会計期間と事業年度の違いは?事業年度を決めるポイントを解説
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2023.3.21 (火)Posted by 北森 雅雄
「会計期間と事業年度の違いは?」「事業年度の決め方がわからない」という方は多いのではないでしょうか。
会計期間は会計上、事業年度は税務上の計算対象となる期間を指します。会社は期間を自由に決めることが可能なものの、決め方には一定のルールやポイントがあります。
そこで本記事では「会計期間・事業年度の概要」と「事業年度を決めるときのポイント」について解説します。
会計期間や事業年度を理解したい経理担当の方や起業を考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
目次:
1.会計期間と事業年度の違い
会計期間と事業年度は、どちらも損益の計算期間を意味します。
2つの期間は重なるため、区別せず同じ意味として使われることも多い一方で、計算期間を会計期間と事業年度で使い分ける場合があります。
ここでは、会計と税務の違いを確認しておきましょう。
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会計期間とは?会計上の対象となる期間
会計期間とは、会計における損益の計算期間です。
会社では日々営業取引や経営管理がおこなわれ、お金が動いています。
会計とは、このお金の動きを記録し、会社の損益や財産状況をまとめた「財務諸表(決算書)」を作成する一連の業務のことです。
財務諸表を作成する上で、記録した損益や資産状況をまとめるためには、一定の期間を区切らなければいけません。
この「期間を区切る」という考え方を詳しく記載しているのが、企業会計である企業会計公準です。
企業会計公準には「継続企業の公準」という、企業会計における期間の前提となる考え方があります。会社の経済活動は半永久的に継続し、会社は解散しないと仮定されているため、一定期間の損益を計算し報告する会計期間を決める必要性が生まれました。
半永久的に継続する企業のある時点の損益をステークホルダーに説明するために生まれたのが、会計期間という考え方です。
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事業年度とは?税務上の対象となる期間
事業年度とは、税金計算に必要な所得の計算期間です。
会社では会計期間で計算した損益をもとに、税務処理することが必要になります。
税務とは、会社が納付する税金を計算し、申告書を作成する業務のことです。
税金を計算する期間は会社法と法人税法で決められており、この期間を事業年度といいます。
それぞれの定義を確認しましょう。
・会社法の会社計算規則第59条2項 事業年度は前事業年度末日の翌日(前事業年度がないときは成立の日)から1年以内の期間。また、事業年度を変更したときは、最長1年6ヶ月まで期間を延長することができる。
引用元:e-Gov法令検索 会社計算規則
・法人税法第13条1項 事業年度は定款記載の期間もしくは税務署に届けた期間で原則1年間。1年間を超える場合は会社法とは異なり、1年と1年未満に分けなければならない。
引用元:e-Gov法令検索 法人税法
なお、会社法では事業年度が1年以内であれば、6ヶ月など1年ではない期間も認められています。しかし、法人税法とズレが出て手続きが複雑になるので、一般的には1年に設定する会社が多いです。
2.会計期間(事業年度)は1年間!時点を表す用語を解説

会計期間のある時点を指す期首や期末といった言葉が、会計では使われます。
会計期間の基本用語である次の言葉を整理しておきましょう。
- ●期首
- ●期末
- ●期中
- ●当期
- ●前期
- ●翌期
- ●決算
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期首・期中・期末はいつ?
会計期間の用語として、期首・期中・期末があります。
- ●期首……会計期間の開始日
- ●期末……会計期間の最終日、かつ決算日
- ●期中……期首から期末までの期間
たとえば、会計期間が4月1日から3月31日の場合、期首は4月1日、期末は3月31日、期中は4月1日から3月31日の間となります。
また会計期間をあらわす言葉として、前期・当期・翌期もあるので覚えておきましょう。
- ●当期……現在進行中の会計期間
- ●前期……当期の1つ前の会計期間
- ●翌期……当期の次の会計期間
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期首・期中・期末はいつ?
決算とは、会計期間の損益を計算し、決算日時点での資産状況を確定させて財務諸表を作成する手続きです。
決算には、本決算・中間決算・四半期決算・月次決算があります。
- ●本決算……期末に行う会計期間全体の決算
- ●中間決算……会計期間の半分で行う決算
- ●四半期決算……会計期間を3ヶ月ごとの4つの期間に分けて行う決算
- ●月次決算……会計期間中、毎月行う決算
本決算はどの会社もおこなう必要のあるものです。
そのほかは任意ですが、金融商品取引法の対象となる上場企業などは四半期決算を行い、四半期報告書を提出することが義務付けられています。
3.日本企業の会計期間(事業年度)は3月決算が多い
会計期間の最後の月である決算月は、会社が自由に選ぶことができます。
その中でも3月を決算月とする日本企業が多いです。
ただし「3月決算が多いからなんとなく……」という根拠で決算月を決めてはいけません。
決算月を3月に決める前に、3月決算のメリットとデメリットを理解しておきましょう。
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3月決算のデメリット
3月決算のデメリットは、決算時に税理士と十分に相談できず、申告業務が滞ったりベストな節税対策を行えなかったりする恐れがあることです。
3月決算の企業が多いため、税理士も同じ時期に業務量が多くなります。
すると、決算前後の大切な時期に税理士との時間を確保しにくくなり、思うように相談できない事態になりかねません。
3月決算を選ぶときは、税理士とのスケジュールを意識した、余裕のあるタスク管理が必要不可欠です。
4.会計期間(事業年度)の決算月を決める7つのポイント

会計期間の決算月を決めるときには、目的をもって選ぶと、後々の経営に良い影響を与えます。
ここでは決算月選びについて、次の7つのポイントを紹介します。
決算月選びにお悩みの方はぜひ参考にしてください。
- ①官公庁と取引をするなら3月
- ②売上が多い月の前後を選ぶ
- ③会社の繁忙期を避ける
- ④現預金残高が多い月を選ぶ
- ⑤税理士の繁忙期を避ける
- ⑥消費税の免税期間を有効活用する
- ⑦思い入れのある数字を選ぶ
なお、決算月は途中で変更することができます。
しかし、頻繁に変更するとその都度いろいろな手続きが必要になり、手間がかかってしまいます。
会社の健全な経営のためにも、決算月の設定はよく検討しましょう。
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ポイント①官公庁と取引をするなら3月
官公庁と取引をする予定があるなら、決算月は3月にするほうが業務負担が減らせます。
官公庁の会計期間は4月1日から3月31日です。
そのため、官公庁と取引する際に提出が求められる財務諸表などの書類は、4月から3月を1つの期間としたものが多くなります。
たとえば、3月決算の企業であれば、会計期間の資料をそのまま提出書類に使うことができます。
一方、9月決算の企業が官公庁に提出する書類を作る場合、前期の4月から9月と当期の10月から3月を合わせる必要があり、会計期間をまたいで資料を作り直さなくてはいけません。
この作業は想像以上に複雑で手間がかかります。
官公庁との取引を円滑に進めるためには、3月決算を選ぶことが効果的です。
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ポイント②売上が多い月の前後を選ぶ
決算月の決定には、売上の多い月の前後を目安にして2通りの考え方があります。
特にこのテクニックは、1年のうちで売上の多い月や少ない月が明確な業種に適しています。
まず、1つ目の考え方は売上の多い月の前月を決算月に選ぶことです。
会計期間は売上の多い月から始まるので、会計期間全体の売上見込みがたてやすくなり、決算で節税対策がしやすくなります。
次に、売上の多い月の後ろの月を決算月に選ぶことが2つ目の考え方です。
会計期間の最後が売上の多い月になるので、1年間の売上見込みが上方修正しやすくなり、融資に有利に働く場合があります。
たとえば、かき氷専門店であれば、売上のほとんどが夏です。
そこで、決算月を夏前の4月ごろに設定すれば、1年間の売上見込みを早く知ることができます。また、決算月に夏終わりの10月ごろを選べば、夏のかきいれ時を見込んだ売上の予測をたてることが可能です。
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ポイント③会社の繁忙期を避ける
会社に繁忙期があれば、決算月はその繁忙期を避けることが望ましいです。
決算月には経理作業が通常よりも多くなります。たとえば、決算では次のような作業をしなければいけません。
- ●会計の決算締め処理
- ●未払費用や未収入金などの整理
- ●期末棚卸
- ●売掛金や買掛金の残高確認
- ●金融機関からの残高証明書の確認
- ●固定資産の現物確認
- ●領収書や伝票の整理
- ●社内にむけた決算報告の書類作成
- ●確定申告書の作成
- ●税金の納付
たくさんの作業が必要な決算時期に、会社の繁忙期が重なってしまうと、会社の運営が危うくなってしまう恐れがあります。
決算月と会社の繁忙期は離すほうが、決算作業に集中することができ、ミスやトラブル防止につながるでしょう。
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ポイント④現預金残高が多い月を選ぶ
決算月には現預金残高が多い月を選ぶことも重要です。
なぜなら、決算後に確定申告をするので、納付する税金分のお金が必要だからです。
会社はお金を使って日々取引をしています。
業種によっては仕入れや支払いが多くなる月があり、一時的に現預金が少なくなることもあります。
しかし、現預金が少なくなるタイミングに税金の納付が重なってしまえば、会社に現預金が残らなくなり会社運営ができません。
最悪の場合、現預金が足りず税金の納付が遅れることでペナルティが発生し、納付できないときにはさらに重いペナルティが課されることもあります。
税金の納付は決算月の2ヶ月後が期限です。会社の現預金がどのように増減しているのか、よく確認してから決算月を決めましょう。
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ポイント⑤税理士の繁忙期を避ける
3月決算のデメリットでも触れましたが、決算月を選ぶ際には税理士の繁忙期を避けることも検討しましょう。
特に、税理士とよく相談して会社を経営したいと考えている方は、税理士との時間を確保するためにも、繁忙期ではない月を決算月に選んでください。
税理士の繁忙期は一般的に次の3つの時期だといわれています。
- ●2~3月……所得税の確定申告時期
- ●5月……3月決算法人の確定申告時期
- ●12月……年末調整時期
税理士に相談するメリットの1つは、申告業務や節税対策のアドバイスを受けられることです。
ただし上記の期間中は税理士と会いづらくなる恐れがあり、メリットを十分に生かせません。
貴重な時間と税理士に払う報酬を有意義に使うためにも、決算月を決めるときには税理士の繁忙期を必ずチェックしましょう。
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ポイント⑥消費税の免税期間を有効活用する
消費税には一定の要件を除き「免税期間」があり、会社設立から2期分は消費税がかかりません。
決算月の設定次第で、免税期間を有効活用することができ、消費税の節税が期待できます。
たとえば以下のような場合です。
具体例1.
会社を2023年1月に創立|決算月が3月
1期目:1月〜3月(3ヶ月間)
2期目:4月〜3月(12ヶ月間)
消費税の免税期間は15ヶ月間
具体例2.
会社を2023年1月に創立|決算月が12月
1期目:1月〜12月(12ヶ月間)
2期目:1月〜12月(12ヶ月間)
免税期間は24ヶ月間
以上のように決算月の選択により、3月決算よりも9ヶ月分の消費税を節税することができます。
2023年10月からインボイス制度が始まり、消費税申告が必要な会社の範囲が広くなります。消費税の免税期間を有効活用できるように、決算月を選定しましょう。
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ポイント⑦思い入れのある数字を選ぶ
ここまでは、決算月の選定による節税や業務効率化のテクニックを紹介しました。
しかし、テクニックではなく経営者の思いを決算月選びに反映することも、会社のために重要なことです。経営者のモチベーションが上がれば、経営に良い影響を及ぼし、テクニック以上の利益を生むことができるからです。
たとえば、縁起を担いだ数字やラッキーナンバー、縁起の良い日など、思い入れのある数字を決算月や決算日に使うことができます。
なお、決算日は末日でなくてはいけないというルールはありません。
経営者の思い入れのある数字から決算月を決めることで、経営者が会社経営に集中できるのであれば、この選び方は会社のためにも良い選択だといえます。
5.行政の会計期間(事業年度)のよくある疑問を一気に解決
行政の会計期間について、よくある疑問が次の3つです。
それぞれ解説するので、理解しておきましょう。
- ①会計年度任用職員とは?
- ②会計期間と課税年度の違いは?
- ③世界各国の会計期間は?
なお、行政の会計期間は会計年度と呼ばれることがあります。
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疑問①会計年度任用職員とは?
会計年度任用職員とは、行政の繁忙期や職員の欠員があったときに、職員の補助として1会計年度の期間のみ採用される非常勤の公務員のことです。
職員の募集は地方自治体のホームページで随時公開されています。
ちなみに、会計年度任用職員の任用とは、公務員の採用という意味です。
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疑問②会計期間と課税年度の違いは?
会計期間と課税年度では、区切る目的が異なります。
会計期間は損益を確定するために区切った期間です。一方で、課税年度は税金を計算するために区切った期間を指します。
おもな税金の課税年度は次のとおりです。
- ●法人税、消費税……会社の事業年度
- ●所得税……1月1日から12月31日
- ●贈与税……1月1日から12月31日
- ●個人住民税……前年の1月1日から12月31日
法人税は会社の事業年度が課税年度となるため、会社によって税金の計算期間が異なります。
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疑問③世界各国の会計期間は?
世界各国の会計期間は、それぞれの国の法律で定められています。
主要な国の会計期間は次のとおりです。
- ●日本……4月から3月
- ●アメリカ……10月から9月
- ●イギリス……4月から3月
- ●ドイツ……1月から12月
- ●フランス……1月から12月
- ●イタリア……1月から12月
- ●カナダ……4月から3月
- ●インド……4月から3月
- ●中国……1月から12月
- ●韓国……1月から12月
各国で異なる会計期間を採用していますが、暦年に合わせて1月から12月とする国が多いようです。
6.まとめ 会計期間(事業年度)を決めるときは業務に適した決算月を選ぼう

会計期間は会計上の損益計算の期間で、事業年度は税務上の税金計算の期間です。
会計期間は会社が自由に決めることができますが、決め方にはいくつかポイントがあります。7つのポイントを参考に、業務に適した決算月を検討しましょう。
決算月を決定して会社を始めると、いくつかの課題に直面します。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。