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東京通信大学は、学生数倍増に対応するため、基盤システムの全面更改をNTT東日本へ依頼。24時間365日止まらない学習環境の構築と、生成AI「tsuzumi」による個別最適な学習支援を始動しました。
Index
東京通信大学

(左から)NTT東日本株式会社 ビジネスイノベーション本部 先進事業推進部 事業協創部門 賀川、SE運営部 技術部門 チーフ 小南、東京通信大学 管理部 宮嵜氏、情報マネジメント学部 学部長 加藤氏、統轄責任者 佐藤氏、NTT東日本株式会社 ビジネスイノベーション本部 社会基盤ビジネス部 教育営業部門 第二教育営業担当 担当課長 今井、シニアコンサルタント 鈴木
Summary

東京通信大学 情報マネジメント学部 学部長 加藤氏
――今回基盤システムを更改することになった背景や、解決したかった課題について教えてください。
佐藤氏:本学は、社会課題として深刻化している高度IT人材やDX人材、福祉人材の不足を解消することを目的に2018年に開学しました。情報マネジメント学部と人間福祉学部を立ち上げ、人材育成に取り組んでいます。学生数は順調に増えていますが、とくに不足しているIT人材は今後さらに増やしていく必要があると考え、情報マネジメント学部の収容定員を2000名から4000名規模にしていく計画を立てたことが更改のきっかけです。
通信制大学にとって、ポータルシステムやLMS(Learning Management System/学習管理システム)は通学制大学のキャンパスに相当しますから、学生数の増加によるアクセス集中にも対応できるよう、きちんと整備しておく必要がありました。また、開学から数年が経過し、学生や教職員からUI(画面デザイン)やUX(使い勝手)への改善要望が挙がってきていたので、できるだけ反映することを意識しました。
――NTT東日本にご依頼いただいた理由を教えてください。
佐藤氏:特に評価したのは、大学運営を深く理解した上での提案力です。システムありきではなく、学生の学修環境や教職員の業務に寄り添った解決策を提示してくれました。通信制大学にはインターネットを介して全国から学生がアクセスするので、セキュリティや事業継続性は極めて重要です。NTT東日本はデータセンターを自社で保有しているのも安心感につながりました。また、NTT東日本は2018年の開学当初からのパートナーですが、通信制大学がまだ少ない時期から、他大学の事例も踏まえて知見を提供してくれており、非常に頼りになります。
――生成AI「tsuzumi」も導入されていますが、背景を教えてください。
加藤氏:生成AIは通信制大学との親和性が非常に高く、学生へのメリットも大きいと考えています。これからの時代、企業でも生成AIの活用がどんどん進みます。ぜひ、学生には在学中に積極的に生成AIに触れ、使い方や知識を身につけて卒業してほしいと思っています。また、教員が研究で機微な情報を扱う場合も多くあります。そのため、情報の安全性を確保できるローカル環境で稼働する生成AIを導入することで、安心して研究や教育支援に活用できると判断しました。

東京通信大学 統轄責任者 佐藤氏

東京通信大学 管理部 宮嵜氏
――今回は大学・高専機能強化支援事業も活用し、かなり大規模なプロジェクトでした。進める上で重視したポイントはありますか。
佐藤氏:複数のプロジェクトを並行して進めるにあたり、大事にしたのは学生本位の視点です。限られた予算の中で多くの要望に対応する必要がありましたが、「本当に学生のためになるのか」を常に問いながら要件の優先順位を決め、学生にとって価値のある機能を厳選しました。
宮嵜氏:NTT東日本は開学当初から基盤システムの運用保守を担当しているので、背景をよく理解してくれており、一から説明する必要がなかったのでその点はスムーズでした。
――実際の更改作業はどのように進めましたか。
宮嵜氏:最も苦労したのはポータルシステム「@CAMPUS(アットキャンパス)」の刷新でした。大学からのお知らせ配信や証明書発行、LMSへの遷移など多くの機能があるものの、学生が日常的にアクセスする真の玄関口になりきれていなかったと思います。学習自体はLMSのスマートフォン向けアプリで完結してしまうため、必ずしもポータルシステムにアクセスする必要がありませんでした。
まずは学内でブレインストーミングを重ねました。学生アンケートやキャンパス・サポートセンターへの問い合わせも参考にしながら要件を固め、NTT東日本にはそれをベースにアプリベンダーとの橋渡し役を担ってもらいました。その際、私たちの要望を表面的に捉えるのではなく、背景まで理解し、ときには「こうしたほうがよいのでは?」と提案しながらアプリベンダーとの調整を進めてくれたのがありがたかったです。
LMSについては、レスポンス改善のためにソフトウェアの構成を見直しました。NTT東日本は要件とコストのバランスを考慮した複数の選択肢を提示してくれたので、検討しやすく助かりました。
――生成AI「tsuzumi」に関しては連携協定を締結し、日本初の教育現場への導入です。具体的にどのように進めていますか。
加藤氏:まずは、学生・教員・職員、それぞれの立場でどのように生成AIを活用できるか、ユースケースの検討から始めています。学生向けには「教えないAI」というコンセプトを重視しています。通常は生成AIに質問したらすぐに答えがほしいですが、教育的観点からは、すぐに答えを教えないほうが学習効果は高いとされます。また、通信制大学の特性上、夜中に学習する学生や海外在住者も多くいます。tsuzumiに24時間いつでも質問でき、リアルタイムで学習サポートを受けられる環境が整えば、学習を進めやすくなり、学びの継続性が高まり、理解も深まることが期待できます。
教員向けには、授業スライドや小テスト問題作成の支援などを考えています。現在、1単位あたり100問以上の問題を手作業で作成していますが、このような作業をtsuzumiが支援できれば大幅な負担軽減になり、その分、教育・研究の質の向上にあてられる点も大きなメリットです。さらに、職員向けには、学生からの問い合わせ対応や企画・広報業務の効率化などを想定しています。利用シーンによって応答をカスタマイズする必要があるため、NTT東日本と密に連携しながら進めています。

ポータルシステム「@CAMPUS」。大切なお知らせを見つけやすくするなど、使い勝手を向上させた

生成AI「tsuzumi」の活用で、教員は研究と教育をより効率的に両立できるようになる

リアルなキャンパスとして設置された新宿駅前キャンパス。ほかに大阪、名古屋にもキャンパスがある
――基盤システム更改が完了し、どのような効果が出ていますか。
宮嵜氏:LMSでは、24時間365日いつでも学習できる環境を整備できました。構成を冗長化することで、年に約4回の定期メンテナンスのためのシステム停止がなくなり、学生がアクセスできる状態を保ちつつ、新しい機能のリリースや改修も行えるようになっています。アクセスすると「現在○人の方が一緒に学習しています」といったメッセージを表示させ、オンラインでもほかの学生とともに学んでいる連帯感を演出する工夫も取り入れました。
ポータルシステムはすでに公開しており、学生からは「わかりやすくなった」「デザインがきれい」など好意的な反応をもらっています。詳細な効果測定はこれからですが、アクセス数も増えているとみています。
──tsuzumiの活用計画についても教えてください。
加藤氏:12月下旬から始まる4学期から、まず私の授業で試験的に学生に使ってもらう予定です。同時に教職員の試用も開始し、現場での使い勝手や教育的効果を検証していきます。その成果を踏まえ、来年度後半には、希望する教職員が授業や業務等で自由に活用できる環境を整えていきます。
さらに、ゼミの授業でNTT東日本との産学連携PBL(Project Based Learning/課題解決型学習)もまもなくスタートします。3年生の3学期から4年生の1年間の予定で、新しい学習環境をtsuzumiも含めて提案してもらい、実際に実装までしてもらう予定です。優れたアイデアは実際のシステムに反映することも視野に入れており、教育現場から社会実装につながる取り組みとして期待しています。
――今後の展望をお聞かせください。
佐藤氏:現在海外在住学生も多数学んでいますが、今後はさらに増やし、より多様な学びの機会を提供していきたいです。来年4月からは情報マネジメント学部にグローバルITリーダーコースを新設し、英語での教材提供も始めていきます。一から作るのではなく、日本語の授業を翻訳技術で英語化するなどして、プラットフォームを段階的に拡張していきます。
今回のプロジェクトでは基盤システム更改からtsuzumi導入、アプリベンダーとの調整、産学連携まで、NTT東日本には幅広い領域で支援いただき、総合力を改めて実感しました。本学の理念「現代社会で活躍したいすべての人へ、学びの機会を開放する」の実現に向けて、今後もいかに質の高い学びを提供するかを模索していきますので、NTT東日本にも引き続き伴走していただけることを期待しています。
加藤氏:実は今年、AIアバターによる授業を試行したところ、学生アンケートでは好意的な反応が大半でした。AIを活用した授業が実現すれば、教員はコンテンツの設計や構成により注力できるようになり、教育の質の向上にもつながると考えています。
将来的には、学生一人ひとりの理解度に応じて、その場で最適な教材を自動生成する「究極のアダプティブラーニング」の実現をめざしています。時間をかけて基礎からじっくり学びたい学生と、すでに知識を持ち効率的に学びたい学生とでは、必要な学習時間や教材の内容も異なります。技術の進化とともに教え方や学び方も変化していくでしょう。通信制大学だからこそ実現できる、新しい時代の教育の形をこれからも追求していきたいと考えています。
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