テレワーク導入のポイント

テレワークの導入はどう進めるべき?
必要な6つのステップを紹介

2020年4月の緊急事態宣言の発令をきっかけに、テレワークの導入や検討は多くの企業にとって身近なトピックになりました。

いざテレワークを導入する際に、まずは何から準備するべきか把握したい企業も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、テレワークを導入する際の6つのステップについて紹介していきます。

1. テレワークの導入率はコロナ禍で2倍に

2021年3月に国土交通省が発表したデータではテレワーク実施率は2019年9.8%から2020年には19.7%と倍増しました。しかし、2024年3月のデータでは直近1年間で減少しています。新型コロナウイルス感染症の流行時点よりは実施率は高い水準を示していますが減少傾向にあります。

2. テレワーク導入6つのステップ

感染対策や働き方改革などメリットが多いテレワークですが、導入においてはしっかりと手順を踏むことが重要です。テレワークを導入する時に行うべきステップを紹介します。

①導入検討・全体方針決定・経営判断

まずは導入前に、テレワークを導入する目的や、どのような効果を得たいのかを決めましょう。

テレワークを導入する目的やメリットとしてよく挙がるものは以下です。

  • 多様な人材の雇用、離職防止
  • 交通費やオフィス賃料などのコスト削減
  • 非常時の事業継続性の向上
  • 生産性の向上
  • 企業イメージの向上
  • 企業のデジタル化の促進
  • 従業員の満足度やQOLの向上

上記の中で、何の達成を優先するのかを決めましょう。コロナ禍における緊急事態宣言時では「非常時の事業継続性の向上」が最重要になる場合が多いですが、同時に達成するべき目的の優先順位決めがあることで基本ポリシーの設定に役立ちます。

テレワーク導入の目的を明確にした後は、どんな範囲でどんな形態にするのか基本ポリシーを定めましょう。

基本ポリシーの項目としては、以下が挙げられます。

  • 対象となる従業員や部門
  • 対象となる業務(テレワークと相性の良い自己完結する業務や成果が見えやすい業務に絞るのか)
  • 実施頻度(週に1度なのか、完全テレワークなのか)
  • 導入形態(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス)

これらは重要な経営判断になるので、経営や導入部門のトップがリーダーシップを取って進めていきましょう。

②現状把握

具体的な検討段階に進むにあたり、現在の社内制度や仕組みを確認し、テレワーク導入後にどう変わるのかも確認しましょう。

確認すべき項目は以下が挙げられます。

  • 就業規則(基本となる始業・終業時間や例外のケースなど)と勤怠管理制度
  • 人事評価制度(目標管理制度、成果に基づく評価制度など、それに伴う給与制度
  • 各部門のオフィス環境での仕事の進め方
  • ICT環境(デジタル化やクラウド化が進んでいるのか)
  • セキュリティ環境やルール
  • 労働組合がある場合は組合の考え方(労働組合がない場合には従業員の考え方)

③導入に向けた推進体制の構築

テレワークの導入時にはプロジェクトチームを発足し、推進のための社内体制を確立するのが重要です。

  • 経営企画部門
  • 人事、総務部門
  • 情報システム部門

などの関わる部門と各部門の代表を含めた横断的なチームメンバーで推進体制をつくりましょう。

また、導入推進にあたっては以下の3つの観点も考える必要があります。

  • 社内ルールの観点
    テレワーク実施者が適切な労働環境で働けるようにルールを整備し、教育・研修する。
  • ITツールなど環境の観点
    テレワーク実施者がオフィスを離れても快適な環境で働けるように、ITツールを導入するなど環境を整備する。
  • 情報セキュリティの観点
    テレワーク実施者が安心して働けるように情報セキュリティ対策を整備する。

④テレワークに関する社内ルール作り

プロジェクトチームが編成できたら、チームでテレワーク導入に向けた社内のルールを作りましょう。

(1)就業規則の変更

テレワーク時も労働関連法令を遵守する必要があります。長時間労働になる場合や、逆にルーズになってしまう場合もあるので、テレワーク時の労務管理についてルールを定める必要があります。

一般的にテレワークを導入する場合に就業規則に定める項目は以下の3つです。

  • テレワーク勤務を命じることに関する規定
  • テレワーク勤務用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
  • 通信費・情報通信機器などの負担に関する規定

(2)勤怠管理

オフィス勤務時の勤怠管理の方式を、テレワーク用の勤務管理の仕組みに切り替える必要があります。

電話・メールによる勤怠管理は導入コストが低いものの、記録に手間がかかります。大人数の勤怠管理は煩雑となるなどのデメリットも多いです。導入コストは少しあがってもITツールを導入して勤怠管理をすることで、従業員から簡単に始業・就業時刻等を申請・管理できるのでおすすめです。

また、働き方改革関連法の施行により、2020年4月より中小企業でも時間外労働の上限規制が強化されました。違反時の罰則も規定されたので、労働時間を客観的に把握できる仕組みはより重要になっています。

(3)安全衛生

労働安全衛生法により、テレワークを行う労働者も含めた全労働者に対しての安全衛生教育や健康診断とその事後措置、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック(常時50人以上の労働者を使用する事業場に義務づけ)等が義務付けられています。

現在運用している仕組みやルールなどに、テレワーク用に修正すべき項目などがないか確認しましょう。たとえば、テレワークによる労働者の心身の負担を考慮し、健康上の相談ができる窓口の設置、医師や保健師による保健指導の実施などが挙げられます。

(4)教育・研修

テレワーク導入時には、そのメリットやルールを理解してもらうためにも、従業員への教育や研修が必要です。説明会の実施や、オンライン研修・eラーニングを行いましょう。

テレワークの利用者(メンバー)だけでなく、テレワーク時にマネジメントを行う管理職など、それぞれを対象にした内容が好ましいです。

  • テレワークの目的・必要性
  • テレワークの実施の流れ・周囲の体制
  • テレワーク時のツールの使用方法

の3点は導入計画に組み込み実施しましょう。

⑤IT、情報システム環境の整備

テレワークを実施する場合、想定される業務内容に合わせてITツールの導入やセキュリティ対策などを行う必要があります。

(1) ネットワーク環境整備

テレワーク時でも自宅のパソコンやスマートフォンから社内システムに接続できる環境を構築することで、オフィスにいるのと同じように資料の編集やメールなどの業務ができるようになります。

ネットワーク接続環境の構築と同時に、テレワークで使用する従業員の端末も用意しましょう。会社のパソコンを持ち帰り利用する方式や、個人所有の端末から会社パソコンにアクセスして遠隔操作を行う方式もあります。

(2) 電話をはじめとした音声環境の整備

内線や外線などの電話もテレワーク対応することが可能です。クラウドPBX(電話交換機)などを利用することで、従業員のスマートフォンがオフィスの電話機として利用可能になります。

社外から会社への電話を自宅で応答する、スマートフォンから会社の電話番号での取引先への電話発信をする、また内線の転送なども可能です。クラウドサービスを通じて、従業員間での内線通話も可能になり、通話料の削減も見込めます。

環境構築の方法には、オフィスで利用中の電話設備を有効活用する方法や、サーバーをクラウド化して災害対策までを実現する方法があるため、自社の状況に合わせて検討しましょう。

(3) 業務のオンライン化

オフィスでの業務が前提となっていた勤怠管理や会議・商談、契約処理や帳票管理などのバックオフィス業務も、ITツールの導入でテレワークに対応できます。

業務例は以下です。

  • オンライン上で会議・商談・研修の実施
  • 電子契約での押印による契約締結
  • 帳票の電子化による管理効率化

(4) 情報セキュリティ対策

テレワークでは、従業員が業務に関わる情報を社外で利用する機会が増加します。業務用端末の盗難や、外部からの不正アクセス、コンピュータウイルスなどの情報セキュリティリスクが増加するので対策が必要です。

主な情報セキュリティ対策は以下です。

  • 不正アクセス対策
    ファイヤウォールの導入、IPS(侵入防止システム)、IDS(侵入検知システム)の導入
  • データ盗聴、改ざん防止
    VPN(仮想私設網)などの安全性の高い通信インフラの導入
  • 端末管理、情報漏えい対策
    ウイルス対策ソフトの導入、シンクライアント端末(保存機能などを持たない端末)や端末操作制御ソフトの導入

上記に加えて、情報セキュリティポリシーの策定や研修によるテレワーカーのセキュリティ意識向上なども重要です。

(5) 従業員へのサポート環境の整備

テレワークを導入時に、IT機器やツールの操作に慣れていない従業員をサポートする体制も必要です。

テレワークの導入後は、

  • 自宅側でインターネットにうまくつながらない
  • 新しく導入したWeb会議ツールが使いこなせない

などの問い合わせが情報システム担当に集中することが想定されます。

対応するためのリソースに余裕があれば、自社内で完結させることもできますが、情報システム担当の人数は限られている場合が多いため、アウトソーシングを活用して解決するのも有効です。オフィス内のサーバーをはじめとした機器管理業務もアウトソーシングすることができ、IT担当者の業務負荷を軽減できるため、 検討してみるとよいでしょう。

また、ITツールはサポート体制の整っているサービスを選ぶことで、コールセンターでの対応など手厚いサポートを受けることができ安心です。

(6) 物理的な感染症対策

テレワークの導入後も完全リモートワークでまったく出社をしない人は少なく、週のうち数日の出社日がある場合や、やむを得ず出社する場合もあります。オフィスでの物理的感染症対策として、従業員や来訪者の安全確保に努めることも重要です。密集や接触の機会が減少するようなルールづくりやツールの導入などを検討しましょう。

代表的なオフィスでの感染症対策は以下が挙げられます。

  • マスク着用の義務化
  • 飛沫感染防止のアクリルパネルの設置
  • サーマルカメラによる出社時の自動検温
  • 混雑状況を可視化するカメラシステム
  • 着席時のソーシャルディスタンスを保つルール決め

これらを活用して三密の回避に努めましょう。

⑥テレワークの導入とその評価

テレワークの本格的な導入の前にトライアルとして導入する場合は、導入目的の達成度合いや問題点の洗い出しなどの、効果測定を行う必要があります。テレワークを実施した従業員へのヒアリングやインタビューによる「質的評価」や、アンケートの実施や期間内での業務量、成果などのチェックによる「量的評価」の2つの観点で行いましょう。

また、本格導入をして一定期間がたった振り返りのタイミングでは、より大きな指標として「会社・部門の売上」「社員の求職・離職率」なども参考になる指標です。テレワークを導入した目的を達成できているのか、また導入した結果マイナスになった部分はどこなのかを把握することで、会社全体の中長期的なテレワークの定着につながります。

3. テレワークの導入に成功した企業の事例

株式会社アウトソーシングビジネスサービス

株式会社アウトソーシングビジネスサービスは、テレワークにクラウドサービスを積極的に活用しています。

クラウド型VDI環境を構築することで、社内のパソコン環境と同じ業務をテレワークでも実現。データの転送が行われないためセキュリティ的にも安心です。社内の専用ルームでしかできなかったマイナンバーの入力・集計業務が在宅で可能になるなど、テレワークでも多くの業務を滞りなくできるようになりました。

全従業員が一斉にテレワークを開始でき、以下のような効果があったそうです。

  • 自宅からでも会社と同様の仕事が行えるようになり、多様な働き方に対応できた
  • 情報漏えいが起きにくい環境を構築でき、場所を選ばずにマイナンバーなどセキュアな情報を扱う業務が可能になった
  • BCP(事業継続計画)対策ができ、感染症流行時にも業務を滞りなく遂行できた

4. まとめ

本記事ではテレワークを導入する際に必要な6つのステップや、導入に役立つ成功事例を紹介していきました。

十分な準備をせず見切り発車でテレワークを実施しても、業務がうまく進まずオフィスワークに戻ってしまうこともあります。継続して実施するためにはしっかりと手順を踏むことが重要です。

テレワークの導入方法についてステップごとの内容を具体的にまとめた「テレワーク導入ガイドブック」をご用意していますので、社内での共有や勉強教材としてぜひご活用ください。

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