GIGAスクール構想に先駆けた「渋谷区モデル」 学習および校務支援システム刷新で学校のICT化を加速

イメージ:GIGAスクール構想に先駆けた「渋谷区モデル」 学習および校務支援システム刷新で学校のICT化を加速
  • 教育、学習支援
  • セキュリティ対策強化
  • ICT・クラウド活用
  • 301人~
更新日
2026-03-04

学校情報化先進地域に認定されている渋谷区。国がSociety5.0(※1)に向けて「GIGAスクール構想(※2)」や「未来の教室(※3)」ビジョンを打ち出す前の2017年より独自に渋谷区モデル―ICT機器を鉛筆やノートなどの「文房具」と同様に活用し、すべての子どもたちの可能性を引き出す協働的な学びと個別最適な学びを実現する試み―を掲げ、全国の自治体に先駆けて1人1台タブレット端末を導入しました。運用を始めて見つかった帯域不足や情報セキュリティと利便性との両立などの課題を解決するため、NTT東日本に学習および校務支援システムの一括導入支援を依頼し、教育ICTシステム(※4)を構築しました。新渋谷区モデルの検討導入の経緯や「未来の学校」づくりに向けた今後のICT教育推進について、渋谷区のご担当者にうかがいました。

※1 Society5.0とは、AIとIoTを基礎として産業革命に匹敵する変革を実現しようとする政府の提言で、テクノロジーによってオンライン空間と現実世界をつないで、さまざまな社会の問題を解決する、人々が暮らしやすい社会を目指すものです。
※2 GIGAスクール構想とは、1人1台の端末と高速通信環境の整備をベースとして、すべての子どもたちのために「個別最適化され、創造性を育む教育」を実現させる施策です。
※3 未来の教室とは、経済産業省が進める時代の変化に合わせた新しい教育のことで、「学びのSTEAM化」「学びの自立化・個別最適化」「新しい学習基盤づくり」を3本の柱に掲げています。STEAMはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(人文社会・芸術・デザイン等)、Mathematics(数学)の頭文字です。
※4 教育ICTシステムのICTとは、「Information and Communication Technology」の略であり、パソコンやタブレット、インターネットなどのデジタル技術を利用して、授業や学校業務の効率化をサポートするものです。

東京都渋谷区様

業種
教育、学習支援
従業員数
301人~名

東京都渋谷区

    イメージ:東京都渋谷区

    Summary

    導入いただいたソリューション
    教育ICTシステム基盤「渋谷区モデル」の刷新
    ソリューション導入効果
    情報セキュリティと利便性を両立した使いやすい教育ICTシステムを構築できた
    学校・教育委員会・保護者間のコミュニケーションが容易になり、教職員の事務作業の負担が軽減した
    教育データを可視化して個別の指導や学校運営に利活用するための準備ができた
    NTT東日本選定のポイント
    マルチベンダとして学習および校務支援システムの導入を一括で任せられたこと
    Wi-FiとLTEのハイブリッドなネットワーク環境を迅速に整備できたこと
    保護者向けと専門的な校務系ソフトウェアの問い合わせ窓口を独立させた手厚い保守運用体制を整えていたこと

    つながりにくい、情報セキュリティが強固すぎて使いにくい……1人1台タブレットを配付するも課題が山積み

    ――GIGAスクール構想前の2017年より「渋谷区モデル」を掲げて1人1台端末を実現し、国の「次世代学校支援モデル」(※5)等の実証事業へも参画するなど、ICT教育推進に積極的に取り組まれている背景について教えてください。

    竹澤氏:渋谷区では、学校のICT化は子どもたちがグローバル社会を生き抜くために必要な情報活用能力などの資質・能力の向上、および教職員や校務従事者の作業負荷軽減や業務時間短縮に寄与すると考えています。そこで「渋谷区長期基本計画2017-2026」の中で、基本目標の一つにICTを活用するための教育環境の整備を掲げ、教育ICTシステム構築学校のICT化に取り組んできました。

    これからの学校教育において、ICT機器は鉛筆やノートなどの文房具と同様に子どもたちに必要なものになるでしょう。そこで区立の全小中学校で児童生徒全員にタブレット端末を配付し、学校に限らず、いつでもどこでも学べる環境を整えたのです。

    ――今回、教育ICTシステムを刷新することになった理由は何でしょうか。

    イメージ:つながりにくい、情報セキュリティが強固すぎて使いにくい……1人1台タブレットを配付するも課題が山積み

    渋谷区 デジタルサービス部 ICTセンター ICT第二係
    係長 宇都 篤司氏

    宇都氏:実際に運用をはじめると、いろいろな課題が見つかりました。端末はLTE回線(※6)の通信のみに対応していたため、通信のひっ迫でつながりにくいことがありました。帯域不足などからWindows Update が実行しにくく、情報セキュリティ面の課題もありました。また、個人情報を扱うことから、情報セキュリティを重視しすぎるあまり、使いにくいシステムになってしまっていました。さらにリモートでのソフトウェア配信ができず、授業で新たなソフトウェアを導入するのが難しい状況。これらの課題を解決するため、端末のリース期間満了のタイミングでシステムを刷新することを決めました。

    ――教育ICTシステムの構築をNTT東日本へ依頼したのは何が決め手になりましたか。

    竹澤氏: 渋谷区が描く学校のICT化の理想像は、複数の企業のソリューションを組み合わせなければ実現できないものです。NTT東日本はそれをよく理解し、我々の想いに寄り添った提案をしてくれました。今回は学習および校務支援システムを一括で導入支援してもらうため、総合的な提案力や調整力の高さをとくに評価しました。

    つながりにくさ解消のために、従来のLTE閉域網に加えて、広域イーサネット網(※7)を利用したWi-Fi通信を併用することになりました。区立26校の校内LAN整備も同時に進める必要がありましたが、NTT東日本は公共組織・自治体導入実績も多数あり、業務知見にも信頼がおけたため、約8カ月間の短期プロジェクトでしたが安心して任せられました。

    イメージ:つながりにくい、情報セキュリティが強固すぎて使いにくい……1人1台タブレットを配付するも課題が山積み-02

    渋谷区教育委員会事務局 教育指導課

    統括指導主事 松村 信之介氏

    ユーザーIDの一元管理、保護者用問い合わせ窓口設置短期プロジェクトでも先進的な機能を装備

    イメージ:ユーザーIDの一元管理、保護者用問い合わせ窓口設置短期プロジェクトでも先進的な機能を装備

    渋谷区教育委員会事務局 教育政策課

    教育ICT政策係 係長 竹澤 悠人氏

    ――実際に環境整備はスムーズに進みましたか。

    宇都氏:キックオフは2019年12月、その後、コロナの第一波を迎え、2020年4月には対面での会議が難しくなりました。プロジェクトを延期しようかという話もでましたが、対面からMicrosoft Teams(※8)を使ったオンライン会議に切り替えて予定通り進められました。

    オンライン会議は区としては初の試みでしたが、利便性を実感でき、「これはオンライン授業にも活用できそうだ」という話になりました。調達はコロナ禍前だったのでオンライン授業は想定していなかったのですが、急きょオンライン授業にも対応できるように設計の一部を変更してもらいました。また、学習者用デジタル教科書がクラウド配信サービスでの提供となることがちょうど判明したので、NWの帯域不足に備えて回線も高速化しています。開発途中でも我々の要望をできるだけ取り入れてくれたことに感謝しています。

    Microsoft Teamsは大量のセッション数を消費するため、環境次第ではセッション枯渇で通信が遅くなることがありますが、そうした問題は一切起きていません。今回、教職員および校務従事者、児童生徒のIDを一元的に管理し、一度のユーザー認証で複数のシステムを使えるシングルサインオンを導入。子どもたちは顔認証でIDやパスワードの入力なしにシステムを利用できるようにしました。システムごとにベンダが違いますが、NTT東日本がベンダ間の調整もきっちりやってくれたので、高水準の情報セキュリティ対応と利便性向上を両立させながら校務運用の効率化を図れています。ユーザー情報の年度更新作業も楽になり、新小学1年生以外は新年度の初日から使えるようになりました。

    安定した通信環境の提供のために広域イーサ網は帯域保証型の1Gbpsの高速専用線を使い、無線LANアクセスポイントを各教室に2個ずつ設置してくれたので、Windows Updateやソフトウェアのリモート配信も問題なくできています。教職員からの新たなソフトウェア導入のリクエストも、Microsoft Power Apps(※8)を使ったアプリケーションも作成してもらい、24時間受け付けられるようになりました。

    ――NTT東日本では必要に応じて稟議作成への丁寧なフォローや活用研修の実施、年中無休のヘルプデスクなど、お客さまに合わせた対応をしていますが、今回のサポート体制はいかがでしたか。

    竹澤氏:導入後の2週間は各学校に1人サポート員を配置して、設定をオンサイト支援してくれたので、学校側の大きな混乱はありませんでした。また、年末までは本稼働サポート期間として特別な体制を組み、トラブルにもすぐ対応してくれたので助かりました。

    その後のサポート体制も手厚く、サービスデスクは保護者向けの問い合わせ窓口と専門性が高い校務系ソフトウェアの問い合わせ窓口をそれぞれ独立させることで、適切かつ迅速な対応をしてくれています。2020年に構築したシステムですが、2年後のいまも先進的といえるのは、NTT東日本の高い提案力と万全なサポート提供のおかげだと思っています。

    「いつでもどこでも」学びの場を保障教育データの利活用で個に応じた指導が可能に

    ――デジタル教育格差(※9)を埋めるなど様々な役割が期待されていますが、実際にどのように活用されていますか。

    松村氏:コロナ禍のオンライン授業はもちろん、不登校や病気の子どもたちにもオンライン学習の機会を提供できるようになりました。いつでもどこでも学べる環境が整ったことは、学びの保障になっています。授業以外には周年行事や音楽会などイベントのオンライン配信にも活用しています。子どもたちは順応性が高く、早速、委員会活動でMicrosoft Teamsを使ったオンライン会議をしていて驚きました。

    イメージ:「いつでもどこでも」学びの場を保障教育データの利活用で個に応じた指導が可能に
    学習用ソフトを活用した授業の様子

    行政系ICT基盤システムとつなぐことで、学校と行政も連携しやすくなりました。教育委員会から直接保護者へお知らせやアンケートを送付することも可能になり、教職員および校務従事者の作業負荷が軽減しました。アンケートの集計も自動でできるので、いじめアンケートの実施頻度も上げています。保護者からはスマートフォンでのお知らせ配布や欠席連絡の機能が便利との話があります。

    多くの学校で職員会議のオンライン化も進み、学校現場の働き方改革・業務改革にもつながっています。NTT東日本には各学校でのシステムの利用状況を可視化できる運用ツールも整備してもらったので、利用時間が少ない学校に声がけをしながら利用を促進できています。

    ――学校情報化先進地域にも認定されており、Society5.0に対応するためのオンライン教育やEdTech(※10)は今後も推進されていくと思いますが、具体的な展望があればお聞かせください。

    イメージ:「いつでもどこでも」学びの場を保障教育データの利活用で個に応じた指導が可能に-02
    一人一人のシステム利用状況が見える運用ツール。デジタル教科書導入後は使用時間や進度もわかる

    松村氏:渋谷区では、個別最適な学びと協同的な学びの一体化を実現する「未来の学校」の実現を目指しています。さまざまな個性をもった子どもたちのニーズに応え、学びの可能性を広げられるのはデジタルノートやデジタル教科書、そしてそれらを活用した学習スタイルだろうと思います。協働的な学びもオンラインなら実践しやすく、すでに鹿児島県の小学校とオンラインの合同授業も実施しました。

    竹澤氏:今後は教育データの利活用にも力を入れていきます。様々な教育データを複合的に組み合わせることにより、多面的な視点で気づきを得たり、課題をより明確に把握することができると考えています。これまで教員の経験や勘による指導や支援に加えて、データも活用することで、教員の経験値に関わらず、子どもの状況をより多面的に理解し、一人一人にあった指導や支援の充実を図っていきます。

    渋谷区では今後も学校のICT化を推し進めていきます。2025年にはシステムの更新も控えていますので、NTT東日本からはクラウド活用を前提としたネットワーク分離をはじめ、ICT教育を加速するさまざまな提案を期待しています。

    ※5 次世代学校支援モデルとは、校務データと児童生徒の学習記録データ等を有効に連携させ、可視化することで、教員による学習指導・生徒指導等の質の向上や学級・学校運営の改善を標準化することです。
    ※6 LTE回線のLTEとは「Long Term Evolution」の頭文字で、携帯電話通信規格の一つで、第3世代携帯の通信規格「3G」をさらに高速化させたものです。
    ※7 広域イーサネット網とは、VPN接続サービスの一つで、地理的に離れたLAN間などをイーサネットインターフェースで接続する技術です。インターネットを使わないことで、高い情報セキュリティレベルを保持でき、安定して高速な通信を実現します。
    ※8 Microsoft Power AppsおよびMicrosoft Teamsはマイクロソフト グループの企業の商標です。
    ※9 デジタル教育格差とは、コロナ禍による「教育のデジタル化」が予期せず一気に進んだ一方で、家庭や学校のICT(情報通信技術)整備の差によって学力や最終学歴など教育結果に格差が生じることを指します。
    ※10 EdTech(エドテック)とは、Education(教育)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。

    • 上記ソリューション導入時期は2020年9月です。

    • 文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2022年7月時点(インタビュー時点)のものです。

    • 上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

    イメージ:渋谷区
    • 企業名 東京都渋谷区
    • 概要 東京都23区の西南に位置する渋谷区。約23万人が暮らしています。中心部に、明治神宮・代々木公園という大きな緑地があり、新宿御苑の一部を加えると、全体の10分の1を緑地が占める緑豊かな街です。成熟した国際都市を目指し、ダイバーシティ&インクルージョン教育にも力を入れています。
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