部屋探しの際、ネット環境を重視する人が6割超え。 空室対策の定番に
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2022.8.26 (金)Posted by
■ニューノーマル時代 ネット環境重視が増加
コロナ禍でのテレワーク・オンライン会議の増加は、お部屋探しにも大きな影響を与えています。私も調査設計などに協力している21C住環境研究会では、2年に一度、首都圏を中心とした不動産会社の協力をいただき、1000件を超える賃貸経営者にアンケート調査(リクルート住まいカンパニー集計)を行ったところ、部屋探しの際に「ネット環境を重視する」と答えた人は6割に達しました。
コロナ禍以前の2018年の調査では、部屋探しをする際、「インターネット環境を重視した」人は56.1%。「まったく気にしていない」人は43.9%であった。そして、コロナ禍の2021年の調査では、「インターネット環境を重視した」人は62.0%。「まったく気にしていない」人は38.0%と変化しました。
「21C 住環境研究会」及び「SUUMO(㈱リクルート)」のローデーターを元にプリンシプル住まい総研が独自集計
インターネットが無料なのか、有料でつながるのか、あるいは接続スピードやセキュリティなどを気にしながら、お部屋探しをしていたという人が、増加しているのです。
■賃貸物件にネット回線がひけるのか
では、「ネット環境を重視」とは、どんな事を気にしているのでしょう。
同調査によると、半数以上の人は、物件にインターネット回線がひけるのかどうかを気にしています。
実は、古い賃貸物件では、ネット回線を引き込むための配管設備がなく、専用線を引き込めないというケースもあるからなのです。
「スマホがあれば、今は5Gだから大丈夫ではないのか」と考える方もいるかもしれませんが、テレワークやオンライン授業では、パケット代が気になります。今のスマホは、通話は無制限で、データ通信には容量制限がある契約がほとんどなのです。
「いや、それならちょっと高いけどパケット無制限の契約に本人がすればよい」「パソコンもスマホでデザリングすれば十分ではないか」とおっしゃる人もいます。しかし、パケット無制限の契約であっても、携帯キャリアによっては、「容量無制限は国内で自分の端末を使った場合に限られ、デザリングなどは容量制限あり」という契約形態もあります。
外出先ではスマホ、自宅ではネット回線からWi-Fi接続が主流なのです。
■「ネット無料」を気にかけている人が 急増
この調査を経年でみるとさらに興味深い事実がわかります。前回の調査よりも「インターネットを無料で使える物件を絶対条件として探した」という人が急増しているのです。
「21C 住環境研究会」及び「SUUMO(㈱リクルート)」のローデーターを元にプリンシプル住まい総研が独自集計
コロナ対策として、大学生を中心にオンライン授業が増え、社会人にテレワークが広まるなか、居住空間である賃貸物件で、勉強や仕事をするという環境変化は、ネット無料物件に対するニーズの高まりを反映していると言えるでしょう。
この調査では、「ネット環境をどのように重視したのか」の回答項目が「単一選択」になっています。つまり、「ネット無料を優先して検索をした」けれども、「そのネット無料が遅いときは、自分で回線をひくしかないので、ネット回線がひけるかどうかを一番気にした」という人も存在しています。
「ネットは無料」で「回線スピードは速く」というニーズが重要なポイントなのです。
執筆:上野 典行(うえの のりゆき)
【プロフィール】
プリンシプル住まい総研 所長
1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。