• 2023.8.07 (月)
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■アフターコロナで、「良かった会社」も「悪かった会社」もその理由に「法人」

長いコロナ禍で、法人のお部屋探しが長く停滞しました。しかし、5類に移行し、企業活動も活発化し、仲介件数も回復基調にあります。そうした中、「仲介件数が前年より伸びた」不動産会社と「仲介件数が前年より減った」という不動産会社の二極化傾向は続いています。

全国賃貸住宅新聞のデータを、プリンシプル住まい総研が独自に経年比較

このデータでは、「増えた」「減った」と回答した不動産会社さんにその「理由」を聞いているのですが、興味深いことに、双方で「法人契約の増加」「法人契約の減少」が第三位になっています。その理由を今回は深掘ります。

全国賃貸住宅新聞 2023年3月6日

■輸出系企業は好調

 輸出企業は、円安の影響で好景気です。製造業は増産のため、海外からも労働者を募り、賃貸物件は活況です。話をシンプルにすれば、1ドル100円の時の商品と、1ドル150円の時の商品では、輸出時の単価・利益が大幅増になります。

 例えば長野県の諏訪市。これを機に、プリンター製造会社の工場周辺では、老朽化した社宅からの退去が進み、外国人の入居制限が緩和され、不動産会社の仲介はてんてこ舞い。3月には「紹介する物件がない」といった事態になったそうです。

 あるいは、佐賀県伊万里市。半導体用シリコンウェーハ大手のSUMCO社は世界的な半導体需要の拡大に対応するため、佐賀県伊万里市の九州事業所久原工場敷地内に新たな施設を建設し、直径300ミリの最先端シリコンウェーハの生産能力を増強しています。投資額は2015億円。地元で500~600人の新規雇用を見込み、2025年のフル稼働を目指しています。となると、伊万里市ではもう「空室待ちで行列」という状態。絶好調です。

 福岡県行橋市では、自動車関連が絶好調。行橋市では、500世帯以上が一年で増加している状況です。当然、地元の不動産会社は前年と比較して、急激に仲介件数が増加しています。こうした状況下では、海外からの労働者や期間工といった短期労働者の入居も増え、入居してすぐネットが無料で使えるインターネット無料物件が増えています。ときには「テレビは置かないけど、ネット無料はほしい」というニーズがあるそうです。

年齢別人口統計等(住民基本台帳より)各月末時点 プリンシプル住まい総研作表

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■輸入系企業は耐えています

 一方で、輸入系企業のお部屋探しの件数は厳しい状況です。円安に加えて、ウクライナ危機で原材料費が高騰しているため、国内販売は厳しく、工場の増産での人員増加とは言い難い状況です。

 例えば、石油化学コンビナートや、食料加工品の製造メーカーです。材料費が高騰するため、単価をあげざるを得ないという状況で、かつ、消費者は節約も志向し、販売件数は思ったほど伸びませんので、増産よりも生産性の改善を余儀なくなされています。

 石油化学コンビナートや、食料加工品の製造メーカーです。材料費が高騰するため、単価をあげざるを得ないという状況で、かつ、消費者は節約も志向し、販売件数は思ったほど伸びませんので、増産よりも生産性の改善を余儀なくなされています。

 従って、法人物件の退去も入居も少なく、仲介営業マンの目標達成率は極めて低く、管理側も入居が決まらず頭を抱えている状況です。数少ない移動者は、生活費をなるべく抑えて生活したいというニーズが強く、同じ家賃なら、ネット無料物件を好むという傾向があります。

 輸出系・輸入系で真逆の仲介件数影響が出ているのに、その対策が双方、ネット無料であるというのも、不思議な現象です。

■アフターコロナでも継続されるテレワークは、働き方改革の象徴へ

 NTTグループが2022年7月から、リモートワークを基本とする業務運営が可能な組織を「リモートスタンダード組織」とし、社員の5割がリモートワークを前提とすると発表しました。現在既に6割が在宅勤務していますが、コロナ禍以降も継続する意向です。

 こうしたテレワークを活用することで、例えば、出産・育児・介護・療養といった様々な働き方の多様化は、労働者確保の観点からも有効です。コロナ禍で一気にテレワークが広まりましたが、それを継続し、採用や社員のロイヤリティ向上につなげていこうという取り組みは、IT企業などで拡がっています。

■感染防止ではなく、テレワークにより、オフィス賃料の削減も

 富士通も国内グループの社員8万人に、テレワーク・自宅勤務などを推進すると2020年7月に発表しました。ここで注目すべきはその目的です。同社は明確に、「今後3年をかけて全席フリーアドレスの3形態のオフィスに整備することで、既存オフィスの床面積を50%に削減する」と発表しています。

 コロナ禍では、「感染防止」の観点として推奨していたテレワークが、アフターコロナでは、「オフィス賃料の減額」と明確に目的が変わっているのです。

 インターネット無料物件が登場して、もう、10年ぐらいが経過しますが、コロナ禍で感染防止の観点からも非常に好まれました。そして、アフターコロナでも継続的に法人分野で、普及が続くのです。まさにニューノーマルの時代到来といえるでしょう。

  • 執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

    【プロフィール】
    プリンシプル住まい総研 所長

    1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。20121月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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