• 2026.1.26 (月)
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20246月に公布された入管法が改正され、
「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)が制定されました。施行日は202741日。

外国人技能実習制度を発展的に解消し、新たに創設された育成就労制度で、社宅や寮はどう変わるのでしょう。

■これまでの技能実習生は、技能を身に着けるため日本に来ていたが、「人材確保」と明確に定義

これまでの技能実習生制度は、あくまで、「日本に決められた期間だけ来て働き、技能を身に着けて」「期間が満了したら母国に帰る」という制度でした。日本は諸外国のように移民を受け入れたり、海外から野放しに出稼ぎに来たり、ということに抵抗感があったため、このように「技術を身に着けるための、あくまでも実習期間の滞在」という考え方でした。

それゆえ、転職が認められず、過酷な労働環境や狭い住居での生活を余儀なくされるケースもあり、その結果、脱走して行方不明になる外国人が出るといった悪循環が生じていました。同じような制度で転職が認められている韓国では待遇も比較的良いことから、「日本より韓国で働きたい」という外国人が増加している状況です。
こうした背景を受け、国は、「日本人が減少している今こそ、海外からの労働力を確保しなければならない」と判断し、新しい法律が制定されました。

この新制度では、試験に合格すれば特定技能1号へ移行することが可能になり、日本語を学び、さらに犯罪歴や税金の滞納・法律違反などが無ければ、実質的に長期的な在留、つまり”ほぼ永住”も見込める仕組みとなっています。

特に転職の制限は、「技能実習生の権利主張を抑制することにつながるため、奴隷労働と言われる大きな要素ともなってきた。それ故、今回の見直しにおいて最も重要な論点となった」と第3回特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会でも中心議論となったそうです。

■「技能を教えてあげるのだから多少の苦労も経験して」の反省

この改正は、「技能を教えてあげるのだから、まあ、多少は苦労もしなさい」といった姿勢から「人材として育てて活用していく」という大きな方針転換でもあります。
研修という考え方のもと、できるだけ「安い賃金で」「日本人のやりたがらない仕事を」では、人権侵害を被ることもあります。優秀な人材が他国に流れ、日本に来ていただけないかもしれない旧制度の変更は、円安も背景として、出稼ぎというほど実収入も多くなくなってきた日本には待ったなしの改革といえます。

■外国人受け入れのための住環境も今後変化が必要

今回の改正では、住まいの広さの規定などについては、技能実習生の制度を踏襲しています。まだ施行まで時間はありますので、住環境についての細目は決められていませんが、育成就労から特定技能1号に育成していくのですから、現在の特定技能1号の要件を目指すべきでしょう。育成就労外国人を受け入れる企業には「住居確保支援」が義務付けられています。社宅提供はその有効な手段となります。

技能実習制度の基準を踏襲すると、1人部屋の場合、6㎡以上が最低基準。複数人部屋の場合は、1人あたり4.5㎡以上が目安となりますが、「技術を教える」から「人材として来ていただく」という法律の基本的な考え方は変わっているため、順次、住環境についてもより高水準が求められていくことになるでしょう。
現在の特定技能1号を要件として考えると、原則として、外国人1人あたり7.5㎡以上(約4.5畳)の広さを確保するべきだと思います。

■快適な生活を送るための設備

このコラムを読んでいるみなさんが、「海外に来て働いてください」と言われたらどうでしょう。いきなり賃貸物件を探して契約するよりは「それなら社宅を用意してほしい」と考えるのではないでしょうか。電圧などが違う海外にみなさんが行くなら、家具や調理器具・冷蔵庫・洗濯機・照明などの家電は備え付きであってほしいはずです。当然、清潔で安全な住環境が世界的に求められます。

また、いきなり現地のテレビを見るよりは、インターネットで母国の動画を視聴したり、家族とオンラインでやりとりがしたいと思うでしょう。しかし、いきなり自分でインターネットの契約をするのは負担が大きいため、「インターネット無料設備が充実している社宅」が求められるはずです。実際、こうしたニーズを踏まえ、ホテルではWi-Fi環境が標準設備となっています。

さらに、育成期間を終え、特定技能1号外国人を雇用するとなれば、入国後に適切な住まいを確保できるよう支援する法的義務を負います。社宅等を提供する際に、相場より高い家賃設定にするなどして非合理な利益を得てはならず、家賃は建設費用や耐用年数、入居人数を考慮した合理的な額であることが求められます。相部屋での入居のケースも今は存在しますが、プライバシー保護の観点は重要で、カーテンや間仕切りなどは検討すべきでしょう。

■「転職が可能となる」ので住環境が悪いと、退去・転職につながる

今回の法改正では転職が可能となりました。となると、「地方で育成した外国人が、結局は給与の高い大都市へ転職してしまうのではないか」という不安の声も上がっています。国は、地方に配慮し、地方から大都市への転出よりも大都市から地方への転出が増えるよう「枠」を設置する案を策定しました。

しかし、本来であれば、日本人であっても外国人であっても、よりよい待遇や成長の機会がある環境へ自由に転職できることは当然の権利です。だからこそ、企業側が人材を確保していくためには、給料だけでなく住環境も含めた総合的な魅力を高めていくことが重要になります。清潔で安心・安全な住まい、十分な防犯対策、快適なネット環境などを整え、「諸外国よりも日本を選びたい」と思ってもらえる環境づくり、そして「転職先としても魅力的だ」と感じられる住環境整備こそが、今後の外国人材確保における鍵となるでしょう。

「働かせてあげる」という発想から「働く場として選んでいただく」へ。そして、「住まわせてあげる」から「住みたいと思っていただく」へ。こうしたパラダイム転換を、一歩ずつ進めていくことが求められます。

  • 執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

    【プロフィール】プリンシプル住まい総研 所長

    1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。20121月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長・中国ブロック副ブロック長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

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