| Writer:NTT東日本 半田 直紀(Naoki Handa)
契約書を電子化するメリットや方法は?電子契約やスキャナ保存について説明
これまで保存してある大量の契約書や、新たに締結する契約書について、紙での保存から電子データにしたい場合、そもそも電子化は法律的に可能なのでしょうか。
今回の記事では、契約書の電子化を行うメリット・デメリットや、知っておくべきノウハウなどについて紹介します。
目次:
1.電子化できる契約書とできない契約書
契約書と一口でいってもたくさんの種類があります。電子化できる契約書とそうでない契約書が存在しています。
1そもそも契約書は法律上必要なのか
契約書は法律上必ずしも必要とされておらず、
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電子化できる契約書
電子化できる契約書の一例を紹介します。規制緩和などがあり、現在では多くの契約書が電子化可能です。
- ●取引基本契約書
- ●業務委託契約書
- ●雇用契約書
- ●秘密保持契約書
- ●代理店契約書
- ●発注書
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電子化できない契約書
口頭だけで成立しないような契約の場合は、紙で契約書を作成する必要があります。具体的には法律で書面による契約を指定されているものです。不動産関連の契約書や、特定商取引(訪問販売等)の契約書は書面での契約が必要とされています。
また、契約書を作成する必要のある書類は、以下のような特徴があります。
- ●公証人の面前で作成する必要のあるもの
- ●対面で取引が行われるもの
- ●国際条例に関連するもの
- ●書面での証明や押印が必要になるもの
上記のような書類の中でも、原則は紙での契約ですが相手方の承諾があれば書面の電子化が可能なものもあります。旅行契約の説明書面や投資信託契約約款などです。
このようにどうしてもデジタル化をできない契約書も中には存在していますが、電子帳簿保存法の改正など、国としても電子化を進めていきたいという方針なので、将来的には電子化が見込める書類も多いです。
2.契約書電子化のメリット
契約書を電子化するメリットを紹介します。
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業務効率化
紙の契約書を作成する場合、印刷や製本・捺印した後に郵送する必要があり、修正が必要な場合はさらに工数がかかります。電子化できれば大幅に時間や工数を短縮できます。契約書でのやりとりは、従来は出社する必要がありましたが、デジタル化できればテレワークでも対応可能です。
また、保存してある契約書を探す手間も減ります。必要な契約書をデータベースからすぐに検索して参照できるからです。契約更新のミスなども減ります。
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コスト削減
紙の契約書では紙代・印刷代・印紙代・
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安全性の向上
電子契約の場合、その履歴がシステム上に残ります。
3.契約書の電子化のデメリット
契約書を電子化するメリットを紹介します。
1取引先との調整が大変
契約は取引先があってのものなので、
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導入時のコストや業務フロー調整
システムの導入費用や電子契約のための業務フローの調整が必要です。導入したはじめのうちはこれまでの紙での運用のほうが負担も工数も少ないと感じることが多く、社内の理解を得られにくいこともあります。
長期的に見た時の会社全体の効率化やコストダウン、また世の中としてペーパーレス化が進んでいく波に乗っていくことなどを考えると、多少の導入ハードルがあっても電子化について理解を得ることが必要です。
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紙の原本は捨てないケースも
証拠として残しておきたい場合、過去の契約書を電子化したとしても念の為に捨てないケースも多いです。そのため、スペースの削減という意味ではあまり効果がないケースもあります。
一方、契約書以外の電子保存が認められた書類のうち、原本破棄をしやすい書類もあるので、会社として電子帳簿保存法に対応した場合はスペースの削減は見込めます。
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書面で作成が必要な契約書も
前述の通り、すべての契約書を電子のみで作成・保存することは難しいです。取引先との合意が得られないケースや、法律上の理由から書面で契約を結ぶことが義務付けられている場合もあります。
その場合、電子化する契約書と書面での作成・保存をする契約書のフローが分かれることになり、むしろ負担が増えるという懸念があります。しかしこちらもトータルで見た時に、できるだけ早いうちから電子化を進めておくことが長期的に見た時のメリットが多いと想定されます。
4.新しい契約を電子化して結ぶ場合
契約書を電子化するメリットを紹介します。
1電子契約は電子帳簿保存法の電子取引に該当する
契約は取引先があってのものなので、
(1)真実性の要件
保存しているデータが不正に改ざんされていないことを証明するための要件です。以下の4つのうちのどれかを満たす必要があります。
- ●タイムスタンプが付与された後、取引情報の授受を行う。
- ●取引情報の授受後、速やかに(またはその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく。
また、スキャナ保存と同様にタイムスタンプが不要なやり方もあります。以下の2つのうちどちらかを満たす必要があります。
- ●記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
- ●正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う
電子契約を結ぶ場合、基本的にはシステムの導入を行うため、3つ目の要件に該当することが多いです。
(2)可視性の要件
保存してあるデータを問題なく確認できるようにするための要件です。まず、以下の2つを満たす必要があります。
- ●保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
- ●電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
利用しているパソコンなどの機器で円滑にデータを確認できる状態であることや、マニュアルや概要書も保存しておくことが必要です。
また、必要なデータを探す際には検索機能が必要です。
●取引年月日(その他の日付)、取引金額、取引先の3つの記録項目により検索ができること
この要件は必ず必要で、さらに以下の2つのどちらかを満たす必要もあります。
- ●「日付または金額の範囲指定により検索できること」「2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること」を満たしている
- ●税務職員による質問検査権に基づく電磁気記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしていること
利用している電子契約のシステムが電子帳簿保存法に対応している場合は、検索の条件も問題ないでしょう。
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電子契約を結ぶにはシステムの導入が必要
前述の通り、
5.すでに紙で保存してある契約書を電子化する場合
すでに紙の契約書で契約し保存してあるものを電子データにする場
1契約書の電子化は電子帳簿保存法のスキャナ保存に該当する
紙の契約書の電子化は、前述した電子帳簿保存法における3種類の書類の保存要件の中の「スキャナ保存」に該当します。
保存要件に関しては、入力期間の制限とタイムスタンプの付与があります。タイムスタンプとは、ある日時に電子データが存在していることと、不正に改ざんがされていないことを証明するものです。
- ●入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力)
- ●タイムスタンプの付与
タイムスタンプ付与の期間は2か月と7営業日以内とされています。また、スキャンしてデータ化するため、それ特有の技術的要件があります。
- ●一定水準以上の解像度(200dpi以上)による読み取り
- ●カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256階調<約1677万色>以上)※一般書類はグレースケールでも可
- ●解像度および階調情報の保存
- ●大きさ情報の保存※A4以下の書類の大きさの情報は不要
- ●バージョン管理(訂正または削除の事実および内容の確認)
- ●見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備え付け
- ●整然・明瞭出力
- ●電子計算機処理システムの開発関係書類等の備え付け
スキャンした書類を問題なく電子データとして確認するために必要な条件です。加えて、マニュアル等や説明書などの関係書類も必要です。
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スキャナ保存を行う方法
契約書をスキャナ保存するための方法は大きく分けて2つあります
(1)電子帳簿保存法に対応したシステムを導入する
スキャンした書類に対してタイムスタンプを発行できる電子帳簿保
(2)電子契約サービスを導入する
電子契約サービスの中には、新しく電子契約できるだけでなく過去
6.まとめ
今回の記事では、契約書を電子化して保存する方法について説明してきました。
契約書の電子化を行う時は、同時に社内の他の書類も含めてペーパーレス化を進めていく会社が多いです。ペーパーレス化としてスキャナ保存を行っていく場合は、業務フローの改善を見込んでいる場合も多いでしょう。
PDFの画像を情報として保存しておくだけでは利便性が低いこともありますが、デジタルテキスト化して保存すれば情報を再利用しやすく、検索性も上昇して業務効率化につながります。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。