• 2024.11.22 (金)
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収益物件オーナーにとって、「いかに資産を後世に託すか」は重要な問題です

■相続税・贈与税をどうやって軽減するかは収益物件オーナーの重要なポイント

「田舎のおばあちゃんが、生きているうちに、アパートをくれるってさ。『名義変更しとけ』って言ってくれたんだよ」。一見、宝くじにでも当たったかのようなラッキーな話。しかし、ここには落とし穴があります。

仮に、資産価値2,000万円のアパートを「あげるよ」と言われたとします。しかし、ざっと計算すると、貰ったあなた(もしくはあげたおばあちゃん)は、贈与税という税金を700万円ぐらい払わなければならないのです。(正しくは、しっかりと税理士さんに計算してもらってください)びっくり仰天ですね。

なぜなら、家は資産なので、だれかにあげる(贈与)すると、「贈与税がかかる」のです。テレビのお宝鑑定団で「いくらの価値がある」とバラエティ番組で放映されますが、それが「貰ったもの」なら贈与税、「売って儲かった」なら所得税がかかります。(高額であれば)。

ただし、「おばあちゃんが亡くなってしまった」ので貰った、という場合は、「相続税」がかかります。贈与税はかかりません。

生きているうちは「贈与税」。亡くなったら「相続税」。財産をもらったときにかかる税金はこの2種類です。

■なら、お年玉や小遣いにも贈与税がかかるの? そこで、「年間110万までは非課税ですよ」という制度。

とはいえ、「多少の現金は渡してあげたい」ということを鑑みて、国は「ひとりの人に年間110万円まで」は「非課税」という制度を作っています。生きているうちの贈与、ですので「生前贈与」といいます。毎年110万円までは非課税ですから、自分と伴侶と子供がふたりなら、110万×4人ずつに、毎年、現金をうつしていくことが可能です。これを「暦年贈与」といいます。

ただし、余命いくばくもないので、相続税対策として急に暦年贈与をする、といった行為はアンフェアであるということで、これまで、贈与から3年以内に亡くなった分は相続税の対象となっていました。

一方で、相続税が先々かかることはわかっているけれども、自分の亡くなる前にその財産を贈与するという、「相続時精算課税」という制度もあります。こちらは、節税ではなく、亡くなって相続した際には、相続税を払うことになるのですが、「前もってもらえる」という点では、暦年贈与同様にメリットがあります。そもそも相続税がさほどかからないケースでは、先にもらえたほうがお金を早く使えるというメリットがあります。累計の贈与額が2,500万円以下なら贈与税が非課税になる制度ですから、財産が少ない場合は有効ですが、この制度を使うと、このタイミング以降の暦年贈与は行えなくなります。

■暦年贈与での「亡くなった時から3年以内は相続税がかかる」が、 「7年以内は相続税がかかる」に改悪

さて、節税効果の高い暦年贈与ですが、これまでは「亡くなった時から3年以内は相続税をもらうからね」というルールが、なんと「亡くなった時から7年以内」と変更になりました。7年。長いですね。

こうなると、「毎年110万円までは非課税で贈与できますよ」と言われても、「ただし、亡くなって7年以内の分は相続税の対象」となるので、高齢の方ほど途方にくれてしまいます。はたして、「7年後まで、元気でいられるのか」は、60歳の私でもそんな自信が持てませんし、毎年110万円ずつの節税効果がかなり薄くなります。ようするに増税なのです。

そして、その7年間の間にも、物件も築25年の物件は築32年と老朽化します。今は満室で人気の物件も将来、排水管がつまったり、防水シートが破れたり、外壁のタイルが落ちてしまうかもしれません。

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■今、満室の物件でも元気なうちに、「高速ネット無料」物件に

築25年の物件が、7年後は築32年。現状、築25年の物件は、エアコン・温水洗浄便座・バストイレ別といった設備は割とついていますが、ネット無料・防犯カメラ・宅配ボックスなど、最近の人気設備はついていません。

ならば毎年、110万円の生前贈与をするつもりで、ネット無料・防犯カメラ・宅配ボックスなどの設備強化をしてはいかがでしょう。仮に今、満室であったとしてもこれら設備の強化は、周辺物件との差別化に有効で、家賃を下げずに満室経営が目指せるでしょう。その状態で、仮に天寿を全うされ、相続。となったとしても、入居率が高く、家賃水準の高い人気物件を後世につなぐことが出来ます。

仮に、ご子息がこの物件を「売る」と判断した場合も、この物件の年間賃料収入が高いため、収益物件の売買でも利回りが高く、高値で売れます。相続したご子息は「よい資産を残してくれた」と先人に感謝するでしょう。

特に7年後となると、インターネット環境はさらに速いスピードでの利用が増えるでしょう。高画質の動画やゲーム、あるいはネットにつながった家電など、様々なシーンで「高速インターネット」が注目されます。長い時代に物件を託すのであれば、将来性の高い「高速インターネット」がお薦めです。

■築浅ほど、修繕積立金共済も併用しましょう

では新築や築浅で人気設備はついている。すでにネットも高速だという場合はどうでしょう。とはいえ、物件はやがて築年を経て、排水管がつまったり、防水シートが破れたり、外壁のタイルが落ちてしまうかもしれません。

分譲マンションではこうしたことに備えて、長期修繕計画をたて、10年~12年に一度、大規模修繕工事を行っています。分譲マンションはこうした費用は、非課税で積み立てることが可能でしたが、賃貸物件オーナーは、こうした先々の修繕のために貯蓄しても、収入には所得税がかかり、修繕前になくなって相続すれば相続税がかかっていました。

そこで、この長期修繕のための修繕費用を、共済制度で貯蓄し、経費として処理が可能となる新しい制度ができました。暦年贈与のような「年に110万円まで」という規定はなく、「将来かかる共用部の修繕」と使用目的は制限されますが、毎年経費で落とせますし、共済に払ってしまうので、贈与税や相続税もかかりません(詳細は、税理士さんに相談してください)。

こうした新しい制度を活用して、未来に物件を託していく事も、賃貸経営では大切な時代となっているのです。

物件の資産価値を高めつつ、節税をしながら、後世に資産を託していく。ぜひ参考にしてください。

  • 執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

    【プロフィール】プリンシプル住まい総研 所長

    1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。20121月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長・中国ブロック副ブロック長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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