2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2016.02.01 (Mon)

経営者をトラブルから守る法律知識と手続き(第1回)

パート、契約社員、嘱託…正しく使ってますか。

会社経営に必ずつきまとう法務や手続き。大会社なら専門部署や法律顧問が処理してくれますが、中小企業だと往々にして経営者自らが処理することに。管轄の役所の求める指示や規程もわかりにくい。そんなときの強い味方が、法務・手続ノウハウ書です。
この連載では、永年、事業所必携の定番として中小企業経営者に支持されてきた自由国民社のビジネス法務本から、ノウハウ、最新事情への対応などの情報を提供します。
創業から急成長で企業化した会社、曲がり角に立つ企業、いずれもににありがちなトラブル発生源、「労務」「資金調達」「下請け契約」を採り上げてゆく予定です。

企業は、業務形態や経営情況に応じて、さまざまな形態の従業員を抱えます。役員・正社員以外には、パート、アルバイト、嘱託、契約社員、派遣社員などなど。皆さんはこれらの言葉を”正しく”使い分けていますか。つまり”正しい”待遇をしていますか。
気心の知れた正社員となら融通を利かせることができても、”外”の人である非正規労働者に対しては、そうはゆきません。あいまいな対応がこじれて、労基法上の罰則の対象となったりや訴訟の種となることも。
ここでは、非正規労働者の中で大部分を占めるパート・アルバイトの労務を中心に、定年退職者との再雇用でなされることの多い嘱託や契約社員などに関しても、ありがちなトラブルを避ける適切な労務・手続きを紹介してゆきます。

日本の雇用者(平成22年度労働力調査)

パートタイマー

パートタイマーとは

1週間の労働時間が正社員よりも短い者をいいます(パート労働法2条)が、短時間の勤務でなくても、時間単位で働く労働者をパートタイマーとよびます。学生や期間の短い者がパートタイマーとして働いている場合、アルバイトと呼んだりします。非正規労働者の大部分を占め、諸々のトラブルも起こりがち。労働法もこの雇用形態について多く規定しています。

雇用した時に会社がすべきことは何か?

労働条件、賃金などを明示しなくてはならない

パートタイマーも労働者ですから、採用した場合には労働条件を明示しなければなりません。
明示する事項については、まず、(1)雇用期間、(2)勤務場所、(3)仕事の内容、(4)労働時間、(5)休日または勤務日、(6)休暇、(7)時間外労働・休日労働の有無、(8)賃金、(9)退職・解雇に関する事項です(労働基準法15条)。
これらは、正社員を採用した場合と同じですが、パートタイマーとは正社員よりも1週間の労働時間が短い者ですから、(5)は週の勤務日を明示するのが通常です。勤務する日を週によって定められない場合は、月における勤務日数を決めます。勤務日数が月によって変動する場合は、月のだいたいの日数を決めておき、前月の末までにその勤務日を特定するようにします。
平成20年4月にパート労働法が改正され、(10)昇給の有無、(11)退職手当の有無、(12)賞与の有無も文書の交付により明示することが義務付けられました(22年改正、パート労働法6条)。
書面での明示方法については、厚生労働省ダウンロードページにある「労働条件通知書」を参考にして下さい。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/

正社員との待遇の格差は??

パートタイマーの職務内容などによって異なる

社員と比べて仕事の内容や契約期間、人事異動の取り扱いが異なるのであれば、待遇に格差があっても仕方がありませんが、それらがほとんど同じ場合はどうでしょうか。平成20年4月の改正パート労働法は、表のように、賃金・教育訓練・福利厚生などの待遇に差をつけています。

パートタイマーと正社員との待遇について

(1)の期間の定めがなく、退職するまでの全ての期間を通じて、職務の内容や人事異動などの人材活用の仕組みが正社員と同じパートタイマーについては、正社員と労働時間が異なるだけですから、賃金の決定について差別的取扱いをしてはならないとされました(パート労働法8条)。その他の(2)(3)(4)のパートタイマーについては、正社員との均衡を考慮して決めるよう努力するものとするとされています(パート労働法9条1項)。

残業手当はいくら払えばよいのか

残業手当の単価(1時間分)は時間給そのものです。もっともほかに手当(通勤手当を除く)が支払われている人には、その手当も加算しなければなりません。
残業手当全体の計算については、勤務時間が8時間に達するまでは、単価そのものを残業時間に乗じればよいことになっています。しかし、8時間を超えた分については、25%以上割増しして支払わなければなりません。

勤務日以外の日の賃金の算定方法は

所定勤務日を月曜日から木曜日の週4日としているパートタイマーに、金曜日や土曜日に働いてもらったとしたら、休日勤務手当を払わなければならないでしょうか。
働く日が週6日までは時間単価で支払えばよいので、週1回の休日を除く日は、働かせても法律上は通常の賃金を支払えば問題はありません。

嘱託

嘱託の雇用条件の内容は?

どういう人を嘱託とするか

正社員が定年に達すると、一般には定年退職となり、退職金をもらって辞めることになります。定年後も、労働時間や賃金・役職も今のままで、しばらく勤務を続けてもらいたい場合には、その社員だけに定年延長の措置をとる方法もあります(勤務延長)。
しかし、現在ではいったん退職手続きをとり、退職金を支払って、あらためて嘱託社員という身分で再雇用する会社が増えています。これを「再雇用」といいます。非正規雇用ではありますが、これまで正社員として雇われてきた、いわば気心の知れた関係ともいえます。しかしそれなりにトラブルの素となるようなこともあります。
なお嘱託とは、再雇用型だけとは限りません。社外から特定の条件で「嘱託」身分で雇用することもあります。その者の年齢が会社の定年年齢前であっても、嘱託として雇用して差支えありません。

勤務期間、勤務日、賃金、賞与はどうするか

嘱託を雇用する場合は、雇用期間を定めるのが一般的です。期間を定めた方が管理上扱いやすいためでしょう。
賃金については、社員の賃金を基準としてその何割とする扱いもありますし、在職老齢年金、高齢者雇用継続給付の制度を利用して決める方法もあります。
なお、賞与は社員より少ないながらも、支給するのが一般的ですが、退職金を支給する会社は少ないようです。

年休の取扱いはどうするか

定年になり、引き続いて嘱託として再雇用される場合の年休は、継続勤務として扱われます。つまり、社員時代からの年休が、嘱託になっても継続して運用されるのです。
定年退職後しばらく会社を離れた後で再雇用で勤務した場合は、休暇も継続勤務としてでなく、新規の雇用として扱われることになりましょう。
問題は「しばらく」の空白期間の長さです。これが1週間や10日では、実質的に継続とみられます。

契約社員

契約社員はどのような身分か?

契約社員とはどういう者か

契約社員はあいまいで分かりにくい存在ですが、「特定の契約条件で雇用される者」といってよいでしょう。このことはパートタイマーにもあてはまりますが、一般的にパートタイマーは、契約社員とは呼ばれません。法律的な定義付けは別にして、現実に契約社員と呼ばれる人の一般的な特性をあげてみましょう。

雇用期間を有期とし、期限がきたら更新する。
賃金は月給または年俸とするのが多い。
専門的知識、技術の保有者、あるいは豊かな経験を持つ者が対象となることが多い。会社との関係においてもさまざまな立場の人が契約社員になりますが、その関係は文字通り〈契約〉に基づきさまざまです。パート労働ほど法律で定められていることは多くありません。

契約社員は何について契約を交わすのか

契約社員は雇用されるにあたって、いろいろな事項について契約を取り交わします。たとえば次のような事項です。

契約期間
担当業務の種類、内容あるいは業務達成目標など
労働時間、休日、休暇
賃金(形態、金額、計算方法、支払方法など)
このほかに、契約の更新、途中における解約などの手続きを加えることもあります。

契約社員には専用の就業規則を作成したほうがよい

契約社員も労働者ですから、もちろん労働基準法が適用されます。したがって、契約社員にも適用される就業規則がなければなりません。臨時的、短期間の雇用だから就業規則など要らないだろうと思ったら間違いです。
契約社員は、正社員とは身分、労働態様などが質的に異なりますから、正社員の就業規則の中に一緒に定めるのではなく、専用の就業規則を作成したほうが、作成も容易でしょうし、利用しやすいと思われます。
契約社員の就業規則に定める内容について、簡単に説明しましょう。
契約社員と正社員とで根本的に異なるのは、正社員は労働条件等(労働時間数、始業・終業時刻など)が一律となっているのに対し、契約社員は契約時において業務態様により個別に定めることが多いということです。たとえば、Aさんには週の労働時間数30時間であるけれども、Bさんは35時間であるというふうにです。
そのような個別の事項がたくさんありますから、就業規則の記述も「個別に定める」といった表現にしなければならない条項が多くなってくると考えられます。

契約社員の就業規則に規定すべき事項

派遣社員

人材派遣会社に雇用され、派遣された先の会社の指揮命令を受けて、派遣先の会社のために働く労働者をいいます。派遣先会社が派遣料を派遣元である人材派遣会社に支払い、派遣社員はその人材派遣会社から賃金の支払いを受けます。
派遣社員を採用する場合、法的な留意や手続き等は人材派遣会社が用意してくれることが多いようですので、ここでは詳細は省略します。

今回のテキスト

「やさしく解説 労働法の基本がわかる」(佐々木 力・自由国民社刊)
http://www.jiyu.co.jp/houritsugakushu/detail.php?eid=00890&series_id=s12

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