申込が入ってもキャンセルが多い?とりあえず仮押さえをする入居者・仲介会社にご用心

  • フレッツ光・Wi-Fi・通信回線
  • 光回線(フレッツ光)
公開日
2026-03-23

最近、「申込が入って広告募集を止め、審査を進めている間に、キャンセルが入ってしまう」
という悩みを、オーナーの方から聞くことが増えています。

しかも、その連絡はSNSであっさりと届くことも多いようです。
これは、入居者側の意識や行動に、何かしらの変化の潮流が生まれているのでしょうか。

申込キャンセルの弊害

賃貸物件では、申込が入った段階で、募集広告の掲載を終わらせなければなりません。なぜなら、その物件を借りようと思っても、すでに入居希望者の意思決定がされていて、審査待ちだからです。
通常、この募集止めの行為を「部屋止め」と業界では言います。部屋止めがされた物件は、募集・内見などができなくなり、審査結果を待つこととなります。
入居審査時のキャンセル

ところが、この審査はすぐに結果が出るものではありません。
家賃債務保証会社へ審査を依頼してから、数日、場合によっては一週間ほどかかり、ようやく審査OKが出ます。その後、重要事項説明を経て、契約へと進む流れになります。

最近問題となっているのは、この期間中に入居者が心変わりし、「入居を見送る」と連絡してくるケースです。
収益物件オーナーにとっては、再び一から募集活動をやり直さなければならず、年度末などの繁忙期には、貴重な募集タイミングを逃してしまう恐れもあります。

部屋止め

キャンセルをする心理とは?

仮押さえ
昨今の入居希望者は、「とりあえず仮押さえ」をする方も存在します。
この行動は、レストランや宿泊先のネット予約の世界でも問題になっているものです。

人気のレストランや宿泊施設は、迷っているうちに埋まってしまうかもしれない。
その不安から、とりあえず予約を入れる。場合によっては複数予約を入れる。
そして、予約を確保したうえで、周囲の意見を聞いたり比較検討をしたりし、キャンセル料が発生しない期限までに最終判断を下す――こうした行為です。

実際に、「大量の予約を受けて仕込みを進めていたところ、直前で一斉にキャンセルが入り、大きな損失を被った」といった料亭の話も、たびたび話題になります。
賃貸物件における“仮押さえ”も、これと非常によく似た行為であり、オーナー側から見れば極めてマナーに欠けるものと言えるでしょう。

では、なぜこのような行動が増えているのでしょうか。
特に都心では、2026年の繁忙期に向けて都心回帰の影響もあり空室が少なく、「希望条件に完全に合致する物件ではないものの、押さえておかなければ他もなくなってしまうかもしれない」という不安が、入居希望者の背中を押しているのかもしれません。

とりあえず、申込を煽る不動産会社も

悪徳な営業マン
また、「とりあえず申込をしましょう」と煽る仲介不動産会社も存在します。 前述したとおり、「空室が少ない」という社会現象も一因ですが、仲介の現場では一般的に申込が「受注件数」としてカウントされることも一因です。

家賃債務保証会社の審査には一定の時間がかかり、審査に通るかどうかは、営業マン個人の力量で左右できるものではありません。そのため、「契約」段階で件数を管理するよりも、「今月はあと何件申込を取るか」といった形で、営業目標やノルマが「申込件数」に置かれがちになります。
もちろん、実際に契約が成立し、着金が確認されて初めて売上が確定するのですが、その前提条件として、まず申込件数が重視されているケースも少なくありません。

こうした事情から、「迷っていらっしゃるようですが、とりあえず申込をして、部屋止めをしましょう」と、仲介会社が申込を急がせている可能性も考えられます。
また、生活保護を受給している方など、入居審査の通過可否が不透明なケースにおいて、複数の物件に申込を入れ、「どこか一つでも審査が通ればよい」と考える営業担当者がいる可能性も否定できません。

とはいえ、こうした申込キャンセルによって最も影響を受けるのは、収益物件オーナーです。
頻繁にキャンセルが発生する不動産会社については実態を把握し、今後の取引を見直すなど、オーナー側にも一定の自衛策が求められるのかもしれません。

ネットショッピングの「カート落ち」

ネットショッピングでは、決済を終えてからのキャンセルという非常識な行為とまではいかないものの、「カートに入れたが、『買う』ボタンまでは押さない」という現象が起きています。
「これを買おうかな」と思い、商品をカートに入れるところまでは進むものの、そこで立ち止まってしまうのです。

たとえるなら、スーパーで美味しそうな特売品を買い物かごに入れたものの、レジへ向かう前に本当に買うかどうかを考え直す――そんな行為に近いでしょう。

ネットショッピングには「カート」という仕組みがあり、購入候補の商品を選んだものの、決済に進むかどうかを迷った末に購入をやめてしまう行為を「カート落ち」と呼びます。
実際、ネットショッピングで迷った末に購入を見送った経験がある人は、調査によると過半数にのぼるとも言われています。部屋探しにおいても、こうした「迷い」が生じやすい世代なのかもしれません。

ファッションECサイトの利用実態調査

出典:株式会社シナブル ECサイト利用実態調査 2024年10月

簡単にキャンセルの連絡ができてしまう弊害

また、昨今では、入居希望者と仲介不動産会社とのやり取りが、電話からLINEなどのSNS、スマートフォンのショートメッセージ、あるいは不動産業界で使われるチャットなどのアプリケーションへと移行しています。

かつては、「キャンセルするのであれば不動産会社まで出向き、手付金を受け取る」といった、心理的なキャンセル抑止の仕組みも存在しました。しかし現在の宅地建物取引業法では、賃貸物件において手付金の授受は認められていません。

その結果、LINEで「やっぱりあの部屋、やめておきます」と一言送られ、そのままブロックされてしまえば、不動産会社側もやり取りを続ける術がなくなってしまいます。

昨今は、会社を辞める際でさえ、自ら辞表を書いて出向くのではなく、退職代行サービスを利用する時代です。
こうした、安易に意思表示や関係解消ができてしまうツールの変化も、キャンセルが増えている一因と言えるでしょう。

キャンセルされない第一希望物件にしましょう

人の指で1
さて、では収益物件オーナーはどうしたらいいのでしょうか。これまで述べたような、キャンセルの多い仲介会社にはご遠慮いだくという手法に加え、王道としては、「キャンセルされない第一希望物件」にすべきです。

入居希望者側は、たとえ都心回帰の影響で物件数が減っていたとしても、インターネット上には数多くの物件情報が並び、「選び放題」と感じているのが実情です。だからこそ、「第一希望の物件になる」ことが何より重要であり、そのためには人気設備の強化が欠かせません。

また、審査前や重要事項説明の場面で、「貸してやるのだから」といった上から目線で細かなルールを押し付ける姿勢も、慎重であるべきでしょう。
「これこれのルールは必ず守ること」と、後出しジャンケンのように条件が厳しくなれば、入居意欲は削がれ、結果としてキャンセルの引き金になる可能性があります。

インターネット無料や防犯カメラといった設備条件を充実させ、入居希望者から「ここに住みたい」と思われる存在になること。
「キャンセルされない第一希望物件」であり続けることこそが、これからの時代において、ますます重要になっていくのです。

写真:執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

執筆:上野 典行(うえの のりゆき)

【プロフィール】プリンシプル住まい総研 所長

1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長・中国ブロック副ブロック長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

関連するコラム

関連サービスに関するお問い合わせ・資料のダウンロード

お客さまの物件に適したインターネット環境をご提案いたします