• 2023.7.07 (金)
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【知っていますか?電気料金のあれこれ】燃料費調整額について

電気料金は、電力会社が電気を作り供給するためにかかる費用を反映したもので、
基本料金・従量料金・燃料費調整額の3つの要素で構成されています。


基本料金とは、電力会社が電気を供給するために必要な設備や人件費などの固定費をカバーするもので、契約アンペア(A)数で決まります。
従量料金とは、使用した電気の量に応じて決まる変動費用で、一般家庭では3段階料金という方式も採用されており、使用量が多いほど
単価が高くなるというしくみで、節電意識を高めるとともに、ピーク時の需要を抑えることを目的としています。
燃料費調整額とは、電力会社が発電のために使う原料(燃料)の価格変動に対応するための制度で、毎月変動します。


電気料金のしくみを知ることは、事業所や製造業だけでなく、電力を使用する多くの人々にとって重要で、基本料金と従量料金は
すぐに理解できると思いますが「燃料費調整額」は少々難解です。
ここでは、燃料費調整制度と燃料費調整額について解説し、事業所や工場などの管理ポイントについて考えます。

<目次>
1:燃料費調整制度とは
2:燃料費調整額とは
3:製造業の生産管理での対策
4:まとめ

1:燃料費調整制度とは

燃料費調整制度は、火力発電に使う原油・液化天然ガス(LNG)・石炭など、燃費の価格変動を電気料金に反映させるしくみです。

 

1.1 電気の原料(燃料)
火力発電では燃料を燃やして水蒸気を発生させ、タービンを回して発電しますが、燃料の価格は
国際市場の需給や為替レートなどによって変動します。
原油価格は、中東情勢や米国シェールオイルの生産量などに影響され、液化天然ガスや石炭は
主にドル建て(USD)で取引されるため円安になると輸入コストが高くなります。

 

1.2 燃料費調整制度の目的
この制度は、下記の目的で1996年(平成8年1月)に導入されました。
・電力会社の効率化や経営努力の及ばない燃料価格、為替レートの影響をなくし経営効率化の成果を明確にする。
・経済情勢の変化を迅速に料金に反映させ、事業者の経営の安定を図る。

 

1.3 燃料費調整制度のしくみ
燃料費調整制度は、法的義務ではなく電力会社の自主的制度です。
けれども、電力会社は経済産業省の認可を受けた料金算定規則に基づいて、毎月燃料費調整額を算出し、公表する必要があります。
燃料費調整制度のしくみは下記のようになっています。
 ① 平均燃料価格の算定:原油・LNG・石炭の3カ月間の貿易統計価格にもとづいた毎月の平均燃料価格の算定
 ② 燃料費調整単価の算定:平均燃料価格と基準燃料価格の比較による差分
 ③ 燃料費調整額を算定:燃料費調整単価に使用電力量を乗じて算定
 ④ 電気料金を算定:燃料費調整額を従量料金に加算または減算して算定

2:燃料費調整額とは

毎月変動する燃料費調整額の算出方法や影響について解説します。

 

2.1 燃料費調整額の算出方法
電気料金には燃料費調整額が含まれ、その時々の平均燃料価格により毎月変動し、燃料価格の変動に対応して
燃料費調整額を加算・減算で計算します。
過去の事例では、世界的な燃料価格の高騰で、東京電力の代表的な料金プラン「スタンダードS」(30A260kWhモデル)で
2023年1月の電気料金は燃料費調整額の適用がない場合と比べ1.4倍程度となりました。

 

2.2 燃料費調整単価とは
燃料費調整単価は平均燃料価格がkℓあたり1,000円変動した場合に発生する価格で、電力量1kWh当たりの変動価格です。
燃料費調整単価は、毎月電力会社が公表しています。
例えば、東京電力で従量制の電気(低圧)を契約している利用者の場合、2023年5月分の燃料費調整単価は▲1円87銭/kWhです。
これは、平均燃料価格が1,000円/kℓ下がったことにより、電力量1kWh当たりの電気料金が▲1円87銭安くなったことを意味します。

 

2.3 燃料費調整額は電気料金に直結
燃料費調整額は、毎月の電気料金に直接影響します。
燃料価格が上昇すると、燃料費調整額はプラスになり、電気料金が高くなりますが、逆に燃料価格が下降すると、
燃料費調整額はマイナスになり、電気料金は安くなります。
ただし、従量制の場合は、燃料費調整単価に上限が設けられています。
上限値は基準単価の1.5倍であり、関東エリアで従量制の場合は129,200円/kℓです。
これは、燃料価格が大幅に上昇した時に、利用者への大きな影響を緩和するための措置でするが、一方で下限値の設定はされていません。

3:製造業の生産管理での対策

製造業では、電気料金は重要なコスト要素です。
燃料費調整額によって電気料金が変動することは、生産計画や予算管理に甚大な影響を与えます。
そこで、製造業の生産管理でできる対策を次に紹介します。

 

3.1 「抑える」~省エネ~
省エネは、電気料金を抑える最も基本的な対策です。省エネには次のような方法があります。
 ①設備や機器の効率化や更新
  古い設備や機器は消費電力が高く、効率的な設備や機器に更新することで消費電力を削減できます。
 ②需要管理やピークカット
  <需要管理>とは、使用する電力量を計画的に制御することで、<ピークカット>とは、使用する電力量をピーク時に減らすことです。
  需要管理やピークカットで、電気料金を節約し、電力会社からの需要調整契約やピークシフト契約などのメニューの利用で、電気料金の割引や補助金などが受けられます。
 ③照明や空調の節電
  照明や空調は、消費電力の大きな要素です。
  照明は、LEDや蛍光灯などの省エネタイプに交換したり、自然光を活用したりすることで節電できます。
  空調は、温度設定や運転時間を適切に管理したり、断熱材やカーテンなどで外気の影響を抑えたりすることで節電につながります。
共通して言えることは消費電力の「見える化」を進めて、電力消費量をモニタリングすることです。
常に最新のデータを把握しておくことが、柔軟で即効性のある対応へとつながります。

 

3.2 「変える」~電力会社の見直し~
電力会社の見直しとは、自分の契約している電力会社や料金プランが最適かどうかを検討することです。
電力自由化によって、電力会社や料金プランの選択肢が増えました。
使用パターンやニーズに合った電力会社や料金プランを選ぶことで、電気料金を節約できる可能性があります。
電力会社や料金プランの比較サイトを利用すると便利です。

 

3.3 「作る」~電気を作る~
電気を作るとは、自分で発電することです。
自家発電によって電気を電力会社から購入する必要がなくなり、電気料金を削減でき、余剰な発電量を売電することで収入にもなります。
自家発電の主なものに、次のようなものがありますが、メリットとデメリットがありますので導入の際には検討が必要です。
 ①太陽光発電
  太陽光パネルを設置して太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する方法です。
  太陽光発電は、再生可能エネルギー源として環境に優しく、メンテナンスも少なくて済みます。
  デメリットは、初期投資が高く、天候や季節によって発電量が変動することです。
 ②風力発電
  風車を設置して風の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する方法です。
  風力発電も再生可能エネルギー源として環境に優しく、太陽光発電よりも安定した発電量が期待できます。
  デメリットは、初期投資が高く、騒音や景観への影響が懸念されます。
 ③バイオガス発電
  有機物である食品廃棄物や下水汚泥などを嫌気性発酵(酸素を必要としない微生物による発酵)させて生成されるバイオガス(主成分はCH4:メタン)を燃焼させて発電する方法です。
  バイオガス発電は、廃棄物処理とエネルギー回収を同時にでき、CO2排出量も低減できます。
  デメリットは、発酵槽の設置や運転管理にコストや専門知識が必要なことです。
 ④燃料電池
  水素と酸素の化学反応で発生する電気エネルギーを利用する方法です。
  燃料電池は、高効率で低公害な発電方法であり、水素の供給源によっては再生可能エネルギー源としても利用できます。
  デメリットは、水素の製造や貯蔵に技術的な課題があり、コスト高になりがちです。

4:まとめ

燃料費調整制度は火力発電に用いる燃料価格の変動を毎月、電気料金に反映させるしくみで、この制度によって電気料金は上下する可能性があります。
製造業の生産管理では、燃料費調整制度のしくみを知り、電気料金の変動に対応することが重要です。
また、省エネの推進や電力会社変更の検討、自家発電などの対策は、電気料金を節約し企業や事業体の最終利益につなげられます。

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