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杉並区教育委員会は、校務支援システム更改を機にゼロトラストモデルへの移行をNTT東日本へ依頼。段階的に移行を進め、校務支援システムのクラウド化と端末一台化によってロケーションフリーな業務環境を実現しました。
Index
東京都杉並区

(左から)NTT東日本 第二ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 第一地域基盤ビジネス担当 目次、杉並区 教育委員会事務局庶務課 学校ICT係 主任 河野氏、岡本氏、主査 関根氏、主査 藤巻氏、NTT東日本 第二ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 第一地域基盤ビジネス担当 西田
Summary

杉並区 教育委員会事務局庶務課
学校ICT係 主査 関根氏
――校務支援システム更改のタイミングでゼロトラストモデルへ移行されましたが、どのような課題を抱えていたのでしょうか。
関根氏:以前の境界防御モデルでは、セキュリティの観点から校務系と学習系のネットワークが完全に分離されていました。教職員が行う子どもへの指導や成績管理、保護者対応などは連続した業務ですので、パソコンが分かれているとかなり不便です。たとえば授業で作成した資料を保護者に共有するにはUSBメモリでデータを移動させなければなりませんでした。USBメモリは紛失による情報漏えいリスクが高く、セキュリティの懸念もありました。
特に現場の負担になっていたのは、児童生徒の個人情報を扱う校務系の端末が職員室や事務室などの執務室でしか使えなかったことです。授業プリントの作成を自宅で進めたいと思っても、端末を持ち出せないため、学校に残って作業をするしかありませんでした。最近では研修や出張でパソコンを使う機会も増えており、学校外で校務作業ができる環境がなく、さまざまな場面で不便を感じていました。
また、以前のシステムでは管理職と学校代表のメールアドレスしかなく、一般の教員には行き渡っていませんでした。そのため移動教室の宿泊施設との調整や栄養士と給食業者との献立のやり取りといった外部とのコミュニケーションにはFAXを使うことがありました。さらに最近は研修や研究活動でメールが必要な場面も増えてきています。
運用面ではサーバーが学校内の旧パソコン室やNTT東日本のデータセンターに点在していました。そのためデータ連携や保守作業が煩雑で、この機会に校務支援システムのクラウド化を進め、シンプルで使いやすくできたらと考えていました。
回線のひっ迫も深刻な問題でした。GIGAスクール端末の活用が進み、学年全員で動画を同時視聴するような機会が多くなり、1Gbpsの回線では対応しきれず、「動画や教材が見られない」という苦情が増えていました。今回の更改ではこうした課題を一気に解決したかったのです。
――NTT東日本にご依頼いただいた決め手は何でしょうか。
関根氏:プロポーザルで選定しましたが、NTT東日本は旧環境のシステム構成を整理し、実態を踏まえた上でゼロトラストモデルへの移行計画をわかりやすく提案してくれたのがよかったです。回線からシステムまでワンストップで対応できるグループとしての総合力への信頼感があり、他自治体での校務支援システムのクラウド化の実績も評価しました。

杉並区 教育委員会事務局庶務課
学校ICT係 主査 藤巻氏
――移行はどのように進めましたか。
関根氏:対象は杉並区立の小学校38校、中学校21校、小中一貫校2校、特別支援学校1校の合計62校です。移行は3段階にわけて、約1年半かけて進めました。まずクラウド型セキュリティ基盤(SASE)と認証システム(IDaaS)を導入し、回線を10Gbpsへ増強しました。次にADサーバーやファイルサーバー等のクラウド化とWebフィルタリングの導入でセキュリティを強化し、最後に校務サーバーのクラウド化とデータセンター移設、端末の一元化を実施しました。
学校内にあったサーバーの移行作業では教職員の協力が必要でしたが、段階的に実施したことで説明も順を追って行うことができ、無理なく進められました。NTT東日本が詳細な手順書やQ&Aを作成し、オンライン説明会も実施してくれたため、作業もスムーズでした。導入の過程で営業担当者にいろいろと相談しましたが、「対応できません」と言われたことは一度もなく、技術面や営業面で幅広くサポートしてもらえたと感じています。
回線増強については、現行とほぼ同じコストでベストエフォート型の10Gbps回線へ増強する提案があり、これを採用しました。回線増強後には文部科学省が推奨するネットワークアセスメントも実施し、全62校で当面の推奨帯域を満たしていることを確認できました。
藤巻氏:データ移行では想定外の問題も発生しましたが、原因を究明し、回避策を対応してくれました。状況を問い合わせると緊急度の高いものについてはその日のうちに回答があり、仮定の段階でも情報を共有してくれたので、安心感がありました。


今回のシステム導入を担当した学校ICT係が所属する庶務課

会議室など任意の場所で安全に校務作業や打ち合わせなどができるようになった

杉並区役所外観。ゼロトラストモデルで62校の校務改革を推進
――ゼロトラストモデルへの移行で、今後どのような変化や効果を期待していますか。
関根氏:まず校務用と学習用の端末が一台に統合されたことで、端末の使い分けの煩わしさがなくなります。そして最も期待しているのは、ロケーションフリーで仕事ができるようになることです。これまでは狭い職員室に全員が集まって作業していましたが、これからは放課後の教室などでも、個人情報に配慮しながら校務作業が可能です。職員会議も職員室に限定せず、任意の教室でパソコンを使いながら進行できるようになります。
実は夏休み中に複数の学校で大規模改修工事があり、トイレが使えなかったため、特例として教職員の自宅作業を許可しました。学校からは問題なく実施できたと聞き及んでおり、早速ロケーションフリーの効果を実感しています。9月以降は校長が許可した範囲で、研修先や出張先、移動教室などへ持ち出せるようになります。
運用面ではヘルプデスクが一元化され、問い合わせ先が分かりやすくなりました。これまでは内容によって異なる窓口に連絡する必要がありましたが、一本化されたので効率的です。また、シングルサインオンの導入で校務系、学習系など複数あったアカウントが原則1つに統合され、使い勝手の向上も期待できます。
藤巻氏:全教職員にメールアドレスを付与し、Microsoft Teamsも導入したため、教育委員会とのやり取りや校内の情報共有がしやすくなっています。以前は学校代表に届いたメールを事務職員が印刷して教職員に配布していましたが、そうした作業も不要になり、ペーパーレス化と業務効率化が進みます。今後は教育委員会と学校間、校内のコミュニケーションのさらなる活性化にも期待しています。
回線の高速化については、クレームがなくなったということは、満足して使ってもらえているのでしょう。データ量は今後も増えていくと思うので、定期的にネットワークアセスメントを実施していきたいです。
――今後の展望をお聞かせください。
関根氏:「校務DXチェックリスト」の調査で、現在23区内で最下位なのでコミュニケーションの強化を軸に改善を進め、トップ3入りを目指します。今回のゼロトラストモデルへの移行は、全国的に見ても先進的な取り組みです。今後数年以内に多くの自治体で同様の取り組みが始まる際に、杉並区の事例が参考になればと思います。
藤巻氏:教職員の活用のモチベーションが上がるような研修を企画しながら活用を促していきたいです。活用が進めば、教職員同士のコミュニケーションが活発になり、お互いに学び合う文化も自然と根付いていくでしょう。NTT東日本には引き続き技術面でのサポートや新たな活用を促す提案などを期待しています。
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