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東京都杉並区は、職員の多様な働き方を後押しするため、情報インフラ基盤の再構築をNTT東日本へ依頼。α'モデルを採用し、Microsoft 365やBoxを導入することで、場所を選ばない柔軟な働き方や情報共有の円滑化などを実現しました。今後、さらなる業務効率化を推進していきます。
Index
東京都杉並区

(左から)NTT東日本 ビジネスイノベーション本部 SE運営部 技術部門 中山、地域基盤ビジネス部 公共ビジネス推進グループ 公共ビジネス担当課長 戸田、杉並区 政策経営部デジタル戦略担当課長・情報システム担当課長兼務 眞鍋氏、政策経営部情報管理課 情報基盤担当主査 神谷氏、情報基盤担当 杉本氏、笠井氏、東京北支店 第二ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 第一地域基盤ビジネス担当 岩原、第一地域基盤ビジネス担当課長 雪下
Summary

杉並区 政策経営部デジタル戦略担当課長・
情報システム担当課長兼務 眞鍋氏

杉並区 政策経営部情報管理課
情報基盤担当主査 神谷氏
――情報インフラ再構築に着手された背景と、当時の課題をお聞かせください。
眞鍋氏:きっかけは令和4年度に実施した職員アンケートです。職員が業務で感じる課題を聞いてみると、庁内のデジタル環境に対する不満が多く寄せられました。特に多かったのは、コミュニケーション手段の拡充とテレワーク環境の改善を求める声です。
コミュニケーションについては、特に外部とのファイルのやりとりが面倒でした。メール添付は10MB程度の容量制限があり、ファイル共有サービスも禁止されていたため、大容量データを送る際はファイルを分割したり、外部媒体を別に送付したりと、かなり手間がかかっていました。
またテレワークは、会計年度任用職員を含めると全庁で約6,000人にいる職員に対して、テレワーク可能なパソコンが約200台しかなく、希望しても利用できない状況でした。さらに、業務用とテレワーク用のパソコンが別々で、テレワーク用のパソコンを使うときは、本庁舎にあるパソコンを庁舎にいる職員に起動してもらう必要があり、不便でした。
将来的には本庁舎の改築も見据えています。現在、職員数に対して会議室や執務スペースが不足しており、改築後はフリーアドレスなど柔軟な働き方が前提になります。それに先立ち、まずは情報インフラを再構築して、テレワークをはじめとした場所を選ばない多様な働き方を後押しできる基盤を整えたいと考えました。
――情報インフラ再構築をNTT東日本にご依頼いただけた理由は何でしょうか。
眞鍋氏:今回、α'モデルを構築し、Microsoft 365とBoxを導入していますが、この取り組みの本質は、単なるパソコンの入れ替えやクラウドサービスの導入ではなく、全庁の職員の働き方そのものを「イノベーション(変革)」していくことにありました。NTT東日本からの提案は、そうした区の考え方を最もよく汲み取ってくれていました。特に、働き方改革への支援や定着支援に関する評価が高く、組織変革まで見据えた伴走支援への期待が決め手となりました。
――なぜα'モデルを採用されたのでしょうか。
神谷氏:自治体のセキュリティモデルにはいくつか選択肢がありますが、検討の結果、区がめざすシームレスな操作性や働き方の方針に合致するのは、β'モデルまたはα'モデルだろうと判断しました。ただ、β'モデルではネットワークの大規模な再構築が必要となり、システムの移行の調整も含めると、相当な時間を要します。今回は働き方改革になるべく早く寄与することを優先し、α'モデルの採用を決めました。今回の構築でも約1年かかりましたが、β'モデルであればさらに時間がかかっていたと思います。

杉並区 政策経営部情報管理課
情報基盤担当 杉本氏

杉並区 政策経営部情報管理課 情報基盤担当 笠井氏
――構築や移行で苦労された点や工夫した点はありますか。
神谷氏:α'モデルとはいえ、それなりに大規模な移行であり、影響範囲も広く、さまざまな検討に時間を要しました。特に苦労したのは、ユーザーIDを一元管理する仕組みの検討です。杉並区独自の人事異動のロジックをシステムに反映させる必要があり、技術的な課題を解決するために相当数の打ち合わせを重ねました。
全庁展開の前に一部の部署でパイロット導入を実施しました。情報システム部門だけでは想定しきれない使い方や問い合わせが出てきて、そこで洗い出された課題を本番環境の設定に反映できました。
杉本氏:今回は担当ベンダーがNTT東日本に交代したため、既存ベンダーからの引き継ぎが必要でした。NTT東日本は杉並区の環境を一から把握しながら、3者間の調整をリードしてくれて、非常に心強かったです。
――Microsoft 365やBoxの導入にあたり、伴走支援として実施された研修やサポートはいかがでしたか。
笠井氏:操作説明会を計15回ほど実施し、各課の情報リーダーを中心にのべ400人近くの職員が受講しました。ここまで丁寧かつ大規模な研修は、庁内でも初めてだと思います。新システムへの移行に対する不安を解消できただけでなく、クラウドサービスでできることが広がるとわかり、モチベーション向上にもつながったと感じています。研修はアンケートでも「わかりやすかった」と好評でした。
眞鍋氏:管理職向けにDXマインドセット研修を実施してもらえたのもよかったです。若手職員がDXを進めるには、マネジメント層の理解が欠かせません。研修では自分の課に置き換えてどう取り組むかを考える時間もあり、職場全体で業務改善に取り組む動機付けになりました。
神谷氏:そのほか、NTT東日本の人事部門と当区の人事課で意見交換の場を設け、エンゲージメント向上の取り組みや働き方改革の事例を共有してもらえたのも参考になりました。 また、Microsoft 365の運用ガイドライン策定においては、NTT東日本が自社で培った実践ノウハウをもとにサポートいただけて助かりました。

出先でもスマートフォンから予定確認や連絡が可能に

本庁舎のフロア案内。会議室や執務スペースの不足が課題となっており、将来的には改築も見据えている
――導入後、どのような変化や効果を感じていますか。
眞鍋氏:運用を開始して間もないため、現在は新システムに慣れるフェーズですが、チャットやWeb会議などコミュニケーション手段の選択肢が増え、活用が進んでいます。今後、応用研修も予定しており、さまざまなアプリを活用することで業務の効率化が進むとみています。
テレワークは全端末で実施できる仕組みが整い、場所を選ばずに仕事ができるようになりました。以前は出張先で庁内ネットワークにつながらず、区役所に戻って作業することもありましたが、今は出先でも業務ができます。希望する職員は個人のスマートフォンにMicrosoft Teams等をインストールすることで、出先での予定確認や連絡が可能になり、多くの職員が利用する見込みです。
ただ、窓口対応など出勤が必要な業務もあるので、運用ルールの整備も段階的に進めていきます。システム環境が整っても、「説明は対面で」といった組織文化やアナログを前提とした制度がボトルネックになることもあるので、継続的にシステムの活用状況の測定を行い、改善を続けていきたいと考えています。
神谷氏:運用面では、ユーザーID統合により人事異動時の設定が予約により反映されるようになりました。以前のように早朝出勤して手作業で対応する必要がなくなり、運用負荷が軽減しました。また、Boxの導入により、外部との大容量ファイルのやりとりもスムーズです。特に図面データのような大容量のファイルを扱う技術部門などで有効と考えています。
運用開始直後は問い合わせが増えましたが、今回常駐のヘルプデスクを設置したことで、情報システム部門だけで対応に追われることなく運用できています。また、今回SOC(Security Operation Center)を導入したので、セキュリティ監視の強化も期待しています。
――今後の予定や展望をお聞かせください。
笠井氏:職員の間でDXの必要性は認識されていますが、システムへの苦手意識を持つ職員も少なくありません。今後は、そうした職員も含めて一人ひとりがDXを「自分ごと」として捉えられるよう、全庁的な機運を醸成していきたいです。
眞鍋氏:BPR(業務改革)やローコードツールを活用したシステムの内製化も視野に入れており、庁内でDXを自走できる職員を計画的に育成していくつもりです。
申請受け付け業務などはローコードツールと相性がよいと考えています。これまでもフォームで申請を受け付けることはできていましたが、その後の処理がうまく電子化できていませんでした。Microsoft 365のデータベース機能などを活用すれば、受け付けから処理まで電子で完結させられるのでは、と考えています。
最終的な目標は、デジタル活用で生み出した時間を、職員がより創造的な仕事やプライベートの充実に充てられるようにすることです。「ワーク・ライフ・バランス」とは別に、「ワーク・イン・ライフ」という考え方がありますが、職員各々が時間を有効に使い、自分らしい働き方を選択できれば、やりがいや生産性の向上につながり、結果的に区民サービスの質も向上するだろうと考えています。
NTT東日本には、引き続き定着支援を進めていただき、業務の可視化や変革といったトランスフォーメーションにも一緒に取り組んでいただくことを期待しています。
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