• 2023.4.17 (月)
    Posted by 北森 雅雄

AI-OCRとは? 基本から導入メリット、成功事例まで徹底解説!

AI-OCRとは、OCR(Optical Character Recognition/光学文字認識)に、AI(人工知能)技術を融合させた最先端のOCR技術のことです。

AI技術を組み合わせることで、従来のOCRに比べて文字認識精度やレイアウト解析精度などが大幅に向上。多岐にわたる分野での業務改善の実現が期待されています。

今回は、AI-OCRについて、前提知識や選定のポイントなどを分かりやすく解説します。

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1.AI-OCRとは

OCRは、画像データに記載されている文字を抽出し、文字データに変換する光学文字認識機能です。OCRにAIの技術を組み合わせたAI-OCRは、文字の補正精度を飛躍的に向上したものです。従来のOCRでは難しかった手書きの文字列や、非定型フォーマット文書の読み取りも可能になってきており、その適用可能な範囲の広さが、注目を浴びています。

2.AI-OCRとOCRの違い

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AI-OCRとOCRの違いについて解説します。

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文字情報を継続的に学習する(ディープラーニング)

OCRで読み取る文字は印字である必要がありました。手書き文字は人によって筆跡が異なり、たとえば「ン(ん)」と「ソ(そ)」など誤認識が発生しやすいためです。AI-OCRでは筆跡の特徴も学習するため、手書き文字も高精度で識別できます

AI-OCRは印字・手書き両方に対応するもの、その片方に特化したものなどサービスごとに特徴が異なります。読み取りたい帳票が印字・手書きどちらなのかによって、サービスの比較を行いましょう。

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手書き文字でも識字率が高い

また、AI-OCRは従来のOCRでは読み取ることが難しかった「手書きの文書」を高い精度で読み取れます。日本のビジネスシーンでは、銀行の窓口業務や、企業の郵送物の送り状などのように手書きの帳票が多く利用されています。そのため、AI-OCRの導入によって手書き帳票がデータ化できれば、大きな業務効率に繋がるのです。

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設定に手間がかからない

OCRは、スキャナーで読み取った画像から文字として読み取る範囲をレイアウト上で指定します。レイアウトをテンプレート登録することも可能ですが、伝票や帳票などフォーマットが異なる非定型の書類は、毎回レイアウトを指定しなくてはなりません。これに対してAI-OCRは、レイアウトが異なる帳票やフリーフォーマットで作成された文書も読み取ることが可能です。

3.AI-OCRを導入するメリット

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ここでは、AI-OCRを活用することで日常業務がどのように効率化できるのか、どんなメリットが得られるのかを紹介します。

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目視によるチェックや手入力の省力化

AI-OCRは手書き文字をはじめ、読み取り精度が高いため、読み取った書類の目視によるチェックや修正の手間を減らすことが可能です。また、紙の文書を人がデータに打ち直す際、手入力作業では打ち間違いなどのミスも発生しますが、AI-OCRを活用することで人的なミスを大幅に減少させることができます。

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書類や文書のペーパーレス化

手書きの帳票をはじめ、紙ベースの書類や文書を電子データ化することで、オフィスのペーパーレス化を実現することができます。例えば、名刺もAI-OCRで読み取ってしまえば整理や管理がしやすくなるため、いつまでも取っておく必要がありません。  また、FAXも紙で出力するのではなく、受信した情報のデータ化が可能です。このようにペーパーレス化が進むと、これまで書類を保管するために使用していたスペースや、管理の効率化を図ることができます。

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情報のデータベース化

これまで紙ベースで存在していた膨大な資料を、AI-OCRで読み取って電子データ化することでデータベース化が可能です。情報が一元化されれば、紙資料では時間がかかっていた検索が瞬時に可能となるほか、社内での情報共有もしやすくなり、企画書や提案書などの作成もスムーズに行えるようになります。


RPAとの連携で大幅に業務の効率化が期待できる

 RPA(Robotic Process Automation)とは、人間が手作業で行っていたコンピュータ上の作業を代行して自動化する技術のこと。このRPAとAI-OCRを連携させることで、さらなる業務の効率化が可能となります。  AI-OCRで読み取ったデータの抽出、ファイル作成、データ転記といった一連の業務を人に代わってRPAが実行することで、定型業務にかかる作業の自動化が可能となります。

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4.AI-OCRの種類

AI-OCRには大きく分けて3種類あります。ここでは、それぞれのメリットとデメリットを紹介します。

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汎用×定型フォーマット型

読み取る帳票の種別は特に限定されていない「汎用」ですが、読み取る帳票のフォーマットは「定型」となるタイプです。そのため帳票のフォーマットを定義したうえで、文字列などの指定を行う必要があります。定型フォーマットを使うため、文字等の抽出精度は高くなるものの、人間がフォーマット定義を行わなければならないため、事前の設定準備に時間がかかってしまうデメリットがあります。

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汎用×非定型フォーマット型

読み取る帳票の種別は「汎用」となりますが、読み取る帳票のフォーマットは「非定型」となるタイプです。AIに帳票のフォーマットを学習させることで、人間が行うフォーマットの定義作業が不要になるメリットがあります。  一方、学習に必要なデータ収集や学習させるために時間がかかるデメリットがあります。また、読み取った帳票の中に新規フォーマットが紛れていた場合には、事前に学習されていないことから読み取りができなかったり、読み取り精度が低くなるケースもあります。

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業務特化×非定型フォーマット型

読み取る帳票の種別は「特定種別」、帳票のフォーマットは「非定型」となります。あらかじめ導入時にAIへのフォーマット学習が済んでいるので、ユーザーが学習させる手間がかからず、なおかつ多岐にわたるフォーマットの帳票を読み取ることが可能です。  そのため、処理する対象の帳票が請求書や納品書などに限定されていて、大量の作業が発生する企業の場合は多大な業務の効率化が期待できます。ただし、特定の帳票に限定されるというデメリットがあります。

5.AI-OCRを選ぶ時に押さえたいポイント

AI-OCRの導入を検討する時に、抑えるポイントは以下の3つです。

 ・読み取り精度が実運用に耐えられるか
 ・設定やアップロードが簡単にできるか
 ・困った時に相談できるか

1つづつ解説します。

読み取り精度が実運用に耐えられるか

AI-OCRで一番抑えるべき要素は、許容できる程度に精度が高いかどうかです。 誤字が多発するようでは、データ化後の修正時間に多く稼働をとられてしまい、直接入力したほうが早い、といった事態を招きかねません。 導入前に、現場で使っている実書類で読み取りテストを行い、どの程度読み取れるかを確認すると、実運用で耐えられるかどうかを確認できるのでオススメです。


設定やアップロードが簡単にできるか

精度が高くても、設定やアップロードの操作が複雑では、運用を回せるようになるまえに断念してしまう可能性があります。 操作方法をデモIDやトライアル契約をして実際に操作が習得できるか確認しましょう。


困った時に相談できるか

どのようなサービスでも、利用を進めれば求める設定も高度になっていったり、ノウハウを聞かないと解決できないことが出てきます。 そのような時に、相談できるサポート窓口があるかどうかも、検討の大きな判断軸の1つです。日中だけでなく、8時前後までサポートがあると落ち着いた時間に相談できるのでオススメです。 また、検討するにあたり、色々なAI-OCRについてまとめた記事もありますので、あわせて検討の際にお読みいただければと思います。

あわせて読みたい

AI-OCRの相場は?価格などの種類を解説

AI-OCRが使えない?陥りがちな3つの落とし穴

6.AI-OCRを導入し業務を変革させた5つの成功事例


1日に最大6,000件の入力業務を自動化 | 武蔵野市

2020年4月20日に「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定したことを受け、各自治体は特別定額給付金事業の実施に向けて一斉に動き出しました。東京・武蔵野市では、約7万8,000世帯に上る膨大な申請書情報の入力情報を限られた人員で、いかにスピーディーに進めるかが課題となりました。

具体的に実施する作業は、市民から届いた給付金申請書に不備がないかを確認し、申請書の記載内容を特別定額給付金システムへ入力するというシンプルなもの。従来ならば、職員が申請書の情報をシステムに手入力する作業です。しかし、膨大な量を処理するには時間がかかり、集中力も低下することで、誤入力やチェック漏れといったミスが発生することも想定されます。

この課題に対する解決策として、武蔵野市ではAI-OCRとRPAの導入を決定しました。導入決定から、わずか2週間という早さでAI-OCRとRPAによる運営を開始。仮運用では多少のエラーも出ましたが、その修正作業は2日間で終了し、本格運用となりました。

最繁忙期にはAI-OCRとRPAで1日最大6,000件の入力作業を行いました。これは職員3人が手入力した場合の約4倍のスピードで、稼働削減効果は約75%(約43.8日分)でした。これにより武蔵野市は、都内の自治体の中でも屈指のスピードで特別定額給付金の給付を行うことができたのです。


稼働時間を約80%削減 | 辻・本郷税理士法人

全国64拠点、海外に6拠点を持つ、辻・本郷税理士法人では業務において2つの課題を抱えていました。1つは、書類転記業務が非常に多いことに加え、膨大な紙保管のリスク。もう1つは、日常的な書類作成作業に時間を取られすぎ付加価値の高い業務に時間が割けない、というものでした。

そこで同社が試験的に着手したのが、税務書類作成に必要な通帳のデジタル化でした。従来は、複数の社員が通帳をコピーし、エクセルに手入力、紙で保管していました。

この業務には通帳一冊の処理に約54分の時間がかかっていましたが、AI-OCRを導入しRPAと組み合わせることで、一冊あたりの処理時間が約10分に大幅短縮。さらには複数人で行っていた入力作業も、自動入力されたデータを一人が確認するだけで済むようになりました。

紙を保管する必要もなくなったため、管理・処分にかかっていたコストを削減できました。

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不動産業における帳票処理をRPAで自動化|株式会社ジェイエーアメニティーハウス

神奈川県内で、JA組合員の賃貸物件管理を主業務に約20,000戸を管理する、株式会社ジェイエーアメニティーハウス。不動産業では現在も紙の管理帳票を用いるケースが多いため、膨大な処理業務が従業員の大きな負担となっています。

同社の場合、月の新規賃貸契約が約350件発生し、契約に必要な書類は1件あたり6種類。延べ約2,100枚の書類を、エクセルと基幹システムの2つに転記する業務を行わなければなりません。また、契約更新や住居のメンテナンスのタイミングでもその都度、帳票処理が発生するため、請求書だけでも月に6,000〜7,000件。処理にかかる人的コストは多大でした。

同社では、この課題解決に向けて以前から着目していたAI-OCR とRPAのトライアル導入を決定。その結果、1件あたりの稼働時間を55.32%削減、AI-OCRの読取精度は94.73%という実績が確認されました。

帳票処理業務が自動化され、担当者の負荷が減ることから、今後は人員配置の最適化を行い、顧客に対してより価値あるサービスの提供を目指していくとのこと。また、業務の効率化によって従業員のモチベーション向上、職場の活性化に寄与することも期待されています。


職員数減少の危機をAI-OCRで解決|茨城県大子町


少子高齢化に伴い、20年後には日本の労働力人口が大幅に減少することへの警鐘がならされています。これは一般企業だけの問題ではなく、自治体も現在の半分の職員で従来の業務を担う「スマート自治体」への転換が迫られています。

このような状況の中、茨城県大子町では2014年度から実施している「タクシー利用助成事業」の紙帳票入力業務においてAI-OCRを活用し、業務効率化を図っています。

「タクシー利用助成事業」とは、市内在住の65歳以上で車の運転ができない町民に対し、通常料金の半額で利用できるタクシー券を配布するというもの。利用後にタクシー運転手が手書きで利用区間と料金を記入し、それを事業者がまとめて月末に役場へ提出、これを役場が集計し、割引分を支払う仕組みです。月平均で約1,100枚、年間で1万枚を超えるタクシー券の入力業務を一人の担当者が行うため、大きな負担になっていました。

この問題を解決するために同自治体では2020年1月にAI-OCRの導入を決定。住民の個人情報を取り扱うため、インターネット経由ではなく、閉じたシステム構成内で強固な情報セキュリティを担保する「LGWAN(Local Government Wide Area Network/総合行政ネットワーク)」でも利用できるサービスを検討しました。

これまで一人の担当者が紙のタクシー券を目視でチェックし、一枚ずつ手入力していた業務も、タクシー券をスキャンし、その画像をAI-OCRが読み取ってCSVに変換、Excelに貼り付けるだけになり、担当者が丸4日間かかりきりだった作業を約30%削減することができました。  この成功を受け、今後は紙帳票を大量に処理する他業務へと活用領域を広げ、さらなる業務の効率化が期待されています。


LGWAN対応のAI-OCRで入力作業時間を約8割削減|岩手県久慈市

岩手県久慈市では職員の減少が進む中、職員の健康を維持しながら、住民サービスの質的向上を図るための業務効率化を模索していました。
そこで注目したのが、AI-OCRとRPAでした。

ただし、住民の個人情報を扱うにあたり強固な情報セキュリティの担保が条件となります。これをクリアしたのが、自治体の閉鎖ネットワークであるLGWANに対応したNTT東日本のAI-OCR「AIよみと〜る」とRPA「おまかせRPA」の組み合わせでした。

久慈市では、まず実証実験として「AIよみと〜る」と「おまかせRPA」を導入し、ふるさと納税の申請書の処理業務の自動化に取り組みました。その結果、約4,000枚のアンケート集計業務を自動化することで約83%の時間削減につながり、作業に要する時間は月あたり約78%の削減を実現しました。

なお、久慈市では他の業務での導入も検討中であり、さらには新型コロナ感染拡大を機に持ち上がった職員のテレワーク導入の足がかりになることも期待しているそうです。 その他の活用事例について以下の記事でまとめてるので参考にしてください。

あわせて読みたい

AI-OCRはどう活用できる?RPAとの連携や導入事例について紹介

7.まとめ


今回はAI-OCRについて基本から解説しました。 NTT東日本では、識字率96.71%のAI-OCR「AIよみと〜る」を電話サポートつきで提供しています。実際にAI-OCRのデモや読み取りテストも無料で受付けてます。ぜひお気軽にお問合せください

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori

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