空室対策に定番化した「インターネット無料」の今後最新!!インターネット無料物件比率がついに、43.2%に。
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2025.8.25 (月)Posted by
賃貸物件の人気設備ランキングで常に上位となっている「インターネット無料」
全国各地のインターネット無料物件はどのくらいあるのか、プリンシプル住まい総研株式会社で、各都道府県の現状を調べてみました。
その結果、最新のデータではなんと、全国平均で43.2%に達していることが判明。
いよいよ賃貸物件では定番となるのでしょうか。
■単身物件で、全国平均43.2%
プリンシプル住まい総研株式会社が、各都道府県の県庁所在地周辺にあるワンルーム・1K・1DKの物件について、SUUMO掲載情報をもとに「インターネット無料」の有無を調査したところ、全体の**43.2%**がインターネット無料物件であることが判明しました。
例年通り、「新築・築浅物件」ではインターネット無料の割合が高く、建築段階から無料インターネット設備が導入されているケースが多く見られます。一方、「築古物件」では、当初はインターネット無料ではなかったものの、空室対策や資産価値向上を目的として、インターネット無料化が進んでいる傾向が見受けられます。

■年々増加するインターネット無料物件比率
この調査は、毎年初夏にプリンシプル住まい総研株式会社が実施しているもので、図に示すとおり、インターネット無料物件の比率は年々増加傾向にあります。昨年は前年比で2.2ポイントの増加でしたが、今年はさらに大きく、5.7ポイントの増加となりました。

近年では、新築物件の多くが「インターネット無料」を標準設備として導入しているため、毎年その普及率は着実に上昇しています。
しかし、今年は昨年に比べてその伸びが顕著で、急速に普及が進んでいることが分かります。
■築古物件でも、空室対策としての導入が増加

新築物件では、インターネット無料の比率が「93.4%→89.8%→94.8%」と推移しています。2024年には建築コストの上昇により、「インターネット無料を導入せず、入居者自身で契約してもらう」方針の物件も一部登場しました。しかし、現場では「インターネット無料でないと入居が決まりにくい」という声も多く、2025年には過去最高の比率となりました。
築1-5年の物件では、「84.4%→85.4%→92.2%」と短期間で大きく上昇しています。築浅物件の家賃は上昇傾向にあるため、高い家賃を維持して満室経営とするためにも、インターネット無料設備の導入が進んでいます。
インターネット無料の新築建設が定番化したのは、ここ5年ほどのことで、それ以前は導入の是非が検討される段階でした。こうした背景もあり、2023年には築5-10年の物件で一時的に比率が「53.5%」と下がりましたが、経年的には「5割 → 6割 → 7割」と順調に増加しています。
築10年以上の物件では、建築当初はインターネット無料が一般的ではありませんでした。つまり、空室に困って、あとから設備強化をしたということになります。築10-20年の物件では、「23.4%→25.5%→29.7%」と比率が上昇していますが、いまだネット無料でない物件も存在しています。
その一方で、築20-30年では、「30.2%→31.6%→33.9%」、築30年以上では、「29.2%→33.9%→37.9%」と、築10〜20年の物件よりも高い比率となっています。
空室に悩む状況だからこそ、オーナーや管理会社は「インターネット無料」などの設備強化を進め、同じ築年数の近隣物件との差別化を図る努力をしています。こうした取り組みは、物件の魅力を高め、入居率の向上につなげるための重要な戦略となっています。
■いよいよ、40%を超えて「定番」に
全国賃貸住宅新聞が、毎年行っている「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」TOP10では、単身向け1位は「インターネット無料」、単身向け4位は「高速インターネット(1Gbps以上)」となっています。
10年以上連続で、インターネット無料が1位となっており、むしろ、「いまだに43.2%に留まっている」というのも事実です。
インターネット無料の導入には当然ながら経費がかかるため、オーナーにとっては投資を伴う空室対策に慎重になるのも理解できます。「周囲の物件が導入してから」「しばらく様子を見てから」といった判断をするオーナーも少なくありません。

しかし、いよいよインターネット無料物件の全国平均比率は、43.2%。
クープマンモデルをもとにした「田岡・斧田シェア理論」によると、「41.7%安定目標値」とされています。過半数の50%超えではなく、40%を超えると、「圧倒的優位な地位を確立し、首位を独走する安定的な立場」とされ、多くの企業が目標とすべき水準と位置づけられています。
言い換えれば、「まだ様子を見よう」「周囲が導入したら検討しよう」と慎重だった収益物件オーナーにとって、インターネット無料設備は“導入の判断基準を超えた”と言えるでしょう。
今後は、「バストイレ別」「エアコン」などと同様に「ついていないと決まらない」設備となることが予想されます。
さらに、物価高やインフレ傾向が続く中、これまでのように「オーナーが費用を負担して空室対策を行う」だけでなく、「インターネット無料を導入した分、次回の更新時や新規募集時には家賃を引き上げる」といった考え方にシフトする動きも見られています。
■人気ポータルサイトでも、検索項目の最初に
テレビ視聴や新聞購読からインターネットへという流れは、昨今の選挙などでも注目される新しい潮流です。
お部屋探しをするSUUMOの携帯版でも、「インターネット無料」は、「間取りタイプ」や「築年数」よりも先に出てくる「注目度の高い検索項目」です。
そもそも、こうしたポータルサイトで検索されないと、入居希望者のお部屋探しの候補にもならないのですから、ネット無料の定番化はかなり社会に浸透してきているといえます。

(SUUMOの検索画面。最初の絞り込み画面に「インターネット無料」が出て、下にスクロールすると「バス・トイレ別」等が出るというインターフェイスになっています。)
■これからは「高速化」がカギ
全国賃貸住宅新聞が発表する「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」TOP10では、単身者向けの第1位が「インターネット無料」、第4位が「高速インターネット(1Gbps以上)」となっています。
また、「この設備がなければ入居が決まらない」TOP10では、単身者向け第4位が「インターネット無料」、第10位が「高速インターネット(1Gbps以上)」と、いずれも上位にランクインしています。

このことから、今後は「インターネットが無料であるかどうか」だけでなく、「その通信速度や品質」が入居者の選定基準となっていくと考えられます。
すでに「43.2%がインターネット無料物件」という状況の中で、居住者の関心は「その中でも速いほうがいい」「セキュリティがしっかりしているものが望ましい」といった、より高度なニーズへと移行しています。
エアコンや温水洗浄便座などの設備では、機能の差が入居率に大きく影響することは少なかったかもしれません。しかし、インターネットに関しては、「通信速度が遅いと不便」「セキュリティに不安があるとオンライン業務に支障が出る」「資料や動画などの大容量データが送れない」といった不満が、クレームにつながる可能性もあります。
こうした時代の変化に対応するためにも、物件の設備強化は「無料化」から「高品質化」へと進化していく必要があるのです。
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執筆:上野 典行(うえの のりゆき)
【プロフィール】プリンシプル住まい総研 所長
1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長・中国ブロック副ブロック長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。
