堅牢なデータセンターとSINET5を活用した
学内ネットワーク更改
回線の高速化とコスト削減を実現
学校法人根津育英会武蔵学園 武蔵大学様(以下、武蔵大学様)は、学園創立100周年に向けた第三次中期計画で、学園建学当時からの理念である三理想を継承しつつ、現代のリベラルアーツ教育を基盤としたグローバル市民の育成を戦略目標に掲げています。そうした中、10年以上利用してきた旧来の学内ネットワーク基盤を見直し、大学ならではのメリットである学術情報ネットワーク「SINET5(サイネット・ファイブ※)」を活用した、回線の高速化とコスト削減を両立するネットワーク環境を構築しました。この更改プロジェクトで注目すべきは、キャンパスの所在地とSINET5の接続点(POI)の所在地を考慮し、高速化とコストの最適なバランスで構成設計をした点と対災害性に優れた堅牢なNTT東日本のデータセンターにインフラを移管することで、安心・安全な運用を可能にしていることです。その上で、更改タイミングが夏季休暇期間の数週間に限定される中で、目標期限内にプロジェクトを完遂しました。今回は、そのプロジェクトを熱い思いとともに成し遂げた3名のご担当者にお話をうかがいました。
【目次】
武蔵大学
※SINET5(Science Information NETwork 5):日本全国の大学、研究機関などの学術情報基盤として、国立情報学研究所(NII)が構築・運用している情報通信ネットワーク。2019年4月現在、全国900以上の大学・研究機関などが加入。
導入いただいたソリューション
NTT東日本 データセンター、高速・広帯域アクセスサービス(10Gbps)、フレッツ・VPN プライオ、次世代ファイアウォールなど
ソリューション導入効果
- 授業利用や業務利用でのネットワークの快適性と安定性の向上、およびトータルコストの低減が図れた。
- パブリッククラウドサービスを安心して導入できるネットワーク基盤の整備ができた。
- SINET5の活用によるグローバルな他大学との連携強化やリカレント教育の推進など新たなチャレンジ機会が創出できた。
NTT東日本選定のポイント
- NTT東日本のデータセンターはキャンパスからの交通アクセスがよく、地盤の堅牢な地域に立地し、電力供給設備などの設備面の充実、24時間有人管理など安心・安全な運用が可能だと確信できたこと
- 低コストで広帯域な回線やSINET5を活用し、インターネットアクセスの高速化とコスト削減を両立する大学ならではのメリットが享受できるネットワークを構築可能なこと
NTT東日本からの画期的な提案が
ネットワーク改善への一条の光明に
――武蔵大学様は、2019年9月に大規模な学内ネットワーク基盤の更改プロジェクトを実施されました。その経緯についてお聞かせいただけますでしょうか?
緒方氏:以前の学内ネットワーク基盤は、電気通信事業者の都内データセンターに、スイッチやサーバー群をハウジングし、その事業者の回線、ファイアウォールやルーターなどのネットワーク機器、そしてインターネット接続サービスを組み合わせた高額なマネージドサービスを、かれこれ10年以上も利用してきました。
しかし、近年急速に普及したスマートフォン等の影響により、回線契約の300Mbpsでは逼迫しがちな状況になりつつありました。当大学はゼミナールを基礎とした教育を重視し、「話す」、「書く」を基本としていますが、最近は「調べる」というネット検索行為が加わるとともに、FD(大学教員の教育能力を高めるための実践的方法)やSD(大学の事務・技術職員などを対象とした職能開発の取組み)などの講義評価もインターネット経由で行われています。そのため、学内バックボーンが狭帯域であることは非常に問題で、学内ネットワーク基盤の大幅な刷新が喫緊の課題となっていたのです。
五月女氏:それを決定的にしたのが、2018年夏に行ったキャンパス内のWi-Fiアクセスポイントの一斉入れ替えでした。その頃、人気の写真共有アプリが大学内でも頻繁に利用され、動画接続が常態化したことで、回線をパンクさせる事態が発生してしまいました。それについては、新たに光回線のインターネット接続サービスを契約し、学生のアクセスの一部をそちらに逃がすことで暫定的に対応を図りましたが、根本的な解決には至りません。そんな時、画期的な提案をしてくれたのがNTT東日本の営業担当者でした。
緒方 淳 氏
SINET5を活用し、
回線の高速化とコスト削減を両立!
――プロジェクトのパートナーとなったNTT東日本の提案についてはどのように感じられましたか?
五月女氏:NTT東日本の提案は、10Gbps回線でのSINET5への接続でした。最初に聞いたときには、これまでの300Mbps回線での接続よりも大幅にコストアップをしてしまうのではないかと心配したのですが、回線帯域あたりの回線コストは我々が考えていた以上に劇的に進んでいたことと、広帯域の回線接続は江古田キャンパスと最寄のSINET5接続点との間に限定して、キャンパスから距離のあるデータセンターへの接続にはSINET5のL2VPNを活用することで回線コストは必要最小限度に抑えられる提案でした。さらに、データセンターに設置するファイアウォール等の更改費用を考慮しても、その時点での他データセンターに支払っていたインターネット接続費用込みの運用コストよりもトータルで安価に構成できるものでした。10Gbps回線のバックアップ用として安価な「フレッツ・VPN プライオ」の活用も提案いただいたので、対障害性という点についても安心することができました。
今回の提案において当然コストは重要な要素でしたが、私がまず注目したのは、NTT東日本のデータセンターでした。それまでのデータセンターは都内にありましたが、近年は地震や河川の氾濫による災害が多発しているため、都心はかえって危険かと思い、データセンターの適切な立地とはどこなのかを真剣に考えるようになっていたからです。NTT東日本のデータセンターを見学させていただいたところ、高い耐震性や、安定した電力設備、強固なセキュリティといった基本機能はもちろん、首都圏にあって最寄り駅にも近く、江古田キャンパスからすぐに駆け付けられることに魅力を感じました。地盤の堅牢な地域に立地し、非常用発電設備も屋上にあるので水害による停電の心配もありません。ここなら永続的に安全な運用が可能だと確信しました。
また、安定性が向上し高速化したSINET5を活用し、インターネット接続の高速広帯域化とコスト削減を両立するアイデアも大学ならではのメリットが享受できるもので、バックアップも含め、これは今までにない優れた構成だと感じました。
情報システム部
情報システム課
五月女(そうとめ) 祐輔 氏
――2019年春に学内ネットワーク基盤更改プロジェクトが始動しましたが、ポイントとなった取り組みをお聞かせいただけますでしょうか?
本田氏:私はネットワークスペシャリストとして、ネットワーク構成全体の検討を担当しました。旧ネットワークをNTT東日本の回線に変更するにあたり、まずはグローバルIPを変更するための検証項目を作り、抜けや漏れがないかどうかを細かくチェックすることに注力しました。過去の更改で変更した部分は記録を遡り、記録が残っていなければ直接設定を見て変更箇所を確認するといった作業を繰り返しました。また、データセンターを移管する物理的な引っ越し作業も慎重さが求められ、移動させる機器の順番やラックへの設置の検討も重要でした。
そうした苦労もありましたが、NTT東日本はプロジェクトの最初から最後まで、こちらが伝えたいことをすぐに理解して取り組んでいただいたので、プロジェクトの規模を考えると、更改作業、移管作業がかなりスムーズに進み、とてもやりやすかったという印象です。
五月女氏:次の問題は、更改したネットワークを始動させる時期でした。大学でネットワークを止めることができるのは8月のお盆前後の数週間しかなく、そこから逆算すると6月中にはネットワークを切り替えなければなりません。そのため本番環境とつながずに切り替えテストをどのように実施すべきか、旧データセンターから新データセンターに仮想基盤上のデータをどうやって移行するかなどが大きなチャレンジでしたが、それもNTT東日本の支援で両データセンターとの疎通を密に確認するなど、滞りなくやっていただいたことが期限まで完了するための大きなポイントになりました。
情報システム部
情報システム課
本田 光太郎 氏
武蔵学園様 ネットワーク構成図
SINET5を活用することで、
さまざまにチャレンジできるバックボーンを作った
――2019年8月にグローバルIPを切り替え、9月から新学内ネットワーク基盤の運用が本格的に開始されましたが、更改後にどのような変化を感じられたでしょうか?
五月女氏:グローバルIPを変更することでどんな影響があるのか、当時は漠然とした不安がありました。しかし、大量に保有していたグローバルIPを返却し、数十分の1までに減らしても問題なくスムーズに運用できているので杞憂に過ぎないことがわかりました。データセンターを移管したこともあり、非常にすっきり断捨離ができた気持ちです。グローバルIPを数多く保有していれば、それだけ攻撃される確率も高くなるため、管理対象の削減は、安全面からも大きな効果があったと思います。
現状はまだ広範な意味での効果を判断することは時期尚早ですが、本番運用開始から数カ月が経過し、最低条件であった“逼迫しないネットワーク”の実現は確実にできたと考えています。例えばWindowsサーバーのOS(10GB程度)をダウンロードするのに、以前は5分以上かかっていたところ、現在は1分未満で完了するなど、データのアップロード、ダウンロードが非常に高速になった印象です。また、従来は6時間ほどかかっていた基幹システムの夜間バッチが、3時間ほどで終了するなど、安定して運用できるようにもなっています。今後、GSuiteなど導入を検討していたクラウドサービスを安心して活用できる基盤が整ったと感じています。
緒方氏:今回の更改では、これからさまざまなことにチャレンジできるバックボーンを作ったといえるでしょう。将来的な施策のうち、例えば学外から学内にリモートアクセス可能な仕組みの導入に向けた検討が具体的に開始できそうです。また、武蔵大学では世界14カ国・地域の合計30校と協定を結び、留学や国際交流を推進していますが、SINET5という大学にスタンダードな高速ネットワーク網を活用することで、海外の大学・教育機関とのネットワーク接続が高速になることへのメリットを模索しているところです。さらには、リカレント教育(社会人の回帰教育)や研究開発リソースの公開、反転授業(学びのインプットとアウトプットを逆にする取り組み)などを実施できる環境を準備できた効果は大きいと考えます。あとはこの基盤を教職員がどのように使うかにかかっています。
正門脇にある旧守衛所。江古田キャンパスのシンボルとして地域住民からも親しまれています。
――今回のプロジェクトを振り返り、ご感想やご要望をお聞かせください。
五月女氏:プロジェクト進行中はさまざまな課題にも直面し、中でも悩ましかったのは、データセンターの移管にあたり新たなファイアウォールの選定と接続方法を検討することでしたが、NTT東日本の皆さんがそれらに高い経験値をお持ちだったので、的確な機種選定と最適な配置をアドバイスいただき、無事に乗り切ることができました。また、プロジェクトに関わった他ベンダーさんとも協力関係を築いていただき、最終局面ではエンジニアを増員して対応してくださったおかげで期限までに完遂することができ、非常に満足しています。
緒方氏:NTT東日本には厳しいリクエストもしましたが、大企業ならではの総合力と技術力で短期間にプロジェクトが完遂してくれたことを高く評価したいと思います。今後も、今まで以上にサポート面での支援を期待しています。
*上記ソリューション導入時期は2019年9月です。
*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2019年12月時点(インタビュー時点)のものです。
*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。
学校名 | 学校法人根津育英会武蔵学園 武蔵大学 |
---|---|
大学概要 | 1922年4月創立の武蔵大学は、100年近い歴史の中で学園建学の精神(三理想)を堅持し、一貫してゼミナールを基礎とした少人数教育と外国語教育の重視を柱とした教育方針を受け継いてきました。現在は江古田キャンパスを拠点に、経済学部、人文学部、社会学部の3学部、8学科からなる文系総合大学に発展。第三次中期計画(2016~21年)では、グローバル化に向けた各学部の新しいプログラムやコースを着実に運営するとともに、リベラルアーツ教育の一層の拡充をめざしています。 |
専任教職員数 | 217名(2019年5月1日現在) |
学生数 | 4,726名(2019年5月1日現在) |
この事例記事のPDFダウンロードはこちら
「教育(大学)関連」の導入事例資料をまとめてダウンロード
「教育(大学)関連」に関する資料を
まとめてダウンロードできます。