは、会計の分析によって、信頼できる情報が得られます。取引の記録だけではなく、その情報を分析した予測や改善案を提案することも、会計報告の大きな役割です。
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ポイント⑦経営者の関心ごとに経理視点の情報を付け加える
会計報告は、経営者や関係者の関心ごとだけにフォーカスすればいいものではありません。
関心ごとに、経理視点の情報を付け加えることが大切です。
たとえば、経営者が黒字であるかどうかを知りたい場合、損益計算書上の当期純利益が黒字であれば安心するかもしれません。
しかし、当期純利益が黒字でも営業利益が赤字であれば、経理視点からこの問題点に触れ、経営者が判断を誤らないよう導く必要があります。
経営者の関心ごと+経理視点の情報こそ、会計報告をする上で大切にすべきことです。
5.【番外編】町内会や部活の会計報告とは?
会計報告が行われるのは、会社だけではありません。
町内会や部活なども、収支が発生した場合には、会計報告をする場面も出てくるでしょう。
町内会や部活の会計報告を、ポイントと合わせて確認しましょう。
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会計報告書に記載する項目
町内会や部活の会計報告書は、お金の入出金に基づく内容になります。
簡単にいえば、家計簿のようなイメージです。
記載する項目については、法律で決められたものはないので、各団体のルールに則って作成する必要があります。
ただ、なにを書けばいいかわからないという方に、明確な会計報告書にするためのおもな記載項目を紹介するので、参考にしてください。
- ●年度(会計報告期間)
- ●収入の部、支出の部
- ●収入内訳、支出内訳
- ●予算実績、差異金額
- ●摘要欄
- ●残高金額(繰越金額)
- ●署名欄
報告を受けるメンバーが一番知りたいのは赤字になっているかどうかです。収入の部と支出の部を重点的に報告すると、報告を受けるメンバーが満足する会計報告になりやすいでしょう。
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処理はすぐに行う
会計報告書を作成するために必要な帳簿づけは、すぐに行いましょう。
まとめて処理しようとしても時間が多くかかったり、ミスをする可能性が高くなったりして、デメリットが大きいからです。
どうしてもすぐに処理できない場合は、詳しい内容や注意点をメモに残しておくと、ミス防止に効果的です。
また、お金に関わることなので、トラブルに発展しやすいことにも注意しましょう。
お金のやり取りは正確に記録することが大切です。
正確な取引記録こそ、間違いのない会計報告に繋がります。
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領収書など書類を大切に保管する
会計報告書を作る際に参照した領収書などの書類は、大切に保管しましょう。
記録したからといってすぐに処分してはいけません。会計報告をしたときに、メンバーから取引の詳細について質問される場合があるからです。
領収書などの書類の保存方法や保存期間には規定がありません。
各団体のルールで正しく保存しましょう。
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わかりやすい言葉で報告する
会計報告は、わかりやすい言葉を使うことを意識しましょう。
会計報告を受けるメンバーに、報告を正しく理解してもらう必要があるからです。専門用語を使って、理解が困難になるなら会計報告の意味をなしません。
たとえば「予算」という用語が伝わりづらければ「最初に予定していた金額」と言い換えることもできます。
会計報告をメンバー全員に納得してもらえるよう、報告の仕方も工夫しましょう。
6.まとめ 会計データを分析して報告に付加価値をつけよう
会計報告の目的は、経営者に現況を伝え、その先にある行動の検討材料としてもらうことです。ここで紹介した会計報告のコツを参考に、ワンランク上の報告を目指しましょう。
ただし、会計報告に必要な会計分析は複雑な作業になるため間違えやすく、誤れば倒産にもつながりかねない重要な業務です。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。2023年より、セールスイネーブル組織の立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。