学術情報基盤システム更改でハイフレックス授業やBYODに対応
Microsoft 365を活用し、教職員の働き方改革も推進
東京外国語大学では、6期目となる学術情報基盤システムの更改にあたり、コロナ禍での教育環境の変化への対応を重視。ハイフレックス授業(※1)やBYOD(※2)への対応、在宅勤務の普及など新たなニーズに応えるため、Wi-Fi環境の大幅増強や次世代ファイアウォールの導入、Microsoft 365活用などを実現しました。半導体不足の影響で工事を二段階に分けて行う必要がありましたが、密なコミュニケーションで乗り切り、セキュアで使いやすい環境を実現。導入の経緯や成果について、東京外国語大学のご担当者にお話をうかがいました。
※1 ハイフレックス授業とは、授業をオンラインで配信し、対面とオンラインのどちらでも受講可能な授業スタイル。
※2 BYOD(Bring Your Own Device)とは、学生や教職員が個人で所有するコンピュータやスマートフォンなどの端末を学内に持ち込み活用すること。
【目次】
東京外国語大学
ソリューション導入効果
- ハイフレックス授業やBYODを円滑に運用できるWi-Fi環境を整備できた
- 事務系情報システムにMicrosoft 365を導入し、在宅勤務やオンライン会議など柔軟な働き方が可能になった
- 学外からの利用拡大に対応できる強固な情報セキュリティを確保できた
NTT東日本評価のポイント
- 長年にわたり同学の学術情報基盤システムを安定運用してきた実績から、技術力に信頼がおけたこと
- 密なコミュニケーションにより、円滑なプロジェクト進行が期待できたこと
- 大学の課題や要望を正確に把握し、それを実現する最適なシステム構成を提案してくれたこと
多言語・多国籍に対応する学術基盤の強化へ
コロナ禍で変化した教育環境に対応したい
――今回の学術情報基盤システムの更改で、改善したい課題はありましたか。
青山氏:大学にとって、学術情報基盤システムは、研究成果などの情報資源を確実に保管し、安全にアクセス可能なものとし、さらに外部へ発信できる環境であることが重要です。また、学生も教職員も使うものなので、それぞれがアクセスできる情報の範囲を意識した対応が必要です。とくに外国語の教育研究を基礎とする人文社会系大学である本学では、主専攻だけでも28言語を教えており、各言語にネイティブの教員がいるため、多様で複雑な多言語化対応も求められます。
今回の更改では、コロナ禍がもたらした変化への対応を重視しました。コロナ禍は本学のみならず、世界中の多くの大学にとって転換点になったはずです。第一の変化はオンライン授業の開始です。現在も対面とオンラインを併用したハイフレックス授業が続いています。学生がパソコンやスマートフォンなど複数の個人所有デバイスを持ち込むBYODも当たり前になり、職員の間では在宅勤務が急速に広がりました。こうした変化に対応するには、これまで以上に情報基盤の強化が必要だと考えました。
森川氏:具体的に改善したかったのは、まずWi-Fiの増強です。コロナ禍で全面オンライン授業になった後、一部を対面に戻すと、対面授業の直後に学内でオンライン授業を受ける学生が増え、帯域がひっ迫したのです。そのため急遽オンライン授業用に別の回線を引いて対応しましたが、それだけではカバーしきれず、学生が多く登校する曜日にネットワークが不安定になることがありました。
セキュリティ対策も重視しました。オンライン授業や在宅勤務では、リモート環境から学内のリソースへの安全なアクセスが不可欠です。ちょうど更改前後に、VPNの脆弱性に起因するセキュリティインシデントが社会的に多発していたので、特に意識した部分です。
職員の事務系情報システムの改善も急務でした。当時はデスクトップ型のシンクライアント端末でVDIを使っていましたが、カメラやマイクも内蔵されておらず、オンライン会議にはスペック不足でした。やむをえずタブレットを使って会議に参加することもあったほどです。
それ以外ではシステム全体の使いやすさや運用しやすさも希望していました。本学は情報系の学部があるわけではないので、運用メンバーの人数やスキルが限られています。また、多国籍の学生や教職員が利用するため、複雑なシステムだと使い方を理解するのも大変です。当時、メール認証の問い合わせが多く、改善したいと思っていました。
――今回の更改案件でどのような提案内容が評価されたのかお聞かせください。

青山 亨氏

総務企画部情報企画室 専門職員
森川 直樹氏
望月氏:総合評価落札方式により、性能、機能、技術等の要求要件をすべて満たしたうえで、評価項目の得点合計が最も高かったNTT東日本が落札者となりました。提案内容は非常にわかりやすく、複数の選択肢があるときは詳細な情報と共にメリット・デメリットが示されていました。また、すでに2期にわたって本学の学術情報基盤システムを大きなトラブルなく運用してくれていたことから、技術的な信頼もおけました。
対面とオンラインで密にコミュニケーション
長年の信頼関係で乗り切った二段階の導入工事
――実際の構築はスムーズに進みましたか。
望月氏:世界的な半導体不足によりネットワーク機器の納期の見通しが立たず、急遽、二段階に分けて工事をしました。本学にとっても初めてのことでしたが、NTT東日本と密にコミュニケーションを取りながら、無事構築を完了させることができました。これまで2期連続で一緒に行ってきた実績もあるため、連携はスムーズでした。今期はとくにMicrosoft Teamsを活用したオンライン会議やファイル共有を早々に準備してくれたおかげで、情報のやり取りがスピーディでした。終盤になると、ほぼ毎日のように大学へ来て対面のコミュニケーションも積極的に取ってくれたので安心感がありました。
実は途中でデータベースのライセンス体系の変更があり、大幅な費用増が見込まれたため、構成変更をしています。その際もベンダーと協力して、すぐに解決策を考えてくれたので助かりました。
森川氏:二段階の作業になり、前半でデータセンターや本郷サテライト、後半で府中キャンパスを構築していますが、ネットワークの切り替えもうまくいきました。ファイアウォールの機器メーカーは同じ、かつ主要な機器構成はそのまま引き継がれたため、運用面での移行もスムーズでした。

総合情報コラボレーションセンター副センター長
博士(情報科学)
望月 源氏
新しい授業スタイルや柔軟な働き方に対応
セキュリティと利便性を両立した環境整備を今後も継続
――構築後の運用状況はいかがでしょうか。
森川氏:学内のネットワーク環境を1Gbps×2本から10Gbps×2本に増強したので、学生が集中し混雑する時間帯でもオンライン会議・授業が急に途切れたり、つながらなくなったりすることなく利用できるようになりました。さらに、学内同士の通信において、これまではスイッチで通信を制御していましたが、主として次世代ファイアウォールで制御する構成となり、セキュリティも強化できました。また、Wi-Fiに関しては、アクセスポイントあたりの接続可能な台数が増加したので、定員が300人超の教室や昼休みの生協でも、より安定したWi-Fi接続ができるようになりました。新たに導入したネットワーク管理ツールではWi-Fiの使用状況を一元的に可視化でき、リアルタイムで「この教室のアクセスポイントの負荷が高い」といったことがわかるため、今後アクセスポイントの最適化などにも役立てていきたいと考えています。
セキュリティ対策として、統合的な脅威検知・対応が可能なクラウド型のXDR(Extended Detection and Response)製品も導入し、学内のみならず、学外からアクセスしている端末でウイルスを検知した場合にもアラートが上がるようになりました。今のところ重大なセキュリティインシデントは起きていませんが、何かあればすぐに検知できる仕組みが整備できたので安心感が高まっています。
認証の仕組みもシンプルにできました。これまでは、他大学との連携授業に活用しているLMS(ラーニングマネジメントシステム)や電子ジャーナル閲覧時のログインに使う学認(学術認証フェデレーション)用のSSO(シングルサインオン)システムと、学内サービス用のSSOシステムの2つを運用していました。今回のシステムでは、学内サービス用のSSOシステムで学認も利用できるようになり、スムーズなアクセスが可能になり、多要素認証も利用できるようになりました。ただ、セキュリティ強化のための多要素認証に関しては学生から一定数の問い合わせがあるので手順の周知を進めていきます。
事務系情報システムにはMicrosoft 365を導入し、職員の端末をデスクトップ型のシンクライアントからノートパソコンへと刷新しました。これにより、オンライン会議もスムーズに開催できるようになりました。ただ、Microsoft 365の機能はまだ一部しか使えていないため、今後活用を進めていきます。
望月氏:本学は以前よりICT環境の先進的な取り組みには積極的でした。たとえば、10年前に基幹システムのクラウドでの運用を開始し、同時に次世代ファイアウォールの導入も行っています。今回は、最新の次世代ファイアウォールによる通信制御を導入しています。新しい技術の導入においては一時的な問題や課題が出てくることもありますが、NTT東日本の的確なサポートに助けられてきました。今後も継続的なサポートや新たな提案を期待しています。
――今後の貴学のICT基盤整備について、どのようにお考えでしょうか。
青山氏:本学にはICC(総合情報コラボレーションセンター)や情報MO(情報マネジメントオフィス)といったICT活用を推進する組織があるため、それらを中心に学生や教職員への情報発信を強化しながらシステムの円滑運用を進めていきます。今後はMicrosoft 365の活用を進めつつ、チャットツールの導入やAI技術の活用も検討していきます。大学のICT環境はいまや電気や水道に並ぶ重要なインフラですから、セキュリティを担保しつつ、学生や教職員にとって利便性の高い環境整備に取り組んでいきたいと考えています。
※「Microsoft 365」「Microsoft Teams」は、米国Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標、または商標です。


*上記ソリューション導入時期は2023年9月です。
*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2024年10月時点(インタビュー時点)のものです。
*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

学校名 | 国立大学法人 東京外国語大学 |
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概要 | 2023年に建学150周年を迎えた東京外国語大学。塀や門がなく、開かれたキャンパスでは、50にのぼる言語と世界諸地域の文化・社会について教育研究を行いながら、異文化間の相互理解に寄与し地球社会における共生実現に貢献できる人材を育成しています。言語文化学部、国際社会学部、国際日本学部の3学部を設置し、学部・大学院を含めた学生数は4,285名※、世界80カ国から690名※の留学生が在籍。世界60カ国以上の大学と交換留学等の協定を結んでおり、海外にも学びの場を広げている学生が多いのも特徴です。 ※2024年5月1日時点 |