VALUE VOICE vol.02 Chapter3

多摩美術大学情報デザイン学科・須永剛司 教授
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多摩美術大学情報デザイン学科
須永剛司 教授
『情報デザイン』分野の先駆者・研究者として、多摩美術大学情報デザイン学科で教鞭を取る須永剛司教授。
IT社会になりデザインはどう変わったのか。今、私たちの身の回りで起きていることをひも解きながら、その教育と研究の視点と、教授ご自信がITを使った授業をどう”デザイン”されているかもお聞きしました。
現実的な問題の中に、最良のソリューションを探すヒントがある
須永先生が新しいキャンパスをもしデザインされるとしたら、ツールとして使えるITにはどんなものがありますか?
須永

うん、それにはいっぱい役に立つものはあると思うよ。ただ、ひじょうに大切なこととして、テクノロジーの側から考えていくべきではないということを主張したい。あの技術が使える、この技術が使える、それじゃあどうそれらを組み立てようか、という道筋では、ユーザが利用したくなるいいソリューションは生まれにくい。それぞれの大学キャンパスで、それぞれの活動をしている学生や職員、そして教員たちが「こういう活動をこんなやり方でやってみたい」という活動のかたちのビジョンがはじめにあって、そのためにITが有効であれば使うということが大切なんです。

一般論として、この技術がこれに使えるということのみが存在しても意味がない。そうではなく、人々の日々の現実的な活動が存在していることに配慮する必要がある。活動の中に、必要があるんですよ。ITとひとことでいっても中身は多様。だから、ほんとうにITを役立てようと思ったら、現場にいる人々のリアルな語りを聞くことからはじめるべき。それも、今、困っていないことことまでも含めて、かなり突っ込んだレベルで。そうして初めてそれぞれの課題に合ったソリューションが現場にいる人々自身の中から、自発的に形になってくるんじゃないでしょうか。

僕自身の場合を例に取れば、いちばん有効に使えているのは、ネットコミュニティですね。あれもそういうサービスがあったから使おうってなったのではなくて、ゼミのみんながスムーズに連絡を取れる方法がないか、という課題が先にあって、ネットコミュニティに行き着いたんです。でも思っていた以上のメリットもありましたよ。それは、ネット上に、教えたり学んだりする学びの場ができたってことなんです。それ以前、学びの場は教室だけでしたが、今はネットコミュニティとして、「もうひとつの教室の学び」が起きるんです。例えばある学生から質問が来る。先生はみんなに答える。そうすると、全員がその質問&回答を共有でき、一体感が生まれる。そこがすごいんです。ネットでゼミ環境が再現できてる。ITが何かの「代替」するという役割を越えて、コミュニケーション空間の「拡張」を遂げたんですよね。そのコミュニケーション空間をデザインするためには、拡張領域がメンバーの意識の中のどこに存在し、そこで生まれている対話と創造に、どんな特性があるのかということを、今、議論すべきときがきていると思います。

須永剛司(すなが たけし)

多摩美術大学美術学部情報デザイン学科教授。日本デザイン学会会員。日本認知科学会会員。ヒューマンインターフェース学会会員。多摩美術大学デザイン科立体デザイン専攻卒。筑波大学大学院芸術研究科修士修了、学術博士(筑波大学)。イリノイ工科大学研究員、スタンフォード大学客員教授を経て現在に至る。著書に『デザインが情報と出会った』(共書、「情報デザイン」グラフィック社)などがある。

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