人口約3,000人の村がデジタル地域通貨導入で地域を活性化!ポイント還元や地域振興券、村内バスのキャッシュレス決済に活用

イメージ:山形県大蔵村

地域通貨で仕掛ける人流回復。村民の利便性の向上と住みやすさを実現。

山形県大蔵村は人流回復を目指し、地域通貨「くらポ」を導入。従来は紙だった地域振興券のデジタル化、村営バスのキャッシュレス化を実現。小規模自治体ならではの工夫や経緯を伺いました。

山形県大蔵村様

業種
公共・自治体
従業員数
301人~名

山形県大蔵村

集合写真

(左から)NTT東日本 山形支店 ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネス担当 鈴木 耕一、大蔵村 危機管理室 兼 デジタル推進室 室長 佐藤 克也氏、村長 加藤 正美氏、
デジタル推進室 主事 斎藤 健一氏、デジタル推進員 武田 弘己氏、NTTネクシア ビジネスソリューション部 ビジネスクリエイト部門 ビジネスクリエイト営業担当 浦山 佳昭

Summary

導入いただいたソリューション
デジタル地域通貨プラットフォーム、GPSを活用したバス運賃計算システム、導入に向けた各種支援
ソリューション導入効果
地域振興券やプレミアム付商品券をデジタル化し、利用や管理を効率化できる基盤が整った
イベント参加等によるポイント付与で外出機会創出や地域活性化を促進できた
村営バスのキャッシュレス決済で利便性向上とデータ活用の基盤を整備できた
NTT東日本評価のポイント
予算の限られた小規模自治体でも導入できるように様々な工夫をしてくれたこと
単なるシステム導入のみならず、グループ対応で加盟店募集まで担ってくれたこと
交付金申請から実装まで短期間で実現できる技術力・体制を有していたこと

コロナ禍で減った人流を回復させたい!
デジタル田園都市国家構想交付金でデジタル地域通貨を導入

大蔵村 危機管理室 兼 デジタル推進室 室長 佐藤 克也氏

――大蔵村がデジタル地域通貨「くらポ」を導入した背景をお聞かせください。

佐藤氏:大きなきっかけはコロナ禍です。村のイベントや行事が中止になり、人の動きが激減しました。制限が緩んでも以前のようには戻らず、村の診療所の医師からは高齢者の体力や健康を心配する声が上がっていました。

この状況をデジタルの力で改善できないかと検討する中で、デジタル地域通貨を活用してイベント参加や買い物のきっかけ作りができないかと思ったのです。大蔵村には肘折(ひじおり)温泉という温泉地があり、住民も観光客も訪れます。旅館や商店も多いので、温泉街を中心とした人流促進ができるのではないかと考えました。村内の商店が個別に実施していたシールやスタンプを貯める紙ベースの販促策も、将来的にはデジタル化できるだろうと考えました。

地域振興券を紙ベースで発行していましたが、500円券を束ねた分厚い冊子でした。使える店舗が少なく、ガソリン代などに一括で使われることも多かったため、利用実態を把握しにくい状況でした。デジタル化すれば利用状況の把握やペーパーレス化を進められますし、利用者も端数などを気にすることなく便利に使えるようになります。

今回、村営バスに「くらポ」を用いたキャッシュレス決済「ゆけむりPass」を導入しています。バスは肘折温泉エリアも巡行しており、観光客のみなさまにもよく利用されていますが、これまでは現金決済のみだったので、正確な乗車履歴を集計できていませんでした。デジタル化によって観光客が途中で立ち寄った観光地などがわかるようになれば、観光振興施策にもつなげられます。また、バスの定期券は大蔵村役場でしか購入できず不便でした。

――今回はデジタル田園都市国家構想交付金(TYPE-X)を活用して導入されています。

佐藤氏:マイナンバー申請率が70%を超えた自治体が対象となるデジタル田園都市国家構想交付金(TYPE-X)を活用しました。小さな村なので、人づてに話を聞いてマイナンバーを申請する人が多かったのです。デジタル地域通貨も同様に広まりやすいのではないかと期待しました。また、すでにコロナ禍に全世帯に防災目的でタブレットを配布していたので、デジタルへの意識はある程度高まっていました。デジタル地域通貨についても、まずは使って便利さを実感してもらい、意識改革から始められたらと考えていました。

――NTTグループに依頼いただいた決め手は何でしょうか。

佐藤氏:デジタル田園都市国家構想交付金の申請のためにパートナー企業を探しており、デジタルに強い企業としてNTTグループは念頭にあったため、NTT東日本に電話したのがきっかけです。大蔵村が描くデジタル構想を一通り話したところ、NTTグループで実現をサポートできると言われ、相談を始めました。最終的には公募型プロポーザルで決定しています。

――どのような点を評価されたのかお聞かせください。

佐藤氏:まずはNTTグループのブランド力と高い技術力です。またNTTグループ全体として幅広いソリューションを有していたことも評価しました。デジタル田園都市国家構想交付金の申請期限まで数カ月間しかなかったのですが、NTT東日本と何度も打ち合わせを重ね、どんな構想をデジタルでどう実現していくかを検討しました。最終的に無事受理されています。

加盟促進やキックオフイベントで機運を醸成
村民バスはGPS機能を活用した独自の決済方法で構築

大蔵村 危機管理室 兼 デジタル推進室 主事 斎藤 健一氏、大蔵村 デジタル推進室 デジタル推進員 武田 弘己氏

――実際の導入はどのように進めましたか。

佐藤氏:役割分担としては、デジタル地域通貨「くらポ」の商品設計やメニュー考案を村が行い、実際のシステム構築はNTTグループが実施しました。

小さな村と大きな市では、ニーズも予算も違います。今回、「くらポ」を活用した村内バスのキャッシュレス決済「ゆけむりPass」はパッケージ製品ではなく、スマートフォンのGPS機能とバス位置情報を活用して乗車運賃を自動計算する独自の仕組みを採用し、コストを抑えてくれました。

デジタル地域通貨の普及には、加盟店の充実が欠かせません。店舗が集中している肘折温泉を中心に加盟店を募集しました。声がけは商工会にも依頼していましたが、NTTグループも協力してくれて助かりました。雪が降る中、約60店舗を個別に周って加盟を呼びかけてくれました。

――住民にはどのように周知し、利用を促してきましたか。

佐藤氏:先ほどもお伝えしたように、人口が少ないので人づてに情報が伝わりやすく、口コミの影響力が大きいです。目新しさや利用者のメリットを伝えて、住民に興味をもってもらうようにしました。2024年3月の「くらポ」のプレ運用開始時は、NTTグループに協力してもらい、キックオフイベントを開催したところ、約50人が集まり、メディアにも取り上げられて村民へ広く周知できました。イベント後は住民や他市町村からの問い合わせも相次ぎました。2024年10月に「ゆけむりPass」の運用開始時も同様のイベントを実施しています。

このほか「くらポ」の専用ホームページも作成しました。トップページに掲載している「小さな村の地域通貨が動き出そうとしています」から始まるメッセージは、村とNTTグループで一緒に考えたものです。人口が少ないのでポスターの効果は限定的ですが、バス車内は比較的見られやすく、車内ポスター経由での「ゆけむりPass」の事前登録も数件ありました。

――住民からの問い合わせ対応やサポートはどのように行っていますか。

武田氏:村役場のデジタル推進員が対応しています。タブレットの全戸配布時から、デジタル推進員が使い方を教えており、草の根運動のようにデジタルデバイドの解消を進めてきました。膝を交えた指導ができるのは、小規模な自治体だからこそです。最近ではタブレットの使い方を教える際に、デジタル地域通貨を紹介することもあります。

斎藤氏:住民からの問い合わせは、操作方法や登録の仕方に関するものが多くなっています。私たちで答えられないこともありますが、NTTグループへ聞くとすぐに的確な回答をしてくれるので助かっています。

人から人へ伝わり、広がるデジタルの輪
さらなる利便性向上や観光振興への活用も推進

大蔵村公式キャラクター「おおくらくん」をポスターに採用(上)。くらポ利用者サイト。支払いやチャージ、利用履歴の確認などができる(下)

――デジタル地域通貨の導入により、現時点でどのような効果を感じていますか。

佐藤氏:事業としての最終的な成果は2025年度末に評価しますが、1つのシステムをポイント還元、地域振興券、村内バスという3つの事業に活用できており、現時点でも一定の手応えを感じています。

想像していたよりも年齢が高めの人も利用してくれていますし、加盟店が他の店舗を紹介してくれるケースも増えるなど、デジタルの輪が着実に広がっています。ポイント還元では、イベント参加者へのポイント付与を始めています。当初は参加者名簿を確認して後日メールでポイントを送る方法でしたが、村でQRコード発行システムを導入しました。現在、肘折温泉の2施設に設置し、入浴ポイントをその場で付与しています。今後も楽しみながらポイントを集められる機会を増やし、大蔵村らしいデジタル地域通貨の使い方を広げていきたいです。

メインに据えているのは地域振興券やプレミアム付商品券のデジタル化です。2025年3月に初のデジタル版プレミアム付商品券を発行予定です。当面はデジタルと紙の併用となりますが、デジタル版に付与するポイントを多くするなど、使うメリットを感じてもらえる工夫をしていきます。

――デジタル地域通貨の活用について今後の予定や展望をお聞かせください。

佐藤氏:ポイントはクレジットカードで購入できるのですが、予想以上に購入されており、今後も伸ばしていきたいです。週末によく使われているので観光客の利用も多いとみており、今後は観光振興施策への活用も考えていきたいです。たとえば、大蔵村には肘折温泉以外にも観光地があるので、GPS機能と連携させて複数の観光地を巡った人にポイントを付与するようなキャンペーンもできそうです。村内バスは現状は1000円券(1100円分の利用可)のみなので、今後は定期券や往復券など券種を増やし、利便性を高めていきます。デジタル化によって、観光客が途中で立ち寄った観光地などがわかれば、観光振興施策につなげられます。

本格的な成果が出るのはこれからですが、事例を共有することで小規模な自治体の参考になればと思います。大規模な自治体には必須のシステムも、大蔵村なら手作業で十分ということもあり、ランニングコストも含めた検討が重要です。今回、村内バスの仕組みを独自に作っていただきましたが、工夫次第で小規模な自治体でもデジタル事業を継続できます。どうしてもランニングコストが負担になるので、実質生活圏が同じ隣接した自治体との広域連携などは今後検討していく余地があるかもしれません。

村では2026年度の新庁舎に移転する計画を進めており、これを機にデジタル事業もさらに推進していく予定です。NTT東日本からの新たな提案も期待していますし、村としても住民の暮らしをより豊かにするデジタル事業を展開していきたいと思います。

  • 上記ソリューション導入時期は2024年3月です。
  • 文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2024年12月時点(インタビュー時点)のものです。
  • 上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

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イメージ:BizDrive

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