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  • 2023.3.21 (火)
    Posted by 北森 雅雄

「企業会計原則の概要」と、その中でも特に重要な「7つの一般原則」について、具体例とともにわかりやすく解説

「企業会計原則の内容がわからない」「企業会計原則の使い方が知りたい」とお悩みの方が、いらっしゃるのではないでしょうか。

企業会計原則とは、すべての企業が守らなければいけない会計のルールです。
この原則を知らずに会計処理をしていると、意図せずルール違反をしてしまう恐れがあります。

違反者は、会社法などの法令によるペナルティを受ける場合もあるため、企業の会計をあずかる経理担当者は、企業会計原則を必ず理解しておかなければいけません。

そこで、本記事では「企業会計原則の概要」と、その中でも特に重要な「7つの一般原則」について、具体例とともにわかりやすく解説します。

経理を預かる担当者や責任者の方は、ぜひ最後までお読みください。

.企業会計原則とは?会計のルール

ルール.jpeg

企業会計原則とは、すべての企業が守るべき会計ルールです。

一方で財務諸表は、企業の財務状態と経営実績を明らかにするものです。
株主や金融機関などの利害関係者は財務諸表をもとに、株主であれば株の売買を、金融機関であれば融資の可否を判断します。

しかし、判断材料である財務諸表が、企業ごとに異なる会計ルールで作成されてしまうと、利害関係者は正しい判断ができません。

そこで、会計ルールを統一するため、1949年(昭和24年)に旧大蔵省の経済安定本部・企業会計制度対策調査会(現在の金融庁・企業会計審議会)が、企業会計原則を公表しました。

それまでの企業会計実務における慣習のうち、一般に公正妥当と認められるルールを要約して作られたものです。

会社法第431条では、会計の原則について以下のように定めています。

第四百三十一条 株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
引用元:e-Gov法令検索|会社法

社会の変化にともなって、新しい形態の企業に対するルールも作られていますが、企業会計原則は公表当初から変わらず、企業会計の基本として位置づけられています。

なお、企業会計原則は、財務諸表の作成における原則ですが、法令ではないため法的な拘束力はありません。

しかし、正しい経済活動のため、すべての企業で企業会計原則は守られており、会計監査でもこの原則に従って監査がおこなわれます。

.企業会計原則の構成

企業会計原則は、次の3つの原則と注解から構成されています。注解とは一般原則を補足する役割です。

  • ●一般原則
  • ●損益計算書原則
  • ●貸借対照表原則

ここでは3つの原則に焦点をあてて、説明します。


一般原則

一般原則とは、包括的原則ともよばれ、企業会計全般における理念や指針です。
貸借対照表や損益計算書を作成するうえで、どちらにも共通する基本的な会計の考え方を定めています。
このため、損益計算書原則と貸借対照表原則の上位に位置しています。

さらに、一般原則は7つの原則から構成されています。

①真実性の原則 企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告をしなければならない
②正規の簿記の原則 すべての取引について、正確な会計帳簿を作成しなければならない
③資本・利益区別の原則 資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない
④明瞭性の原則 財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示しなければならない
⑤継続性の原則 会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない
⑥保守主義の原則 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない
⑦単一性の原則 異なる目的で財務諸表を作成する場合、信頼しうる単一の会計記録に基づいて作成しなければならない

これらの7つの原則については、後ほど詳しく解説します。


損益計算書原則

損益計算書原則とは、収益と費用の会計処理方法や損益計算書の表示方法の基準です。

当期純利益の計算方法について、1つの会計期間におけるすべての収益と、それに対応するすべての費用を経常利益に記載し、さらに特別損益を調整して表示しなければならないと定めています。

また、損益計算書原則には、発生主義と総額主義と呼ばれる2つの重要な考え方があります。

損益計算書の発生主義

損益計算書の発生主義とは、収益や費用を発生した時点で計上するという考え方です。
現金の出入りではなく、取引のあったタイミングで認識する点に注意します。

たとえば、仕入れた商品がまだ売れていないときは、その在庫分の仕入金額を経費にできません。
収益が発生したあと、対応する費用を計算し、損益計算書に表示します。

損益計算書の総額主義

損益計算書の総額主義とは、収益と費用を総額で記載するという考え方です。
収益と費用を直接相殺して、損益計算書から除外してはいけない点に注意します。

たとえば、売上と経費を相殺して利益だけを表示すると、企業の規模を正確に把握できません。集計したときに、数字が小さくなってしまうからです。

売上と経費は個別に集計し、損益計算書に表示します。


貸借対照表原則

貸借対照表原則とは、資産・負債・資本の会計処理方法や貸借対照表の表示方法の基準です。

貸借対照表の記載方法について、利害関係者が企業の現況を正確に把握できるように、貸借対照表日における、すべての資産・負債・資本を表示しなければならないと決められています。

また、貸借対照表原則にも、総額主義の考え方があります。

貸借対照表の総額主義

貸借対照表の総額主義とは、資産と負債を総額で記載するという考え方です。

資産と負債を直接相殺して、貸借対照表から除外してはいけない点に注意します。

たとえば、同時に発生した売掛金と買掛金を相殺して純額だけを表示すると、資産や負債の状態を正確に把握できません。

資産と負債は個別に集計し、それぞれ貸借対照表に表示します。

区分表示の原則

貸借対照表原則には、区分表示の原則とよばれる、貸借対照表の書き方が示されています。

貸借対照表の様式について、資産の部、負債の部及び資本(純資産)の部の3つに区分し、そこからさらに流動・固定などに分類しなければなりません。また、勘定科目を配列するときは、流動性の高い(現金化しやすい)ものから順に表示します。

ただし、後述の正規の簿記の原則によって会計処理をした場合、重要性の低い資産や負債は計上しないことも認められています。

.企業会計原則の7つの一般原則

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企業会計原則の一般原則は、7つの原則から構成されています。

7つの原則を知らずに会計処理をしてしまうと、処理を間違ったり、最悪の場合税法上や会計監査のペナルティを受けたりする恐れもあります。

行政や公認会計士、税理士といった会計に携わる職種が業務判断をする上での基準としているところなので、正確な会計処理のために正しく理解しておきましょう。


真実性の原則

一 真実性の原則
 企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

真実性の原則とは、財務諸表が真実の内容でなければならないという原則で、7つの原則の中で最も重要な原則です。

たとえば、損益計算書原則の発生主義を守り、売上と仕入を対応させていたとしても、計上した仕入金額に虚偽があれば、それは不正会計や脱税行為にあたります。

この原則において真実な報告を規定していることにより、利害関係者は安心して公開される財務諸表を判断材料にできるのです。


正規の簿記の原則

二 正規の簿記の原則
 企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

正規の簿記の原則とは、すべての取引について正規の方法による簿記をおこない、正確な会計帳簿を作成しなければならないという原則です。

正規の簿記とは、一般に複式簿記のことで、網羅性・立証性・秩序性の3つの要件を満たす必要があります。

具体的には、すべての取引にもれがなく(網羅性)、外部に説明できる資料があり(立証性)、継続して体系的に(秩序性)記録されている帳簿が、正規の簿記による正確な会計帳簿となります。


資本・利益区別の原則

三 資本・利益区別の原則
 資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

資本・利益区別の原則とは、資本取引と損益取引を区別しなければならないという原則です。
企業資本に関わる資本取引と、経営上の損益に関わる損益取引は、本来まったく異なる取引であるという点が、この原則が定められた所以です。

たとえば、資本剰余金と利益剰余金を混同してはいけません。
資本剰余金は出資金のうち資本金に組み込まれなかった剰余金ですが、利益剰余金は利益のうち配当に回らなかった剰余金をさします。
この2つを区別しなければ、利害関係者が誤った判断をしかねません。

また、明確に区別して表示することで、資本の不正使用や利益隠しを防ぐ役割も担っています。


明瞭性の原則

四 明瞭性の原則
 企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

明瞭性の原則とは、財務諸表で会計事実を明瞭に表示し、利害関係者の誤解を招くような表示をしてはならないという原則です。

勘定科目の設定に決まりはありませんが、誤解のないように明瞭な表現にしなければいけません。

また、明瞭性の原則に関する注解には、重要な会計方針の開示と重要な後発事象の開示が示されています。

具体的には、減価償却方法など重要な会計方針を示すことや、企業の合併など次期以降に重大な影響のある事象を注記することが求められています。


継続性の原則

五 継続性の原則
 企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

継続性の原則とは、会計処理や手続きの方法は継続して使用し、理由なく変更してはならないという原則です。

会計処理には複数の方法が認められているものがあります。その代表的なものが、減価償却方法です。

たとえば、減価償却には定額法と定率法があり、それぞれに計算される減価償却費が異なります。このため、毎期変更していては期間比較が難しくなり、企業の利益操作も可能になるので、会計処理の方法は継続して使う必要があります。

ただし、正当な理由がある場合は変更が可能です。その際には、財務諸表の注記を忘れないようにしましょう。


保守主義の原則

六 保守主義の原則
 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

保守主義の原則とは、企業の財政に不利益をもたらす可能性のある事象について、適切な会計処理をしなけばならないという原則です。

たとえば、貸し倒れの可能性が非常に高い売掛金は、多めの貸倒引当金や貸倒損失を計上する必要があります。
企業におこるであろう不利益を、早めに利害関係者に示すためです。

しかし、いつでも保守主義の原則が認められるわけではありません。
不利益の見積もりが度を超えると、利益操作につながる恐れがあり、真実性の原則に反してしまうため、注意が必要です。


単一性の原則

七 単一性の原則
 株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のためなど種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

単一性の原則とは、いわゆる二重帳簿を禁止する原則です。

たとえば、財務諸表は税務申告用や金融機関用など、目的や提出先が異なる場合があります。
税務申告用は利益を小さく、金融機関用は利益を大きく見せたいところですが、内容の異なる財務諸表は認められず、もととなる会計帳簿は1つでなければいけません。

.会計公準とは会計の前提となる考え方

企業会計のルールは企業会計原則ですが、その前提となる考え方を会計公準といいます。
会計に関わるすべての原則や基準は、会計公準を基礎として成り立っているので、正しく理解しておきましょう。

会計公準は、一般的に次の3つに分類されます。

  • ●企業実体の公準
  • ●継続企業の公準
  • ●貨幣的評価の公準


企業実体の公準

企業実体の公準とは、企業は株主と別の独立した存在とし、企業に関する取引だけを企業会計の記録・計算対象とするという前提です。

そのため、企業の取引に直接関わらない部分は、企業会計の記録・計算の対象となりません。

企業経営においては、株主と企業は独立しているので、株主が所有する財産と企業の資本は別物として取り扱われます。


継続企業の公準

継続企業の公準とは、ゴーイング・コンサーンともよばれ、企業は半永久的に存続するという仮定により、一定の期間を区切って期間計算するという前提です。

企業経営に期限があれば、損益計算は企業経営が終わるときを待たなくてはいけません。
企業は半永久的に継続され解散しないという前提があることにより、会計期間という概念が必要になり、期間計算が可能になります。


貨幣的評価の公準

貨幣的評価の公準とは、会計のすべては貨幣価値という測定尺度を用いておこなうという前提です。

業界や業種は多様化しているので、客観的に企業の現況を把握しようとしても、基準なしでは困難です。
そこで、すべての企業の会計業務について、貨幣価値を基準とするように定めました。

また、企業活動のうち、貨幣価値に換算できないものは、企業会計に含めないという考え方の裏付けにもなっています。

.企業会計原則を守らない場合ペナルティはある?

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企業会計原則は、法令ではなく、あくまで企業が守るべきルールです。

よって、違反による直接的なペナルティは規定されていません。

しかし、企業会計原則は会社法や金融商品取引法、税法などさまざまな法律と密接に関わっています。

たとえば、はじめに紹介した会社法第431条では、企業会計は一般に公正妥当な慣行に従うべきと定められています。

つまり、企業会計原則を守らなかった場合、会社法などの関連する法令に違反する恐れがあるということです。

違反行為となれば、刑事罰や行政処分を受ける可能性もあるので、企業会計原則は必ず守りましょう。

.まとめ 企業会計原則は守るべき大切なルール

企業会計原則は、すべての企業が守るべき大切なルールです。

一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則の3つから構成され、その中でも特に7つの一般原則が重要です。

ただルールを守って、日々の取引を正確に会計処理するのは大変でしょう。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori

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