| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
【徹底解説】IT導入補助金2022の3つの類型と受給までの5ステップ【おすすめツールも紹介】
「IT導入補助金を利用して業務を効率化するツールを導入したい」という方は多いのではないでしょうか。IT導入補助金の申請には、アカウント登録やツール選定などいくつかの手順を踏む必要があります。そこで今回の記事では「IT導入補助金の概要」について解説します。対象となる事業者の条件や申請方法が理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
目次:
1.IT導入補助金の3つの類型
IT導入補助金とは、企業の売上アップや業務効率化をサポートするために、ITツールを導入するための補助金を指します。取り入れるITツールの種類によって、適応となる補助枠が以下のとおり異なるのが特徴です。
- ・通常枠
- ・デジタル化基盤導入枠
- ・セキュリティ対策推進枠
ここでは、それぞれの類型について詳しく説明します。
1通常枠
通常枠では、生産性を上げることを目的としたITツールを取り入れる事業が対象となります。A類型とB類型があり、どちらも1/2の補助率です。A・B類型は、生産性が高まる業務プロセスの数や賃上げ要件など、いくつか違いがあります。それぞれの補助金や対象経費について、以下の表をご覧ください。
通常枠 | ||
---|---|---|
種類 | A類型 | B類型 |
補助金 | 30〜150万円未満 | 150〜450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
要件 | 生産性を上げるためのITツールであること | |
補助対象(経費) | ・ソフトウェアの購入費 ・導入関連費 ・クラウドサービス利用料(1年間まで) |
参照元:サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト|IT導入補助金
A・B類型は、それぞれのITツールの機能数にも条件があります。A類型は1プロセス以上、B類型は4プロセス以上が必要となります。
2デジタル化基盤導入枠
デジタル化基盤推進枠では、労働生産性を高め、かつインボイス制度を見据えたデジタル化を進める事業が対象となります。デジタル化基盤導入類型と複数社連携IT導入類型の2種類に分類されます。支給される補助金や対象となるサービスは、以下のとおりです。
種類 | デジタル化基盤導入類型 | |||
---|---|---|---|---|
補助金 | 会計、受発注、決済、ECソフト | PC・タブレットなど | レジ・券売機など | |
5〜50万円以下 | 50〜350万円 | 〜10万円 | 〜20万円 | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | 1/2以内 | |
機能要件 | 1機能以上 | 2機能以上 | デジタル化基盤導入類型のITツールに資するもの | |
補助対象(経費) | ・ソフトウェアの購入費 ・ハードウェアの購入費 ・導入関連費 ・クラウドサービス利用料(2年間まで) |
種類 | 複数社連携IT導入類型 | |||
---|---|---|---|---|
補助金 | デジタル化基盤導入類型の対象になる経費 | 左記以外の経費 | 専門家・事務費 | |
5〜50万円以下 | 50〜350万円 | 50万円×参加事業者数 | 補助上限200万円 | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | 2/3以内 | |
機能要件 | 1機能以上 | 2機能以上 | 左記と同じ | |
補助対象(経費) | ・ソフトウェアの購入費 ・ハードウェアの購入費 ・導入関連費 ・クラウドサービス利用料(2年間まで) |
参照元:サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト|IT導入補助金
補助対象となるソフトウェアは、会計ソフトや決済ソフトなどさまざまで、通常枠よりも補助率が高いのが特徴です。
3セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠とは、2022年8月9日から申請が開始された新しいIT導入補助金を指します。生産性向上を妨げる要因となる、サイバー攻撃の被害を防ぐために必要なITツールの導入を支援します。
補助金や補助率などは、以下のとおりです。
セキュリティ対策推進枠 | |
---|---|
補助金 | 5〜100万円 |
補助率 | 1/2以内 |
機能要件 | IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のサイバーセキュリティお助け隊サービスリストに掲載されたサービスの利用 |
補助対象(経費) | ・サイバーセキュリティサービスの利用料(2年間まで) |
サイバーセキュリティーサービスの申請にあたっては、通常枠やデジタル化基盤導入枠のオプションとしての利用も可能です。
2.IT導入補助金の対象・非対象となる事業者
IT導入補助金を利用することでツールが導入しやすくなりますが、すべての事業者が対象になるわけではありません。ここでは、対象と非対象になる事業者について説明します。
1対象となる事業者
IT導入補助金は、中小企業と小規模事業者が対象です。指定された要件に該当する必要があり、通常枠は16項目、デジタル化基盤導入枠とセキュリティ対策推進枠は15項目の条件があります。また要件の中には、業種や組織形態での従業員数や資本金に関連する内容も明記されています。ここでは、卸売業などの業種を例として見てみましょう。
業種 | 常勤の従業員(人) | 資本金 |
---|---|---|
卸売業 | 100 | 1億円 |
小売業 | 50 | 5,000万円 |
建設・製造・運輸業 | 300 | 3億円 |
上記の場合、資本金と常勤の従業員規模のどちらか一方が基準内であれば、IT導入補助金の対象になります。国の「IT導入補助金2022」に関するサイト内で詳しい条件が確認できるので、自社が対象になるのか確認してみてください。
2非対象となる事業者
9項目の要件のいずれかに該当すると、IT導入補助金申請の対象外となります。ここでは、9項目の要件に関して詳細をみていきましょう。
項目数 | 要件 |
---|---|
1 | 以下の1〜6いずれかに該当する事業者は申請の対象外となる |
1.発行済株式の総数または出資価格総額2/3以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者等 2.発行済株式の総数または出資価格総額1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等 3.大企業の職員または役員を兼ねている者が、役員総数の1/2以上を占めている中小企業者 4.発行済株式の総数または出資価格総額を①〜③に該当する中小企業・小規模事業者等が所有している中小企業・小規模事業者等 5.申告済みの(確定している)直近過去3年分の各事業年度または各年の課税所得年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等 6.1〜3に該当する中小企業・小規模事業者等の職員または役員を兼ねている者が、役員総数すべてを占めている中小企業者・小規模事業者等 |
|
2 | IT導入補助金2022において「IT導入支援事業者」に登録している事業者や登録予定の事業者。IT導入支援事業者と補助事業者の重複は行えない ※IT導入支援事業者は構成員を含む ※2021年以前の事業で登録している場合、この限りではない |
3 | 補助金等の指定停止措置や指名停止の措置が経済産業省から講じられている事業者 |
4 | 風俗営業や性風俗関連特殊営業、接客業務受託営業を営む事業者(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定する) ※旅館業法第3条第1項に規定され許可を受けて旅館業を経営する事業者(風俗営業等の規制や業務適正化に関する法律第2条第6項に規定され店舗型性風俗特殊営業を経営するものを除く)は除外する |
5 | 過去1年間で労働関係法令違反に伴い送検処分を受けた事業者 |
6 | 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定された暴力団等の反社会的勢力に関係する事業者 |
7 | 宗教法人 |
8 | 同窓会やPTAなどの法人格のない任意の団体 |
9 | その他本事業目的や趣旨から適切でないと中小機構や経済産業省並びに事務局から判断された者 |
たとえ対象となる事業者の条件を満たしていたとしても、上記などの項目に該当すれば非対象とみなされます。
3.【2022年】IT導入補助金を受給するまでの5ステップ
IT導入補助金の対象に該当することがわかったら、受給申請を始めましょう。受給までの手順は、以下のとおりです。
-
・支援事業者とツールを選ぶ
-
・「gBizIDプライム」アカウント取得と「SECURITY ACTION」の宣言
-
・事業計画を策定し提出する
-
・事業をスタートする
-
・IT導入補助金の受給
ここでは、受給までに必要な手続き方法について詳しく説明します。
1支援事業者とツールを選ぶ
IT導入補助金2022のサイト内にある「IT導入支援事業者・ITツール」から、IT導入支援事業者と利用したいITツールを選択してください。ツールや法人事業者名の入力検索などのシンプル検索が可能です。一方で、希望するツールや事業者がない方は、詳細検索から業種やプロセスなどのカテゴリー検索が行えます。自社の業種や経営課題、事業規模に合わせて選定しましょう。
2「gBizIDプライム」アカウント取得と「SECURITY ACTION」の宣言
IT導入補助金の申請には、gBizIDプライムのアカウントとSECURITY ACTIONの宣言が必要です。gBizIDとは、法人・個人事業主向けの認証システムを指します。1つのIDとパスワードでe-Govや金融庁電子届出システムなど、さまざまな行政サービスにログインできます。アカウントは、gBizIDホームページから取得可能です。
また、SECURITY ACTIONとは、情報セキュリティ対策に取り組むことを、中小企業が自ら宣言する制度を指します。一つ星と二つ星の二段階に分かれていて、どちらか一方の宣言が申請要件となります。IPAの「SECURITY ACTION自己宣言サイト」から申請可能です。
3事業計画を策定し提出する
IT導入支援事業者との商談を進め、申請に向けた事業計画を策定していきましょう。策定した事業計画は、IT導入補助金2022のサイト右上にある「申請マイページ」から申請できます。
申請マイページを利用した際の流れは、以下のとおりです。
- 1.IT導入支援事業者から申請マイページの招待を受け、申請者の基本情報を入力する
- 2.申請マイページから申請に必要な情報入力書類を添付する
- 3.IT導入支援事業者が「事業計画値」と「導入予定のITツール情報」を入力する
- 4.入力内容の最終チェックを行い、申請の宣誓を行ったあと「申請マイページ」を通じて事務局へ提出する
参照元:IT導入補助金2022|ステップ4:交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
IT導入支援事業者からの招待や入力が必要なので、確認しながら提出を完了させましょう。また、交付決定通知もマイページを通して申請者へ届くので、忘れずに確認してください。
4事業をスタートする
交付決定された内容に準ずる形で、事業を開始します。仮に事業内容を変更する場合には、計画変更の手続きが必要になるため注意しましょう。また、補助金対象となる経費に関連する領収書などの証拠書類は、補助金の交付を受ける際に必要となります。そのため、なくさないように確実に保管しておきましょう。
5IT導入補助金の受給
事業が適切に実施されたことが確認されると補助される金額が決まり、補助金として受け取れます。開始した事業内容や、経費の報告を正確に行ってください。IT導入補助金を受給するために必要な提出書類は、以下のとおりです。
- ・実績報告書
- ・請求書(請求時)
- ・経費エビデンス
補助金対象となる書類は、事業終了後から5年間の保管が必要です。また、事業や収益の報告が必要なケースがあります。
4.業務効率化や生産性アップにおすすめ!NTT東日本のITツール3選
「業務を効率化したいけれど、どのITツールを選べば良いのかわからない」といった悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。ここでは、NTT東日本が提供するITツールを紹介します。
1AIよみと〜る
AIよみと〜るとは、手書きの文字を認識して帳票や書類の読み取りを行い、電子データ化するシステムです。請求書や申込書などの書類を、AIを使って自動データ化できます。画面が見やすくシンプルな操作方法なので、デジタルツールに不慣れな従業員も使いやすいでしょう。また、デモ体験が行えるので、導入後に使われるか不安な場合でも気軽に試せます。気になる方は、以下のリンクをご覧ください。
2おまかせ はたラクサポート
おまかせ はたラクサポートとは、利用するITツールの初期設定や利用中に発生したトラブルに関して、迅速にサポート対応するサービスです。ITツールは導入がゴールではなく、従業員全体がスムーズに利用しなければ意味がありません。「やり方がわからない」「トラブルの対処に時間がかかる」などが続くと、業務効率化が滞る可能性があります。
おまかせ はたラクサポートの利用で、バックオフィス業務の効率化が図れます。30日間のお試しサポートもあるので、試してみたい方は以下のリンクをご覧ください。
3コワーク ストレージ
コワーク ストレージとは、中小企業向けの安心して使えるクラウドストレージサービスです。クラウド上にデータ保管するので、パソコンのハードディスクを圧迫しません。またタイムリーな情報共有が可能なので、テレワークに必須のサービスと言えます。ファイルはオフラインでもローカルにキャッシュされるので、オンラインが利用できない状態でも保存が可能です。
そして、再度オンラインになると保存内容が同期される点も魅力です。ITツールの取り入れで従業員の働き方の見直しも行いたい方は、ぜひ利用を検討してみてください。
5.IT導入補助金を活用して自社の課題を解決しよう
IT導入補助金は、ITツール導入時の補助金が受けられる制度です。すべての事業者が対象ではなく、要件を満たした中小企業や小規模事業者のみが受けられるシステムです。受給までには支援事業者の選定など、所定の手続きを踏む必要があります。申請までに事業計画を支援事業者と共同で策定しなければならないなど時間を要するので、早めの取り組みが必要です。
ITツールの導入を検討している方は「コワークストレージ」や「AIよみと〜る」などのサービスをセット導入するのがおすすめです。NTT東日本では「DX無料体験プログラム」を用意しているので、使い方を実際に体験できます。興味のある方は、ぜひ以下のバナーをご覧ください。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。