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秋田県では教職員の働き方改革に向け、統合型校務支援システムの導入を進めています。2024年度から7市町村で運用開始し、柔軟な働き方や情報共有の効率化を実現。全市町村への導入も予定しています。
Index
秋田県

(左から)NTT東日本 秋田支店 ビジネスイノベーション部 第一地域基盤ビジネス担当 髙橋 岳、秋田県教育庁 義務教育課 学力向上・教育情報化推進チーム チームリーダー 長門 亮氏、
課長 伊藤 悟氏、副主幹(兼)サブリーダー 須田 輝樹氏、主事 岡本 菜緒氏、NTT東日本 秋田支店 ビジネスイノベーション部 テクニカルソリューション担当 チーフ 田口 寛
Summary

――今回、共同利用型の統合型校務支援システムを構築することにした背景や、具体的にどのような課題があったかをお聞かせください。
伊藤氏:教職員の働き方改革は全国的な課題になっており、秋田県も例外ではありませんでした。統合型校務支援システムの導入による校務のデジタル化が働き方改革につながることはわかっていましたが、検討を始めた当時は、県内で統合型校務支援システムを導入している市町村は5割に満たず、全国的にも低い水準でした。しかし、逆にこの状況は既存システムからの切り替えの負担が少なく、県が主導して最先端の環境を整備できるチャンスだと思ったのです。
教職員は市町村を超えた異動があるため、市町村ごとに使っているシステムが異なると、異動のたびに別のシステムの使い方を覚えなければなりません。全県共通のシステムであれば、その負担をなくせます。また、過去に個人情報の入ったUSBメモリを紛失するトラブルがあり、セキュリティリスクへの懸念もありました。教職員が大量退職し、採用が増える中、育児や介護にも対応できる働き方の柔軟化や多様化が求められています。フルクラウド型の統合型校務支援システムの共同利用によって、こうした課題が解決できるのではないかと考えました。また、従来学校間のやりとりはメールが主体で、事前にメールアドレスを確認し、共有する必要がありました。システムの導入での手間が軽減し、コミュニケーションがスムーズになるだろうという期待もありました。
――NTT東日本の提案を評価したポイントは何でしょうか。
伊藤氏:フルクラウド型のゼロトラストモデルという基本要件は満たした上で、期待以上の充実したサポート体制を提案してくれたことです。たとえば、ヘルプデスクの繁忙期の対応や運用ポータルサイトの開設、SOC(Security Operation Center)の設置などです。実際、運用開始後はこれらのサポートに大いに助けられました。NTT東日本は、共同利用の意義や校務DXの重要性を理解し、さらに県の教育委員会と市町村との関係性、学校現場が抱える課題なども把握した上で、適切な提案をしてくれました。

――実際の導入はどのように進めてきましたか。
伊藤氏:県で初期案を示し、市町村の意見を聞きながら構築を進めました。数カ月という短い構築期間の中では、想定外のこともあり、検討すべき点は多くありました。新規にシステムを導入する自治体もあれば、他社システムから切り替える自治体もあり、市町村によって状況が大きく違います。また、担当者が必ずしもシステムに詳しくないこともあり、同じペースで進めていくのが難しい場面もありました。こうした状況の中、NTT東日本の担当者は親身に相談に乗ってくれて、市町村の担当者が財政課に説明するのに必要な資料を迅速に作成するなど、柔軟に対応してくれてありがたかったです。
須田氏:運用開始直後は、市町村から県への問い合わせも多く、連日対応に追われました。そもそも専門的な用語自体がわからないという声も多かったので、NTT東日本に用語集を作成してもらい、説明に活用しています。操作方法についてはヘルプデスクで直接受け付けてくれるので助かっています。そのほか、運用ポータルサイトも準備してもらい、過去の研修動画のアーカイブやよくある質問(FAQ)、メンテナンス情報等を掲載しました。これも市町村の担当者に活用してもらえているだろうと思っています。
長門氏:導入した市町村に対しては、NTT東日本が役職に応じた研修を実施してくれており、現場の活用を支援できています。全国に先駆けてフルクラウド型の統合型校務支援システムを導入したため、手探りの部分も多かったのですが、NTT東日本の丁寧な説明を受けながら、着実に進めることができました。
――全県への展開はどう進めていきますか。
伊藤氏:初年度の7市町村で得た知見を活かしながら、2年目は10市町村すべてで予定どおりの導入を進めることができています。秋田県には25市町村がありますが、残りの市町村についても2028年度までにほぼすべての市町村で導入予定です。また、大学の附属学校への導入も進めていく計画です。導入済み自治体の好事例を共有しながら、順次展開を進めていきたいと考えています。

――現時点で導入の効果を感じていますか。
伊藤氏:現場からよく聞くのが、児童や生徒の保護者からの欠席連絡が効率化され、朝の業務負担も軽減したという声です。NTT東日本からの提案で、保護者連絡アプリと統合型校務支援システムの連携によって実現しました。
また、Microsoft TeamsやMicrosoft SharePointを活用することで、情報共有やコミュニケーションも改善しました。学校内はもちろん、学校間の連携や学校と教育委員会のやりとりもしやすくなったと思います。複数の市町村をまたぐブロック単位の研究会や、役職別の部会などでも資料共有や連絡のために使っています。
従来は紙ベースの資料が多かったのですが、教職員の中でもペーパーレス化や業務効率化への意識が高まりつつあります。まだ十分にシステムの機能を使えているわけではありませんが、市町村の事情も違うので、一気に変えるのではなく、段階的な活用拡大を進めていきます。
長門氏:一部の学校でダッシュボードを使い始めており、子どもの状況を即座に把握でき、指導に役立てられそうだという声が届いています。実際に使ってみて便利さを実感したという声も多く、それを聞くと我々も導入してよかったと思います。
――今後の統合型校務支援システムの活用について、予定や展望があればお聞かせください。
伊藤氏:当面は、各学校の情報担当者や管理職と情報交換会や研修会をしながら、積極的な活用を市町村に働きかけていきます。働き方改革というと、業務効率化による稼働時間の削減が強調されがちですが、働き方の柔軟化や多様化を可能にするという側面も非常に大事だと思っています。今回、ゼロトラスト環境というハードは整備しましたが、ハードだけでは働き方改革の推進は難しく、本格的な取り組みはこれからです。実際、どこでも働けることには不安を感じる声もあり、セキュリティポリシーも整備しながら、慎重に検討を進めていきます。
まだ課題はありますが、ハード面の環境を整備できたことで、働き方改革の本格的な推進に向けた基盤ができたのが今回の大きな成果です。今後は、この基盤を活用しながら、働き方改革そのものの見直しを進めていきたいと考えています。
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