取締役会議事録を電子化するためには?電子署名付与の必要性や注意点を解説
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2023.6.02 (金)Posted by 北森 雅雄
「取締役会議事録は電子化可能?」
「取締役会議事録を電子化する際の注意点は?」
と考える方も多いのではないでしょうか。
取締役会議事録は会社法上で電子署名を付与することで電子化が認められています。しかし、電子化の際には商業登記電子証明書の発行やオンライン申請が必要になる点に注意が必要です。
当記事では、取締役会議事録が電子化可能な理由、電子化する際に注意すべきポイント、電子化する時に電子署名サービスがおすすめである理由を解説します。
取締役会議事録を電子化する際に知りたい内容が網羅されていますので、最後までぜひお読みください。
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1.そもそも取締役会議事録とは何か
取締役会議事録とは、会社法上で3か月に一度開催が求められる取締役会での議事事項をまとめた議事録です。会社法369条3項では以下の通り、取締役会での議事事項を議事録として残すことを求めています。
"(取締役会の決議) 第三百六十九条 3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。"
出所:会社法389条3項
また、取締役会議事録を作成後、会議への参加者である取締役、および、監査役によって記名押印する必要があるとされているのです。
取締役会議事録は以下のようなシーンで利用されます。
- ●代表取締役の選任・退任の登記時
- ●銀行からの借入時
2.取締役会議事録は電子化可能
取締役会議事録が会社法上で作成が求められているとはいえ、作成する負荷は高い場合も多いようです。
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会社法上は電子署名を付与することで取締役会議事録を電子化できる
この点、取締役会議事録は会社法369条4項で”署名又は記名押印に代わる措置”をとることで、電子化が認められています。
"(取締役会の決議) 第三百六十九条 4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。"
出所:会社法389条4項
この”署名又は記名押印に代わる措置”について、会社法施行規則225条では以下の通り、”署名又は記名押印に代わる措置”とは電子署名であると記載をしています。
"(電子署名) 第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。 六 法第三百六十九条第四項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)"
したがって、取締役会議事録は電子署名が付与されていれば、電子化可能であるといえるのです。また、補足的にですが、この電子署名は会社法施行規則225条2項で以下の要件を満たす必要があるとされています。
"(電子署名) 第二百二十五条 2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。 "
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電子署名の付与の仕方は2タイプある
電子署名を付与する際、利便性の高さから多くの場合で電子署名サービスが利用されているようです。電子署名サービスは利用者自身が電子証明書を発行するか否かによって以下2タイプにわけられます。
- ●当事者型
- ●立会人型
当事者型は利用者自身によって、電子証明書を発行し、電子署名を付与するタイプの電子署名サービスです。一方で立会人型は、利用者自身は電子証明書を発行せず、事業者が代理で電子署名を付与するタイプの電子署名サービスです。
世界No1シェア、国内No1シェアの電子署名サービスがいずれも立会人型の電子署名サービスであることから、一般的には立会人型電子署名サービスが利用されていることがわかります。
したがって、上述の会社法369条4項で規定される”電子署名”に対して、立会人型電子署名サービスにより付与される電子署名が該当するかがネックになってくるのです。
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従前、立会人型電子署名は会社法で定める電子署名として認められていなかった
立会人型電子署名サービスが利用され始めた当初、法務省の見解によると、上述の会社法施行規則225条2項で定義する”電子署名”に対して、立会人型電子署名サービスによる電子署名は該当しないとされていました。
なぜなら、立会人型電子署名サービスは事業者による電子署名であるので、電子署名に求められる要件である”本人性”を満たさないと考えられたからです。この見解は当時の電子署名サービスに対する一般的な見解を踏まえた上での扱いでした。
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2020/5に法務省により立会人型電子署名でも要件を満たすと公表されている
しかし一転して、2020/5には法務事務局によって、”立会人型電子署名サービスによる電子署名は署名として有効である”という見解を示しました。
取締役会議事録に記名押印や電子署名を求める目的は、監査役や取締役が議事録の内容を確認し、誤りがなく、異議がないと判断したことを示すことです。
この目的に対して、立会人型電子署名サービスを利用して、利用者が電子署名を付与したとしても、利用者の意思に基づいて署名されたことを実施したのであれば、十分に目的は達成できると判断されました。
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取締役会議事録に限らず立会人型による電子署名の有効性が明確になった
上述の法務事務局による公表は取締役会議事録に限らず、電子文書に対して立会人型電子署名サービスによる電子署名が有効であることを明確にしました。
この公表に追随する形で、2020/7には「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」を公表し、電子文書における立会人型電子署名サービスによる電子署名の有効性を公表しています。
したがって、取締役会議事録に限らず電子文書に対して立会人型電子署名サービスによる電子署名で真正性の確保が可能なのです。
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商業登記電子証明書を事前に取得する必要がある点に注意
立会人型電子署名サービスによる電子署名を付与する場合、登記時に商業登記電子証明書の取得が必要です。
この商業登記電子証明書を取得したうえで、法務省が提供する”登記・供託オンライン申請システム”を利用してオンライン上で取締役会議事録に電子証明書を付与することで、登記ができます。
3.電子署名を付与するなら電子署名サービスがおすすめ
取締役会議事録を電子化する際に電子署名の付与が必要になりますが、電子署名の付与には電子署名サービスの活用をおすすめしています。以下では、電子署名サービスを活用する理由を解説します。
1エクセルなどでも電子署名を付与可能
そもそも、電子署名は電子署名サービスを利用しなくても、すでに利用している場合の多いエクセルやWord、AdobeAcrobatReader上などでも付与ができます。
しかし、実際に上述のツールを利用していただくとわかりますが、上述のツールを利用して電子署名を付与する場合、少なくない手順を踏む必要があるため、電子署名を付与する負担が大きいです。
したがって、電子署名を取締役会議事録だけでなく、他電子文書にも業務上で付与する場合には、より業務効率を上げた手法を取る必要があるでしょう。
2電子署名サービスであれば契約業務などを最大限効率化できる
この点、電子署名サービスであれば、効率的に電子署名を付与できるだけでなく、契約業務そのものを効率化できるメリットがあります。例えば、以下のメリットを得られます。
- ●メリット①:契約業務の75%を削減できる場合もある
- ●メリット②:契約締結までのリードタイムを即日か可能
- ●メリット③:電子帳簿保存法などの法対応も容易に可能
契約業務の75%を削減できる場合もある
電子署名サービスを利用することで以下の観点からコスト削減を期待できます。
- ●電子文書に対する印紙税が非課税になる
- ●電子契約などの電子文書の作成・郵送・管理コストを削減できる
- ●電子文書の検索・監査コストを削減できる など
国内No1シェアのクラウドサインが提供するデータによると、電子署名サービスを導入することで契約業務にかかるコストの75%程度を削減可能なようです。このデータからも分かる通り、電子署名サービス導入によるコスト削減効果は大きいといえるでしょう。
契約締結までのリードタイムを即日化可能
電子署名サービスの多くには、電子契約の作成を補助する機能が搭載されているため、契約締結までのリードタイムを短縮することができます。
従来の書面契約では、契約書を作成して、相手方に郵送し、記名押印済みの契約書を返送してもらうまでに3週程度掛かる場合も珍しくありません。
一方で、立会人型の電子署名サービスを利用した場合、電子署名付与用のWebサイトURLが記載されたメールを相手方に送付するのみで、対応が完了するので、契約締結までのリードタイムを大幅に短縮できるのです。
また、電子署名サービスには以下のような、自社内部の契約業務を効率化する多数の機能を搭載している場合が多いため、さらにリードタイムの短縮を期待できます。
- ●契約書テンプレートの作成・登録
- ●契約書の一括署名・送信
- ●社内承認のためのワークフロー
- ●顧客別の署名ステータス管理 など
電子帳簿保存法などの法対応も容易に可能
電子契約をはじめとする電子文書はその多くが税法に基づいた保存が求められます。例えば以下の法律に基づいた保存が求められているのです。
- ●電子帳簿保存法 電子取引要件(場合によってはスキャナ保存要件)
- ●法人税法 など
もし、上述の法律で求められる要件を満たして保存をしていない旨を国税調査時に指摘された場合、青色申告の承認取り消しなどのリスクがあるため、注意が必要です。
の点、電子署名サービスの多くでは法対応のための以下のような機能を搭載しているため、容易に法対応できる点がメリットでしょう。
- ●タイムスタンプの付与
- ●主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)での検索
- ●バージョン管理機能
- ●タイムスタンプの一括検証機能
- ●システム上での長期保存機能 など
4.まとめ 取締役会議事録には電子署名を付与して効率化しよう
取締役会議事録は電子署名を付与することで電子化可能です。電子署名を付与する際に、立会人型の電子署名サービスを利用することも多いかと思いますが、立会人型であっても法的に問題なく電子署名をして有効であると認められます。
また、取締役会議事録以外にも電子契約などに対して電子署名を付与するのであれば、エクセルやAdobeAcrobatReaderなどの既存ツールではなく、電子署名サービスの活用をおすすめしています。なぜなら、電子署名サービスであれば契約業務そのものを効率化できるからです。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。
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電子署名の基本を知りたい方はこちら電子署名とは何か 利用する際に知りたい法律などをわかりやすく解説!
当記事では電子署名を付与する必要性や付与する方法、付与するメリット・注意点を解説します。なぜ電子署名が求められるのか体系的に理解できる内容になっています。