課題
昨今の海面漁業では、温暖化に伴う高水温化などの環境変動や世界的な魚介類に対する需要増加などのさまざまな要因が影響して、生産拡大余地のある漁場資源の割合は2017年時点で6%程度※1と水産資源の枯渇が危ぶまれています。
また、水産物需要の拡大に伴い、海外の大量購入に後押しされて国際的な魚価の高騰が起こり、日本は“買い負ける“現状にあります。合わせて、昨今の燃料高騰による輸送費高騰が買い負けに拍車をかけている状況です。国内消費への応答や海外輸出の拡大など日本の強い水産業を復活させるには、養殖による国内生産が不可欠です。
- ※1 引用元:FAO 「The State of World Fisheries and Aquaculture(SOFIA)2020」
取り組み
NTT東日本グループが目指す「完全閉鎖循環式陸上養殖」ビジネスビジョン
日本国内の水産業界では高齢化や人手不足が深刻化しており、漁業・養殖業従事者・技術者の経験に基づく判断・作業が主流の従来の方法では、今後の水産業全体の活性化に向けて限界があります。安定した水産物供給を実現するひとつの手段として、立地の制約を受けずにどこでも安定した生産が可能な「完全閉鎖循環式陸上養殖」が注目されていますが、広く社会実装を実現するためには、生産性の向上とそれに伴うコストの低廉化が必要です。
当社の強みであるICTやグループアセットと岡山理科大学が保有する「好適環境水※2」を融合させることで高い生産性を実現する養殖ビジネスを、自治体・企業等の地域を支えるパートナーの皆さまとともに実現し地域の活性化に向けて取り組んでいきます。
※2 水産生物の効率的な陸上養殖を目的として開発された人工海水。 海水中に含まれる成分のうち、魚の成長に必要なナトリウム・カリウム・カルシウムに絞り込んで構成されている。
塩分濃度も海水よりも低く調整されており、魚の浸透圧調整に関わるストレス軽減・消費エネルギーの削減が見込まれ、浸透圧調整に使っていたエネルギーを成長に回せることで、一部の魚類で成長促進されることが確認されている。
現在進行中の実証プロジェクト
ビジネスベースで世界初※3となるベニザケ養殖事業化に向けた実証
福島県をフィールドに、 NTT東日本、株式会社いちい、学校法人加計学園 岡山理科大学の3者が連携し、ベニザケ養殖の実現に向けた実証に2022年1月より取り組んでいます。
本実証では、各者が持つ強みを融合させた養殖プラントの中で、ベニザケ養殖の成功を目指すとともに、生産・加工・流通・販売までを含めたサプライチェーン全体での事業性評価を行います。
<実証実験の取り組みイメージ・各社の役割分担>
※3 ビジネスベースでの「完全閉鎖循環式陸上養殖」×「ベニザケ」の取り組みが、当社調べ(2022年1月時点)で世界初。
今後の展開:地域の特性・課題に合わせた完全閉鎖循環式陸上養殖ビジネスの創出