電子請求書の保存義務化はいつから?改正電子帳簿保存法概要を含め解説
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2023.8.23 (水)Posted by 北森雅雄
「電子請求書の電子保存義務化はいつから?」
「電子保存義務化をするにあたって何を考えればよい?」
と考えている方も多いのではないでしょうか。
電子帳簿保存法の改正により、電子請求書は2024年1月までに電子保存が義務化されています。
電子請求書を電子帳簿保存法の要件に基づいて保存するためには、帳票の棚卸、要件整理、システム設定、業務フロー規程類の整備といくつか段階があります。
当記事では電子請求書の電子保存義務の概要、2024年1月までに検討すべき事項について解説をします。
電子請求書の電子保存義務化について、対応すべき事項を5ステップで理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
1.電子請求書の電子保存義務化は2024年1月から
2022年1月に改正された電子帳簿保存法では、電子取引した電子請求書の電子保存が義務化されています。一方、宥恕措置により2024年1月までに電子保存対応をすれば良いとされている点に留意ください。
以下では、電子請求書の電子保存義務化について概要を説明します。
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電子帳簿保存法とは電子的に帳簿や書類を保存することを認めた法律
電子帳簿保存法とは、読んで字のごとく電子的に帳簿や書類を保存しても良いと認めた法律です。1998年に施行されてから、2022年1月の改正に至るまで、世の中のペーパーレスDXを推進するために改正が繰り返されてきています。
電子帳簿保存法では、保存対象となる国税関係帳簿書類の種類によって4つの要件区分があります。その中で、相手方とメールに添付して電子請求書を取り交わすなどは電子取引に該当し、電子帳簿保存法 電子取引要件を満たした保存が求められているのです。
2022年1月に改正された電子帳簿保存法では、電子取引要件において、電子取引した電子請求書を含む文書の電子保存義務化をしています。したがって、本来であれば2022年1月以降、やり取りした電子請求書は電子保存している必要があったのです。
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宥恕措置により電子保存の義務化は2024年1月から
2022年1月の電子帳簿保存法改正直前の段階で電子保存の義務化に対応できている企業は限定的でした。この事態を重く見た国税庁によって、電子取引の保存義務化対応について対応期限を2年間延長させる宥恕(ゆうじょ)措置が公表されたのです。
したがって、電子請求書の電子保存は2024年1月までに対応すればよいでしょう。つまり、2024年1月まではこれまでどおり、電子請求書を紙出力して保存したとしても、電子帳簿保存法 電子取引要件上は適法であると判断されます。
ただし、一度紙出力した電子請求書を再度電子化して保存することは認められていない点に要注意です。一度、紙出力した電子請求書は法人税法上で定められる期間、紙を原本として保存する必要があります。
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宥恕措置により電子保存の義務化は2024年1月から
2022年12月に公表された税制改正大綱上で2024年1月以降の電子帳簿保存法の要件が公表されました。一部要件が不透明であるものがあるものの、ある程度要件の全容が見えている状況です。
結論、2024年1月には宥恕措置は廃止されます。代わりに電子帳簿保存法の電子保存の義務化については、猶予措置が実施される見込みです。猶予措置では以下の要件を満たせば、2024年1月以降の電子請求書の紙保存ができます。
- ●保存要件にしたがって保存ができなかった相当の理由がある
- ●電磁的記録のダウンロードの求めに応じる
- ●電磁的記録の出力書面の提示、または、提出ができる
上記条件の”相当の理由がある”とは、具体的に何か現段階(2023/6時点)では公表されていません。したがって、自社が該当するかは今後の国税庁による公表を待つ必要があるでしょう。
また、上記の猶予措置を適用したとしても、ダウンロードの求めに応じる必要があるので、結局は紙と電子の二重保存になります。この点を留意の上、2024年1月以降の対応方針をご検討ください。
2.電子請求書の電子保存に向けて行うべきこと
2024年1月からの電子保存義務化に向けて、行うべき項目を5ステップでご紹介します。行うべき事項は以下の通りです。
- ●自社で扱う電子請求書を棚卸する
- ●電子請求書の保存要件を整理する
- ●保存要件に適合するシステムを利用/導入する
- ●業務フローを整備する
- ●事務処理規程を整備する
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自社で扱う電子請求書を棚卸する
最初に自社で扱う電子請求書含む、電子帳票の棚卸をする必要があります。電子請求書だけでいっても、取引手段によって例えば以下の種類があります。
- ●メールに電子請求書を添付してやり取り
- ●Webサイト上から電子請求書をダウンロード
- ●インターネットFAX経由で電子請求書のやり取り
- ●EDIシステム上で電子請求書情報をやりとり など
以上のように電子請求書といっても多数の取引手段が想定されるのです。取引手段によって、適用可能な法要件は異なりますので、まずは電子請求書を含む電子帳票の棚卸が必要です。
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電子請求書の保存要件を整理する
棚卸した電子請求書を含む電子帳票に対して、満たすべき法要件を整理します。電子帳簿保存法 電子取引要件を満たす場合、大きく以下2点の検討が必要です。
要件①:真実性
真実性とは、電子請求書などを授受した後に改ざんされていないことを証明する要件です。電子帳簿保存法 電子取引要件では以下いずれかの選択肢の中から1つを選択して、対応できるとされています。
- ●タイムスタンプが付与された文書の受領、または、タイムスタンプの付与
- ●訂正削除が考慮されたシステムの利用、または、訂正削除ができないシステムの利用
- ●訂正削除の防止に関する事務処理規程の作成および運用
要件②:可視性
可視性とは電子請求書など、特定の文書を整然かつ明瞭、速やかに特定し、提示できることを求める要件です。可視性を構成する要件はいくつかあり、その中でも特徴的な要件が検索性の要件です。
検索性では、税務監査時にダウンロードの求めに応じることができる場合には、以下項目により検索ができればよいとされています。
- ●取引年月日
- ●取引先名
- ●取引金額
ただし、ダウンロードの求めに応じることが難しい場合には、以下の検索が必要です。
- ●範囲検索
- ●複数条件検索
システムから発行されている電子請求書は発行システム上で対応できることもある
システムから一貫して発行され、相手方に送付されている電子請求書などの場合、大本の発行システム上で”請求データ”として保存すれば、電子取引要件対応ができる場合があります。
問 40 自社が発行した請求書データの保存について、当該データに記載されている内容が事 後的にわかるものであれば、データベースにおける保存でもよいでしょうか。 【回答】 発行した請求書データの内容について変更されるおそれがなく、合理的な方法により編集 された状態で保存されたものであると認められるデータベースであれば問題ありません。 |
したがって、帳票の棚卸の際に送付した文書については発行したシステム上での電子帳簿保存法対応が可能かも確認する必要があるでしょう。
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保存要件に適合するシステムを利用/導入する
電子請求書などの保存要件を整理した後、保存要件を満たすシステムの導入や設定をする必要があります。保存要件でタイムスタンプの付与や主要三項目による検索がある場合には、これらが実現可能なシステムを比較検討して利用ください。
また、法人税法上で電子帳簿保存法の対象書類である文書は最低7年以上の保存が求められています。したがって、もしクラウドサービスを利用するのであれば、クラウド上で長期保存ができるのか、長期保存した場合のコストはどの程度か調査が必要です。
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業務フローを整備する
保存要件を満たすための運用を整備する必要があります。例えば、営業担当者が電子請求書などを受領した場合、どのような過程を経てシステム上に保存するかを明記して、周知が必要です。
電子帳簿保存法上は業務フローの作成は必須ではありません。しかし、以下観点から業務フローの作成および運用を推奨しています。
- ●電子帳簿保存法対応に伴う社員教育での活用
- ●監査時時の説明時に活用
- ●業務効率化対応のインプットとして活用 など
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事務処理規程を整備する
電子帳簿保存法 電子取引要件における真実性の確保をするためには、多くの場合で事務処理規程の作成も必要になります。
なぜなら、タイムスタンプはPDF文書のみに付与できる場合が多く、また、訂正削除が考慮されたシステムでは、一部の限定的な文書のみに対して真実性を確保できるからです。
問4 当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存し ておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。 【回答】イ ⑴及び⑵については一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えますので、受領したデータに規則第4条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていない場合には、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は同項第4号に定める事務処理規程に基づき、適切にデータを管理することが必要です。また、対象となるデータは検索できる状態で保存することが必要ですので、当該データが添付された電子メールについて、当該メールソフト上で閲覧できるだけでは十分とは言えません。 |
上記のように一度ダウンロードした文書に対しては、訂正削除が考慮されたシステムによる真実性確保はできません。
したがって、多くの場合で事務処理規程の作成も必要になりますので、自社の法要件整理と照らし合わせて、自社に必要な規定を作成するようにしてください。
3.2024年1月までに電子請求書の電子保存対応をしよう
2024年1月以降、電子帳簿保存法の改正により猶予措置が実施されますが、どのような要件の元で利用できるのか不透明な部分が大きいです。したがって、現段階では2024年1月までに電子請求書の電子帳簿保存法 電子取引要件対応をできるようにした方がいいでしょう。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。