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テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第93回)
AI活用は国家戦略へ。政府発表の「人工知能基本計画」が企業へ示すメッセージとは
- 公開日
- 2026-03-31

2025年12月、政府は「人工知能基本計画」を閣議決定しました。日本のAI政策を体系的に整理した初の国家戦略は、企業活動にどのような影響を与えるのでしょうか?
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政府が初めて示したAIの基本計画「AI国家戦略」とは?
2025年12月23日、政府は「人工知能基本計画」を閣議決定しました。これは、日本として初めてAI政策を体系的に整理した国家戦略であり、生成AIの急速な進展を背景に、技術振興とリスク対応の両立を明確に打ち出したものです。
生成AIは近年、文章作成や情報整理、顧客対応の高度化などにおいて、ビジネス・行政・教育など幅広い分野で活用が進みつつあります。最近では自律的に業務を遂行する「AIエージェント」なども登場しており、技術が進展しています。
その一方で、AIが生成する誤情報(ハルシネーション)の拡散や、権利侵害、機密情報の入力による情報漏えいの危険性といった、新たなリスクも顕在化しています。
こうした状況を踏まえ、政府はAIを成長の原動力として活用しながら、安全性や信頼性を確保するための政策の枠組みを整備しました。
なおこの計画は、AI関連政策の基本的な方向性を定めた「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」に基づき策定された、初めての基本計画でもあります。政府は本計画を通じて、日本を「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」にしていくことを目指すとしています。

内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」より引用
AIの活用に求められる「3つの原則」とは
人工知能基本計画は、AIの利活用促進から研究開発、人材育成、ガバナンス、国際連携に至るまで、幅広い分野を対象とした包括的な政策です。単にAI技術を伸ばすための産業政策ではなく、AIを社会の中でどのように位置づけ、どのように活用していくかを示した国家戦略といえます。
この計画では、AI政策を進めるうえでの基本的な考え方として、「3つの原則」が示されています。
1つ目の原則は、「イノベーション促進とリスク対応の両立」です。AIは産業競争力の強化や社会課題の解決に大きな可能性を持つ一方で、セキュリティ面のリスクも伴います。AIの活用を推進しながら、同時に安全性や信頼性を確保する取り組みを進めることが明記されています。
2つ目の原則が、「アジャイルな対応」です。アジャイルは「機敏な」「素早い」という意味を持つ言葉で、1つ目の原則のイノベーション促進とリスク対応を両立するために、PDCAサイクルを循環させ、変化に即応し、物事に柔軟かつ迅速に向き合うアジャイルな対応を志向するというものです。
3つ目の原則は、「内外一体での政策推進」です。AIは国境を越えて利用される技術であり、国際的なルール形成や標準化の動きと整合性を取りながら政策を進める必要があります。
なぜAIは、社会から信頼されなければいけないのか
本計画では、先に挙げた3つの原則を踏まえ、AI政策を推進するための「4つの基本的な方針」も示されています。この4つの基本的な方針とは、「AI利活用の加速的推進(AIを使う)」「AI開発力の戦略的強化(AIを創る)」「AIガバナンスの主導(AIの信頼性を高める)」「AI社会に向けた継続的変革(AIと協働する)」です。
そして、その中でも特に重要な概念として位置づけられているのが、「信頼できるAI」という考え方です。
「信頼できるAI」とは、AIの活用を広げるだけでなく、その利用が社会から受け入れられ、安心して使える状態を実現するという考え方です。
AIの利用が広がるほど、その仕組みや判断過程が社会から信頼されるものであることが求められます。なぜなら、もし利用者がAIの判断に不安を感じる状況が続けば、技術の普及そのものが停滞する可能性があるためです。
こうした背景もあり、本計画ではAIの開発や利用に関するルールを整備し、企業や行政が責任ある形でAIを活用できる環境を整えるなど、AI<の説明可能性や透明性、安全性などを確保するためのAIガバナンスの強化が重要なテーマとして掲げられています。
AIを社会実装するということは、単なる業務効率化にとどまらず、人とAIの関係性そのものを再設計することを意味します。人工知能基本計画は、そのための制度や教育、働き方の在り方までを含めた包括的な枠組みといえるでしょう。
AIは、社会全体の基盤を変える技術へと進化していく
人工知能基本計画の策定は、企業活動にも少なからぬ影響を与えることが予想されます。とりわけ生成AIの導入やデータ活用を進める企業にとっては、自社の取り組みを見直すうえでの重要な前提になります。
まず注目すべきなのは、政府がAI利活用の推進を明確に打ち出した点です。今後、データ基盤整備やAI導入を後押しする投資・支援策が拡充されれば、企業にとってAI活用の環境はさらに整いやすくなります。中堅・中小企業にとっても、導入のハードルはこれまでより下がる可能性があります。
一方で、AIの活用が広がるほど、企業には利用ルールや責任体制の整備が求められます。AIの情報漏えいや権利侵害、説明責任といったリスクにどう向き合うかも、経営課題の一つになっていくでしょう。海外市場で事業を展開する企業であれば、各国の制度やガイドラインとの整合を踏まえたAI戦略も欠かせません。
今回の基本計画が示しているのは、AIを単なる業務効率化の道具としてではなく、社会全体の基盤を支える技術として捉える視点です。AIの活用とガバナンスの両面をどのように維持していくのかが、これからの企業には求められているといえるでしょう。
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