• 2023.12.11 (月)
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■2024年4月1日から義務化される、「相続登記」ってなに。

みなさん、ご存知でしょうか? 法律が改正されて2024年4月1日から、相続登記が義務化されます。

ところで、「登記」ってなんでしょう? 例えば、自動車ローン。自動車ローンを完済したら、車検証に記載されてある所有者(ローン会社やディーラー)から、自分に名義変更しなければならないのですが、割と知らない人が多いです。それから数年して「売ろう」とか「離婚する妻に名義変更する」というタイミングで、まだ名義変更や所有権解除してなかったという事もあります。そのくらい「登記」というのはなじみが薄いものです。「これは私のクルマなんですよ」と「登録をする」という事ですね。
社会に向けて、このことをはっきり言うということで「私の土地です」「私のクルマです」となり、売る権利も発生するわけです。当然、権利が発生すれば義務も発生します。「私が持ち主です」と登録するので「では固定資産税はあなたが払ってくださいね」と納税の義務が発生します。

実は、これまでは相続時の登記は「任意」でした。しなくても罰せられなかったです。「家屋敷は母、あの土地は兄、こちらのアパートは弟」と分けた。相続税を払った。
税金は税務署に払いましたが、相続税は、「その土地建物を相続した人が払わずとも、相続人の誰が払っても良い」のです。すると「財産分与」はして、「相続税は兄さんが払った」けど、法務局に行って登記の手続きをするのは「忘れていた」とか「面倒くさいからやってなかった」という人がいました。

■「相続登記」と「空き家」問題

一方で、相続した際に登記がされていないと、「誰のものかわからない」「亡くなった人の名前のまま登録されている」ということが起こります。これまでは「任意」でしたから、特に「売ろう」としない限りは、誰のものかわからないままという物件が存在していました。その物件をまた別の人が相続して、そのまた孫が・・・。分割して相続などされると、もう所有者がどこにいるのかも、わからなくなります。

こうして「所有者不明の土地・建物」が増えてきました。これが、現代の「空き家問題」となっています。老朽化した家屋が居間にも崩れそうになっている。近くを歩いていても危険な状態だ。あるいは猫やネズミが発生したり、中で亡くなって腐敗していて伝染病の危険などがあったりします。そんな社会問題が、よくニュースで取り上げられていますが、これは「相続登記が任意」だったから、とも言えます。誰の持ち物かはっきりすれば、その所有者が解体するなり、建て替えるなり、なにか出来ます。ところが、行政も所有者がわからない。そこで今回、相続登記が義務化となったのです。

東京法務局のポスター

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■罰則規定有。 罰金も!!

今回の法改正では、この相続時の登記が、義務化されました。これまでは任意でしたが、なんと罰則規定も有ります。

不動産を相続したことを知ったときから3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料が科せられることになったのです。

そして「いやー2024年4月からかー。ギリギリセーフだ、昨年うちは相続していてね」という方も、今回、その対象となります。

■2024年4月から、3年遡る

実は、今回の法改正では、「過去の相続分も義務化の対象」となっているのです。2024年4月1日以前に発生していた相続にも遡及して適用されます。

相続後に未登記のままであれば、施行日から3年以内に登記する義務が生じます。また、施行後に家族の知らない相続財産があると分かった場合も、それを知ってから3年以内に登記しなければならないのです。

すなわち、みな慌てて「登記」をしなければなりません。

東京法務局のポスター

■未登記の賃貸物件も登記を。「ならば売るか」という人も出るでしょう

では、「登記をしなければならない」となると「これはいらない」「このままでは出費ばかり増える」という物件も出てきます。

また、相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たすと「相続空き家の3000万円特別控除」が適用され、売却で得た収益のうち3000万円が控除の対象となります。現金は相続税が一番高いので、まずは売らずに、土地・建物はそのまま相続し、3年以内に売りたいとなります。今は、収益物件の価格は非常に高値です。むしろ品薄状態。となれば相続して、そのあと「出来るだけ早く売りたい」という人が増えるかもしれません。

■売るときは「金利」と「利回り」が重要。 金利上昇・インフレのトレンドでは、物件の設備強化を

「いずれ売る」と考えると、「いくらで買ってもらえるか」が気になるところです。ところが、通常の居住用の中古物件の場合は「地価がどのくらいか」「近隣での売買価格がいくらぐらいか」といった相場で買い手側は考えますが、収益物件の場合は、それだけではありません。

「今、家賃収入はいくらあるのか」が気になります。読者の皆さんも同じでしょう。「年間の家賃収入」÷「売買価格」=表面利回り。表面利回り10%なら、年間の家賃収入で、10年で元が取れます。表面利回り5%なら、20年で回収というわけです。定期預金や株式信託のように、買い手は考えるのです。もちろん、修繕費や滞納、あるいは管理費、税金、そして借入金の利子の支払いなどがあり、全額家賃収入が利益ではありません。ですから「表面」利回りなのですが。

となると、「今後、相続登記が義務化されて、売り物件が増え、競争が上がるかもしれない」→「ならば、できるだけ、高い家賃で満室であれば、利回りがいい物件として、高く売れるぞ」ということです。しかも、収益物件は一棟物も多く、億単位になり、高額です。すると、全額現金ではなく、「事業用ローン」で買う人もいるでしょう。となれば気になるのは長期金利の動向です。金利が上がれば、「買いにくい」。すなわち「売りにくく」なります。

今、長期金利が、実質的に上昇トレンドとなりました。売るなら、出来る限り相続後早いほうがいいかもしれません。金利が低いうちに。

となれば、この連載でもこれまで言ってきたように、「ネット無料」「宅配ボックス」「防犯カメラ」などの設備強化をして、少しでも家賃を上げ、満室に近づけて、「表面利回りがあがるよう」にすべきです。

法改正は変化のタイミングです。この機を逃さず、物件の資産価値向上に勤めましょう。

  • 執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

    【プロフィール】
    プリンシプル住まい総研 所長

    1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。20121月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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