
集合住宅向け 全戸一括 光回線インターネットサービス
フレッツ光 全戸加入プラン パンフレット

著者 上野 典行(プリンシプル住まい総研 所長)
今年の3月には、都心部では「案内する物件がない」ほどの活況でした。
それならさぞかし、仲介件数が伸びて好景気かと思えば、業績は厳しかったという声を聞きます。
今、都心部でなにが起こっているのでしょうか。
Summary

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Index
コロナ禍では、社会人はテレワーク・学生はオンライン授業と、勤務先や通学先に通わないステイホームが社会的に推奨され、家賃の高い都心から、より郊外での部屋探しをする人が増えました。
しかし最近では、企業では出社頻度が戻りつつあり、大学では対面授業が増え、通勤・通学時間の短縮を求めて、都心部へ転居が増える傾向が見られます。
総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、2022年以降、東京都への転入者数が転出者数を上回るという「転入超過」の傾向が続いています。
直近の移動報告でも東京都は最も転入超過となっています。

■総務省統計局:住民基本台帳人口移動報告 2025年結果 都道府県別転入超過数(2024年、2025年)
図のように、転入超過が極端に多いのは、東京都。東日本ではほかに神奈川県・埼玉県・千葉県の3県、西日本では大阪府と福岡県だけが、転入超過となっています。
「都心回帰」と呼ばれる人口流動の加速化は、明らかに、都心一極集中の現状を表しています。
参考:総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告 2025年結果(令和8年2月3日公表)
社会人の都心回帰が進み、都心にある大学に合格した学生は部屋探しに苦労しました。
「ネット無料」などの人気条件が揃った物件などは特に、都心回帰で戻ってきた社会人と大学生が物件を取り合うという状況で、例年以上に部屋探しが大変だったのです。

■早稲田大学キャンパス(西早稲田・戸山)5km圏内の単身物件・募集件数
図は、早稲田大学キャンパス(西早稲田・戸山)の5km圏内の、ワンルーム・1K・1DKの募集件数推移です(AI賃料査定システム・スマサテからプリンシプル住まい総研株式会社調べ)。
ここ2年間で、一気に募集住戸が少なっていることが明らかです。2026年1月の段階で、前年の半数近くまで減っています。
例えば慶應大学の日吉矢上のキャンパスの近隣でも、例年より募集物件数そのものが激減しているなど、他の大学周辺でも同様の事象が起きているのです。

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全国で「少しずつ家賃は上がっていますが数千円単位」というのはこれまでのコラムでも述べてきましたが、その中でも東京と神奈川は、築古も含めて比較的強気に上がり方でした。
こうした背景で、「家賃が上がるのですか。それなら他の物件に転居します」と、家賃アップにより退去が進むのではないかと懸念されてきました。
なにしろ、家賃の値上げなどは長らく不動産会社もやっていませんでしたから、どうなるかと心配されていたのです。
ところが、「ガソリンなど他のものも値上がりしている」「引っ越し代も高いな」「分譲も高いな」と、家賃の値上げも「やむなし」と受け止めた入居者が多かったようです。家賃上げを許容すると「家賃上げも呑んだことだし、しばらく住み続けよう」と、むしろ域内での引っ越しをしなくなるものです。
こうして都心では、家賃が上がったが、退去はむしろ抑制された、とみることができるでしょう。
こうなると、「退去が減る」ため、「案内できる物件が減り」ます。
仲介件数が減り、原状回復をする修繕の売り上げも減り、不動産会社は賃貸部門の業績が悪くなっている傾向があります。


このような急激なマーケット環境の変化を理解して、収益物件オーナーは、付き合う不動産会社を選んでいく必要があります。
「満室だから安心」と任せていた不動産会社が、「賃貸仲介も管理の工事も減少」で経営が悪化しているかもしれません。
仲介件数が伸び悩むと、店舗に活気がありません。また、仲介ばかりが強い会社は、こうしたマーケット環境変化の中で、体力が続かない可能性もあります。
原状回復工事が減ると、管理部門は比較的ひまになります。いつもより「楽な繁忙期」で社員には余裕があっても、会社側は工事などでの付加価値収入が減ります。
「売買領域で稼いでいるから安心」という会社も、今後の金利上昇によっては、これまでのようにはいかないかもしれません。
こうした環境変化は、都心以外のエリアでも、「県庁所在地の人気エリア」でも同じような傾向があるかもしれませんので、注視が必要です。
その一方で、郊外は転出が増え、空室が増えていく。
このように外部環境は刻一刻と変わっていて、その変化に対応できた会社だけが生き残っていくのかもしません。
物件が満室だと気づきにくいのですが、オーナー側は、「成長する会社」「挑戦する会社」であるかをしっかりと見極めていく必要があるでしょう。

執筆:上野 典行(うえの のりゆき)
【プロフィール】プリンシプル住まい総研 所長
1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長・中国ブロック副ブロック長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で講演・企業コンサルティングを行っている。
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