【2023最新】電子契約に関係する法律まとめ 改正法など含め解説!
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2023.4.17 (月)Posted by 北森 雅雄
「電子契約を利用する際に何の法律を知っておくべき?」
「電子契約保管時に満たす必要がある法律的な要件はあるの?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
電子契約を利用することでコストの削減やリードタイムの短縮などメリットがあります。一方で、電子契約を利用する際には満たすべき法的な要件がありますので注意が必要です。もし、要件を満たしていない旨を国税調査時などに指摘された場合、ペナルティが課される場合もあります。
そこで当記事では、電子契約を利用する際に知っておきたい法律を解説します。改正法を含め最新の状況を把握できる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
また、電子契約の基本を知りたい方は、こちらの記事を読む前に以下の記事もあわせてごらんください。
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1.電子契約活用時には各種法律に基づいた運用が必要
電子契約を利用することで以下のメリットがあります。
- ●契約業務にかかるコストの85%を削減可能
- ●契約業務を最短1日で完結可能
- ●契約業務のコンプライアンスの強化が可能 など
非常に大きなメリットですが、電子契約を活用する際には、関連する法律に基づいた運用が必要になるため注意が必要です。電子契約に関連する法律の一例は以下の通りです。
- ●民法
- ●民事訴訟法
- ●電子署名法
- ●デジタル改革関連法
- ●宅建業法
- ●建設業法
- ●特商法
- ●印紙税法
- ●電子帳簿保存法
- ●法人税法 など
電子契約に関連する法律を挙げ始めると枚挙にいとまがありませんが、実務上で知っておくべき法律はある程度限定されます。以下では、実務上で知っておくべき法律をポイントを絞ってみていきましょう。
2.電子契約活用時に知っておきたい法律
実務上で電子契約を活用する際に知っておきたい法律は大枠以下の4点です。
- ●電子契約が法的効力を持つ理由に関わる法律(民法・電子署名法・民事訴訟法)
- ●電子契約では印紙税が非課税である理由に関わる法律(印紙税法)
- ●電子契約の作成時に書面契約を電子化可能か確認が必要な法律(デジタル改革関連法・宅建業法)
- ●電子契約の保管時に満たすべき要件のある法律(電子帳簿保存法・法人税法)
順を追って解説していきます。
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電子契約が法的効力を持つ理由に関わる法律(民法・電子署名法・民事訴訟法)
電子契約導入時に相手方へ電子契約サービスの利用をお願いする場面があります。その際に、高頻度で質問されるのが「電子契約は法的に問題がないのか?」という質問です。
この質問に適切に回答するためにも、なぜ電子契約は法的に問題がないと言えるのか理解をしておく必要があります。
契約が有効に成立するための形式に定めはない
民法522条2項の契約方式の自由により、契約が有効に成立するための形式に定めはありません。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。 |
出所:民法522条2項
したがって、口頭などの証拠を残さない形式の契約であったとしても、契約は有効に成立します。ただし、ここで契約が有効に成立することと、契約を万が一の裁判時に証拠として利用できることは別問題である点に注意が必要です。
民事訴訟法228条1項にあるように、契約を裁判に証拠として提出するためには真正性を満たす必要があります。
"1 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。"
出所:民事訴訟法228条1項
書面契約では二段の推定により真正性を確保する
書面契約では記名押印をすることによって、二段の推定により真正性を確保していました。二段の推定とは、「契約者当人の押印があるのであれば、本人の意思によって押印していると推定する」という考え方です。
具体的には以下の2段階の推定を経ることで、押印が付与されていれば、真正に成立したとしています。
- 本人の実印が押されているため、本人の意思によって押印されたと推定する。(経験則による推定)
- 本人の意思により押印された契約書であるので、真正に成立すると推定する。(民事訴訟法228項4条)
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。 |
出所:民事訴訟法228条4項
電子署名付の電子契約は真正性を確保できる
では、電子契約ではどのように真正性を確保するかというと、電子署名を付与することで真正性を確保します。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出所:電子署名法3条
以上から、電子署名が付与された電子契約であれば、書面契約と同様に成立する上に、係争時に証拠として利用ができるといえるでしょう。
まだまだ、電子契約が係争時に証拠として利用された例は少ないですが、実際に、東京地裁令和1年7月10日貸金返還等請求事件などで証拠として利用されたケースもあります。
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電子契約では印紙税が非課税である理由に関わる法律(印紙税法)
電子契約サービス導入時に相手方への導入依頼をする際、電子契約サービスの導入メリットを説明する場合があります。
この時、電子契約サービス導入メリットの中の1つとして、印紙税削減によるコスト削減効果がありますので、なぜ印紙税を削減できるか理解しておく必要があるのです。
印紙税は課税文書に課税される
そもそも、印紙税とは印紙税法に基づき文書中に記載のある金額に応じて課税される税金です。印紙税法3条より、印紙税法の課税対象は「課税文書」であるとわかります。
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
出所:印紙税法3条
電子契約は課税文書に該当しないので非課税
では、「課税文書」とは何かというと、印紙税法44条より、「用紙」つまり「紙」であるとわかるのです。
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
出所:印紙税法44条
したがって、電子契約は紙ではありませんので、非課税であると判断ができます。
国会答弁で非課税である旨が公表されている
実際に2005年の国会答弁で当時首相であった小泉首相から電子契約に対して印紙税が非課税である旨が以下のように述べられています。
事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである |
出所:参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書
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電子契約の作成時に書面契約を電子化可能か確認が必要な法律(デジタル改革関連法・宅建業法)
実際に電子契約サービスを利用して電子契約を作成する際に、電子契約化してはいけない契約書が存在します。もし、電子契約化ができない契約書を電子契約化し、書面契約(原本)を破棄した場合、国税調査時などの際に問題になりますので注意が必要です。
したがって、どの契約書であれば電子契約化できるのか、できないのかを把握しておく必要があります。
2021/9にデジタル改革関連法が施行され、電子契約化可能な契約書が増えた
2021/8以前まで契約書の中には、電子契約が利用できず、法的に書面契約が義務付けられた契約が多数存在していました。しかし、リモートワークの普及によるペーパーレスDXの高まりを受け、2021/9にデジタル改革関連法が施行されています。
その中の取り組みの1つである「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」で「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」が実施されました。
「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」により、不動産業界などを中心にこれまで電子契約化が難しかった契約書の電子契約利用が解禁されたのです。
一部の契約書では引き続き書面契約が必要であるので注意が必要
2022/5に改正宅建業法が施行されたことで、ほぼすべての契約書の電子契約化が可能になりました。しかし、一部の契約書では引き続き書面契約が義務付けられている点に注意が必要です。
書面契約が引き続き求められる契約書は以下の通りです。
文書名 |
根拠法令 |
改正法施行予定 |
事業用定期借地契約 |
借地借家法23条 |
- |
企業担保権の設定又は変更を目的とする契約 |
企業担保法3条 |
- |
任意後見契約書 |
任意後見契約に関する法律3条 |
- |
特定商取引(訪問販売等)の契約等書面 |
特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条 |
2023年6月 |
逆に言ってしまえば、上述の契約書さえ把握しておけばそれ以外の契約書は電子契約化できるわけですから、上述の契約書は確認しておきましょう。
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電子契約の保管時に満たすべき要件のある法律(電子帳簿保存法・法人税法)
電子契約は電子とはいえ、契約書ですので各種税法に基づいた保存が必要です。要件を満たして保存をしていない旨を国税調査時に指摘された場合、ペナルティが課される場合もありますので確実な対応が求められます。
電子契約の保存時には電子帳簿保存法の要件を満たした保存が必要
電子帳簿保存法とは、電子的に帳簿や書類を保存してよいと認めた法律です。1998年に施行されて以降、世間のペーパーレスDXを後押しする形で改正を繰り返してきている背景があります。
電子契約は電子取引に該当するので、電子取引要件を満たした保存が必要
この電子帳簿保存法の中で、電子契約は相手方と電子上でデータのやり取りをする電子取引に該当しますので、以下のような電子取引要件を満たした保存が必要です。
- ●電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
- ●見読可能装置の備付け等
- ●検索機能の確保
- ●真実性の確保
この中で特に要件を満たすことが難しい以下の2つの要件に絞って解説をします。
- ●検索機能の確保
- ●真実性の確保
検索機能の確保については、最低、主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)で検索できる必要があります。ただし、この場合、国税調査時に国税調査官からの対象データのダウンロードの求めに応じられること、という前提が必要になりますので注意が必要です。
対象データのダウンロードの求めに応じることに不安を感じる場合には、主要三項目に加えて範囲検索、複数条件検索ができる必要があります。
真実性の確保については以下のいずれかの要件を満たすことでよいとされています。
- ●タイムスタンプが付された後の授受、または、 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
- ●データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
- ●訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
最も簡単、かつ、確実に要件に対応ができるのはタイムスタンプの付与です。タイムスタンプが付与可能な電子契約サービスをおすすめします。
電子帳簿保存法は2022/1に改正され、紙保存措置が廃止されている点に注意
電子帳簿保存法は2022/1に改正され、全体的に要件緩和が目立ったことで企業がペーパーレスDXをしやすい状況になっています。
一方で、電子取引要件においては紙保存措置廃止が盛り込まれたことで、電子取引した電子文書は電子保存が義務付けられることになりました。
もし、要件を満たした保存をしていない旨を国税調査時に指摘された場合には、青色申告の承認取り消しなどリスクがありますので、必ず要件を満たした保存をするようにしましょう。
令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存をもって、当該電磁的記録の保存に代えることはできません。したがって、災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。
ただし、2021/12には税制大綱上で上述の紙保存措置廃止について2年間の宥恕措置が公表されています。この宥恕措置により、厳密に紙保存措置廃止に対応開始が必要な時期が2024/1以降となりました。
とはいえ、原則的には電子取引した電子文書は電子保存が必要になりますので、早期に対応をすることをおすすめします。
電子契約は最低7年間の保存が必要
電子契約は法人税法上で7年間(繰越欠損金がある場合は10年間)の保存が必要です。
2022/1の電子帳簿保存法改正によって、電子取引要件では紙保存措置廃止が要件に追加されていますので、電子取引に該当する電子契約は電子ファイルとして7年以上の保存が求められています。
電子署名の有効期限は法定で7年とされていますので、長期間電子署名の効力を保持する場合には長期署名(電子署名+タイムスタンプ)が付与可能な電子契約サービスの導入を検討する必要がありますので、留意してください。
四 電子証明書の有効期間は、五年を超えないものであること。
出所:電子署名法6条
3.まとめ 電子契約活用時には関係する法律に目を通しておこう!
電子契約を活用する際には、知っておきたい法律がいくつかあります。その中でも実務上で優先的にキャッチアップが必要とされる法律はありますので、まずは優先順位の高い法律から目を通してみるとよいでしょう。
とはいえ、各種法律に目を通して理解するのには骨が折れます。最も簡単に各種法律に対応した電子契約運用をする方法は電子契約サービスの利用ですので、一度電子契約サービスの導入を検討してみるのも手でしょう。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。
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