総合防災情報システム刷新で市の災害対応力を強化!
県の防災システムとの二重入力を解消し、情報配信を効率化
長野市では、以前から使用してきた総合防災情報システムの更改をNTT東日本へ依頼しました。サーバー保守期限切れを迎えたため、必要な機能に絞り込んでシステムを最適化。また、長野県の防災情報システムとの二重入力が発生していましたが、同じシステムを採用することで手間を解消。各種システムとの連携も実施し、情報の一元管理や住民への情報配信の効率化も実現しました。クラウド化により災害への備えも高めています。導入の経緯や成果について、長野市の担当者にお話をうかがいました。
【目次】
長野県長野市
ソリューション導入効果
- 県のシステムとシームレスに連携できるようになり、二重入力の手間の解消が見込める
- 市の防災アプリや防災メール、公式LINEなど複数の媒体への情報配信を効率化できた
- クロノロジー(※)機能で被害情報を一元管理できるようになった
※ クロノロジーとは本部や現場で起こった被害状況等を記録し、対応内容等を時系列に記録する機能のこと
NTT東日本選定のポイント
- 使いやすいコンパクトなシステムを予算内で構築できたこと
- クラウドを活用し、BCP(事業継続計画)対策としても効果的だったこと
住民への情報配信と災害時の対応に課題
必要な機能を厳選し、使いやすさを追求
――総合防災情報システム刷新の背景や以前の課題をお聞かせください。
名川氏:以前から導入していた総合防災情報システムは多くの機能を備えていたものの、実際の活用は一部に限られており、必要な機能を整理したコンパクトで使いやすいシステムが求められていました。また、以前のシステムはオンプレミス環境で運用していたため、クラウド移行によるシステム強靭化へのニーズも高まっていました。
――NTT東日本の提案を評価したポイントは何でしょうか。
名川氏:NTT東日本は要件を満たしたシステムを予算内で提案してくれました。オンプレミスではなくクラウドのシステムで、クロノロジーやGIS(地図情報)などで被害を一元管理できる機能を備え、かつ操作性にも優れていました。また、システム本体の機能がコンパクトに整理されていたのもよかった点です。たとえば、これまでは防災メールや職員参集の機能などを総合防災情報システム内に保持していましたが、外部サービスを利用することで、システム自体はコンパクトにし、かつ配信もスピーディに行えるようになっていました。
長野県も同じ防災情報システムを使っているため、県のシステムとシームレスに連携できることも魅力でした。これまでは市のシステムに入力した内容を県のシステムにも再度入力していましたが、市のシステムに入力すると県のシステムにも反映されるため、二重登録の解消が見込めました。

名川 雄一郎氏
外部システムとのスムーズな連携を実現
住民との新たな接点としてLINE活用を拡張
――実際の導入はスムーズに進みましたか。
名川氏:今回、システム構築にあたり、大きく4つのシステムとの連携がありました。雨量計システム、高機能消防指令システム、防災行政無線システム、長野県の防災情報システムです。連携のためには、各システムのベンダーと連携方式を個別に検討する必要があるため、調整の手間がかかり大変だったと思います。4つのシステムは長野市から連携してほしいと希望を出したものですが、どれも災害対応には欠かせないと考えており、問題なく連携できてよかったです。
時間を要したのは、閾値の設定です。職員参集の基準や防災メールを送る際の河川の水位情報の値など、さまざまな閾値を設定する必要がありました。また、今回新たに長野市の公式LINEアカウントと連携したため、どのような情報を取得して住民に提供していくかも時間をかけて検討し、避難所情報や災害通報機能を実装しました。住民からの災害情報をLINEで受け付け、それをクロノロジーに連携させています。LINEは防災情報ポータルとも連携させました。ポータルサイト自体は以前からありましたが、今回、情報の配置を工夫して見やすくしたり、操作性の向上を図ったりしています。また多言語対応も行いました。

このように検討しなければならない事項は多かったのですが、構築期間中はNTT東日本が頻繁に打ち合わせの場を設け進めてくれたので、構築が完了しました。途中、電話で確認や相談をすることも多かったのですが、丁寧に対応してくれてありがたかったです。
能登半島地震対応でクロノロジーの利便性を実感
防災行政無線など各種媒体での情報配信も効率化
――現時点で何か導入の効果を実感されていますか。
名川氏:幸いなことに導入以降、大規模災害は発生していないため、使っていない機能もありますが、2024年1月の能登半島地震ではクロノロジーを使って全庁に被害情報を共有しました。長野市も震度4を記録し、道路の隆起や住宅の壁の剥離といった被害が寄せられていたのです。情報を集約しやすく、対応状況や場所など状況を把握しやすいことを実感しました。
日常的には本システムを住民への防災情報配信にも使っています。具体的には、防災行政無線、防災アプリ「長野市防災ナビ」、防災メール、LINE、Yahoo!防災速報などの媒体に一括配信できるようになりました。配信する内容は、気象情報、行方不明者の捜索、獣害などを配信しています。配信情報の入力は作業者以外に内容を確認する人員が必要ですが、入力作業自体は一人の職員でできるようになりました。住民から直接的な声は届いていませんが、LINE公式アカウントへの登録者数は増えており、スムーズにご利用いただけているのではないかと思います。
――今後どのように総合防災情報システムの活用を進めていく予定でしょうか。
名川氏:年2回、職員非常招集訓練でクロノロジーの入力訓練を実施しています。ただ、まだ全職員がシステムを使えるわけではありません。災害はいつ起こるかわかりませんので、今後はマニュアルを充実させて、災害時には全職員が即座に対応できる準備もしていきたいと考えています。市の防災の取り組みとしては現在、避難所運営の検討を進めています。今後の新たな取り組みに対してもNTT東日本からの提案を期待しています。

*上記ソリューション導入時期は2023年3月です。
*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2024年11月時点(インタビュー時点)のものです。
*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。
*LINE、Yahoo!防災速報は、LINEヤフー株式会社の登録商標または商標です。

組織名 | 長野県長野市 |
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概要 | 長野県の北部に位置する長野市は、1897年の市制施行により、県内で初めての市として誕生しました。四方に上信越高原国立公園をはじめとする美しい山並みを有し、犀川や千曲川(信濃川)など大自然の恩恵を受けながら、善光寺平を中心に善光寺の門前町として栄えてきました。1998年のオリンピック・パラリンピック冬季競技大会の開催を機に、長野新幹線や長野自動車道・上信越自動車道なども整備され、首都圏からのアクセスも良好です。 |
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