「あんな古い物件にお金なんてかけたって」そう言って、設備強化に反対していた相続人が「もっと早くお金を使っていたら」と後悔した話。

更新日
2026-01-28

「設備強化をして家賃アップ」は、今、インフレ時代となり、時代の潮流に。
ところが、実際に設備強化をする際は工事費などの追加投資が必要。
すると、「あんな古い物件に、お金を投資しても仕方ないじゃない。やめなさい。」と反対するのがご家族。

そんなご家族が、相続をしてから後悔したエピソードをご紹介します。

築年を経ると、どうしても家賃が下がってしまう。

今回、ご紹介をする物件は、仙台市にある、とある学生向け賃貸アパート。築25年を超え、これまで1DK5万円で貸していたものの、45000円ぐらいに下げないと借り手がつかないと仲介会社からは厳しい言葉をもらいました。学生は授業や私生活、あるいは就職活動にネットを使うので、人気のインターネット無料にしようかと、オーナーのAさん悩んでいました。

このエリアでも新築はかなり強気の賃料設定。数年前より格段に家賃は上がっています。一方で、築年を経ると簡単には決まりません。図のように、相場はやや回復基調とはいえ、物件のほうも築年が増えてきます。築10年から20年ぐらいになると、ネット無料はかなり少なく、むしろ昨年より家賃相場は悪化。Aさんの物件も新築時は6万円近い家賃で募集をしていましたが、築20年で5万円まで下がり、築25年となると、そろそろ4.5万円ぐらいになりそうなのは、周辺相場も同様です。

満室経営だった物件も、少しずつ、空室が増え、今年も1/4の学生は卒業して入れ替わる事が予想されます。

表:築年を経ると、どうしても家賃が下がってしまう。

「ネット無料」でないと決まらない

そんなある日、専門誌を読むと「周辺より相場が高くても決まる」というランキングを見つけたAさん。「インターネット無料」はもう10年連続で「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」というランキングで1位になっています。さらに「高速ネット」が4位と時代の変化を感じたAさん、近隣の家賃相場も確かめてみることにしました。

表:「ネット無料」でないと決まらない

全国賃貸住宅新聞2024年10月21日号 6面

「ネット無料」物件の 賃料相場が、たしかに高い

そこで、人気設備がついている物件の賃料相場を調べてみるとたしかに図のように、平均賃料にも違いがありました。たとえば、ネット無料物件はこのエリアでは、53.0%もついており、全体の平均賃料が6.5万円という市場で、6.7万円と高めなのです。

なるほど、うちの物件は、ネット無料でもないし、家賃を下げないとなかなか決まらないのではないか。Aさんは、「昔はネット無料物件がなかったものな。これも時代の流れで仕方ないか」と、追加投資を検討し始めます。

表:「ネット無料」物件の 賃料相場が、たしかに高い

「ちょっと待って」ご家族が、追加投資を阻みます。

ご家族に「空室対策としてインターネット代を負担して、工事を行ってネット無料物件にしようと思う」と打ち明けたAさん。ところがご家族から、猛反対にあいます。
イメージ:「ちょっと待って」ご家族が、追加投資を阻みます。

「これで空室が埋まったら、元が取れる」→「埋まらなかったらどうするのよ」、「家賃相場もネット無料は高いんだよ」→「こんな古い物件で家賃があげられるの」と、ご家族は反対です。どれもこれも「たら」「れば」ばかりと猛反対。「貯金があるなら、私たちに使ってよ」というご意見はごもっとも。なかなかご家族の合意は得られませんでした。

Aさんは「家族に理解を得にくい趣味などにお金を使うという話ではないのだが」と説明しますが「骨董品を買うコレクターと一緒よ」と家族はケンモホロロ。「ネットなど使いたい人が自分で引けばよい」「我が家だってネットが引かれてない」とよくわからない反対意見に押し切られてしまいました。

相続してわかった。「あの時、投資しておいてもらえれば」。

さて、そんなご家族も、そして物件も歳をとり、Aさんがご永眠されました。ご家族は設備投資をしなかったお金は決して無駄遣いすることなく、しっかり貯金をされていました。しかし。
イメージ:相続してわかった。「あの時、投資しておいてもらえれば」。

新聞に「訃報」が掲載されると、すぐ、Aさんの銀行口座は凍結されました。そう遺産分割協議が必要となったのです。奥様が半分、ご子息が残りを分ける事となりますが、賃貸アパートは、奥様にと遺言状があり、毎月の家賃収入は今後も奥様の生活を支えてくれることとなり、めでたしめでたし・・・となるはずでしたが。

まず、凍結された預金は、前妻の子も含めて複数の相続人とで分割協議となりました。が、なんと「現金」は相続税が高く、かなり税金を払う事になってしまいました。

また、相続した物件は、さらに競争力が落ち、ネット無料などの人気設備もないため、入居者の質も落ち、空室もかなり増えてしまっていました。

設備強化を反対していた奥様は、遅れて、結局インターネット無料物件にすることを決断しますが、あてにしていた旦那さんであるAさんの預金は分割相続され、しかも沢山の相続税がかかってしまいました。もし、あの時、ネット無料物件に設備投資をしていれば、旦那さんが払って、奥様は優良物件を相続できていたのに、そこを反対したがゆえに、家賃が安く空室が多い物件を手にいれたのです。しかも、仮にこの物件を売ると判断しても、設備強化をして家賃が高く満室であれば高く売れたアパートは、設備強化をしなかったため、高い売買査定が付きません。

生きているうちに人気物件にして、後世に残す

イメージ:生きているうちに人気物件にして、後世に残す

このAさんのように、「ご家族の反対もあり追加投資をためらう」という方は、少なくありません。ご家族からすれば、生きているときのAさんは家族のためにお金を使う素敵な方。だとすれば、物件に使うより家族に使ってほしいと思うのは人情です。

しかし、そうして貯めた、預貯金は最も相続税が高く、しかも、ご家族で分割して相続されるもの。だとすれば、将来を考えても「高速ネット」の需要は減る事は考えにくく、生きているうちに、Aさんが設備強化をすることは、ご家族への大切な投資であるのです。

もともと、賃貸経営は「更地のままでは固定資産税も相続税も高いから」と、節税とご家族への資産継承を意識して行われることが多いもの。そう考えると、時代にあわせた有効な投資は、むしろご家族からも勧めるべき施策なのです。

ご家族への愛があればこその、設備強化。是非とも繁忙期前にご検討ください。

写真:執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

【プロフィール】プリンシプル住まい総研 所長

1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長・中国ブロック副ブロック長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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