コロナ禍で、急に進んだテレワーク
新型コロナウイルスが世界的に収束しつつあります。そんな中、世界で進んだのが、「テレワーク」という新しい働き方です。政府は、コロナ禍において「感染防止のため、積極的にテレワークを推進するように。目標7割!!」と呼びかけました。「さっきも会議をしたが、クラスター発生を食い止めるにはテレワークしかないという話しになった」というコメントは、その意志決定がオンラインではなくリアルの会議で行われたというもので、かつ、その記者会見もリアルという、ちょっと冗談のような有様でした。

ともあれ、首都圏を中心に、我が国でも本気でテレワークが進みました。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年は、テレワーク導入企業は20.2%。それが、感染拡大が始まった2020年には47.5%。2021年には過半数の51.9%にも及んでいます。この調査はあくまで1000人以上が勤務する企業に対して行われた調査で、中小企業を含めると、「過半数」は言い過ぎですし、独立自営業者など含めれば実態はそこまで高くないと思われますが、新型コロナウイルス感染拡大が大企業を中心にテレワークを後押しした事は間違いありません。

テレワークのきっかけは「感染対策」
この急激なテレワーク導入の目的は、新型コロナウイルス感染症への対応です。特に首都圏など大都市では、通勤時間が長く、基本が満員電車での通勤。時差出勤なども含めて、濃厚接触を避けるためにも真剣に取り組みが拡がりました。

- 総務省2022年5月27日 総務省通信利用動向調査より
報道では毎日感染者数が発表され、日本のみならず、世界で感染拡大の不安から、テレワークという新しい働き方が浸透しました。
「職場に戻れ」というメッセージの波紋
この急激なテレワークの推進は一方で、「本当に自宅で働いているのか」「サボっているのではないか」という心配もありました。そもそも自宅で働くと言っても、会議を行ったり、メールでやり取りしたり、資料を作成したりという仕事は、現在ではパソコンとネットワークの接続が不可欠です。感染当初は、「モバイル端末を社員に持たせるのか」「通信環境は整っているのか」「そもそも自宅の通信コストを経費で負担できるのか」といった疑問もありました。

- 雑談も出来ないテレワークは、ストレスという弊害も産んだ
ワクチンが普及し、世界的に感染のピークアウトが語られるようになると、電気自動車メーカー・テスラCEOを務めるイーロン・マスク氏が、「リモートワークを希望する者は、最低でも週40時間オフィスにいるか、テスラを去らなければならない」とメールを送ったと話題になりました。確かに、テレワークは人と人との感情が伝わりにくく、精神的にも孤独となりやすいという欠点もあるものです。
「離れて」働くテレワークは、もともと、妊娠・育児・介護・療養・高齢でも自分らしく働けるための手立て
しかし、実は、最初のグラフにもあるように、新型コロナ感染拡大の前から一部企業では、テレワークが導入されていました。それは、今日のような「濃厚接触を避けるため」ではなく、「妊娠により出社が難しい」「保育園に子供を預けられないので、自宅で出来る仕事をしたい」「病気になった家族の介護をしたいが、その合間で出来る仕事を継続したい」「大病を煩ったので出社時間は様子を見ながらとしたいが、自宅で出来る仕事は行いたい」「精神的に伏せっていたが、少しずつ社会復帰をしていきたい」「高齢になったので、今まで通りの出勤頻度は難しいが、自宅から後輩にアドバイスなど行っていきたい」といった、多様な働き方に対応するためのものでした。

- 感染が収束しても、テレワークは多様な働き方をする上で必要
よく、アメリカ出身の野球選手が、妻の出産に立ち会いたいので帰国したいといった話が出ると、日本のプロ野球では文化の違いも感じることがありました。日本では、「仕事優先」が美徳されるような考え方がこれまであったからですが、昨今では、社会的にも働き方の多様性は求められているものです。イーロン氏のメッセージには異論反論はあるものと思われますが、感染が仮に収束したとしても、妊娠・育児・介護・療養・高齢といった状況下では、テレワークという働き方は、それを実現出来るようにしていくことが社会的に求められているのです。

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お部屋探しで問われている「インターネット」環境
新型コロナ感染拡大の中、お部屋探しのニーズの変化はどんなものがあったのかという調査で、「インターネット通信環境の充実」と答えた不動産店舗が43.5%、「都市部よりも郊外の広く自然豊かな物件」と答えた不動産店舗が36.1%、書斎またはワークスペース(集中できる静かな個室)と答えた不動産店舗が33.6%でした。これには、学生のオンライン授業の推進と、企業のテレワークの浸透という状況が大きく影響したのです。

- ◆調査期間/2020年9月12日~9月25日 ◆対象/北海道、宮城県、首都圏(1都3県)、静岡県、愛知県、近畿圏(2 府1県)、広島県、福岡県の13 都道府県のアットホーム加盟店のうち、都道府県知事免許を持ち5年を超えて仲介業に携わっている不動産店。主に経営者層。ローデーターをもとにプリンシプル住まい総研にて、再集計・作表
「通信速度」は、生産性に大きく影響する
テレワークをする上で困っているのが、インターネットのスピードの問題です。
会議用の資料を送信しようとしたら「30分かかります」と表示。会議そのものがいまから始まろうとしているのに間に合わない、という事は、生産性を悪化させます。

もちろん会議中の発言が聞き取れない、自分の発言だけ滞る、何度も通信が遮断されるなどは大きな問題です。テレワークが進むにつれて、管理会社や不動産オーナーに対して、入居者からの通信環境に関するクレームも増加傾向にあります。コールセンターへのクレーム件数は、1.4倍ほどに増え、「テレワークをしているのに隣の部屋がうるさい」といった騒音クレームとともに苦情の多い項目となりました。


- 総務省2022年5月27日 総務省通信利用動向調査より
賃貸物件においても「せっかくネット無料物件に入居したのに、通信速度が遅いので、自分でネットを別に引いた。もともとネット無料と言っていたのだから、通信代をはらってほしいぐらいだ」とクレームなることもあり、感情的なやり取りや、時には退去理由にすらなっています。世の中では、自宅から高速な「光回線」での接続をしている人が多く、賃貸物件で速度が遅い回線から接続していると、他の社員よりも生産性が落ち、コミュニケーションにおいても不利となるのです。

セキュリティも重要に
また、大切な会議資料などを自宅からやりとりすることになるため、社会人の部屋探しではネットワークの「セキュリティ」も重視ポイントとなっています。同じ建物で、インターネットのIDパスワードが同じという物件では、「テレワークそのものが禁止」となっている企業も増えてきました。カフェやホテルなどでもこうしたフリーWi-Fiは沢山設置されていますが、金融機関や大企業ではハッキングのリスクがあるため、使用禁止となっているのです。

オーナーにとっては「とりあえず、一番安いネットを導入しておけばいいだろう」と考えていたのですが、それが「東京でテレワークをしていた転勤族からは、うちの物件を断る理由になっていた」といったケースもあります。
特に法人需要ではケアすべき事態となっています。
仮に家賃が高くても、これがあれば決まる 「人気の設備ランキング」に「高速ネット」登場

- 全国賃貸住宅新聞2021年10月18日発表データより、プリンシプル住まい総研作表
全国賃貸住宅新聞社が毎年行っている「人気の設備ランキング」では、6年連続で「インターネット無料」が1位となりましたが、こうしたテレワークの浸透の影響を受けて、2021年、第4位に初めて「高速インターネット」という項目が登場しました。
「この設備がなければ決まらない」ランキングでも単身向け第9位に「高速インターネット」が初めて登場。「インターネット無料」かつ「しかも高速」は、重要な物件選びのポイントとなっているのです。

- 職住接近で、ライフスタイルと賃貸物件の通信環境が進化
空室対策の決め手が、「ネット無料」から「高速ネット無料」へ。働き方改革が進む将来を考えると、賃貸経営では重要なテーマとなっているのです。
執筆:上野 典行(うえの のりゆき)
【プロフィール】
プリンシプル住まい総研 所長
1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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