テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第96回)

「AI導入=DX」ではない。DX銘柄2026に見える、企業価値を高めるDXとは

公開日
2026-07-22
thumbnail

AI導入だけでは、DXとはいえません。DX銘柄2026のグランプリ企業の具体事例を基に、企業価値を高める変革の条件と、DXを支える組織づくりのポイントを解説します。

Summary

この記事でわかること
DX銘柄2026は、既存ビジネスの深化よりも、AIの活用によって抜本的な新ビジネスを創出する企業を高く評価している
DX銘柄2026のグランプリ3社は、自社の強みとAIを結びつけ、顧客の生産性向上や調達プロセスを変革している
企業がこの変革を推進するためには、経営層の関与や人材育成、リスク管理といった地道な組織基盤の構築が欠かせない

「DX銘柄2026」グランプリに選ばれた企業は、どんなDXを推進したのか

企業経営の重要なテーマとして「DX」を掲げている企業は多いことでしょう。DX(Digital Transformation)は、デジタルの力によってビジネスを変革することを指す言葉で、日本では経済産業省が2018年に「DXレポート」という資料を発表したことから、ビジネスシーンでも話題となりました。

しかし、DXに取り組んだ企業の中には、業務の一部をデジタル化したり、生成AIを導入するだけに留まり、結果的にビジネスの変革には至っていないケースも多いかもしれません。

DXによって生まれるビジネスの変革とは、一体どういうものなのでしょうか?その実例は、「DX銘柄」で見ることができます。

DX銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所、IPA(情報処理推進機構)の3者が、DXに対する優れた取り組みを実践する企業を選出する取り組みです。東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値の向上につながるDXを推進し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を毎年選定しています。

2026年4月には、2026年版の「DX銘柄2026」が発表され、特に優れた企業として、株式会社ブリヂストン、株式会社ミスミグループ本社、株式会社三井住友フィナンシャルグループの3社が「DXグランプリ企業」に選定されました。

グランプリに輝いた3社はどのようなDXを行い、ビジネスの変革を成し遂げたのか、そしてDXで成果を出すためにはどうすれば良いのか、DX銘柄2026の資料を基に紹介します。

image

DX銘柄2026のロゴマーク

タイヤの摩耗をAIが予測。部品の3DデータをAIが自動見積もり

DXグランプリ企業に選ばれたブリヂストン、ミスミグループ本社、三井住友フィナンシャルグループの3社に共通しているのは、自社の事業で培ってきた強みを、データやAIと結びつけ、顧客に提供する価値を変えようとしている点です。

ブリヂストンではDXによって、顧客にタイヤを作って売るだけでなく、顧客がタイヤを「使う」段階まで、同社が支えるモデルへと広げています。

たとえば航空領域では、エアラインのフライトデータに、タイヤの摩耗を予測するAIを活用し、タイヤ1本ごとの最適な交換タイミングを推奨するソリューションを展開しています。さらに、鉱山における建設車両用タイヤにも独自AIモデルを組み合わせ、故障リスクの提示やオペレーション最適化に役立てています。製品を売って終わりではなく、顧客の生産性や安全性を高める取り組みに、デジタル技術を活用しています。

ミスミグループ本社は、DXでものづくりの設計・調達プロセスを変革しました。同社は、3,000万点超の標準部品・消耗品から、3D-CADで設計した特注部品まで、同社のECサイトでワンストップ調達できる仕組みを整えました。さらに、顧客が3D-CADデータをアップロードすると、AIが形状を認識し、自動で見積もりや生産につなげる仕組みも取り入れています。同社が長年使い続けてきた基幹システムも刷新し、API連携を前提にした仕組みに変えることで、注文変更やキャンセルも、AIエージェントが処理できる環境も整えています。

三井住友フィナンシャルグループでは、同社が開発した生成AIを全社で使える環境を整え、従業員が日常業務で、情報流出の心配をすることなく、AIを活用できるようにしています。顧客接点でも、コールセンター業務、与信判断、提案業務などでAIの活用を進めており、契約の電子化を担う「SMBCクラウドサイン」では、AIによる契約書の自動作成やひな形提案、保管・管理まで支援する方向へサービスを広げています。

既存ビジネスを深化させるより、新ビジネスを生み出すDXが高く評価される

グランプリ3社の事例を見ると、いずれもデジタル技術を単なる業務効率化のために用いるのではなく、事業の領域を広げ、顧客に新たな価値を提供していることが見て取れます。DX銘柄では、このようにビジネス全体を転換する取り組みが評価されています。

特にDX銘柄2026では、企業の積極的なAI活用が重視されています。経産省とIPAが公開している「『デジタルトランスフォーメーション調査(DX調査)2026』について」という資料でも、「AIの利活用を前提に、AIの急速な技術進歩をとらえつつ、機動的・抜本的に、変革の”範囲”を拡充し、その”質”、”スピード”を高める企業を一層評価します」と記載されています。

上記資料では、DX銘柄における「企業価値貢献」がどのようなものかについても定義しており、デジタル技術を用いた「A.既存ビジネスモデルの深化」と「B.業態変革・新規ビジネスモデルの創出」の2点を挙げています。

Aについては、顧客との関係の強化、新地域・新セグメントへの展開など、既存の事業ドメインを変えずに収益の成長を目指す取り組み、Bについては、これまでに存在しなかった顧客・市場を創造し、新ビジネスモデルを実現したり、新たな事業分野へ進出する取り組みを指します。

資料では、「AよりもBをより高く評価する」ことが明記されています。つまり、DX銘柄を運営する経産省・IPA・東京証券取引所では、DXとは単に「既存ビジネスを改良するもの」ではなく、「新たなビジネスを開拓するもの」であると認識していることがうかがえます。

image

DX銘柄2026における、DXによる企業価値貢献についての考え方。既存ビジネスの深化よりも、業態変革・新規ビジネスモデルの創出を高く評価している
(経産省・IPA「『デジタルトランスフォーメーション調査(DX調査)2026』について」11ページの内容を元に、BizDrive編集部が作成)

AI時代のDXは、地道な基盤づくりが欠かせない

このようにDX銘柄2026では、AIの技術を用いて、新しいビジネスモデルを創出した企業が高く評価される傾向にありますが、同時にその企業が本当にDXを実現する能力があるのかについても評価されることになります。

DX銘柄では、一次審査をクリアした企業は、二次審査として記述式アンケートを運営側に提出します。このアンケートにて、当該企業がDXを実現するための組織づくりやデジタル人材の育成・確保ができているか、デジタル化を進めることに対してリスクの認識・対策ができているかが審査されます。

審査項目としてはこれ以外にも、経営のトップがDXの推進に関してメッセージを発信しているか、投資家などステークホルダーに対する情報発信ができているかについても審査の対象となります。要するに、たとえ企業の一部門がDXを推進していたとしても、DXを推進し続けるだけの組織づくりが整っていなかったり、経営層がDXを理解していない場合は、DX銘柄として評価される可能性は低い、といえます。

image

DX銘柄2026の選定プロセスには一次評価と二次評価の2段階があり、二次評価では企業がDXを実現する能力も審査される
(経産省・IPA「『デジタルトランスフォーメーション調査(DX調査)2026』について」7ページを元に、BizDrive編集部が作成)

こうしたDX銘柄の審査の仕組みからは、突発的なアイデアや最新ツールの導入といったデジタル化による表面的な成果は、AI時代における真のDXの成果としては、容易には認められないという運営側のメッセージが読み取れます。

前述したグランプリ企業のように、新たなビジネスの開拓という成果を出すためには、その前提として、経営層の関与や、人材育成、リスク管理といった、DXを実現するための地道な基盤づくりが機能している必要があるといえます。

DX銘柄2026の評価基準からは、AI時代のDXで問われるのは、最新技術そのものではなく、それを事業の変革につなげる企業の力だといえます。経営層の関与、人材育成、ITシステムの整備、リスク管理といった基盤があってこそ、AIは企業価値を高める手段として機能します。

真に企業価値を高めるDXの条件とは、最新テクノロジーを追うことだけではなく、変化に対応できる組織の土台を一つずつ整えていくことにあるといえます。

関連サービス

business-dxsolution-dx

NTT EAST DX SOLUTION

地域、お客さまが抱えるさまざまな課題を、共に発見し、新しい事業を発展させる。私たちNTT東日本は、持続的な成長が可能な循環型社会への転換をめざし、お客さまと共に地域の発展、ビジネスの発展に貢献します。

NTT東日本の自治体DXソリューション

NTT東日本では、自治体のクラウドリフト・クラウドシフトに合わせた庁内環境の高度化・情報セキュリティ対策や、自治体DX推進の伴走支援など、地域に密着したICT企業として地域の皆さまの課題解決をサポートします。

資料ダウンロード

関連するコラム

Nakano-Shi-th01

誰もがデジタルの恩恵を受けられる街に。中野市が挑む自治体DX

Nakano-Shi-th02

アナログな業務はデジタルで効率化。中野市の「庁内DX」に迫る

Nakano-Shi-th03

おむつはサブスク、出欠管理はクラウド。中野市が取り組む「保育DX」に迫る

関連サービスに関する資料のダウンロード