• 2022.10.06 (木)
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■オーナーは男性主導? 入居者心理を考える上で欠かせない女性の視点

 私は、一都二府四十三県のオーナーセミナーで講演しています。当然、オーナーの皆さんと接する際に、私よりもご高齢の方が多いと感じますが、その一方で、オーナーの皆さんが男性の方が多いなと感じます。先祖代々の土地を所有し、その土地にアパートを立てて経営するという判断をされた方は男性が多く、その物件を相続される方々は奥様やご子息というケースが多いのでしょう。

 しかし、単身物件の半数は女性が暮らします。カップルの物件では、お部屋選びの主導件は往々にして女性が握ります。ファミリー物件では、主婦の意見は重要です。見落とされがちなのは、この性別の違いではないでしょうか。

■茶色い床に白い壁が  無難・・・でもありません

 例えば、賃貸物件は、どこもかしこも、「茶色の床の白い壁」です。つまりは、「どこにでもある物件」ですから、立地と家賃ばかりで決められてしまいます。一方で、白い床は部屋が明るくなりますし、清潔感があり、洋風の家具とも合わせやすいものです。アクセントクロスもチャーミングです。

 男性オーナーが多いからこそ、ある種の定番物件ばかりが普及しています。しかし、ショッピングモールに行けば、洋服は男女でもちろん別であり、特に女性向けは様々なブランドショップが並んでいます。そうしたブテックの壁紙や床の色は、個性的であり、なかなか男性視点ではお客様目線になれません。

全国で賃貸物件をリノベーションする「リノッタ」ブランドでは、アクセントクロスやフロアタイル、ダウンライトなどで、個性的な部屋にすることで満室経営を推進している

■色選びを楽しむ女性オーナー

 とある不動産会社のオーナーセミナーで「さあ、ではオーナーの皆さん、好きな壁紙の色を選んでみましょう」という体験会がありました。しかし、なかなか男性オーナーは楽しめません。女性オーナーはとても楽しそうでした。こうした「色のセンス」は、やはり女性にはかなわないものなのです。

 そういえば、ショッピングモールでも、よく通路で男性が休んでいます。男性の中には「どうして服を選ぶのに、あんなに時間をかけて楽しそうにするのだろう」と不思議に思う人もいます。しかし、世の中の半数は女性。オーナーが壁紙の色を選んではいけないのです。

■「一階が決まらない」のは、女性が嫌だから

 閑散期に部屋探しをすると、なかなか良い部屋に出会えないという声を、女性からよく聞きます。なぜなら、「空いている部屋が、一階ばかりだから」とのこと。

 男性は、自分の部屋が「覗かれる」とか、「痴漢が侵入する」というリスクを日頃感じません。ところが、女性は違います。これは性差の違いだけでなく、実際の犯罪発生率の違いも影響しています。

■防犯カメラで女性に安心を

 設備強化で考えると、防犯カメラは有効です。シャッター付の窓も有効でしょう。

分譲マンションに普及している防犯カメラも、賃貸物件ではまだまだ。となれば犯罪リスクを避けるためにも、防犯カメラの設置は空室対策に有効です。

最新の防犯カメラなら、遠隔でも録画再生も可能

インターネット経由で、ハードディスクなしで一定期間、一定容量データ保存できるものも

 この際、「ダミーカメラなら安い」とか「防犯カメラを設置するにとしても出来るだけ安いものにしよう」と考えるのはあまりよくありません。ひとたび犯罪があると「カメラがダミーだからこんなことになった」「解像度の低いカメラだから、こんな録画映像では犯人が特定できない」といったこともあり得ます。そして犯人が捕まらなければ、再犯の可能性も高まります。「半年に一度は下着泥棒が来るアパート」では、入居者がどんどん退去してしまうのです。

このほかにも、独立洗面台、広いキッチン、室内洗濯機置き場など女性ならではの設備強化は有効です。

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■ドアを開けたら、室内が丸見え? 曇りガラスで廊下に人影が見える?

また、昨今では、ネット販売で物を買ったり、宅配デリバリーで食事を注文したりと、不特定多数の人が、共用部に立ち入ります。

すると、「この物件は台所に立つと、廊下に私の人影が見えるわ」「この物件は宅配便のスタッフやデリバリーの人がドアを開けたら、部屋の中が丸見えよ」と、気になります。

新築物件は、これまで以上にそうした間取りにならないように気を付けることが必要です。既存物件では、目隠しのための暖簾をつけるなど、ちょっとした工夫も必要でしょう。

■ITの力で女性を守る

NTTのインターネットとつないで、「誰かが侵入したら、警報が鳴る」といったシステムもあります。

図のように、窓ガラスなどに警報装置をセットし、場合によってはセキュリティサービスに駆け付けてもらうといったサービスです。入居者に負担して頂くのもよいですし、「そういう対策がされている物件ですよ」とオーナー負担でPRするのも良いでしょう。

■玄関先に身だしなみチェックのための鏡を

 さて、こうした設備投資はお金がかかります。不動産オーナーとすれば、出来れば出費は避けたいものです。例えば、玄関に身だしなみを整えるためのミラーを置いてみる。通販で買えば、さほど高額ではありません。全身のファッションコーディネートをチェックしてからお出かけすると考えれば、新生活はトキメキます。

これを読んでいるオーナーが仮に男性であれば、ご自身の物件をお部屋探しの年代の女性に見てもらいましょう。お孫さんでも、取引先の社員でも構いません。「女ごころは、わからないもの」と考えて、空室対策に活かしましょう。

執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

【プロフィール】
プリンシプル住まい総研 所長

1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。20121月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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