【事例あり】電話応対のカスハラ対策とは?2025年法改正で義務化される企業の対応と実践策

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公開日
2026-05-20

監修 中野 裕哲(税理士・社労士・行政書士・FP)

監修 ビジネスフォン 開発・販売チーム(NTT東日本)

編集 NTT東日本編集部

近年、電話応対におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)は増加傾向にあり、暴言や威圧的な要求、長時間の拘束といった行為が従業員の負担を大きくしています。こうした状況を受け、2025年6月には労働施策総合推進法が改正され、企業にはカスハラに適切に対応するための体制整備が求められるようになりました。

本記事では、電話応対に特化したカスハラ対策に焦点を当て、現場で発生しやすい課題や実際の発生事例を踏まえながら、企業が取り組むべき防止策を解説します。電話応対に携わる従業員の安全を守り、顧客対応の品質を維持するためにも、参考にしてみてください。

なお、カスタマーハラスメント全般の定義や背景については、以下の記事でも詳しく解説しています。

Summary

この記事でわかること
カスハラの定義と、電話応対で起こりやすい理由・具体例
2025年6月法改正で義務化される企業の対策と、実際の事例
企業が取り組むべき電話応対のカスハラ対策と、具体的な実践策

1.カスハラ(カスタマーハラスメント)とは?

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先、利用者が従業員に対して行う、迷惑行為や暴言、過剰要求などの言動を指します。従業員の心理的負担や離職につながるだけでなく、企業の生産性やサービス品質にも影響を及ぼすことから、近年では経営課題の一つとして注目されています。

本来、商品やサービスの改善につながるクレームは、企業にとって真摯に受け取るべき貴重な意見です。しかし、言動や要求が社会通念から逸脱した場合は、正当なクレームとはいえず、カスハラに該当する可能性があります。企業には、こうした行為から従業員を守るための体制整備が求められています。

2.電話応対でカスハラが起こりやすい理由

電話応対は非対面で行われるため、他のチャネルと比べてカスハラが発生しやすい傾向にあります。その背景には、電話特有の以下のような理由があると考えられます。

    • 匿名性の高さ
      顔が見えず偽名の使用も容易なため、顧客の感情がエスカレートしやすい
    • 感情が増幅しやすい特性
      表情や態度が伝わらず、声のトーンや言葉尻だけが判断材料となるため、誤解や怒りが増幅しやすい
    • 証拠が残りにくい環境
      通話録音がない場合、「言った・言わない」の水掛け論に発展しやすい

このように、電話応対にはカスハラが発生しやすい構造的な要因が複数存在します。続いて、電話応対の現場における発生率について、調査データをもとに解説します。

電話応対におけるカスハラの現状

イメージ:電話でカスハラを受ける(受けた)頻度はどれくらいですか

出典:電話のカスハラに関する調査レポート|トビラシステムズ株式会社

トビラシステムズ株式会社の調査によると、電話でカスハラを受ける頻度が「週に1回以上」と回答した人は、自治体で54.3%、企業で24.4%にのぼっています。

カスハラの内容としては、「暴言・罵倒」「過剰な要求」「長時間の拘束」が多く見られました。加えて「謝罪の強要」や「執拗な繰り返し」「脅迫・威嚇」といった深刻なケースも確認されており、従業員の対応疲れや心身への負担の大きさがうかがえます。

健全な組織運営のためには、電話応対におけるカスハラの実態を正しく把握し、早期に対策を進めることが重要です。

電話応対におけるカスハラの具体例

電話応対におけるカスハラ行為には、いくつかのパターンがあります。こうした類型を把握することで、カスハラかどうかの判断や適切な対応を取りやすくなります。

    • 長時間拘束型
      何時間も電話を切らせてもらえず、業務を長時間中断させられる行為
    • リピート型
      解決済みの内容や理不尽な要望について、執拗に同じ連絡を繰り返す行為
    • 暴言型
      「無能」「辞めてしまえ」など、人格を否定するような罵声や激しい暴言を浴びせる行為
    • 威嚇・脅迫型
      「SNSで炎上させる」と脅したり、反社会的勢力との関係性をほのめかしたりするなど、威圧的な態度で相手を怖がらせる行為
    • 権威型
      自身の社会的地位を誇示し、特別扱いや謝罪を強要する行為
    • 説教・責任転嫁型
      些細なミスを糸口に持論を延々と説いたり、自分勝手な理屈で一方的に責任を押し付けたりする行為

上記のように、ひとくちにカスハラといってもそのタイプはさまざまです。いずれも従業員・企業・顧客のすべてに悪影響を及ぼすため、電話応対が多い企業では優先度の高い経営課題として対策に取り組む必要があります。

3.企業で実際に発生した電話カスハラのケース

ここでは、電話応対の現場で実際に発生したカスハラの事例を紹介します。いずれも、企業が組織として対策に乗り出すきっかけとなったケースです。

運送業|同一顧客からの暴言・長時間拘束により従業員が休職

ある大手運送企業のコールセンターでは、同一顧客から暴言や個人攻撃、長時間にわたる電話応対が繰り返され、対応者が恐怖を感じて業務に復帰できなくなる事案が発生しました。カスハラの実態を把握するために社内アンケートを実施したところ、従業員の約8割が、暴言や威嚇、個人情報の要求といった被害を経験していることが明らかになったようです。

この状況を重く受け止めた経営層は、社員を守るための明確な方針が必要と判断し、具体的なカスハラ対策マニュアルや発言リストの作成、相談窓口の設置など、組織的な体制整備に踏み切りました。

こうした取り組みを通じて社内にはカスハラの概念が浸透し、不当要求に対して毅然と対応できる風土が形成されつつあります。

IT・サービス業|脅迫的クレームを機に、専門チーム設置と方針公開

IT・サービス業のサポート窓口では、40分以上にわたって脅迫的な暴言が続くクレームが発生。この事案を受け、現場担当者だけでなく、法務部門や管理職が一丸となってカスハラ対策に取り組むプロジェクトが発足しました。

従業員へのアンケートでは、約8割もの担当者が同様の被害を経験している実態が明らかとなり、法的な観点からも慎重に整備が進められました。その結果、「カスタマーハラスメントに対する考え方」を自社サイトで公開し、対象となる行為や社内外の対応方針を明文化したのです。

社内では、専門チームの設置や相談窓口の整備、被害に遭った従業員へのケア、外部機関との連携、ガイドラインの作成など、具体的な対策を実施。過去に受けた暴言フレーズや判断基準も整理されたことで、クレームとカスハラの線引きが明確になりました。

こうした取り組みにより、現場の安心感が高まり、現在では他社との情報共有が進むなど対策の効果が広がっています。

4.2025年6月の法改正で企業におけるカスハラ対策が義務化へ

こうした背景を受け、2025年6月に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」が改正され、企業にはカスハラに対応するための体制整備が求められるようになりました。

本法律は2025年6月11日に公布されており、2026年10月1日に施行される予定です。具体的な対応内容については、今後示される指針のなかで明確化される見込みですが、現時点では企業に対して、以下のような措置が求められると考えられています。

    1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
    2. 労働者の相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備と周知
    3. 発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置

これらの措置は、従業員の就業環境を守ることを目的として、企業に求められる体制整備といえます。十分な対応が行われていない場合には、労働局から指導や勧告を受ける可能性もあります。

5.企業が取り組むべき電話応対のカスハラ対策

イメージ:企業が取り組むべき電話応対のカスハラ対策

電話応対の現場ではカスハラが発生しやすく、企業として明確な判断基準や相談体制、教育体制を整えることが不可欠です。対応方針を明確にし、従業員が迷わず行動できる環境を整えることで、カスハラの予防と迅速な対処が可能になります。

ここでは、企業が取り組むべき電話応対のカスハラ対策について具体的に解説します。

対応基準・判断ラインの明確化

カスハラを許容しないという企業方針を明確にし、社内外に示すことが対策を進めるうえでの土台となります。方針には、暴言や脅迫、長時間にわたる拘束、不相当な要求など、どのような行為がカスハラに該当するのかを具体的に示すことが重要です。

また、正当なクレームとの違いを明示し、従業員が迷わず判断・対応できる状態を整えておくことも大切です。

たとえば、通話を終了してよい明確な判断基準を設けることで、個人の裁量に委ねる場面が減り、従業員が過度な責任を感じずに対応できるようになります。さらに、自動音声ガイダンスで通話の録音や迷惑行為への対応方針を事前に案内しておくことで、顧客側への抑止効果も期待できます。

相談窓口・エスカレーション体制の整備

電話応対で対処が困難だと感じた場合に、速やかに上長やSV※1へ交代する社内ルールを整備しておくことも重要です。

たとえば、暴言が3回以上続いた場合や、30分以上通話が拘束された場合、強い恐怖を感じた場合など、交代の基準を具体的に示しておくことで、新人であっても判断に迷いにくくなります。

また、従業員が迷わず相談できる窓口を設け、相談内容を記録・共有できる体制を整えておくことも求められます。管理職の方が日頃から「無理に抱え込まず、遠慮せず相談してほしい」という姿勢を言葉や態度で示すことで、相談しやすい雰囲気の醸成につながるでしょう。

  1. SV:スーパーバイザーの略称。コールセンターではオペレーターの育成や対応の管理・サポートを行う責任者

マニュアルの策定と従業員教育

カスハラ発生時の初期対応からエスカレーション※2、通話終了までの流れを手順化し、マニュアルとして整備しておくことも重要です。「牽制→警告→通話終了」といった段階的なスクリプトを用意することで、担当者ごとの判断にばらつきが生じにくくなり、現場で落ち着いた対応を取りやすくなります。

また、従業員にはロールプレイングを取り入れた実践的な研修を行い、エスカレーションの進め方を身につけてもらうことも大切です。事前に具体的な体験をしておくことで、実際の場面でも迷いが減り、スムーズな対処につながるでしょう。

  1. エスカレーション:担当者では解決できない問題が発生した際に、上長や専門部署に報告・相談して、対応を引き継ぐこと

通話録音・通話管理などの電話機能の活用

通話録音は、カスハラ対策において抑止・証拠・研修の面で有効な手段です。録音されていることを顧客にあらかじめ知らせることで、不適切な言動を控える効果が期待でき、カスハラの抑止につながります。

また、録音データは「言った・言わない」といった認識の食い違いによるトラブル防止や、対応内容の振り返り、応対品質の向上にも活用が可能です。IVR※3などの電話機能と組み合わせることで、一次対応の一部を自動化でき、現場の負担軽減も図れます。具体的には、IVRが一次対応を行うことでお客様が少し冷静になれたり、音声による「録音」のガイダンスによって攻撃的な言動の抑止力になったりする効果が期待できます。

  1. IVR:Interactive Voice Responseの略称。電話着信時に自動音声で案内を行い、顧客の操作(番号選択など)に応じて用件を振り分けるシステム

(参考)NTTグループのカスハラ基本方針

NTTグループでは、従業員をカスタマーハラスメントから守ることが、結果として質の高いサービス提供につながるという考えから、「NTTグループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定しています。

本方針では、カスハラを「お客さまからの言動・要求のうち、内容に妥当性がないものや、手段や態様が社会通念上不相当で従業員の就業環境を害する行為」と定義。暴言や脅迫、威圧的な言動、長時間にわたる電話による拘束などを例として挙げ、従業員を守るために毅然と対応する姿勢を明確にしています。

また、悪質なケースについては、警察や弁護士などの外部専門家と連携しながら対応する方針を示すとともに、従業員への研修や被害後のケアにも取り組むことを明記しました。

あくまで一例ですが、ご参考いただけますと幸いです。

出典:NTTグループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」の策定について|NTT株式会社

6.電話応対のカスハラ対策を強化するなら「SmartNetcommunity αZXⅡ typeS,M」「SmartNetcommunity αZXⅡ typeL」

イメージ:録音した音声ファイルから、話者を分けながらテキスト化

企業が電話応対におけるカスハラ対策を進めるためには、通話内容を可視化し、対応の判断や共有しやすい環境を整えることが重要です。NTT東日本の「SmartNetcommunity αZXⅡ typeS,M」「SmartNetcommunity αZXⅡ typeL」は、カスハラ対策に役立つ機能を幅広く備えています。

機能 概要
通話録音 全通話録音システムを搭載し、通話内容を記録する
音声テキスト化 録音した音声ファイルを話者別に文字起こしし、Web上で確認できる
IVR(自動音声応答) 着信時に、Web画面上でテキスト入力した内容を自動音声ガイダンスとして設定できる

録音した通話内容を音声データとして残し、さらに自動で文字起こしして確認できる音声テキスト化機能は、カスハラ対策において有効です。通話内容を客観的な記録として保存するため、「言った・言わない」のトラブル防止に役立つほか、管理者が迅速に状況を把握して判断・エスカレーションを行いやすくなります。また、実際の対応内容を研修教材として使用することも可能といえます。

さらに、IVRを活用することで、通話の冒頭に「本通話は品質向上のため録音しています」といった案内を自動音声で流すことも可能です。あらかじめ録音されていることを伝えることで、感情的な言動や過剰な要求を抑制しやすくなり、カスハラの抑止が期待できます。

なお、「SmartNetcommunity αZXⅡ」には「Type S」「Type M」「Type L」の3種類があり、業種や業態を問わずさまざまな企業に導入いただいています。

Type S Type M Type L
  • 最大接続台数:10台
  • チャネル数:8ch
  • 最大接続台数:40台
  • チャネル数:12ch
  • 最大接続台数:576台
  • チャネル数:192ch

故障時にはNTT東日本専門の技術者が修理や代替機の手配を行うため、電話業務が止まるリスクを抑えた運用も可能となるでしょう。サービスの詳細は、以下のページをご覧ください。

電話応対のカスハラ対策に有効な多機能を備えるビジネスフォン「SmartNetcommunity αZXⅡ typeS,M」の詳細を見る

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7.電話応対のカスハラ対策に関するよくある質問

ここでは、電話応対におけるカスハラ対策に関するよくある質問に回答します。

カスハラ対策として電話を切ってもよいですか?

一般的なビジネスマナーでは、電話は「かけた側が切る」が基本とされていますが、カスハラに該当するケースでは必ずしも当てはまりません。暴言や威圧的な発言、不当な要求などがあり、社内で定めた基準に該当すると判断された場合には、受電側から通話を終了しても問題ないと考えられます。

そのため、「こちらから切ってはいけない」という従来の認識を見直し、どのような場合に電話を切ってよいのかを明確にしておくことが大切です。判断基準や対応の流れをあらかじめ整備しておくことで、現場での迷いや不安が減り、従業員が安心して対応できる環境につながります。

カスハラの電話は何分以上のことですか?

長時間拘束型のカスハラは、必要以上に通話を引き延ばし、業務の進行を妨げる行為を指します。現時点で明確な法的基準が定められているわけではありませんが、実務の現場では「問題の解決に必要な範囲を超え、30分以上にわたって通話が続いている場合」は長時間拘束型に該当する可能性が高いと判断されやすいです。

また、判断にあたっては通話時間の長さだけでなく、以下の観点もあわせて確認するとよいでしょう。

    • 話が前に進まず、同じ内容を繰り返している
    • 要求が不当であり、相手に応じる意図がない
    • オペレーターを拘束する目的が疑われる

企業の対応策としては、事前に対応時間の上限を設け、その方針を顧客に明確に伝えることが効果的といえます。

8.まとめ

本記事では、カスタマーハラスメントの定義に加え、電話応対でカスハラが起こりやすい背景や実際の事例、企業が取るべき具体的な対策について解説しました。

顧客からの理不尽な暴言や過剰な要求といったカスハラは、従業員の心身に負担を与えるだけでなく、企業の生産性やサービス品質にも影響を及ぼす経営課題の一つです。2025年6月の法改正により企業の対応が求められるなか、特に被害の起きやすい電話応対の現場では、組織的な対策と体制整備が欠かせません。

カスハラに該当する行為の判断基準を明確にするとともに、通話録音や音声テキスト化といったシステムを活用し、従業員が安心して対応できる環境を整えることが大切です。NTT東日本は、通話録音や音声テキスト化など、電話応対のカスハラ対策に役立つ機能を幅広く備えたビジネスフォン「SmartNetcommunity αZXⅡ typeS,M」「SmartNetcommunity αZXⅡ typeL」を提供しています。導入を検討したい方は、以下のページより詳細をご確認ください。

電話応対のカスハラ対策に有効な多機能を備えるビジネスフォン「SmartNetcommunity αZXⅡ typeS,M」の詳細を見る

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イメージ:中野 裕哲

監修 中野 裕哲(税理士・社労士・行政書士・FP)

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。 税理士法人V-Spiritsグループ代表。年間約1000件の起業相談を無料で受託し、起業家や経営者をまるごと支援。経済産業省後援 起業経営支援サイト「DREAM GATE」で12年連続相談数日本一。 著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)など20冊、累計25万部超

V-Spiritsグループ Webサイト

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監修 ビジネスフォン 開発・販売チーム(NTT東日本)

約40年にわたりビジネスフォンを提供し、オフィス環境の円滑な業務運営を支援しています。

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編集 NTT東日本編集部

NTT東日本のサービス担当者が企画・監修を行う編集チームです。
中小企業の皆さまにとって身近で役立つ情報をお届けすることを目的に、サービスの特長や活用方法をわかりやすくご紹介しています。
日々の業務にすぐに活かせるヒントや、経営課題の解決につながるサービスの魅力を丁寧に発信しています。

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