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伊那市では、2019年のシンクライアントシステム更改を機に、シンプルな構成のHCI(※1)を採用して仮想化基盤を導入しました。続く2024年の更改では、大容量ファイル送受信やシングルサインオンなどに対応し、利便性を向上させています。コロナ禍では仮想化基盤を活用し、BYOD(※2)によるテレワーク環境もいち早く整備しました。導入の経緯や成果について、伊那市のご担当者にお話をうかがいました。
Index

Summary
――伊那市は新産業技術推進事業(ローカルGovTech)に力を入れ、先進的な取り組みを多数実施していますが、どのような方針でICT環境整備を進めているのでしょうか。
宮島氏:少子高齢化が進む中、移住希望者への魅力発信にも力を入れていきたいと考え、新しい技術の活用を積極的に進めてきました。具体的には、新産業技術推進協議会を立ち上げ、これまでにドローン小口配送「ゆうあいマーケット」やモバイルクリニック、市街地デジタルタクシー
など多数の施策を実施しています。また、総務省の地域活性化起業人制度を活用して、NTT東日本の小林さんに出向していただき、一部施策に協力してもらっていました。今後は個別の施策をつなぎ合わせ、より大きな効果を創出していきたいと考えています。
――2019年のシンクライアントシステム更改と仮想化基盤構築、さらに2024年にシンクライアントシステム更改をNTT東日本へ依頼いただきました。この背景や課題をお聞かせください。
宮島氏:シンクライアントシステム自体は以前から導入していましたが、2019年のシステム更新時には、拡張性や柔軟性、サポート体制の充実が課題となっていました。そこで更改を機に、新たな仕組みやサポート力のあるベンダーを選定し、より優れた仮想化基盤の導入を進めることにしました。

下平氏:続く2024年の更改では、5年間の運用で見えてきた課題や環境変化への対応について検討しました。具体的には、大容量ファイル送受信やセキュリティと使い勝手を両立した認証方式などです。また、グループウェアの切り替え時期と重なったため、これを仮想化基盤上に統合し、業務環境全体の利便性向上を図りたいと考えていました。現状、一部でFATクライアントも併用していますが、セキュリティ面からシンクライアントへの移行を進めており、システムの使いやすさは重視したポイントです。
――NTT東日本の提案を評価したポイントは何でしょうか。
宮島氏:2019年の仮想化基盤構築に関しては、種々の要因が重なり、約半年という工期や予算面での制約が大きかったのですが、他自治体への導入事例などから短納期への対応が見込めた上に、提案されたシステムは拡張性や柔軟性にも優れ、費用面でも想定内に収まっていました。
下平氏:構築時やその後のサポート体制も手厚く、何かあれば「こんなことはできないか」と気軽に相談できる関係性を構築できたのもよかったです。2024年の更改においても、市の課題やニーズをしっかりくみ取った提案をしていただきました。

――実際の構築はスムーズに進みましたか。
宮島氏:2019年の仮想化基盤構築時は、以前のシステムのドキュメントが十分にそろっておらず、不明点も多かったのですが、NTT東日本が根気強く調査し、課題を解決してくれました。
また、仮想化基盤構築直後にコロナ禍に見舞われ、テレワークが急務になりました。接続端末の大量調達が難しい状況だったため、当時行政では先駆的だったBYOD方式のテレワークを採用しました。今回のシステムでは、仮想化基盤上にテレワーク用の新たな層を設けたため、外部から直接業務ネットワークに接続することがなく、十分なセキュリティを担保できています。また、サーバーなどの新たなハード投資を必要とせず、設定変更だけで環境を構築できたため、わずか3カ月で職員のテレワーク業務を開始できました。
当時は、どの職員もいつ自分が出勤停止になってもおかしくない状況だったので、庁内にテレワーク導入への抵抗感はほとんどありませんでした。さらに出向中だった小林さんが市の職員として、申請フローや利用ルールなどの運用面の制定、全職員向けの庁内勉強会開催などを牽引してくれたので、システム以外の部分もスムーズに整いました。
下平氏:私が関わったのは2024年の更改ですが、この時も非常にスムーズでした。シンクライアント端末のOSを一斉に更新しましたが、翌日の問い合わせ件数は想定よりかなり少なかったです。現在は構築を終え、職員への展開を進める段階です。今後は、ガバメントクラウド対応やグループウェアの移行もあって職員が忙しい時期なので、新機能の展開は段階的に進めていきます。

――現時点で仮想化基盤導入の効果を何か感じていますか。
宮島氏:まず、仮想化基盤があったから迅速で安全なテレワーク導入ができました。もしなければ当時の業務継続は困難だったでしょう。NTT東日本のおかげでシンクライアントに対する庁内のネガティブなイメージも払拭されたと思います。コロナ禍は落ち着きましたが、テレワーク環境は働き方改革においても必要です。今後はフリーアドレス化も進めていこうと考えているので、NTT東日本には庁内Wi-Fi対応を含め、さまざまな支援をいただければ嬉しいです。
2024年の更改で、大容量ファイルのやり取りの容易化や印刷速度の改善、シングルサインオン(SSO)でのログイン負荷軽減、二要素認証によるセキュリティ強化などが行われ、より便利でかつセキュリティも強化された環境が整います。これを機にシンクライアントのさらなる利用拡大につなげていきたいです。
下平氏:このほかにも機器の情報を自動収集し、一元管理できる資産管理ソリューションを導入したため、端末やプリンターの管理業務の負担が大幅に減り、リモートでのサポートもしやすくなりました。また、ガバメントクラウド移行に向けた検証(PoC)環境も整備できています。
――今後の庁内DXについて、予定や展望があればお聞かせください。
宮島氏: 庁内DXは今後も推進していきます。先ほど話したフリーアドレス化や「書かない窓口」はその一例です。庁内全体では、デジタル教科書導入に伴う学校のネットワーク増強やドローンによる橋梁点検なども進めています。NTT東日本にはすでに基盤構築に加えて、こうした幅広いテーマの相談にのってもらっていますが、今後も多様な課題に対して新しい技術を活用した提案を期待しています。


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