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人気の設備ランキングで、上位に上がっている宅配ボックス。
収益物件オーナーにしてみれば、「安く設備強化できればいいので最安値で」と考えてしまうかもしれません。
とりあえず「あればいい」のか、どこまでの性能があれば宅配ボックスは空室対策に役に立つのでしょうか?
今回は、賃貸物件における、宅配ボックスの性能について論じます。

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Index
全国賃貸住宅新聞社が毎年発表する「この設備があれば、周辺相場より家賃が高くても決まる設備ランキング」の2025年版で、単身向け・ファミリー向けともに4位となった「宅配ボックス」。
不在時に配達業者が来ても受け取れるからと入居者には好評であり、ネットショッピングをする入居者が増えている今日では、賃貸物件選びでも決め手のひとつとなっています。
空室対策の設備強化策として「宅配ボックス」を導入する際には、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?

出典:全国賃貸住宅新聞 2025年10月20日号 6面

収益物件オーナーとしては、空室対策の設備投資は「出来るだけ出費を抑えたい」というのが本音です。
例えばエアコンも温水洗浄便座も「一番安い見積もりのもので」と選んだオーナーは多いはず。
そうでなくても空室に困っている場合は、家賃収支が悪くなっているという状況で、追加投資をして設備強化をするのですから「とりあえず設備がついてさえいれば、部屋探しのポータルサイトの検索でも該当するし、内見時に仲介営業も薦めやすいだろうから、特にスペックにはこだわらない」というお気持ちはわかります。
しかし、せっかく設置した宅配ボックスでも、あまりにあずかることができるボックスの数が少ないと、結局、「宅配ボックスの空きがありませんでしたので、持ち帰っています。再配達の依頼をしてください」という置き手紙が残るだけ。
その頻度が高いと、入居者クレームにも繋がりかねません。
国土交通省の調査によると、令和6年度の宅配便取扱個数は50億3,147万個。対前年度比では2,414万個・約0.5%の増加となりました。
通販と言えば、昔はカタログ販売が主流でしたが、2009年、Amazonの通販売上高が2,510億円となり、初めて国内首位になりました。
2016年には、再配達に悩む配達スタッフが荷物や台車を放り投げる様子を捉えた動画がネット上に公開され、社会問題にもなりました。
加えて、コロナ禍でステイホームが国策として叫ばれ、買い物をスマホなどでネットで手軽に行う人が増え、コロナが明けた昨今でも、
ネットショッピングで宅配便を利用する人は増え続けています。
つまり、新築時に想定していたボックス数では、すぐに満杯になってしまう、ということもありえる状況なのです。

出典:国土交通省「令和6年度 宅配便等取扱個数の調査」(令和7年8月27日)
経済産業省の資料で、BtoC-EC市場規模の経年推移を見ても、着実に市場規模は増加しています。
先々の利用者増も考えて、ボックスの数は出来る限り多いほうが良いでしょう。
かつては、建物の住戸数の20%程度のボックス数が適切といわれてきましたが、利用者が増えていることもあり、宅配ボックスメーカーは、住戸数の30~40%を推奨するところが増えてきました。

出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査報告書」(令和7年8月)

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国は、ドライバーの働き方改革やドライバー人材の不足、二酸化炭素排出量の削減などを狙い、国際的にスタンダードとなっている「置き配」への移行も推奨しています。
海外では玄関先などに置く「置き配」による配達が主流となっているのです。
経済産業省と国土交通省では、平成30年11月に「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会」での議論の取りまとめを行い、解決策のひとつとして、置き配の推奨を提言しています。
通信販売の最大手であるAmazonは、2019年には岐阜県多治見市で置き配の社会実証実験を行い、2020年3月から置き配を標準配送として30都道府県で導入しました。
配送方法の初期設定を「玄関先などに配達する置き配」として、顧客から指定がない場合は留守・在宅問わず、玄関先に商品を届けるものです。

出典:経済産業省・国土交通省 「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会これまでの議論のとりまとめについて」(平成30年11月)
こうした社会の変化に対して、集合住宅では大きな「壁」が存在しました。
それは「オートロック」です。宅配ドライバーは玄関先まで行って置き配にしようとしても、オートロックを突破しなければなりません。
なにしろ、先にご紹介した人気の設備ランキングでは、宅配ボックスが4位に対して、エントランスのオートロックは、単身2位・ファミリーで1位という高順位。
この両立は、賃貸物件では重要になるのです。
こうなると、どうやってエントランスのオートロックを解除するのかという話になります。Amazonでは、 2021年には集合住宅のエントランス(集合玄関)のオートロックを、Amazonの配達ドライバーが専用端末で解錠し、玄関先への置き配をできるようにするサービス「Key for Business」を開発。全国の建物への導入を進めています。とはいえ、すべての物件が通過できるわけではありません。
「オートロック」で玄関先へ置き配できないケースへの対策としても、やはり「十分なボックス数のある宅配ボックス」が、これからの賃貸経営ではカギとなるのです。

空室対策や家賃アップに向け「インターネット無料」を導入する物件も多くなっていますが、そのインターネット回線を使って「長期間、宅配ボックスに荷物を預けたままにしている入居者にプッシュ通知を送る」というサービスなども登場しています。
あるいは、エントランスのモニターがネットにつながっていて、エントランス解除時に「宅配ボックスに荷物が届いています」といったメッセージが出る物件もあります。
「荷物を受け取ってください」という注意喚起を行うことができるため、「宅配ボックスが満杯で再配達にばかりなる」というクレームの抑止効果もあります。
収益物件オーナーにとっては、「①入居募集で宅配ボックスがつけば選ばれやすい」というメリットがありましたが、インターネット回線につなげることでボックスの満杯を抑止できれば「②入居主満足度があがり、クレームの防止と退去防止になる」というメリットもあるのです。

昨今はインフレ傾向で支出が増えるばかりですが、「高速ネット無料」や「ネットとつながる宅配ボックス」を導入することで、比較的スムーズに家賃アップが実現するケースもあります。
2025年9月、AI賃料査定システム「スマサテ」を提供するスマサテ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:山岸 延好)が、賃貸不動産オーナー439人の設備投資事例をまとめた資料「設備投資事例レポート」を発表しました。これによると、収益物件オーナーが、更新時に家賃アップの合意を得やすかった条件は、1位がインターネット無料、2位が宅配ボックスでした。
前段の「①募集時の空室対策」「②入居者クレーム・退去抑止」に加えて、「③更新時の家賃アップ」も狙える。まさに、これからのオーナー戦略に一助ありなのです。
社会や入居者の変化にタイムリーに応えて、収益物件の収支改善をしていきましょう。

出典:スマサテ(2025年9月調査)をもとにプリンシプル住まい総研株式会社作表

執筆:上野 典行(うえの のりゆき)
【プロフィール】プリンシプル住まい総研 所長
1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長・中国ブロック副ブロック長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。
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