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山梨県甲斐市は、総務省のモデル事業として、韮崎市と広域連携し、道路点検業務の効率化やインフラ管理データベースの構築をNTT東日本と共同で推進。予防保全への転換と汎用性の高いモデル構築を進めています。
Index
山梨県甲斐市

(左から)NTT東日本 ビジネスイノベーション本部 まちづくり推進部 社会インフラビジネス担当 チーフ 藤間、NTT-ME 山梨エリア統括部 エリアプロデュース担当 担当課長 柳澤、甲斐市 まちづくり振興部 建設課 建設総務係 係長 櫻田氏、主任 和田氏、NTT東日本 山梨支店 ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネス担当 大須賀、NTT-ME 社会インフラデザイン部 地域あんしん推進部門 スマートインフラ担当 チーフ 橋本
Summary

甲斐市 まちづくり振興部 建設課 建設総務係 主任 和田氏
――道路維持管理をはじめとするインフラメンテナンスにおいて、どのようなことが課題になっていましたか。
和田氏:やはり大きな課題は人手不足です。建設課では道路や水路のインフラ維持管理を担っており、道路の陥没や水路の詰まり、草刈りといった軽微な作業は職員と作業員で実施しているため、マンパワーが限界に近づいています。とくに通報が重なると一気に対応が難しくなります。人口が減少してもインフラは減少しないので、職員数の減少に伴って相対的に負担が増えます。加えて道路の劣化も進んでおり、維持費の増加も課題です。
住民からの通報をベースに対応する事後保全だと、効果的な修繕計画が立てにくいという問題もありました。通報や修繕履歴は紙ベースで管理していたため、職員が異動すると過去の経緯がわからなくなり、資料を探す手間もかかっていました。
――今回、NTT東日本、NTT-MEと「道路維持管理業務高度化に向けた共同検討に関する連携協定」を締結し、共同で効率的な道路の維持管理に取り組んでいます。パートナーに選んだ理由や期待した点について教えてください。
和田氏:同じインフラ事業者としての目線を持ちながら、最先端の技術や情報を踏まえた提案をしてくれる点を評価しました。また企画力や調整力といった、事業の推進力にも期待していました。
今回は総務省の「広域連携による市町村事務の共同実施モデル構築事業」として、インフラ点検業務のDX、住民ニーズの把握とデータ化、これらを一元管理するインフラ管理データベースの構築という3つの取り組みを進めています。

甲斐市 まちづくり振興部 建設課 建設総務係 係長 櫻田氏
――連携協定を結んでから、実際にどのように進めていきましたか。
和田氏: NTT東日本のメンバーが約1~2週間、建設課に来て、実際の業務を見ながら、ヒアリングと課題の洗い出しをしてくれました。市職員にはない視点から課題の深堀りを進めてくれたので、かなり助けられました。たとえば、市民が利用する不具合通報システムで、位置情報の登録誤りや意図と異なる通報が届いてしまうという課題を話すと、「修繕のビフォーアフターをホームページに提示しつつ、理想的な通報の例も示してはどうか」と提案がありました。私たちは受け手側の視点で考えがちでしたが、住民側の「分かりにくさ」という課題に気づかされました。
技術的な検討もNTT東日本が中心になって進めてくれました。今回、住民からの通報や問い合わせを住民ニーズとしてデータ蓄積するシステムは、ブラウザ上で動作する仕組みを採用したため、大規模なシステム構築は不要でした。ただ、決定までにはソフトウェア導入の要否や既存のGIS(地理情報システム)との互換性など、検討事項が多くあり、そうした技術面はNTT東日本がDX担当課との調整を担い、建設課職員へのレクチャーも並行して行ってくれたので、理解しながら進めることができました。
――道路点検業務の効率化には、具体的にどのように取り組みましたか。
和田氏:ドライブレコーダーで映像データを収集し、AI解析を行う手法を採用しました。ドライブレコーダーの活用はNTT東日本のアイデアです。甲斐市では職員や作業員が日常的に市内を巡回しているので、建設課の車両と作業員の車両にドライブレコーダーを設置することにしました。ただ、それだけではカバーしきれないエリアもあるので、市バスなど地域のアセットも活用してはどうかとNTT東日本から提案があり、採用しました。バス会社や市バスの担当課との調整を経てドライブレコーダーを設置し、技術面はNTT東日本が連携して進めてくれたので、無事にデータ収集ができています。
――韮崎市様との広域連携を進める上で、苦労した点や工夫された点があれば教えてください。
和田氏:他の市町村との連携は初めてだったのですが、実際に連携してみると、同じ道路維持管理事業でも自治体ごとに状況が全く違うことを実感しました。たとえば、甲斐市はGISを導入していますが、韮崎市は未導入です。作業員の配置や道路面積なども異なります。
そのため、インフラ管理データベースの構築については、まずは両市で同じデータベースにデータを蓄積し、自治体間の違いや共通点を可視化するところから始めています。最終的には、多くの自治体でも導入しやすい汎用性の高いモデルをつくっていくことが目標です。
月に1回、甲斐市・韮崎市・NTT東日本、またアドバイザーである山梨県の4者で定例会を開催し、対面で集まって進捗共有や方向性の確認を行っています。NTT東日本は全国の自治体とネットワークがあり、自治体間の調整の知見も豊富なので、広域連携をスムーズに進められています。

ドライブレコーダーの映像データをAI解析することで、標識やミラーの損傷を効率的に発見できる

住民が道路の不具合等を通報できる不具合等通報システム。データを蓄積し、道路維持管理業務に活かす

ドライブレコーダー搭載車。市バスや公用車、NTT東日本の車両など地域のアセットを活用
――構築が完了し、これから本格運用に入っていきますが、今後インフラ維持管理業務がどのように変わることを期待されていますか。
和田氏:まずドライブレコーダーのデータ活用で、住民からの通報を待たずに道路の異常箇所を早期発見できるようになります。これまで甲斐市では住民からの通報をもとに修繕箇所を確認していましたが、今後は住民ニーズに客観的なデータも加え、より効果的な修繕計画を立てられるようになると考えています。
やはり事後保全だけですと、道路の陥没や破損による事故リスクは残り、実際に被害が出てからでは取り返しがつきません。予防保全を効果的に行えるようになれば、何か起きる前に対策を打つことができます。
また、AI解析でひび割れをランク分けすることで、客観的な基準で判断できるようになります。自治体の職員は数年で異動してしまうので、経験に頼らない仕組みはこれからますます大切になってくると思います。
インフラ管理データベースの構築が完了し、マップベースの管理が実現すれば、過去の相談や修繕頻度の高い箇所が可視化されます。職員が異動しても経緯をすぐ確認できるので、住民も同じ説明を繰り返す必要がなくなります。現行では、相談があった時に過去の資料を探すだけでも手間がかかっていますが、そうした時間も削減できます。また、現場で修繕を行う作業員への指示も、システムから作業員のスマートフォンなどへ直接送れるようになれば、毎朝庁舎で対面の打ち合わせをする手間を省けます。
櫻田氏:日中に住民から道路の不具合について連絡が入ると、現場確認をして作業を行い、戻ってから本来の業務を片付けるという流れになり、かなり時間を取られています。こうした対応が減らせれば、職員のワークライフバランス改善や健康管理につながり、結果的に人員の省力化やコスト削減も実現できると考えています。
――今後の展望をお聞かせください。
和田氏:今回の事業は道路インフラに絞っていますが、得た知見やノウハウを組織で共有し、街灯、公園、教育施設など他のインフラ維持管理にも反映していきたいです。
櫻田氏:最終的には、多くの自治体が導入できる汎用性の高いモデルを構築し、山梨県内をはじめ、全国各地の自治体に有効活用してもらえるモデル事業にしていきたいです。そのためにもNTT東日本には、引き続き技術や知見を活かした課題解決のパートナーとして、このモデルを広げていく架け橋となる協力や提案を期待しています。
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